『第8回国際風力発電展 ~スマートエネルギーWeek2020』レポート

2020年2月26日(水)〜28日(金)に開催された「スマートエネルギーWeek」の国際風力発電展では、商談を前提にしたやりとりがあちこちで交わされていました。今回はこの中から注目すべき企業を3つ紹介します。

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発電効率が高く音も静か。リングのついた「レンズ風車」

変わった見た目の風車で来場者の注目を集めていたのは、株式会社リアムウィンドが開発した「レンズ風車」。文部科学大臣賞や産学官連携功労賞を受賞している同社は、九州大学からスピンアウトした大学発ベンチャーです。

開発部の弓指和敏(ゆみさし・かずとし)氏によれば、レンズ風車は流体力学の研究者との共同研究によって誕生した独特の形状で、発電効率を向上させているそうです。

レンズ風車の最大の特徴は、なんといっても羽根の周りについたリング。「リングの『つば』に風が当たることで空気の渦が発生し、内側に空気を引き込む力が発生します。それによって風速が約1.4倍になり、発電量は同じロータ径の通常風車に比べて約1.2倍になります」(弓指氏、以下同)


写真右側、リングから外側に広がっているのが「つば」の部分。ここに風が当たることで空気の渦が発生します。
写真右側、リングから外側に広がっているのが「つば」の部分。ここに風が当たることで空気の渦が発生します。


また、羽根とリングの相互作用で、羽根の付近では渦の発生が抑制されます。これによって、一般の風車に比べて騒音の発生も低下するそうです。

「また、リングがブレードを囲っているので、先端のとがったブレードが回る従来の風車よりも見た目のイメージが柔らかになりやすく、周りの風景に溶け込みやすいのも魅力です」

すでに九州各地に無人カメラ観測点や電波中継点、非常時電源等の動力源などの用途で設置され、発電が行われているほか、福島県いわき市でも駐車場の照明の発電用にも使用されています。

近年はNEDO事業として、3つのレンズを一体化させてさらに発電量を高めた「マルチレンズ風車」の稼働実験が九州大学で進行中。将来的には、一辺100m規模の浮体に数百kW級のレンズ風車を複数設置して、海面に浮かぶ発電所を開発する「洋上浮体風力発電ファーム」を計画しています。この発電所では太陽光発電もできるほか、スペース内部で魚介類の養殖も可能にする予定です。


株式会社リアムウィンド 開発部 弓指和敏氏
株式会社リアムウィンド 開発部 弓指和敏氏


研磨や切削を一切施さない高精度の金型

風力発電機メーカーとの協業を目的に、非常に精度の高いプラスチック造形物を展示していたのは、金型の設計から完成物の射出成形を手がける株式会社エストー。

こちらの展示品は研磨や切削を一切施しておらず、金型からの射出成形のみでつくったもの。同社の金型は、1/1,000nm(ナノメートル)単位の精度を追求して設計されているそうです。


こちらの展示品は、すべて切削や研磨は一切せずに金型からの射出のみで完成しているそうです。
こちらの展示品は、すべて切削や研磨は一切せずに金型からの射出のみで完成しているそうです。


高精度を実現する秘密について、エストー営業部課長の藤井彰彦(ふじい・あきひこ)氏は、「金型づくりを外注し、それをもとに自社で射出するなど、多くの会社は金型の設計や製作、メンテナンス、そして完成物の射出成形といった工程のどこかを担当するのが一般的です。しかし、当社ではこれらすべてを自社で一気通貫して手がけております」と説明します。

すべての工程を管理しているため、クライアントが求める部品の理想像をヒアリングしたら、それに合わせて最適な金型を成形機の特性に合わせて設計できます。また、各プロセスで生まれた課題の洗い出しや検証、修正といったサイクルも高水準で実行。同社ではこうした各プロセスを融合させた体制を「すり合わせ技術」と呼んでいます。

もちろん、24時間体制で稼働する最新鋭の成形機や3D測定器や工具顕微鏡、自動測定器による不良品の検査、空気中の細かな粉塵や生産ラインで問題発生の可能性がある異物の排除を混入させないためのノーダストルームなど、各部門では最新の設備を使用しています。

こうした金型で現在製造されているのは、主にパソコンやスマートフォンといった、日々小型化していくハイテクノロジーデバイスの部品。過去にはiPhoneのライトニングケーブルで使われたコネクタの金型を設計したこともあるなど、高い安全性と耐久性を兼ね備えた部品を製造する技術として認められています。

さらに近年は「ガスケット」と呼ばれる電気自動車などに使われているリチウムイオン電池内部のシール材を製造。少しずれると電池の液漏れの原因になることもある重要な部品です。


機械の不調を内部の「音」で検知する測定技術

風力発電展には、発電機そのものや部品の出展以外にも、機械の不調を検知する計測機を開発するメーカーも多数出展していました。その中で目を見張ったのは、横浜市の株式会社IHI検査計測です。

同社が取り扱う「アコースティック・エミッション」は、音の響きで機械に使われている素材の疲労を測定する技術です。

数センチ大のセンサーを取り付けることで、機械の様子を常にオンライン環境でモニタリング。営業統括部第3グループの池原大地(いけはら・だいち)氏によれば、その強みは機械に発生したごく小さな異常を検知できるので、大きな損傷を未然に防げることです。


「アコースティック・エミッション」は、数センチサイズの丸いセンサーで振動音を検知しています。
「アコースティック・エミッション」は、数センチサイズの丸いセンサーで振動音を検知しています。


「アコースティック・エミッションは、素材を叩いたときの振動音や、金属疲労でひび割れたときに発生する高周波を検知します。もちろん、機械内部の音にもしっかり反応します。

なので、人の目やカメラでは捉えることのできない機械の内部で発生した、微細な金属疲労の音を察知できます。1つのセンサーで10数センチ程度で起きた音を検知しますが、複数個を組み合わせることで検知範囲を拡大できます。それによってより大きな、あるいはより厚みがある機械にも対応可能です」(池原氏)

アコースティック・エミッションは、軽量で強度の高い材料として近年飛行機や自動車など幅広い分野で使用されているCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の強度・健全性評価や、石油タンクの腐食評価に使用されています。特にタンク底部の腐食評価は、これまでタンクを一度開けなければ検査できませんでしたが、アコースティック・エミッションならタンク内部に一切触れずに外部に取り付けたAEセンサーで評価可能。ほかにも機械の状態監視、岩盤やコンクリートの材料評価など様々な分野で利用されており、さらなる活用が期待されます。


文/野口直希

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