動画でわかる鋳造工程「みんさくロゴ入りの鉄鍋」を作ってみた(後編)

「鉄の鋳造プロセスを動画撮影&取材してみよう!」と思い立ち、「みんさくロゴ入り鉄鍋」をオーダーして、その製作プロセスを詳細に動画に収める本企画。

後編では、いよいよ溶かした鉄材料を鋳型に流し込み、完成品が出来上がるまでのプロセスを追います。
前編に引き続き、株式会社プロトの川崎祐一氏に、鋳造現場や鋳造ノウハウをご案内・ご説明いただきました。

ご協力いただいた株式会社プロト営業・川崎祐一氏(左)とスタッフのみなさん
ご協力いただいた株式会社プロト営業・川崎祐一氏(左)とスタッフのみなさん


鉄の鋳造プロセス全体像

鋳造プロセスをおさらいしましょう。

①設計デザイン:3DCADで鋳造品の設計デザインを行います
②木型・砂型製作:3DCADデータをもとに木型を作り、木型から砂型を作ります
③材料用意:鉄鋳造に必要な材料を用意します

今回はここから↓
④溶解・成分調整:鉄材料を溶かして、成分の調整を行います
⑤砂型準備:砂型を温めたりした後に組み立てます
⑥注湯:鉄を砂型に注ぎ込みます
⑦凝固・仕上げ:固まるまで待ってから製品を取り出し、仕上げます

 

鉄の鋳造プロセス④溶解・成分調整

鉄材料は、キューポラか電気誘導炉で溶解します。プロトでは電気誘導炉を使っています。なお、鉄の鋳造では、溶かした鉄のことを「湯」と言います。溶けた鉄は粘度がなく、お湯と同じようにサラサラしているからです。それに対して、溶けたアルミなどは粘度が高くドロドロしています。

鉄材料を溶かすと、湯の表面に「ノロ」と呼ばれる不純物が浮かんできます。そこでノロ取りの材料を入れて、ノロを固めてから取っていきます。この後、注湯するまで何度もノロ取りを行います。できるだけノロを取り除いて鉄の純度を高めることが、欠陥を減らし、鋳造品の質を高める上で大切だからです。


<動画1>ノロ取りの様子

 

次に、溶かした鉄材料の成分分析を行います。少量の湯を取り出して冷やし、メイン・サブの2つの成分分析機で、シリコンやカーボンの含有量を二重チェックします。この分析結果を見て、後で入れる配合物の量をグラム単位で算出します。

<動画2>溶かした鉄の成分分析を行う様子

 

成分分析が終わったら、一度出湯します。湯温が十分に高まったことを温度計で確認してから、電気誘導炉の湯を「とりべ(湯を入れる桶)」に移します。移し終わったら、湯温と湯の重さ(とりべの重さ)を測ります。そして、先ほどの成分分析でわかった必要量の配合物を電気誘導炉に入れてから、湯を戻します。配合物を入れてから湯を戻すのは、配合物を湯によく溶かすためです。順番が逆だと、配合物が上に浮いてしまって、なかなか溶けないのです。また、このとき一度出湯するのは、とりべを温める意味合いもあります。とりべが冷たいままだと、注湯時にとりべの中で湯の温度が急速に下がり、欠陥になりやすくなってしまうからです。

<動画3>出湯と湯戻しの様子

 

この後、2回目の成分分析を行い、成分調整がうまくいったかどうかを確認します。うまくいっていない場合は、出湯→配合物の追加→湯戻しを改めて行います。


鉄の鋳造プロセス⑤砂型準備

一方で、砂型にも準備が必要です。砂型は上面・下面に分かれていて、これを組み合わせてから注湯するのですが、今回は組み合わせる前に砂型の内面を温めます。なぜなら、プロトのオーダーメイド鉄鍋が「薄肉(薄い鉄製品)」だからです。「厚肉(厚い鉄製品)」の場合は冷たい砂型にそのまま湯を流し込んでよいのですが、薄肉の場合は、砂型内面が冷たいとあっという間に湯が固まってしまい、鉄材料が砂型全体に行き渡らない「湯回り不良」の欠陥を起こしてしまうのです。薄肉の鉄鋳造は、湯回り不良との戦いです。

具体的には、砂型を温めるためにバーナーを当てていきます。一度で急に温めようとすると砂型が焦げてしまうので、非接触放射温度計で表面の温度を測定しながら、3回ほどに分けて丁寧にバーナーをかけていきます。また、これには砂型の水分を飛ばす意味合いもあります。水分を飛ばすほど、仕上がりが美しくなります。

<動画4>砂型を温めている様子

 

砂型の内面を目標温度に達するまでバーナーで温めたら、上下を組み合わせます。組み立ての際は、砂型が傾かないように、両側から2人が同じくらいの圧をかけていきます。無事に組み立てが完了したら、今後は砂型内部に温風を吹き込んで、温度をできるだけ下げないようにします。砂型内面の温度を極力保つことが、薄肉鋳造の成功の秘訣なのです。

<動画5>砂型の組み立ての様子

 

鉄の鋳造プロセス⑥注湯

鉄材料の成分が整ったら、砂型に温風を送り込んでいたヒーターを外して、いよいよ注湯していきます。注湯時には、まずとりべに出湯してから「接種材」を投げ入れます。接種剤とは鉄の強度を増し、伸びを与えるために欠かせない添加剤で、今回のような普通鋳鉄ではシリコン系接種剤が一般的ですが、ダクタイル鋳鉄を作る際にはマグネシウムを使います。また、このときに湯温を測っておきます。こうしたこまめなチェックが欠陥・不具合を減らします。

注湯の際に特に気を付けなければならないのは「湯回り不良」と「空孔」です。
今回のように薄肉製品の場合には湯が冷めやすいので、注湯時に湯をできるだけ早く回すことで湯回り不良を防ぐことが重要です。また、厚肉製品の場合などは特に、注湯時に発生するガスを十分に逃さないと製品内に「空孔」が出来てしまう可能性があります。これを防ぐため、砂型にガス穴をいくつか開けておき、注湯した後でガス穴に火を付けることでガスをより早く逃し、空孔の不具合を防いでいます。

<動画6>注湯の様子

 

また、欠陥を防ぐため、製品によって流し込む際の湯温を変えることも大切です。プロトでは、流し込みの順番を工夫することで、微妙な湯温の調整を行っています。

鉄の鋳造プロセス⑦凝固・仕上げ

注湯した後、数時間置くと、鉄が完全に凝固します。そうしたら砂型を壊して、鉄鍋を中から取り出します。これでもうほとんど完成です。

<動画7>鉄鍋を砂型から取り出す様子

 

なお、こちらは試作段階で欠陥が出てしまった鉄鍋です。注湯のスピードと湯量が足りなかったために注湯穴から最も遠い部分に湯が十分に回らず、湯回り不良を起こしてしまいました。その結果、土台部分が低くなってしまっています。ふだん工場などで失敗作を見せていただける機会はめったにありません。貴重な映像です。

<動画8>試作段階で失敗した鉄鍋

 

砂型から取り出した鉄鍋は、最後の仕上げ工程に入ります。サンドブラストで表面の砂をキレイに飛ばして取った後、足をカットしたり、バリを取ったりしていきます。これで鉄鍋の完成です!

<動画9>仕上げの様子

 

後日、納品された鉄鍋がこちらです。みんさくロゴの鮮やかな凸字にご注目ください。

みんさくロゴ入り鉄鍋完成品
みんさくロゴ入り鉄鍋完成品


私たちは早速、この鉄鍋で焼き肉をいただきました。とってもおいしかったです!

完成した鉄鍋でお肉を焼く様子
完成した鉄鍋でお肉を焼く様子


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