【テクニカルショウヨコハマ2020】現地レポート

加工技術からロボットまで、さまざまな企業が出展する「テクニカルショウヨコハマ 2020」。今年は加工、機器・装置、システム、研究開発、ビジネス支援から産業用・生活支援ロボット、IoTソリューションテクノロジーの7つのゾーンで構成されており、全国から約830社が出展。過去最大の規模となっておりました。この記事ではメインブースになっていた加工技術に加え、ここ数年で注目を集めているロボットに注目しました。

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プラスチックの特性を保ちつつ、金属材料に近い40dB以上のシールド効果を発揮

「テクニカルショウヨコハマ 2020」の会場を訪れ、まず目に飛び込んできたのが加工技術のゾーン。神奈川県の企業はもちろんのこと、長野県や石川県、新潟県の企業も出展しており、会場内でも最大級の大きさとなっていました。

さくらGSの電磁波シールド樹脂めっき
さくらGSの電磁波シールド樹脂めっき


数あるブースの中で、まず目を引いたのが総合表面処理メーカーとして、大手自動車メーカーの部品、大手電気メーカーの部品を取り扱っている実績を持つ「さくらGS株式会社」のブースです。亜鉛めっき、亜鉛合金めっき、無電解ニッケルめっき、YCコートが同社の代表的な技術ですが、3年ほど前から電磁波シールド樹脂めっきの開発を行っています。

この電磁波シールド樹脂めっきは、プラスチック上に均一な金属膜を形成することができるため、プラスチックの物性を活かしながら、金属材料に近い40dB以上のシールド効果を発揮する、というものです。

「昨今、電気自動車やハイブリッドカーの軽量化ニーズが高まっており、その流れで高性能樹脂(エンプラ・スーパーエンプラ)を使われることが増えています。金属ではなく、樹脂を使うと電磁波のシールドが不十分といえる状況になるため、弊社の電磁波シールド樹脂めっきを採用するお客様が増えてきているんです」

さくらGS株式会社 技術部 OM技術開発課 那須将樹(なす・まさき)氏は、電磁波シールド樹脂メッキの実績について、こう語ります。電磁波を元にレーダーによって、車と車の距離を一定に保つ衝突防止装置などが搭載されている電気自動車に、電磁波シールドは不可欠な技術になってきています。

「通常、プラスチックは電気を通してしまうんですけど、そこに無電解銅めっきを施すことで、高いシールド性が発揮されます。前述の自動車業界もそうですが、電波妨害を受けたくない医療機器など医療業界でも活用され始めています」(那須氏)

スマートフォンが普及し、あらゆるモノにつながれるようになった時代において、さくらGS株式会社が開発する電磁波シールド樹脂めっきは、今後さまざまな業界で需要が高くなっていくような気がします。


金型レスで高品質な製品を短納期で

あらゆる製品をつくるにあたって、欠かせないものが「金型」です。金型があるからこそ、多くのメーカーは安価に製品を大量生産することは可能になります。


低価格で短納期のものづくりを提供するケンショウ
低価格で短納期のものづくりを提供するケンショウ

そんなモノづくりに欠かせない金型を使うことなく、製品を成形しようとする企業が「テクニカルショウヨコハマ 2020」にブースを出していました。それが有限会社ケンショウです。同社は「精密板金加工とプレス加工を複合した治具(仮型)」を使うことで、金型レスで製品を完成させることを強みとしています。

実際、ケンショウの冨永哲生(とみなが・てつお)氏は次のように自社の強みを語ります。

「金型をつくると時間もかかるし、お金もかかってしまう。試作をしたいお客様にはいかに早く、安い価格で製品を提供できるか、が大事になってきます。試作はまず形状を決め、それが良ければ量産に移っていくものだと思っているので、早く形状をつくってあげる。そのために我々が注目したのが精密板金加工とプレス加工を複合した治具(仮型)でした」

本来、金型を作成するために必要とされていた「時間と費用」を削減することで、ケンショウは短納期を実現。通常、1か月、2か月かかっていたものを2日で形にすることも可能になるとのことです。

自動車試作部品や精密電気部品を中心に、多種少量部品の製造・販売を行っているケンショウ。変化の早い時代において、ユーザーが求める製品を開発していくには、いかに早く形にするか、が大事になってきそうです。


「物流ラストワンマイル問題」の解決へ

AMOEBA ENERGYエンジニアの青木佑一郎氏とソフトロボット
AMOEBA ENERGYエンジニアの青木佑一郎氏とソフトロボット


こうした加工技術のゾーンに加えて、多くの来場者で賑わっていたのが産業用・生活支援ロボットのゾーンです。

この産業用・生活支援ロボットのゾーンには、感情を認識する人型のロボット「Pepper(ペッパー)」やAI清掃ロボット「Whiz」を開発したソフトバンクロボティクスが出展。そのほか、段差を越え、荷物を運べる世界初の『ソフトロボット』を開発したAMOEBA ENERGYなどのスタートアップ企業も多く出展していました。

「この『ソフトロボット』は伸縮性に優れた素材(EPDMスポンジ)をクローラ部分に採用することで、生活空間で想定される階段(段差:最長18cm、傾斜:最大35°)を昇降でき、6kgの荷物(2Lペットボトル3本相当)を運搬し、5階以上のフロアにも荷物を届けられる機能を兼ね備えています」とAMOEBA ENERGYエンジニアの青木佑一郎(あおき・ゆういちろう)氏はソフトロボットの特徴について語ります。

またロボットの背部が変形することで荷物の置き配を可能になるなど、宅配の2割が再配達と言われている「物流ラストワンマイル問題」の解決策として期待を集めています。


新規事業で「ロボット開発」へ参入した企業

そうした中、産業用・生活支援ロボットのゾーンで印象的だったのが、新規事業としてロボットの開発に取り組み、出展している企業があったことでした。

その例として、まず取り上げたいのが日本精工(NSK)です。同社は掃除機、自転車、エアコン、プリンター、洗濯機などに使われているベアリング(軸受)の国内1位、世界3位のシェアを誇る企業です。また、自動車部品である電動パワーステアリング(EPS)などの開発や、プラットホームのホームドアなどに使われているNSKリニアガイドなど、ベアリング以外にもさまざまな事業に取り組んでいます。

2017年には、次世代型電動車いす「WHILL」を開発するWHILLと資本提携。日本精工の要素部品技術やメカトロ技術と、WHILLのモビリティ開発技術を融合し、パーソナルモビリティの創出と普及に向けて、連携を図っていくなど、ロボット事業にも積極的に取り組んでいました。そして今回、2019年12月に発表した、静かで滑らかな駆動ができ、人々が行き交う場所によく馴染む「台車型 自動移動ロボット用 ダイレクトドライブ車輪ユニット」が展示されていました。


日本精工のダイレクトドライブ車輪ユニット
日本精工のダイレクトドライブ車輪ユニット


ダイレクトドライブ車輪ユニットの開発について、日本精工株式会社 新領域商品開発センター 技術開発第二部 副主務の杉浦創(すぎうら・そう)氏はこう語ります。

「こういった移動ロボットはモーター、減速機、車輪が一緒に動くのですが、このダイレクトドライブ車輪ユニッモーターには直接車輪がついており、騒音源である減速機がありません。そのため静かなのが特徴です。この静けさを利用して、病院や大型図書館などの公共施設で活用できないか、と思っています」

また、バックドライバビリティがあり、接触時など人が台車を押しのけるなど、手動操作も可能だ。付属の専用ドライバが、2輪の駆動モーターとつながり、台車移動を簡単な指示で制御できるようになっています。

「採用例はまだないですが、検討していただいている企業様はいます」と語る杉浦氏。今後、展示会でのお客様の反応を見ながら、開発を進めていく予定だと言います。


無線遠隔で油圧ショベルを操作

コントローラーで遠隔操作可能なアクティブロボSAM
コントローラーで遠隔操作可能なアクティブロボSAM


水陸両用バスや警察車両、防衛関係車両、衛星通信車など特装車の企画、設計、製作、登録などを手がけてきたコーワテック株式会社。そんな同社が新規事業として開発したのが無線遠隔操作ロボット「アクティブロボSAM」です。

開発のきっかけになったのが、2011年に発生した東日本大震災です。当時、東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生するなど、人が立ち入ることができない場所で甚大な被害がでました。復旧までに相当な時間を要したことから、人が立ち入ることができない場所での災害対応や、二次災害の恐れのある災害時の復旧作業を安全で迅速に行えるようにしたい──そんな思いから、アクティブロボSAMは開発された、とSAM開発 顧問の大橋啓史(おおはし・ひろふみ)氏は言います。

最大の特徴は、既存の建機に搭載すれば約300メートルまで無線遠隔操作が可能になる点です。ロボットとの通信は920MHz無線通信で、他の通信機器との混信を防止。オプションで車載カメラと動画像伝送装置を取り付けることができ、現場事務所などからの無線による遠隔操縦も可能。本体質量は約50kgと軽量で、搭載時間も約30分となっています。

台風や地震などの天災が発生することの多い日本。災害が発生した際、いち早く日常の生活に戻るためには、アクティブロボSAMのようなロボットが大事な役割を担ってくれそうです。



文/新國翔大

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