『ネプコンジャパン2020』現地レポート – 注目技術紹介

ネプコンジャパンは、2020年で34回目を迎えたエレクトロニクスの製品開発、製造などに関する展示会です。クルマ関係のオートモーティブワールドと併催され、東京と名古屋でそれぞれ年に1回ずつ開催されています。東京ビッグサイトの西・南の展示棟を使っていて会場も広く、5Gなどのエレクトロニクスの実装、検査機器、半導体パッケージ技術、電子部品・材料、プリント配線板、微細加工技術、LED・半導体レーザーなどの企業が出展。その中から興味深い技術を2つご紹介します。

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積層技術を活かした黒鉛の熱伝導シート

株式会社昭和丸筒(大阪府東大阪市)は、紙管や巻き芯、梱包材など紙やプラスチック製品などを製造している会社です。同社が培ってきた紙を貼り合わせる技術を用い、半導体などの電子機器の熱対策に活用できる部材を開発したそうです。

LED・半導体レーザー技術展に同社が出展していたのは、厚み方向に銅の熱伝導率(к≒400Wm-1K-1)の約2倍(800 Wm-1K-1、平均で1,000 Wm-1K-1)となる、密着性の高い熱伝導複合材(Zebro、ジブロ)という部材です。

説明してくださった香川勝彦(かがわ・かつひこ)上席理事 商品企画室長によれば、熱伝導率が格段に優れた部材で、初めて厚み方向(縦方向)に100 Wm-1K-1以上の熱伝導率を持つ複合材を開発したそうです。

「弊社は紙のパッケージ、紙製の筒を作っていますが、半導体関係のお客様から熱処理に困っているというお話を伺い、2019年の春くらいから開発を始めました。

半導体の熱処理ではヒートシンクというアルミの放熱部材を付けますが、半導体の表面が凸凹しているため、点接触しかなく放熱部材をダイレクトにつけることができず、放熱効果が発揮できません。そのため、半導体と放熱部材の間にグリスを注入したり黒鉛シートを挟んだりしています」(香川氏、以下同)



多種多様な熱伝導シートが展示されていました。
多種多様な熱伝導シートが展示されていました。


厚み方向に熱伝導率が良く、点接触にならないために柔らかい部材が欲しいという要望は、CPUなどの半導体の発熱に困っている業界から長く出ていました。

黒鉛シートは熱伝導部材として使われてきたものですが、通常は面方向にしか熱伝導が良くなく、厚み方向は熱伝導率が10 Wm-1K-1もなく悪かったそうです。

「積層させて厚み方向に切れば、熱伝導率のいい素材が作れるのではないかというアイデアは元々あったようですが、積層や切断の技術がなくてなかなかできなかったものです。

積層技術のノウハウがありましたので、黒鉛シートを積層させ、直方体にしたものを垂直方向に切断し、薄い黒鉛シートにしたのです。接着剤などの選択など、固形シートは接着しにくい部材です。貼り付ける技術自体はそう難しくはありませんでした。どう接着して積層するかという技術は特許を取得しています」

開発当初は100 Wm-1K-1以下だったそうですが、その後、同社が持っていた積層技術を応用して研究開発を進めたところ、どんどん熱伝導率が上がっていったと言います。縦方向10 Wm-1K-1以下の部材を最終的に800 Wm-1K-1に、平面方向300 Wm-1K-1にすることができたそうです。



薄い黒鉛シートを積層してこのような立方体にし、垂直方向にスライスして縦方向の熱伝導率を高めたと言います。上の真ん中は従来の銅製の熱伝導部材。
薄い黒鉛シートを積層してこのような立方体にし、垂直方向にスライスして縦方向の熱伝導率を高めたと言います。上の真ん中は従来の銅製の熱伝導部材。


この熱伝導シート、耐熱温度は180℃、難燃性はV-0相当。50mm角で厚さは0.5mmから1mm、立方体の場合は100mm角で高さ最大100mmまでの直方体などシートから立方体形状まで対応可能だそうです。

「黒鉛シートを積層していますが、その間には空隙があるスポンジ構造なので柔らかさも実現し、密着性が上がり、熱伝導のロスを下げることができました。

また、銅に比べると1/7という軽さも特徴ですし、固形シートと加工賃だけなのでコストも低く抑えることができます。半導体の熱処理が課題になっているCASE時代ですが、併催されているオートモーティブワールドのほうから自動車メーカーさんなどが見に来ていただき、大きな反響に驚いています」

同社は、半導体の熱対策にこの新たな部材で新規事業を立ち上げたそうです。現在、黒鉛だけではなく、アルミニウムや銅などの材質で同じような熱伝導シートの開発を進めていると言います。



株式会社昭和丸筒 上席理事 商品企画室長 香川勝彦氏。
株式会社昭和丸筒 上席理事 商品企画室長 香川勝彦氏。


古くて新しい?高精度な微細加工を実現するブラスト技術

新東工業株式会社(愛知県名古屋市守山区)は、鋳造技術、表面処理技術などが特徴の企業です。インターネプコンジャパンに出展していたのは、直圧式マイクロブラスト法という10~70μmの微細な投射材(研磨材、砥粒)を圧縮エアーを使って高速で対象加工物に噴射し、高精度な微細加工を実現する技術です。

説明してくださった和泉陽助(いずみ・ようすけ)サーフェステックカンパニー開発グループ企画開発チーム技術員によれば、ブラストというのは昔からある技術ですが、同社には特許を取得したような独自技術があると言います。

「昔からある技術ですが、近年では技術的に進化してきています。極小の球体を高圧で直接、ワークにぶつけるもので、微細な穴を開けることができますが、さらに金属の表面を硬化させることができます」(和泉氏、以下同)

投射材は十数μmの大きさで、対象物に50μmほどの穴を開けることができるそうです。クラックやバリなどを生じさせずに穴の開口部や表面をきれいに加工でき、加工変質が極めて少ない微細加工が可能になると言います。


同社の直圧式マイクロブラスター。レーザー加工より精密で高精度な加工、複数種類の形状加工が可能だと言います。
同社の直圧式マイクロブラスター。レーザー加工より精密で高精度な加工、複数種類の形状加工が可能だと言います。


「ぶつける球体は研磨剤になりますが、素材はセラミックが多いです。対象物は、ガラス、セラミックス、化合物半導体、シリコン、窒化アルミ、金属材料などとなります。

ブラストという技術には、エアーと一緒に投射材を高速で吹き込む方式と投射材が入っているタンクそのものに圧力をかけて噴射する方式があります。弊社の場合は後者の技術で、投射材の量をコントロールすることが難しいですが、定量供給装置は特許を取得しています。

投射材はセラミックスなので粉体爆発などの危険性はあまりありませんが、念のために除電機をつけるなどしています」

ブラスト技術は、化学物質などを使わないドライ方式で環境負荷も低く、加工変質が発生しにくく加工レートも高いため、イニシャルコストを低く抑えられるそうです。

「基本的に投射材のほうが対象物より硬度の高いものを使います。50μmの穴の間隔は1:1か、形状によって異なりますが、もう少し間隔を開けなければレジストの強度がもたなくなる危険性があります」

最小加工寸法は、ライン溝幅で20μm、ドット穴とピン立てで30μmだそうで、表面処理ではミニマムRa0.01μmの平滑研磨や鏡面加工からRa35μmまでの梨地仕上げや面粗土調整までが可能と言います。

「シリコンウェハといった半導体の基板への用途が多くなります。お客様により、穴の仕様は実装の用途によって異なってきます。直圧式マイクロブラスターは、非熱加工ですから表面の溶融ダレなどを起こすことなく、小さくて深く真っ直ぐな穴や溝の加工ができます。また、レーザーでは難しい鋭角などの複雑な形状を精細なエッジで加工することも可能になります」


同社のブースでは、微細で深く真っ直ぐな穴を開けられる技術を展示していました。
同社のブースでは、微細で深く真っ直ぐな穴を開けられる技術を展示していました。


ブラストによる加工では、さらに噴射加工のショットピーニング(Shot Peening)法という技術もあるそうです。小さな粒子を金属材料に衝突させることによって金属材料を強くすると言います。

 ショットピーニングの原理は1920年代に考え出されたものです。ちょうど刀鍛冶が刀身を叩いて鍛えるように、ブラストによって投射材が金属表面を強く叩くことで塑性変形させ、梨地処理することで表面にくっつけ合う力(圧縮残留応力)を与え、耐摩耗性や疲労強度を向上させるという現象を利用しています。

ショットピーニングは、加工が簡単で大気中で行うことができ、有害物質の発生がほとんどないことがメリットだそうです。

「投射材が金属に衝突すると表面に丸い窪みを作り出します。各種金属部品や溶接部の硬度を高くし、疲労強度の向上をさせることができます。
歯車などに適用する前に板材でテストしてみますが、微細なショットピーニングも可能で、部品の長寿命化や品質の安定化などが期待できます」

ブラストという古くて新しい技術を出展していた同社ですが、バリ取りから表面効果処理まで、幅広い応用が可能なようです。自動車はもちろん航空機や船舶などの製造、半導体や精密部品での活用など、素材と技術開発で伸びしろがあるように感じました。


新東工業株式会社 サーフェステックカンパニー開発グループ企画開発チーム技術員 和泉陽助氏。
新東工業株式会社 サーフェステックカンパニー開発グループ企画開発チーム技術員 和泉陽助氏。


臨時の受付が出るほどで、海外からも含めて来場者の多く、あちらこちらの小間で商談している様子が印象的だったネプコンジャパンですが、オートモーティブワールドとの併催の影響もあるでしょう。そのため、CASE時代の到来による電動化・電子化に関するソリューションがネプコンジャパンにも多く、エレクトロニクス業界も自動車業界の動向にかなり影響されているようでした。

5G、IoT、CTI、ドローン関係の出展も多く、工場ラインのスマート技術を提供する企業も目立ちました。

オートモーティブワールドとの併催が続く以上、クルマの電動化・電子化を見すえた出展傾向は今後さらに強くなっていくと考えられ、国内メーカーも周辺技術だけではない要素技術のイノベーションに迫られていきます。
ネプコンジャパンのような展示会は、こうした動向を占うためにもますます重要になっていくと思いました。



文/石田雅彦


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