【CES2020】ラスベガス現地レポート

毎年1月にアメリカのネバダ州ラスベガスで開催されるコンシューマーエレクトロニクスショー、通称 CES は、デジタルテクノロジーをメインとしたハードウェアやテクノロジーなど分野をまたいだ国際的な展示会であり、自動車業界にとっても重要なショーのひとつになっています。

特にここ数年は、CASEを実現するための最先端の要素技術のショーケースとなっていたこともあり、次世代のモビリティをうらなう展示会として、そのユニークさが広く知られることになりました。

その流れを受けて今回のCESでは、このところ続いていた技術そのもののアピールから、技術を製品に、あるいは社会にどのように実装していくか、それによってどのような課題を解決するのか、といった取り組みが随所に見られました。

その最たるものが、トヨタが発表したスマートシティ実験都市「ウーブンシティ」です。モビリティを含めた都市の課題解決をいち早く実証する場として姿を現しました。豊田章男社長みずからプレスカンファレンスに登壇して、その構想を熱っぽく語り、会場に詰めかけた世界中のメディアの間でも大きな話題になっていました。

そして自動運転に関しても注目すべき動きがありました。レベル3を前に足踏みしているかのように見えたパーソナルカーの自動運転は、レベル2プラスという新しい概念が登場し、業界の共通認識となったようです。具体的なゴールが見えたことで、レベル2プラスに対してどのように貢献できるのかという観点での各サプライヤーのアピールが見られました。

そして電動化に関しては、完成車を展示するメーカーが見られた一方、フランスの大手部品メーカーのヴァレオは同社の電動パワートレーンを利用した新しいモビリティを展示しました。

それではこれらの項目について詳しく見ていきましょう。


【New!】新サービスのご紹介

▽おすすめ関連記事

メーカーも消費者もうれしい!新しい概念、「レベル2プラス」とは

まず取り上げるのは自動運転の動向です。今回の CES においては、昨年来からサプライヤーの間で言及されていたレベル2プラスという概念の認知が広がり、CES の会場では、半ば自動車業界の共通認識となっていました。

なぜレベル2プラスという概念が受け入れられたのかというと、レベル3へのハードルが高かったからにほかなりません。

限定された条件下ではあるものの、システム(=クルマ)側が責任をもって運転を遂行しなければならず、そして困難な状況に陥った際には、速やかに人間側に難しいタスクを確実に引き渡さねばならないためです。特に、クルマ側に責任が発生しうるというリスクをどのように担保すればいいのかという課題は、答えがないとも言えるほど困難な課題です。

そこで提起されたのが、運転の責任はドライバーにもたせつつ、自動運転のアシスト範囲を大きく広げたレベル2プラスです。言い換えると、責任の所在は従来のレベル2と同じながら、車両の能力としてはレベル3に近い自動運転機能を提供するものです。

このように課題が整理されれば、OEM やサプライヤーは商品化への筋道を具体的にイメージできるようになり、また消費者にとってもより便利な機能を利用できるようになるため、現時点では双方にとって納得しやすい妥結点と言えるでしょう。


ハンズオフ+ドライバーモニタリング

ドライバー側に責任を持たせることで課題を整理したレベル2プラスですが、ドライバーに責任があるということは、つまり注意義務があるということです。

これは現状のレベル2でも同じことで、ステアリングを握ることで注意義務を果たしているとみなしているわけです。しかしレベル2プラスでは、いわゆるハンズ・オフ(両手をステアリングから離した状態)を許容するようになっています。

ドライバーの注意義務は、ステアリングを握っているかどうかではなく、ドライバーモニタリングシステムによって、ドライバーが運転に注意を向けているかどうかを検知することで担保しています。よって、よそ見や居眠りなどをドライバーモニタリングシステムが検知した場合は、注意義務が果たされていないと判断し、自動運転を中止することになります。


センサー構成は三眼カメラ+ミリ波レーダーが主流

レベル2プラスに用いられるセンサーは、車外において、多くは従来と同じカメラセンサーとミリ波レーダーの組み合わせになると思われます。そして高級車の場合は、さらにLIDARが追加され、より幅広い状況で自動運転が可能な性能を提供することになるでしょう。

ゆえに、ひとくちにレベル2プラスといっても、機能的にはレベル2に近いものから、レベル3に近いものまで、価格帯によってさまざまです。


レベル2プラスの主役

レベル2プラスにおいて重要な役割を果たす画像解析用のSOC(セキュリティーオペレーションセンター)で70%以上のシェアを保持しているとアピールするのは、インテル傘下のモービルアイです。 日本国内においてもレベル2プラスに相当する機能を提供するBMWの「ハンズ・オフ・アシスト」や日産の「プロパイロット2.0」は、モービルアイの現行SOCであるEyeQ4を使っています。

モービルアイのSOCはZFやコンチネンタルといったティア1に提供され、カメラモジュールと組み合わせてOEMに収められています。レベル2プラスを実現するEyeQ4は、広角・標準・望遠の3つのレンズを搭載した3眼カメラと組み合わされ、複雑な状況を認知できることが特徴です。

カメラセンサーはこれまで単眼カメラあるいはステレオカメラが使われてきていましたが、レベル2プラスにおいてはモービルアイのEyeQ4と3眼カメラの組み合わせが多くなりそうです。


レベル2プラスについて説明するモービルアイ社President and CEO Amnon Shashua教授
レベル2プラスについて説明するモービルアイ社President and CEO Amnon Shashua教授


LIDARに代わるカメラセンサー

またモービルアイはVIDARというコンセプトを発表しました。これは、Visual Lidarという概念で、複数の画角のカメラセンサーから取得した映像によって、視差を利用した立体映像を生成し、そこからLIDARの点群データのようなアウトプットを可能にするソリューションです。

LIDARとは、対象物の検出と距離測定を高い精度で検知可能なセンサーです。高度な自動運転には必須のセンサーだと言われていますが、非常に高価な部品であるため、高級車においてもまだあまり普及が進んでいません。すでに量産が始まっているのはヴァレオのソリッドステートLIDAR「SCARA」のみです。

VIDARは、悪天候時や夜間など、特定の条件下ではLIDARには敵いませんが、その分単価や車両実装コストを抑えながら、冗長性の高い制御が可能になります。



複数のカメラセンサーから取得した情報で生成されたVIDARのアウトプット
複数のカメラセンサーから取得した情報で生成されたVIDARのアウトプット


シーズを生み出すウーブンシティ

パーソナルカーは当面のゴールとしてレベル2プラスが共有された一方、限定されたエリアを低速で走る自動運転シャトルは、レベル4の自動運転を前提に、社会の実証が進んでいます。

日本や世界各地で実証実験が行われているほか、7月の東京オリンピック・パラリンピックでは、eパレットが実際に会場周辺のエリアを走行することが予定されています。

そしてCESにおいては、トヨタはその動きをさらに加速させるべく、クローズドなスマートシティである「ウーブンシティ」のコンセプトを発表しました。ウーブンシティはスマートシティの実験場でありながら、実際に2,000人余りの人がそこで生活をし、スマートシティで解決されるべき社会課題に対して、クローズドならではのテンポの速さでPDCAを回し、ビジネスのシーズをいちはやく掴むことを目的にしています。


無人MaaSが実現させた小型宅配ロボット

スマートなモビリティという点では、フランスの大手ティア1であるヴァレオが発表した無人の小型宅配ロボット「eDeliver4U」はぜひ取り上げたい一台です。

中国で有名なO2O(Online to Offline)企業である美団点評と提携し、製作されたこの宅配ロボットは、CESのヴァレオ特設会場でデモ走行を見せてくれました。

ロボットには、フードが入るほどの小型のロッカーが十数個備え付けられてあり、利用者がロボットに近づき、スマートフォンをかざすと、注文したフードが入ったロッカーの扉があくという仕組みです。

この宅配ロボットは、ヴァレオからフォルクスワーゲン「ゴルフ8」などにも提供されている48V eAxleを動力として走行します。走行速度はおよそ20キロであるため、48Vでも充分であること、また大量生産品なので信頼性が高く、かつコストを抑えられることが特徴です。

またもうひとつ48Vのメリットがあります。60V以下の低電圧であるということです。電圧が60Vを超えると、人体に影響がある高電圧とみなされ、定められた保護等級の規定を満たすことが必要になりますが、48Vであれば一般的な12Vと同等の実装となるため、コストが抑えられるという点です。


ヴァレオのモーター「48V eAxle」
ヴァレオのモーター「48V eAxle」



宅配ロボットの自動運転用のセンサーについても、同社が提供する乗用車向けの大量生産品を利用しており、高信頼性・低コストを両立しているそうです。

宅配ロボットはこのほかにも多くの企業が開発を手掛けていますが、ヴァレオの今回の提案は、必要な性能と高い信頼性、低コストを実現した合理的な設計であり、宅配ロボットの今後のデファクトとなりうると感じました。

ヴァレオと美団点評は、この宅配ロボットを北京の公道で走らせる実証実験を2020年に計画しています。無人かつ低速で走るため、公道での実証実験がやりやすいという点もメリットです。


無人の小型宅配ロボット「eDeliver4U」
無人の小型宅配ロボット「eDeliver4U」


文/佐藤耕一

 

【New!】新サービスのご紹介

▽おすすめ関連記事

こちらの記事もおすすめ(PR)