3Dプリンター開発状況と3Dプリントのメリットを最大限に生かすための考え方「DFAM」とは?

INTERVIEW

3D Printing Corporation
最高技術責任者
工学博士 古賀 洋一郎

金属3Dプリンターやコンポジット3Dプリンターは、プラスチック3Dプリンターとは異なり、廉価版が出始めているとはいえ、まだまだ高価で、「誰もが手が届く」とは言いがたいものです。とはいえ、金属やカーボン複合材などで3Dプリントできることは、メーカーにとっては難題に活路を見いだすツールとなり得ます。

現在、3Dプリントを受託する企業は数多く存在します。その多くが3Dデータを受け取って造形物を代理で製作する企業です。3D Printing Corporationはそのような3Dの受託造形を行いながら、その前段階である3Dプリンター用の設計支援、後段階である後加工や品質保証、さらに量産化の支援も提供しています。試作から量産までの総合的なコンサルティングを行っていることが特色です。

同社は特に、金属3Dプリンターやカーボン複合材3Dプリンターの対応を強みとしています。今回は、3D Printing Corporationの最高技術責任者で工学博士の古賀洋一郎(こが・よういちろう)氏に、同社のコンサルティングにおいて重要なDFAMや、金属3Dプリンターやカーボン複合材3Dプリンターに関して、基礎的な技術情報や活用、課題点などをお伺いしました。


3D Printing Corporationがカーボン複合材3Dプリンターで製造したサンプル
3D Printing Corporationがカーボン複合材3Dプリンターで製造したサンプル


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低価格で高性能の先進3Dプリンターを利用

3D Printing Corporationの最高技術責任者で工学博士の古賀洋一郎氏
3D Printing Corporationの最高技術責任者で工学博士の古賀洋一郎氏


3D Printing Corporationが主力としている3Dプリンターブランドの一つが、米国Markforged社です。Markforgedは、金属3Dプリンターとカーボン複合材3Dプリンターの2種類の3Dプリンターを販売しています。同社の製品は、他のメーカーが出している機種よりも低価格で、さらにランニングコストも抑えられることをアピールしています。

Markforgedは2013年創業のかなり若い企業です。「Markforgedは、(企業価値が)この5年ほどで100倍くらい成長している会社なんですよ」(古賀氏)。

同社の連続繊維CFRP3Dプリンターがコストダウンできている背景には、連続繊維CFRPの切断機構を簡素化し、材料特性を活かして精密な温度管理を不要としたことがあります。徹底した開発期間の圧縮も大きい。この思想は下記の金属3Dプリンターにも引き継がれています。

金属3Dプリンターの「METAL X」が採用している手法は、「ADAM(Atomic Diffusion Additive Manufacturing/原子拡散積層造形法)」という手法です。これはプラスチック3Dプリンターで一般的なFDM(Fused Deposition Modeling/熱溶解積層法)とよく似た方式です。

ADAMは金属3Dプリンターの手法で代表的な、金属の粉体をレーザビームや電子ビームを用いて溶解・固化させて造形する手法と大きく異なっており、細い糸状の金属フィラメントを少しずつ溶かしながら積層造形していきます。その方式はFDMの積層方法とよく似ています。金属フィラメントにはバインダー(接合剤)が混ざっていて、造形中の焼結過程でバインダーが取り除かれる仕組みになっています。

Markforgedが販売するカーボン複合材プリンターは、FDM方式が採用されています。「現在市場に出回るカーボン複合材プリンターはFDM方式が採用されているものが多いですが、材料を硬化させるための方式がさまざまです」と古賀氏は言います。

Markforgedの繊維強化複合材3Dプリンター「MARK TWO」は、FDMではオーソドックスな熱で温める方式で、フィラメントをプリンターヘッドに送り込む装置、エクストルーダの中でカットしたカーボン長繊維素材(実際はFRP)と、樹脂のフィラメント材料を混ぜ合わせて溶かし、積層します。MARK TWOのエクストルーダの上部には、カーボンをカットする機構が備わっています。このカーボン長繊維が扱えることが利点ということです。

「生のカーボン長繊維はカットするのが困難で、うまく切るために機構が大掛かりになりがちでした。MARK TWOはカーボン長繊維を樹脂に含ませてFRPの生材料にすることで簡単に折れるようになっています。カッターのような機構で素材の局所に負荷を掛けて折ることでカットします」(古賀氏)。この機構はコンパクトかつシンプルで、造形スピードは樹脂のFDM 3Dプリンターと同等ということです。

「アルミ合金並みの軽さ、強度をもつ一方、カーボン繊維を含有できる量(繊維含有率)について、他の複合材3Dプリンターの手法と比較して限度がありそれ以上強い材料を出力することは出来ません。繊維含有率が高すぎてしまうと、材料が経路を通りにくくなる、折りづらくなるなど問題が出てくるためです」(古賀氏)。

ただ装置の仕組みは、FDMの応用であり、実はそれほど高度ではないとのことで「造形材料とソフトウェアの技術が肝」(古賀氏)ということです。



カーボン複合材3Dプリンターの利点は?

カーボン複合材の3Dプリンティング
カーボン複合材の3Dプリンティング


古賀氏は、MarkforgedのMARK TWOが、そもそも従来のカーボン複合材の成形手法と大きく異なる点について述べました。

「従来のカーボン複合材成形は、金属よりも軽くて強いものが作れることをうたっていて、その代わりコストは高くなるものでした。ターゲットはロケットや航空宇宙系の部品や、高級車の車両部品です。MARK TWOが、従来のカーボン複合材造形機と大きく違うところは、プラスチックよりも強くて、金属に匹敵する比強度(=強度/密度)なのに、金属よりもコストが安いところ。つまり、航空宇宙関連だけではなく、とにかく『プラスチック以上、金属未満』のところをあえて狙っているんです」(古賀氏)。その結果、Markforgedがカーボン 複合材の市場そのものを大きく拡張したということです。

つまり、カーボン複合材成形機と金属3Dプリンターのはざまで新しい領域を開拓したのがMarkforgedであり、そこの市場が思いのほか大きかったということだと言えそうです。主要な特許をおさえているので、「少なくとも、この5年、10年くらいは他社が入り込めないでしょう」と古賀氏は言います。

「金属のようにき裂進展しないため、金属と比べて表面粗さはそれほど問われません。MARK TWOの場合はFRPを使っているので、熱収縮率が小さく、変形がしづらいことも利点です」(古賀氏)。一方、プラスチックや金属3Dプリンターは加熱時の残留応力により造形物が変形しやすくなります。

それぞれの特徴をまとめると、以下のようになります。

●金属3Dプリンターは、非常に高い耐熱性、耐摩耗性、強さが求められる部品を作りたいときに向いている。造形物に変形が起こりやすい。
●従来のカーボン複合材成形機は、コストをかけてでも、部品を金属より硬く、かつ軽くしたいときに向いている。
●MARK TWOは、金属に匹敵するほどの強さの部品を安価に作りたいときに向いている。造形物の耐熱性は金属よりは劣り、硬さは従来のカーボン複合材成形機に劣る。


3Dプリントのメリットを最大限に生かすためのDFAMとは

最近の3Dプリンターの話題の中では、しばしば「DFAM(ディーファム)」という言葉が登場するようになりました。DFAM (DfAM)というのは、「Design for Additive Manufacturing」の略称です。「3Dプリントのメリットを最大限に生かすための考え方」と古賀氏は説明します。金属3Dプリンターやカーボン複合材3Dプリンターをいかすためにも大切な考え方でもあります。同社では、DFAMにいくつかポイントがあると説明しています。

1つは、従来手法で作られた複数の部品で設計した製品を、1~数点の部品で構成できることが挙げられます。例えば、接合面をなくすことで強度を高めたり、組み立て性を向上させたりすることが可能です。

もう1つが、ラティス(格子)構造の活用です。部品内部に格子状の空洞を設ける構造のことで、軽量化などの目的で選択されます。まさに3Dプリントではないとできない形状であり、特に金属3Dプリントの部品では多用されています。

さらにDFAMのための手法としていま、注目されているのが、トポロジー最適化とジェネレーティブデザインです。いずれもユーザーが指定した荷重などのパラメーターに基づき、最適な形状を生成する手法です。人が考えるよりも、有機的で複雑な形状を提案することが特徴です。ただしこの両者には違いがあり、雑な言い方ですが、トポロジー最適化は元になった3Dモデルから肉を削ぎ落していくような手法で、ジェネレ―ティブデザインは何もない空間から形状を生成する手法です。

その他、DFAMにおいては、穴類をひし形など、傾斜になった形状にすることでサポート部の生成を減らす、積層方向に応じた強度設計にするなど、モデリングの秘訣もあります。

DFAMは日本において、まだあまり浸透していない概念ということもあり、3D Printing CorporationでもDFAM支援や設計代行を行っています。

なお日本では、3Dプリンター関連技術の標準化への動きが、欧米・欧州と比較して大幅に遅れているといわれます。古賀氏は、そんな状況を打開すべく、日本国内における3Dプリンターの設計標準化プロジェクトにも取り組んでいるということです。



文/小林由美


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