『SEMICON JAPAN 2019』注目企業レポート

SEMICON JAPAN2019は、毎年開催されている半導体関係の国際展示会です。半導体製造の前工程から後工程まで全工程、自動車産業、エレクトロニクス産業などの製造サプライチェーンのための展示会として約700社が出展し、多くの来場者が熱心に会場を回っていました。

会場は前工程ゾーン、後工程・総合ゾーン、部品・材料ゾーン、SMART Applicationsゾーンに分かれていましたが、今回の記事では出展社の中から特徴的な出展をしていた2社を選び、紹介しましょう。

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異物混入・RCF規制対策にもなるクリーンな近赤外線加熱ユニット

理化学用のガラス加工を主な事業として創業したヒメジ理化株式会社(兵庫県姫路市)は、現在、各種照明用バルブの生産、液晶・半導体・デジタル家電、太陽光発電・環境・医療の分野などで幅広く利用される石英製品、そして真空紫外線から遠赤外線までをカバーする産業用ランプやヒーター、それらを組み合わせたさまざまなオリジナル装置の開発から設計・製造をしている企業です。

説明してくださった清水一男(しみず・かずお)製造4部製造4課担当営業課長によれば、半導体の前工程で使われるチャンバーなどの設計治具を設計加工し、それ以外に紫外線ランプやヒーター、それらを用いたオリジナル装置などを作っているそうです。

「加熱炉などの実験装置に使われる石英は、耐熱性・耐薬品性に優れ、絶縁性もあり、パーティクルなどの異物が発生しづらいというクリーン度も高い素材です。今回、弊社が出展しているのは、石英管とハロゲンヒーターを使った小型の実験装置になります」(清水氏、以下同)

実験ではパーティクルやコンタミなどの異物混入の問題もあり、リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)規制対策が必要となる中、クリーンに加熱できる装置ができないか、というお客様からの要望で開発した試作品だそうです。今回、同社が出展している装置にも石英が使われていますが、石英管は真空中、不活性ガス、大気など、実験の内容に応じて使うことが可能な重要な技術素材です。

「Ω型加熱ユニットと呼んでいる今回の装置は、石英管の中の材料を加熱するために熱源にニクロム線を使うのではなく、石英を透過する近赤外線の波長、つまり光による加熱方法を使っています。

200v×1,500wのヒーターを12本使い、熱損失の少ない18Kwの加熱を可能にし、筐体の内側に金メッキを施し、水冷構造になっています。また、直径100mmを超えるような石英管も使用可能です。

石英管の中に入れる吸収体である加熱対象材料としては、化合物系の半導体材料、シリコンウエハーがメインになってきますが、グラファイト系カーボンなどの材料にも使えると考えています。特に、半導体の製造では、石英管の中の材料を最も効果的に加熱するのが0.72ミクロンから1.5ミクロンまでの近赤外線といわれています」



石英管をハロゲンヒーターで加熱する実験装置。多種多様な材料を熱源の吸収体として加熱できるものになっています。
石英管をハロゲンヒーターで加熱する実験装置。多種多様な材料を熱源の吸収体として加熱できるものになっています。



半導体の結晶薄膜などを生成する実験装置に石英管は多く使われています。しかし、その加熱の方法には改良の余地があったそうです。

「これまでは石英を透過しない5ミクロン程度の中間赤外線の波長の光を当てていたため、石英管自体が熱せられてその熱で中のガスが加熱され、吸収体が過熱されていました。しかし、今回の装置では石英が吸収しない1ミクロンという近赤外線の光を透過させ、中の材料を直接、加熱しているというのが特徴になっています。

ハロゲンヒーターの発熱材は2,000度以上になり、2,700度くらいまで上がりますが、そこから徐々に温度を下げていくことで吸収体を選ぶことができます。また、1ミクロンという近赤外線は、シリコンなどの材料も吸収しやすい波長であり、それもあって加熱速度が速くなっています」

導体に電流を流した際に発生する熱(ジュール熱)により熱放射を行うハロゲンヒーターの温度調節は難しいそうですが、色温度から波長を導き出すことができると言います。

「波長を石英管の中の吸収体に合わせていけば、あとは単位面積当たりの加熱によって吸収体の温度の上昇が変わってきます。今回、出展しているものは、石英管の吸収体を随意に加熱することができるという装置になっています」

ハロゲンヒーターは、非接触加熱のため、雰囲気や加熱対象を汚染せず、クリーンな加熱が可能です。また、発熱線にタングステンを使っているため、起動と同時に照射が開始され、昇温到達まで1〜2秒という素早いオンオフの制御ができ、さらに投入電力の約86%を赤外線に変換できる高効率、ハロゲンサイクル寿命の末期まで安定した加熱ができるといった特徴があります。

同社は今後、半導体メーカーなどに対して今回の装置を1つの方法として提案していくと言います。お客様が加熱したい吸収体ごとにテストを繰り返し、ハロゲンヒーターによる昇温速度、どの温度帯で温度をキープするのがいいのかを検証していくそうです。


ヒメジ理化株式会社 製造4部製造4課担当営業課長 清水一男氏。これからもクリーン環境での加熱実験装置の開発に取り組んでいくと言います。
ヒメジ理化株式会社 製造4部製造4課担当営業課長 清水一男氏。これからもクリーン環境での加熱実験装置の開発に取り組んでいくと言います。



半導体業界の生産性向上に寄与する真空ベローズ・ゲートバルブ

入江工研株式会社(東京都千代田区)は、主に真空ベローズ(Bellows)の製造販売をしている企業です。ベローズは、いわゆる蛇腹で、アコーディオン、フイゴ、アナログカメラなどに見られる伸縮する部分です。ディスプレイや半導体基板などを製造する際、各種工程は真空環境に置かれます。真空には熱、ガス、プラズマなどが負荷されることがあり、こうした工程環境に応じた部品が必要になることが多いのです。

説明してくださった髙橋良平(たかはし・りょうへい)営業部営業グループ主査によれば、真空に引く技術でのベローズは金属伸縮管といい、金属で作った筒状のものにヒダを付け、伸縮性、機密性、バネ性をもたせたものだそうです。

「真空ベローズは、真空を保持し、真空度の高い状態にするために必要な部品になります。半導体などの生産にとって成膜をしやすくし、歩留まりを高くするために重要な装置部品です。

真空に引く装置の場合、装置の交換などのために大気開放すると再び真空に引くために手間と時間がかかり、その間、生産が止まってしまいます。大気開放することを極力、避けることが重要になってきます。

製造用途ですと、真空槽の中でロボットアームが動いたり搬送用レールなどで部品を移動したりする際に伸縮する動きになり、その連結する部分に真空を保持しつつ伸縮するベローズを使います」(髙橋氏、以下同)


真空ベローズの例。円形や長円形など、多様な形があります。
真空ベローズの例。円形や長円形など、多様な形があります。


金属伸縮管としてのベローズには大きく、薄い金属の輪の内径と外径を相互に溶接し伸縮性のあるヒダ状の管にする溶接ベローズ、薄い金属の管に圧力をかけヒダ状の蛇腹に成型する成型ベローズがあるそうです。溶接ベローズは伸縮性の大きいもののコストは高くなり、成型ベローズは伸縮性に劣るもののコストを低く抑えられます。

「溶接ベローズの場合、薄い金属の板を何枚もくり抜いてワッシャーという輪にし、それを一枚一枚、レーザー溶接しています。溶接の方法はいろいろありますが、単純にいえば内径と外径をジグザグに溶接し、溶接か所を基点にして金属板が曲がることで伸縮します。

溶接ベローズの特徴としては、真空中で嫌われる擦動(しゅうどう)部分がないことです。シリンダーなどの場合、どうしても擦れて破片などのパーティクルが発生してしまいますが、伸縮性のあるベローズの場合、擦れる動作がないのでパーティクルの発生をほとんどなくすことができます」

同社は、業界で最も早くから金属ベローズを作っている企業の1つだそうです。半導体やディスプレイなど、真空中での作業が必要な産業が増えてきたことで同社の技術が発展してきたと言います。

「真空を使った製造業ではいろいろな問題が出てきて、それを解決していくためにはどうするか、弊社のほうでリサーチして研究開発を続けてきたというわけです。溶接ベローズの場合、溶接部分に不良が発生するとそこから真空にリーク(漏れ)が発生してしまいますから、そうしたことがないように仕上げていくのが難しいところです」



金属の蛇腹になっている溶接ベローズ。ドーナツ状のワッシャーを重ね、ジグザグにレーザー溶接する方法が多いそうです。
金属の蛇腹になっている溶接ベローズ。ドーナツ状のワッシャーを重ね、ジグザグにレーザー溶接する方法が多いそうです。


こうしたベローズでは、ワッシャーをくり抜く規格の型があるので、それに応じたサイズになるそうです。また、装置内の一定の物理的空間に、できるだけ長く伸縮できるベローズが求められていると言います。

「例えば、成膜装置の規格はある程度、決まっていますから、そこに取り付けるベローズということでいえば、ほとんどはワッシャーの規格内でまかなえます。ワッシャーの形も円形、楕円形、陸上のトラックのような長円形、矩形などの特殊形状などがあります。ただ、ベローズには、材質、ワッシャーの数、直径の大小、長いもの、短いもの、断面の形など、お客様の使用用途によって多種多様なものがあります」(髙橋氏)

ワッシャーの数と伸縮のスパンは、ベローズの大きさによっても変わってくるそうです。ワッシャーの内径と外径の幅や材質、ワッシャーの数などと溶接の関係では、同じようなベローズ製品を作っている各社が設計の基準や考え方を持っていると言います。

「面間(めんかん)という装置の奥行きなどの制限がある中で、例えば100mmの距離に入れるのに200mm伸びるベローズが欲しいといったように、求められる伸縮の長さなどリクエストも多いのですが、弊社の場合、これまで蓄積したノウハウから、面間に応じたベローズはもちろん、使われる環境によって例えば耐腐食性の強い材質を選ぶなど、ベストのベローズをご提案しています」

製造装置内を真空にするため、真空と真空、真空と大気を隔離したり、圧力を調整することのできるゲートバブルという仕切り弁、真空バルブが必要になります。今回、同社が初めて出展している真空ゲートバルブは、ベローズと組み合わせた特許取得済みの製品だそうです。

「真空ゲートバルブには、真空を保つための弁板用のOリングが付けられています。Oリングはニトリルゴムなどのゴム製ですが、プロセスを繰り返すうちにどうしても劣化してしまいます。そのため、Oリングのシールを保持するために定期的にメンテナンスをして交換する必要があり、例えばCVD(化学蒸着法)や腐食性のガスを使うエッチング装置などのOリングの劣化も早いのです」


同社が今回、初めて出展した真空ゲートバルブ。半導体などの真空状態の製造装置に使うと言います。プロセスチャンバー側のOリングの交換は装置を大気開放せずにできる機構になっているそうです。
同社が今回、初めて出展した真空ゲートバルブ。半導体などの真空状態の製造装置に使うと言います。プロセスチャンバー側のOリングの交換は装置を大気開放せずにできる機構になっているそうです。


しかし、Oリングの交換するためには、真空であった製造装置内を大気状態にしなければならず、メンテナンス時と再び真空状態に戻すまでの間、半日くらい生産を止めなければなりません。同社は、Oリングの弁板を2分割することで解決したそうです。

「これは、いくつかチャンバーがあるクラスター型の半導体製造装置用に開発したシール方向切り替えゲートバルブという製品になります。弁板の両側にOリングを付けているため、プロセスチャンバー、トランスファーチャンバーの両側どちらからもシールできる2分割の構造になっています。

こうした構造により、稼働時やメンテナンス時にトランスファーチャンバー側の真空を保持したまま、プロセスチャンバー側の弁板を取り外してOリングを交換することができるようになっています。そのことで装置内の真空環境を大気開放せず、生産を継続できるようになりました」

さらに、既存の製造装置に適合した規格になっているため、両方向にシール機構があることで装置をコンパクトにできるそうです。また、擦動部分がないため、パーティクルの発生を最小限に抑え、弊社のベローズを採用することで長寿命を実現していると言います。


入江工研株式会社 営業部営業グループ主査 髙橋良平氏。同社は創業以来50年、金属ベローズなどの製造販売に携わってきたと言います。
入江工研株式会社 営業部営業グループ主査 髙橋良平氏。同社は創業以来50年、金属ベローズなどの製造販売に携わってきたと言います。


以上、SEMICON JAPAN2019での、石英管の実験装置と真空状態での生産性向上という半導体の研究開発や製造に欠かせない2つの出展社を紹介しました。エレクトロニクスデバイス製造に関連する出展、製造設計、ウエハー製造、プロエスなどの前工程に関する出展も多く、化合物半導体などの材料のサプライヤーの出展にも来場者が多く足を止めていたのが目を引いた展示会になっていました。

文/石田雅彦

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