耐食性・加工性・コストに注目。めっき鋼板の種類と選定のポイント

身の回りの住宅、自動車、橋など、様々な場面でめっき鋼板が利用されています。こういった場面では、腐食環境にも耐えられる高い耐食性や、複雑な形状を実現できる加工性、外観を損なわないようにするための意匠性などが求められ、それを満たすものとしてめっき鋼板は進化してきました。
めっき鋼板のどのような種類や特徴があり、どのようにして適切なものを選べば良いのでしょうか。この記事では、めっき鋼板の基礎知識やめっき鋼板の具体例を解説します。


めっき鋼板とは

めっき鋼板は、鋼板の表面にめっき加工を施し、耐食性を高めたもので、耐食性に加えて、加工性、塗装性、意匠性なども有しています。めっき鋼板はその特性を活かして、建物の屋根や外壁、内装、自動車部品などに利用されています。

めっき鋼板の種類

めっき鋼板は、めっき加工方法やめっき材料などで分類されており、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛-アルミニウム合金めっき鋼板などの種類があります。「溶融」や「電気」はめっき加工方法のことで、「亜鉛」、「亜鉛-アルミニウム合金」はめっき材料を指しています。多種多様なめっき鋼板の中でも、亜鉛系の溶融めっきは様々なところで利用されています。


 <図1> 亜鉛系めっき鋼板の種類(例)
<図1> 亜鉛系めっき鋼板の種類(例)


めっき鋼板選定のポイント

多種多様なめっき鋼板の中から適切なものを選定する際は、耐食性、加工性、コストの3点を考慮すると良いでしょう。

 

①耐食性
めっき鋼板が使用される環境に応じて、めっき鋼板に求められる耐性が変わります。選定の際に確認すべき使用環境の代表的な例として、日光の照射状況、水分の付着具合、湿度、温度などが挙げられます。一口に「耐食性」と言っても、どのような環境で、どの程度の耐食性が必要になるのかを十分に確認する必要があります。耐食性以外にも、耐熱性、熱反射性などが、想定する使用環境に耐え得るかをチェックしましょう。

②加工性
めっき鋼板に対して、どのような加工を施すかを確認し、その加工に対応できるめっき鋼板を選定しましょう。主な加工工程として、成形、溶接、塗装などが挙げられます。

③コスト
コストを考える際、材料費のみに目が向きがちですが、加工費も同時に検討しておきましょう。めっき鋼板の種類に応じて、得意な加工が違い加工費も変化します。材料費と加工費のトータルコストで考えることが大切です。

 

これら3つのポイントを軸に、めっき鋼板の具体例を2つほど見ていきましょう。

<表1>各種めっき鋼板の特徴

鋼板 溶融亜鉛めっき鋼板    (トタン) ガルバリウム鋼板 溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板
めっき処理 なし 溶融亜鉛 溶融亜鉛-アルミニウム-シリコン 溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム
耐食性 × △(赤錆)
加工性
コスト

 

めっき鋼板の例1:ガルバリウム鋼板

具体的の1つ目は、ガルバリウム鋼板です。
ガルバリウム鋼板は、アルミニウム(55%)、亜鉛(43.4%)、シリコン(1.6%)で構成された溶融めっき鋼板で、図1の溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板にあたります。「ガルバ」、「ガリバリウム」、「ガルバニウム」、「GL」などと呼ばれることもあります。

<図2>ガルバリウム鋼板の断面図
<図2>ガルバリウム鋼板の断面図


ガルバリウム鋼板の特徴

ガルバリウム鋼板の特徴を、耐食性、加工性、コストの面から見ていきましょう。

特徴① 耐食性
ガルバリウム鋼板は、条件にもよりますが亜鉛めっき鋼板の3~5倍程度の耐食性を持つと言われています。これは、ガルバリウム鋼板の構成要素であるアルミニウムが持つ耐食性の高さと、亜鉛の犠牲防食作用によるものです。犠牲防食作用とは、切断などでめっき部分が破損して鋼板部分が露出した場合に、鉄よりもイオン化傾向が高い亜鉛が先に溶出することで、鋼板部分の腐食を防ぐ作用のことです。

特徴② 加工性
ガルバリウム鋼板は、亜鉛鋼板と同程度の加工性を持ちます。但し、加工中に鋼板部分が露出したり、他の金属に接触したりすると腐食が進行しやすくなるため、加工時には注意が必要となります。

特徴③ コスト
ガルバリウム鋼板は、耐食性が高いステンレス鋼板と比べ、耐食性は少し劣るものの比較的安価に入手することができ、コストパフォーマンスの良いめっき鋼板と言えるでしょう。一方で、加工性は相対的に高くないため、用途によっては加工コストが増加する可能性があります。

 

 

めっき鋼板の例2:溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板

2つ目にご紹介するめっき鋼版は、溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板です。ZAM(R)という商品名でご存じの方もいるかもしれません。ZAM(R)は、高耐食性のめっき鋼板で、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)の頭文字を取って「ZAM」と名付けられました。ここではZAM(R)を例にとりあげます。

ZAM(R)の特徴

ZAM(R)の特徴を、ガルバリウム鋼板と同じく耐食性、加工性、コストの面から見ていきましょう。

 

特徴① 耐食性

ZAM(R)は、溶融亜鉛-アルミニウムめっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板と比べて、高い耐食性を持ちます。

図3は、溶融亜鉛めっき鋼板とZAM(R)の耐食メカニズムを図示したものです。溶融亜鉛めっき鋼板は表面に酸化亜鉛主体の白さびが発生しますが、この層は多孔質であり、水と酸素をピュアな亜鉛に供給してしまい、早期に亜鉛が消失して赤錆の発生につながります。一方、ZAM(R)はマグネシウム(Mg)を含む保護皮膜を形成し、水と酸素の亜鉛層への供給を少なくすることにより、高い耐食性を発揮します。図4のように、切断端面部にも保護皮膜が形成されるため、切断などの加工後も耐食性を維持できるのです。

 

<図3> 耐食メカニズムの違い(出典:日鉄日新製鋼㈱ Webサイト抜粋)
<図3> 耐食メカニズムの違い(出典:日鉄日新製鋼㈱ Webサイト抜粋)



<図4> ZAM(R)の切断端面部保護イメージ(出典:日鉄日新製鋼㈱ Webサイト抜粋)
<図4> ZAM(R)の切断端面部保護イメージ(出典:日鉄日新製鋼㈱ Webサイト抜粋)


図5は、ZAM(R)と合金めっき、亜鉛めっきの腐食速度の比較です。同じ暴露期間(横軸)において縦軸の腐食減量が小さいほど、耐食性が高いといえます。

<図5> 野外暴露試験の結果(出典:日鉄日新製鋼㈱ Webサイト抜粋)
<図5> 野外暴露試験の結果(出典:日鉄日新製鋼㈱ Webサイト抜粋)




特徴② 加工性

ZAM(R)は、溶融亜鉛めっき鋼板に比べて、めっき層が硬く、かつ、平滑であるため、プレス加工性に優れます。ZAM(R)は、プレス加工の際に材料のすべり性が良いため、他の鋼板に比べ加工割れが少なくなる傾向にあります(図6)。

<図6> 加工性の比較(出典:日鉄日新製鋼㈱ Webサイト抜粋)
<図6> 加工性の比較(出典:日鉄日新製鋼㈱ Webサイト抜粋)

特徴③ コスト

ZAM(R)の利用により、トータルコストの削減を図ることができます。ZAM(R)は加工性に優れるため、後めっき・後塗装の工程を省略可能となり、イニシャルコストを低減させることができます(図7)。また、ZAM(R)は優れた耐食性を持つため、ライフサイクルコストの低減も可能となります。

<図7> 生産工程の比較(出典:日鉄日新製鋼㈱ Webサイト抜粋)
<図7> 生産工程の比較(出典:日鉄日新製鋼㈱ Webサイト抜粋)

このように、メリットの多いZAM(R)ですが、用途や使用環境によっては注意が必要なケースもありますので、事前にメーカーに問い合わせるのがよいでしょう。


おわりに

この記事では、めっき鋼板の種類や特徴、具体例に加えて、選定時のポイントを解説しました。様々な種類のめっき鋼板から、使用環境などに合っためっき鋼板を見つけてみてくださいね。



めっき鋼板「ZAM(R)」から高い意匠性と放熱性を兼ね備え幅広い用途で活躍する「黒ZAM(R)」が登場

多種多様なめっき鋼板の中でも、優れた耐食性・加工性を持つめっき鋼板「ZAM®」。日鉄日新製鋼株式会社では、多彩なバリエーションのZAM®を提供しています。

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参考情報
「ZAM」(登録商標第4637134号)及び「(ZAMのロゴ)」(登録商標第4976506号)は、日鉄日新製鋼株式会社の登録商標です。
「ZAM」は、日鉄日新製鋼株式会社が開発した高耐食性溶融めっき鋼板の商品名です。



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