代表的な造形手法を詳しく解説《FDM、光造形法、インクジェット式編》~樹脂3Dプリンター入門講座(3)

3Dプリンターの代表的な造形手法として、FDM(熱溶解積層)、光造形法(SLA、DLP)、インクジェット式、粉末焼結積層造形の4つが知られています。前回は、それぞれの造形手法の概要と、3Dプリンターで使われる樹脂材料について解説しました。今回は、4つの造形手法のうち、FDM、光造形法、インクジェット式にフォーカスし、造形工程などを解説しながら、近年の3Dプリンターの価格や機能・機種の変化などのトレンドも紹介していきます。

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汎用性が高い3D造形手法であるFDM

FDM方式3Dプリンターのフィラメント
FDM方式3Dプリンターのフィラメント



3Dプリンターについてある程度知識のある方にとって、聞き覚えのある造形方式は、「FDM(Fused Deposition Modeling、熱溶解積層方式)」ではないでしょうか。この方式は「FFF(Fused Filament Fabrication)」と呼ばれることもありますが、本稿ではFDMとしておきます。

FDMは「熱溶解積層方式」という日本語訳の通り、材料の樹脂を熱で溶解しながら、高さ方向に層を積み上げて(積層して)成形していきます。

FDMで3Dプリンティングの材料となるのは、「フィラメント」と呼ばれる細い樹脂の線です。フィラメントはリール状に巻かれています。

FDMの3Dプリンターは、フィラメントの線の先を「エクストルーダー」という材料射出機に差し込んで使います。エクストルーダーはフィラメントを引き込みながら加熱して樹脂を液状にします。

エクストルーダーはX軸(縦)とY軸(横)方向に平面に動き、その先端にあるノズルから液状になった樹脂を少しずつ出しながら、ある高さにおける平面図を描きます。するとその平面図の樹脂は冷えて固まります。その高さの平面を描いたら、その上に、もう一層上の段の平面図を描きます。その作業を繰り返し、薄い断面図をZ方向(高さ)に積み上げていく(積層する)という工程をこなします。

また本体だけでは積層することが難しい造形の際は、ソフトウェアが判断し、造形物本体と同じ材料で、仮の土台として「サポート」が自動的に生成されます。造形形状とワーク面との間の空間や、中空形状の中に生成されます。サポートは造形後に取り外します。

現在、低価格の3Dプリンターに用いられている造形方式のほとんどがFDMです。以前、FDMの特許は、3Dプリンターメーカーの大手であるストラタシスが持っていましたが、2009年に失効しています。それ以来、さまざまなメーカーからFDM方式の安価な3Dプリンターが家電量販店やAmazonなどで販売されるようになりました。本体価格の最低値も年々、落ちてきているようです。

そのような状況から、最近ではFDM機が「安い3Dプリンター」の代名詞のように言われることもありますが、本体価格で数千万円する高級機もあります。安価な機種と高級機との違いは、造形精度や制御プログラムの性能、造形サイズ、対応する材料バリエーションなどです。両者の造形物を比較すると、その品質の差は歴然としています。一般的に高い装置は安い装置に比べて大きなものが製造でき、寸法の精度が高く、積層ピッチ(一層の高さ)も短いため、表面がなめらかで、精細な形状の造形が可能になってきます。積層ピッチは安い機種では0.1mm程度で、高級機では0.01mm程度と、差があります。安い機種は造形も失敗しやすくなります。

FDM方式のプリンターは、ABSやPLAといった工業製品で頻繁に使われる熱可塑性樹脂に対応しています。厳密には、射出成形などに使われる樹脂材料とは性状が少し異なります。積層造形での制御に適した特性に調整しているためです。また高級な機種になるほど、対応可能な材料のバリエーションが増え、「エンジニアリングプラスチック」(エンプラ)が造形できたりします。

インクが染み込みやすいPLA樹脂の層に、カラーインクを吹きかけてフルカラー造形するFDM機も登場しています。


設計・開発の現場ではおなじみの光造形法

光造形方式の1つ、Digital Light Processing(DLP)の3Dプリンター
光造形方式の1つ、Digital Light Processing(DLP)の3Dプリンター



光造形は英語ではDigital Light Processing(DLP)といい、製造業の設計・開発の現場では、以前からおなじみの造形手法で、主に試作で使われてきました。FDM方式に比べると、造形スピードが速い、なめらかな面が造形できる、透過率の高い(透明な)材料が使えるといった特色があります。FDMと同様にサポートが生成され、造形完了後に撤去する必要があります。

光造形では、紫外線(UV)硬化樹脂を使います。これは通常の状態が液体で、紫外線を当てることによって固体に変わり、以後は液体に戻らないという性質の樹脂です。

その造形手法の一つであるDigital Light Processing(DLP)は、まずバッドに入れた液体の紫外線硬化樹脂(UVレジン)の表面に、上から土台となるプラットフォーム(ワーク面)を浸けます。そのプラットフォームに向かってタンクの下からUVレーザーを照射させると、その部分のプラットフォームに接したUVレジンが硬化して、プラットフォームの下に薄い個体の層を作ります。次にプラットフォームが一層分持ち上がり、再びUVレーザーを照射して1層目の下に2層目を作ります。この作業を繰り返すことで、立体形状が作られていきます。

光造形の材料は軟質材から硬質材まで、バリエーションが比較的豊富ですが、工業製品で一般的な樹脂材料を基にした造形材料は使えず、完全に造形専用の材料になります。また硬化する前の材料は人体への刺激が強いもので、臭いも独特です。液体のUVレジンはアレルギーが発生する恐れがあるため、手袋での作業は必須になります。硬化してしまえば、害はありません。

光造形の手法には大きく、「SLA(Stereolithography)」と「DLP」があります。これは、UV光の照射の方式の違いです。SLAは光線を形状になぞらえて走査させます。SLAには上から光を当てる方法と、下から光を当てる方法があります。DLPはUV光の画像を下から投影します。

SLAは小さくて細かいパーツを精度よくたくさん作ることに向いていますが、DLPよりは造形速度が遅くなります。一方、DLPは、幅広い形状の造形や、細かい形状のある小さい部品を1つだけ、かつ高速に造形したいときに向いています。広い範囲の投影になる場合は解像度が落ちて、造形が遅くなります。逆に、投影範囲を狭くすると、解像度が高まって、造形が早くなります。

DLPと似ている方式に、「LCD」方式があります。こちらは比較的新しい技術です。UV光をバックライトにして液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)に表示させた画像をUVレジンに投影させます。現状、市場に出ている製品にはまだ技術的な課題が少しある印象です。

SLAは2006年頃に関連特許が失効したことで、ベンチャー企業の参入が相次ぎ、価格を大きく落とし、50万円を切る機種も登場しています。過去の光造形といえば工場に置かれる「造形機」といった設備でしたが、今は「光造形デスクトップ3Dプリンター」といえる機種が増えてきています。



フルカラーの造形ができるインクジェット式

インクジェット式は、基本的な仕組みは紙に文字や絵を印刷するインクジェット機構と同じです。2次元のインクジェットプリンターはノズルからインクを吐出しますが、3次元のインクジェットプリンターはインクの代わりにノズルから造形材料や接着剤を吐出します。インクジェット方式には、粉末固着造形(バインダージェット式)や光造形などがあります。

粉末固着造形(バインダージェット式)は、ぱっと聞いても分からないかもしれませんが、フルカラー3Dプリンターで使われる手法です。バインダーとは、ファイルなどのバインダーではなく、「接着剤」の意味です。薄く粉体を敷いた層に、ノズルから接着剤を噴きつけて固化させて薄い層を形成しながら、積み上げていきます。フルカラー機の場合は、ノズルからカラーインクも噴出しながら積層します。こちらは粉体を用いた造形のため、サポートは生成されません。

光造形のインクジェット式の一種であるポリジェットでは、UV硬化樹脂を噴射して描画し、その周囲から紫外線を照射して固めて層を作ります。この方式には、ノズルを複数備える機種があり、複数の造形材料や色を組み合わせて造形ができたり、硬質材料と軟質材料を織り交ぜた造形ができることも特色です。

ポリジェットの造形材料はABSの特性に寄せた樹脂、耐熱性材料など、エンジニアリングプラスチックの特性を模した造形材料を合成することが可能です。なおサポート材には造形材料とは別ノズルから吐出するもので、専用のジェル材が使われます。マルチカラー機やフルカラー機もあります。

他には、インクジェット式で最近登場した、HPが独自開発した「マルチジェットフュージョン」があります。粉末材料の層の中にバインダーを噴く点が、従来の粉末固着造形と似ています。ただしマルチジェットの場合は、一層ずつ固めていく方式ではなく、形状全体をゆるく接着させた後、一気に固化させることで造形スピードを高速化しているとのことです。造形材料はナイロン系の粉末です。またボクセル(3次元空間での正規格子単位。ピクセルの3次元版)データが扱えることが特色です。将来は、ちいさなボクセル1つひとつに色や材料が指定できるようになる仕様になっているとのことです。



次回は、光造形法3Dプリンターの歴史と特性についてご紹介します。



著者:小林由美(こばやしゆみ)
エンジニア、⼤⼿メディアの製造業専⾨サイトのシニアエディターを経て、2019 年に株式会社プロノハーツに⼊社。現在は、広報、マーケティング、イベント企画、技術者コミュニティー運営など幅広く携わる。技術系ライターとしても活動。



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