積層造形における代表的な4つの造形手法とは~樹脂3Dプリンター入門講座(2)

ひと口に「3Dプリンター」といっても、複数の造形手法があります。大きく数種類に分類できますが、幾つかの手法を組み合わせたり、「独自手法」をうたっているものもあります。造形材料も今は樹脂や金属の他、食品もあります。今回から、樹脂系の造形材料を用いた積層造形に話を絞り、数回に分けて3Dプリンターにおける造形手法について解説します。


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3Dプリンターの造形手法は4つに大別される

Photo by Adobe Stock
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現存する3Dプリンターの手法を大きく分類すると、主に以下のようなものがあります。すでにご存じの名称もあるのではないでしょうか(この他にもあります)。


・FDM(熱溶解積層)
・光造形法(SLA、DLP)
・インクジェット式
・粉末焼結積層造形




FDM(熱溶解積層)

2013〜14年頃に起きた3Dプリンターブームの火付け役となった、家電量販店でも販売されている3DプリンターはFDM(熱溶解積層)方式になります。それまで3Dプリンターは産業向けの加工装置という位置付けでしたが、FDM技術の基本特許が2009年に失効した関係で、廉価な機種がこぞって登場しました。2014年頃は本体価格が10万円を切るだけでも驚かれましたが、現在、2万円程度で買える機種も登場しています。


光造形法(SLA、DLP)

光造形法は、3Dプリンターブームが起きるよりも前から、設計・製造現場の試作(ラピッドプロトタイピング)の手法として身近なものです。過去には「3Dプリンター」などとは呼ばれておらず、皆、「光造形機」と呼んでいました。また、光造形は各事業部門が保有しているようなものではなく、自社の試作部門で保有しているのは一部の大手メーカーのみで、造形メーカーに外注するのが一般的でした。


インクジェット式

インクジェット式の基本的な仕組みは、紙に文字や写真を印刷するインクジェット機構と同じです。インクジェット式には、粉末固着造形(バインダージェット式)と光造形系のインクジェット式などがあります。


粉末焼結積層造形

粉末焼結積層造形は、粉末樹脂、粉末金属を焼結することによって立体形状を作成する造形方式です。樹脂の他、金属の3Dプリンターでもよく使われる手法だと押さえておいてください。


3Dプリンターは、下から上へ形状を積み上げる

ここまで3Dプリンターの複数の手法を紹介しましたが、どの方式にも共通していることがあります。


・下から上へ、少しずつ材料の層を積み上げることで形状が作られること
・3Dデータで形状データを用意すること
・使用できる材料に限りがあること


一つ目の、「下から上へ形状を積み上げる」ということが、3Dプリント、すなわち積層造形の大きな特徴を表しているといえます。その工法ゆえに、切削加工などの従来の加工法と違って製作プロセスの制約を受けづらく、なめらかな曲面や中空など非常に自由な形状が作れることが特色です。ただし、3Dプリンターの製造プロセスの特徴として、化石や土器が発掘される地層のように、側面に筋が入ります。

ですので、3Dプリンターで作られた部品かどうか知りたい場合は、側面に層状の筋があるかどうか見てみます。なお、筋と筋の間は強度が弱くなる特性があります。そのため、積層面に対して力が掛かるような設計は避けるべきです。

3Dプリンターを動かすためには、作りたい形状の3Dデータを用意する必要があります。取り込んだ3Dデータから薄い断面形状のデータ(スライスデータ)を層の数だけ作って1枚ずつ造形していくため、写真や画像、線画などの平面データからでは3Dプリンターでの造形はできません。

データは3DCGソフトや3DCADで作ります。3DCADで作った3Dデータは、そのままでは3Dプリンターに適しません。「STL」や「OBJ」など3Dプリントに適したポリゴン系のデータ形式に変換します。なお3Dプリンターで造形するには、スライスデータを作成する必要があるために、造形前に専用ソフトを使って造形準備を行います。

使用する材料は装置メーカーが販売している純正のものや、3Dプリンター向けの汎用材料を用います。その辺にある材料がなんでも造形に使えるわけではなく、使える材料は限定的で、装置によっては純正のものしか対応していない場合もあります。



積層造形以外の立体造形法は?

切削加工中のフライス盤。Photo by Adobe Stock
切削加工中のフライス盤。Photo by Adobe Stock


従来、部品加工でよく使われていた加工法として、切削加工や旋盤加工、射出成形、プレス加工(塑性加工)などがあります。切削加工は、積層造形とは逆で「上から下に」加工していく手法だと考えるといいかと思います。切削加工は、下に固定した材料を、上に固定した工具で削っていきます。内側をえぐるように削ることはできないため、中空の形状を作るのには形状に制限があることになります。

射出成形は、熱で溶かした材料を金型に押し込み、冷やして固める成形方法です。プリンやクッキーを作るのと同じで、材料を流す金型を作る必要があります。その金型は一般的に、切削加工によって作ります。なので、切削加工の制約と、金型に樹脂を流すときの2つの制約が出ることになります。そのため、固まった材料を金型から外すときにひっかかってしまうような形状は作れません。例えば、縦に開いた穴やかぎ状の形などです。

プレス加工は板状の材料に金型やベンダーを押しあてて圧力をかけ、曲げたり、任意の形状に変形させたりします。ですので、作成形状はその制約を受けることになります。

3Dプリンターは、これらの加工法と比べて、加工形状の制約が少ないため、比較的自由に形状設計ができることが特長となります。

ただし、3Dプリンターにもデメリットがあります。上記の加工法と比較して生産性が著しく低くなったり、コストが割高になったり、加工精度が悪くなったりします。また、 3Dプリンターの大きさを超えるものが作れないため、1~数m角のような大型部品は簡単には作れません。そういうことから、ものづくりは用途に応じて、従来工法と3Dプリンターとで使い分けていくことになるのです。


樹脂材料を硬化させる方法の違い

先ほど、造形に使える材料が限定的であると紹介しました。3Dプリンターでは、3Dプリンターに適した材料や、装置専用の材料しか使えません。そのため、装置を選ぶときには、造形方式や、装置自身がどんな材料が使えるかをよく確認する必要があります。

樹脂の場合は、いったん溶かして液状になった材料を固めながら形状を生成します。一般的な樹脂の特性としてよく知られているのが、「熱可塑性」と「熱硬化性」です。「熱可塑」というのは、熱を加えることで柔らかくなって、変形させられるといった意味です。そして冷えると固まります。「熱硬化」は言葉の意味の通りで、熱を加えることによって硬くなります。

熱可塑性樹脂は、加熱して液状になった樹脂を冷却して硬化させた後も、熱を加えたらまた液状に戻ります。ABSやPLA、アクリル、ポリエチレン(PE)など、日常にありふれた一般的なプラスチックはそれです。チョコレートやチーズで例える人が多いです。FDM方式の3Dプリンターで使える樹脂です。

熱硬化性樹脂は、それとは違い、樹脂を硬化させた後に加熱しても液体になりません。熱硬化性樹脂は、加熱することで分子構造が変化して固化するためです。フェノール樹脂やエポキシ樹脂などが該当します。こちらを食品に例えるなら、クッキーやタマゴなどになります。3Dプリンターの造形材料としては、そのままでは使われません。

「UV硬化樹脂」は、熱硬化樹脂を基にして、紫外線(UV)で硬化する性質を加えた材料だとお考えください。3Dプリンターの造形でもよく採用されています。
UV硬化は印刷や表面処理や接着、手芸、ネイルアート(ジェルネイル)などでも使われます。UV硬化樹脂は「UVレジン」とも言います。「光造形」の材料は「レジン」とよく呼ばれています。


3Dプリンターのサポートって何?

造形材料の話と併せてよく聞こえてくるのが「サポート」という言葉です。サポートは、ななめや中空になっている形状を支えるように、造形の都合で造形される部位です。造形後には不必要なので、取り除くことになります。サポートの材料は、造形物と同じ場合と、異なる場合があります。

サポートを取り除く作業は、少々面倒な作業で、作業中に造形物を破損したり傷つけたりすることもあります。サポート部分だけを水溶性の材料で生成してくれる装置もあります。水溶性であれば、バケツに張った水にサポートが付いたままの造形物を入れるとはがれます。

なお、粉体材料を使う、粉末焼結積層造形は、サポートが生成されません。 

次回は、各造形手法個別に掘り下げて、解説していきます。



著者:小林由美(こばやしゆみ)
エンジニア、⼤⼿メディアの製造業専⾨サイトのシニアエディターを経て、2019 年に株式会社プロノハーツに⼊社。現在は、広報、マーケティング、イベント企画、技術者コミュニティー運営など幅広く携わる。技術系ライターとしても活動。


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