「おもしろくて役に立つ」が、面白家電開発の源!社長からパートまでが全員でアイデアを出しヒット商品化に挑む

お一人様用こたつ、自動で回る卓上焼き鳥器…。面白家電で、急成長を遂げている「サンコー(THANKO)」(東京都千代田区)は、社長を含めた社員約30人全員がアイデアをだしあい、商品化につなげます。「おもしろくて役に立つ」が、基本コンセプト。アイデアを商品化するまでのユニークな手法や苦労を商品企画部の山岸裕介(やまぎし・ゆうすけ)氏と、尾崎祥悟(おざき・しょうご)氏、広報部長の﨏晋介(えき・しんすけ)氏の3人に伺いました。


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毎週60本以上の商品アイデア

サンコーの企画・制作の拠点は、電化製品、パソコンのまちとして名高い、秋葉原のシェアオフィスビルにあります。会社の創業は2003年。パソコンの周辺機器のデジタル小物(ガジェット)などの便利グッズを海外から輸入することから始まりました。自社の独自商品の開発に着手したのは、創業から3年後の2006年になります。

新商品の源泉になっているのが、毎週スタッフ全員が、アイデアを2本提案するという仕組みです。スタッフは30名以上いるので、毎週60本以上のアイデアが集まります。これらはすべて電子掲示板上でオープンになり、社長が「自身の感性」で賞を付与、レベルに応じて報奨金を出します。判断するのは社長とはいえ、全員がアイデアにコメントをつけることができます。

「パート、店頭に立つアルバイトの方も含めて全員参加。イメージ図までつけて提案する人もいますが、こんなことで困っているという実生活の体験でもいいんです。賞をとったものや(社長が)気になるものが企画制作部におり、どんな構造にするかなど、提携している中国の工場に発注することになります」(山岸氏)


サンコー株式会社 商品企画部 山岸祐介氏
サンコー株式会社 商品企画部 山岸祐介氏


代表取締役CEOの山光博康(さんこう・ひろやす)氏(53)もアイデアを出します。社長個人というより、ユーザー目線。ただ、「これって、ドラえもんの道具ですか」という奇抜な物もあると言います。

さらに基本コンセプトは「お一人様」。お一人様をターゲットにすることによって商品のサイズが小さくなり、価格もお手頃。収納にも困らず簡単に使えます。ファミリーでも自分専用のものとして買ってもらえるため、お一人様以外も取り込めることになり、まさに、「お一人様」が一石何鳥にもなるという。

オリジナル商品開発の歴史を3人に振り返ってもらいました。

「USBで電源を取ることがまだ定着していないころに、電池式のものをUSB化したものがオリジナルの始まりです。あったかスリッパ、ハンドウォーマーなどの商品が出ました。裏話をしますと輸入するとき、ACバッテリーだと安全性の検査がありUSBだと楽だったという事情がありました」(山岸氏)


商品の特徴と商品化への苦悩

先日発売された「自動カップ麺メーカー『まかせ亭』」をみてみましょう。

カップ麺を本体にセットし、水を入れ、タイマーをセットするだけで自動で湯を沸かし、カップに注水、タイマーが動き、できあがりを知らせます。カップ麺の高さは6cmから13cmまで調整可能で、注ぎ口のある面をカップにぴったりと密着し、本体がふたの代わりになるという商品です。


自動カップ麺メーカー「まかせ亭」
自動カップ麺メーカー「まかせ亭」


「まかせ亭」の使い方
「まかせ亭」の使い方


「最初はカップ麺の上に電気ケトルをおき、真ん中に穴をあけて、全自動で3分たったら湯が出るということを検討していました。しかし、ヒーターなので倒れないように固定していないとまずいですし、安全基準の検査も通らない。スタンド型にするところまでいきましたが、コンパクトにするためにはどうするのか、など開発からどんどん時間がかかってしまいました」と尾崎氏は振り返ります。

尾崎氏は、2018年10月に入社。3DCADの技術者で、以前は化粧品のボトルなどの設計をしていましたが、商品開発の企画から関われるため、同社に転職したと言います。

「アイデアを形にしてくれるのは、中国の工場ですが中国のエンジニアとぶつかることもあります。こちらがこうしたい、といっても、なぜそうするのかがわからない、と言われてしまう。伝えても理解してもらえない。どちらかが妥協しなければならないのですが……」と海外とのやりとりの苦労も明かしてくれました。


サンコー株式会社 商品企画部 尾崎祥悟氏
サンコー株式会社 商品企画部 尾崎祥悟氏


お一人様に並びもう一つキーワードになるのが「ぐうたら」。仰向けに寝ながら、肩や腕が疲れずにパソコンやスマホ、タブレット端末を操作することができる「仰向けゴロ寝デスク」は大ヒットになり、初代の2005年から2019年の商品はなんと、17代目になります。「お一人様こたつ」は、すっぽり包まれるようになっていますが、脱がないで生地をずらすだけで、歩くことができます。


「仰向けゴロ寝デスク2」
「仰向けゴロ寝デスク2」


大ヒット商品はこうやって生まれる

大ヒットになっているのが、「糖質カット炊飯器匠」です。
中国のエンジニアが糖尿病で糖質制限している母親のために、米の糖分をカットする炊飯器を考案。中国では売れなかったものですが、サンコーが日本向けに改良を重ねて昨年2月に初代モデルを発売したところ、爆発的なヒットに。今や他メーカーも同様の商品を発売しています


大ヒットの「糖質カット炊飯器匠」
大ヒットの「糖質カット炊飯器匠」


「通常の炊飯器の釜は一つですが、内釜に米を入れて、外釜に水を入れて炊くという二重構造になっており、沸騰したときに糖質成分が水に溶け出します。そのあと、内釜が自動で上がり、溶け出した糖質成分が含まない状態で蒸し上がります。この技術は、実用新案もとりました」(﨏氏)


サンコー株式会社 広報部部長 﨏晋介氏
サンコー株式会社 広報部部長 﨏晋介氏

山岸氏が手がけてきたなかで、6年間のロングセラーになっているのが「どこでも座れるリュック」。リュックの背面から折りたたみのイスが出るようになっています。テーマパークの入場待ちや、イベントで座れないときなど用途はさまざま。イスが、リュックに完全に収納されているデザインで、背面パットがイスのクッションになって腰やおしりが痛くならないようになっています。イスもすぐに出るようにするなど、改良を重ねてきたと言います。

「ぱっと変身!どこでも座れるリュックtall」
「ぱっと変身!どこでも座れるリュックtall」


暑さ対策の「ネッククーラー」は、猛暑時期、多くのテレビ番組で紹介されました。
小型冷蔵庫にも使われる半導体素子「ペルチェ素子」を使用。電流を流し、ペルチェ素子で冷えた金属プレートを首に巻き付けて、首筋の頸(けい)動脈を冷やすことで、体感温度を下げるという仕組みです。氷や保冷剤のように、溶けたり、ぬるくなったりはしません。最初の製品は、身体を温めることもできたのですが、これを冷却に特化して小型化。「mini(ミニ)」として発売したところ、商品を求める人で店頭に列ができたり、品切れが続き、オークションサイトで定価の5倍になったこともあったと言います。


現在発売中の「ネッククーラーmini」


「来夏販売予定の製品は、温度調整もできるようにして色も増やします」と山岸氏。ちなみに、商品紹介のモデルも社員が務めており、この製品もモデルは山岸氏です。


尾崎氏が今、取りかかっているのは「洗濯機上乾燥機(仮称)」です。もともとは、社長のアイデアと言います。

「だいたい、世の中の衣類吊り下げ型乾燥機は下からヒーターで熱風を送って乾燥させます。そうした商品も輸入してわが社で売っていますが、リビングに置くと場所をとるし、折りたたむとしても手間になってしまいます。洗濯機の上に、ポイと置ければ、スペースを有効活用できるのではないかと……」

尾崎氏によると、アマゾンなどの通販サイトで約2万円ほどで乾燥機を購入できますが、それを載せるフレームが1万円ぐらいかかってしまうといいます。

「洗濯機の高さが1mちょっと。ワイシャツは80cm。そこにハンガーをかけるとなると、2mぐらいの高さになりますが、身長150cmの女性がハンガーをかけるとなると、2mがぎりぎりになります。しかし、2mではぴったりすぎて洗濯機のフタが開きにくくなるし、当たったりします。(ラックを)縮めたり、アップさせる仕組みにしようとすると、今度はコストがかかってしまい、簡易で安い乾燥機という当初のコンセプトからはずれてしまいます。いやあ、難航しています」と尾崎氏は苦笑します。

世の中にまだ、出ていない商品を作ろうとしているため、他社製品を参考にするということもできません。実際に試作しないとわからない。試行錯誤の連続になります。いざ、形にしたら、社長からのだめだしもあります。「なんかもっさりしているなあ、など、社長の指示は抽象的だったりするんですよ」と明かしてくれました。

アイデアが煮詰まったとき、尾崎氏は外に買い物に出かけるそうです。机の前にいるより、材料を見に行ったり、シャワーを浴びたり、横断歩道を渡っているときに、解決方法がひらめくといいます。また、1人では限界があるため、解決できないときは、商品企画部の部員全員と問題点を共有。「3人寄れば文殊の知恵」ではありませんが、1人では思いつかない視点がみえてくると言います。

この新商品のリリースは来年の梅雨時期予定。
「苦戦しましたが、光明が見えてきました。でも、来年リリースにならなかった場合は、解決できなかったことになります」と笑う尾崎氏。


サンコーのものづくりの開発作業場。全員参加の社風は、活気にあふれていた
サンコーのものづくりの開発作業場。全員参加の社風は、活気にあふれていた


サンコーの強みはスピード。最初のロットは数千と少ない。販売は基本、直営と直販。家電メーカーと違って、量販店に卸していないため、たくさんの商品を抱える必要はありません。卸値は上乗せされていないためその分価格は安くなります。価格をおさえ、改良を加えながら迅速にモデルチェンジができることになります。

30ぐらいの新商品の開発を同時に走らせており、毎月、輸入品、オリジナルあわせて約10製品をラインアップしています。どこにもない家電製品づくりに乗り出し、2015年の売り上げ約9億円から3年後の2018年には1.6倍の14億5千万円と右肩上がりに。生活者の視点でどこにもない製品を、直販だからできるスピード感で作り出す。「必要は発明の母」といいますが、「あったらいいなあ」という「ゆるめの必要性」を満たす戦略で、大手メーカーが狙わないスキをついたものづくりに目が離せません。
  

(文・写真〔人物とオフィス〕/杉浦美香)


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