「ものづくり」が環境を破壊し持続不可能な世界を導かないために 「サーキュラー・エコノミー」ができること (3/3)

【発想】作り手と買い手の新たな関係の構築が「無駄」をなくす第一歩に

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

【発想】作り手と買い手の新たな関係の構築が「無駄」をなくす第一歩に

『ほどよい量をつくる』


甲斐かおり 著
インプレス(しごとのわ)
2019/09 232p 1,600円(税別)


量産型の経済から離れ「ほどよい量」を追求する人々

廃棄物のリサイクルやエネルギー変換といったサーキュラー・エコノミーの取り組みが進んだとしても、そもそものモノの生産が過剰であれば、どうしても無駄は発生する。リサイクルしきれないモノは出てくるだろうし、再利用できるようにするためにはエネルギーも必要になる。

本書『ほどよい量をつくる』は、そんな「無駄」とは無縁な「ほどよい量」の仕事を成立させている人や企業にフォーカス。著者は、量産型の経済から離れた価値観で生きる人々を日本各地で取材し執筆活動を続けている。

本書では、必要なものを必要なだけ世に送り出すことでやりがいのある仕事を実現する人たちのインタビューを通じて、経済や仕事のあり方を問いかける。


適量のみ衣服が欲しい人と裁縫工場をマッチングする「シタテル」

本書に登場する、熊本市に本社を置くシタテル株式会社は、衣料品を「適量」のみ作りたい人や企業と、それに適した裁縫工場をマッチングしている。例えば「50枚」といった小ロット発注を受け付けられる中小の縫製工場をデータベース化し、ネット上で受発注できる。

発注者のニーズに応じて縫製工場と直接やりとりするので、中間流通業者が関与しないため、卸売業者や店舗での売れ残りによる廃棄はない。登録工場数は年々増え、シタテルの売上もうなぎ上りだそうだ。

「ほどよい量」の生産と流通では、こうした直接のやりとりでお互いに相手が誰だかわかる、いわゆる「顔が見える関係」を作りやすい。


顔が見えず、適量がわからないから、無駄にたくさん作ってしまう

ここで個人的な話で恐縮だが、昨年私は、オーダーメードで少量の日本酒を仕込んでくれる酒蔵を、たまたまネットで見つけた。

実は私は数年前から、農家を手伝いながら米を自作している。そこで収穫した米でお酒を作ってもらおうと、オーダーしてみた。

その酒蔵は、酒の香りや味の好みを細かく聞いてくる。そして、自分が飲んだり人にあげるのに適量の発注ができる。

本来の取引とは、このようにお互いの「顔が見える」ものだったはずだ。それが大量生産・大量消費の経済モデルの台頭とともに中間業者が多く関わるようになり、消費者の好みも適量もわかりづらくなってしまった。

適量がわからないから、たくさん作って、売れなければ捨てる、という悪しき商習慣が始まったのだろう。

現代は、インターネットによって、(顔は見えないかもしれないが)遠距離にいても、生産者と消費者が直接つながることができる。サーキュラー・エコノミー自体をさらに効率よく、持続可能なものにするには、このような「つながり」の構築から始めるべきではないだろうか。



情報工場
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