「ものづくり」が環境を破壊し持続不可能な世界を導かないために 「サーキュラー・エコノミー」ができること (1/3)

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

「モノの生産」は、深刻な環境汚染や資源枯渇など、さまざまな地球的課題を生み出した。それらの解決を図り、持続可能な循環型経済モデルである「サーキュラー・エコノミー」の取り組みが始まっている。ものづくりが持続不可能な社会を作らないためにどうすればいいか。
上場企業を中心に、新規事業開発や研究開発に携わるビジネスパーソンも読んでいる書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」を提供する(株)情報工場シニア・エディター・浅羽登志也が、3冊の書籍から考察する。


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【総論】終焉を迎える、生産から消費に向かう「一方通行」の経済モデル

『新装版 サーキュラー・エコノミー』
-デジタル時代の成長戦略



ピーター・レイシー/ヤコブ・ルトクヴィスト 著
牧岡 宏/石川 雅崇 監訳
アクセンチュア・ストラテジー 訳
日本経済新聞出版社
2019/10 360p 2,500円(税別)




テクノロジーを駆使した「循環型」の経済モデルが持続的成長を可能にする

近年の地球的課題の一つに、廃棄プラスチックによる環境汚染がある。生産過剰による食品廃棄の増加も解決が迫られる。いずれもものづくりに携わる方は気にしておくべき問題といえる。

そこで注目されるのが「サーキュラー(循環型)・エコノミー」という新しい経済モデル。コンサルティングファーム、アクセンチュアの戦略コンサルティング部門であるアクセンチュア・ストラテジーに勤務する2人が著した本書『サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略』に詳しい。

モノの生産→利用→廃棄といった従来の「一方通行型」の経済モデルは持続不可能、と本書。原材料である鉱物や金属、食糧、水、化石燃料などの天然資源が枯渇しつつあり、そのために経済成長が鈍化、あるいは停滞しつつあるからだ。

つまり、一方通行ではやがて行き詰まる。それならばテクノロジーを駆使して「循環型」の経済モデルに転換しよう、というのがサーキュラー・エコノミーなのである。

本書では、豊富なデータと調査事例を踏まえ、サーキュラー・エコノミーこそが、環境に負荷を与えずに今後の経済成長と人類の発展を可能にする、唯一のソリューションと断じている。


EUの「プロダクト・パスポート」に循環型経済のプラットフォーム化の可能性

本書で取り上げられたサーキュラー・エコノミーの事例でとくに興味深いのが、EU(欧州連合)で議論されている「プロダクト・パスポート」というアイデアだ。

製品に含有資源を記録したチップを「パスポート」として埋め込む。それによってEU内で資源の流通や廃棄、再利用を追跡できる。「循環」を監視し、いっそうの効率化をめざせる仕組みだ。

さらに、得られたデータを活用するITプラットフォームができれば、資源と再利用を希望するメーカーとのマッチングも可能になる。

アマゾンなどのECや、SNSといった従来のITプラットフォームは、ある一面では、人の行動を追跡し、より多くの消費を促すものである。それは、言わば「無駄」を作り出すプラットフォームという面があることは否めない。

だが、プロダクト・パスポートを活用するプラットフォームはその正反対だ。無駄をなくし、持続可能な未来の形成に役立つ。

しかし残念ながらプロダクト・パスポートは、知的財産保護などの問題から、あまり進展していないようだ。原料に何を使うかは他社との差別化要因でもあり外部に明かしてない企業も多いのだろう。

サーキュラー・エコノミーに移行するには、このような課題は個々の企業の利益と全体の利益とのバランスを考えながら、一つひとつ解決していくしかないのかもしれない。


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