『第10回 高機能素材Week』見どころレポート (3/3)

陽極酸化皮膜の表面処理技術をアピール

陽極酸化皮膜の表面処理技術をアピール

今回の展示会では金属と樹脂を接合させる技術の出展が多く、各社とも独自技術をアピールしていました。株式会社東亜電化(岩手県盛岡市)もその1つ。説明してくださった三浦修平(みうら・しゅうへい)専務取締役によれば、単純に接着剤で金属と樹脂をくっつけるだけでは期待される機能性を出すことは難しいと言います。

「金属と樹脂を接合するためには、接着剤で付けたり、金属自体に細かい凹凸を付けるローレット加工を施して樹脂を食いつかせて引っかけるような方法が一般的です。しかし、それではどうしても接合強度が弱く防水性も高くなりません」(三浦さん、以下同)

また、金属と樹脂の接合技術では金属表面を溶かしてエッチングしてザラザラにする場合が多いと言いますが、同社の場合は金属の表面に膜を付ける手法になっているそうです。

「その膜自体に微細な多孔質のポーラスが空いていて、その穴に樹脂が入り込むことで機械的なアンカー接合をすると同時に、膜自体に樹脂と反応しやすい有機化合物が含まれているので化学的にも接合します。

機械的な接合と化学的な接合の2つでくっついているので、他社より接合強度はもちろん耐久性、防水性、気密性などの要求に耐えられる部品を作ることが可能になっています」

同社の接合技術の場合、金属の表面の接合膜が陽極酸化皮膜になっているそうです。陽極酸化というのは、電解しながら電気化学的に金属表面に酸化皮膜を生じさせる技術を言います。

「そのため、蜘蛛の巣のような複雑な穴が形成され、そこに樹脂が絡み込んで強く接合するため、防水性や気密性を高めることができます。

開発で難しかった部分は、ビーカースケールから試作スケールへ、さらに量産化へ、安定的に再現できるようにする技術構築のところでした」


<写真7>
スマートフォンなどに使われている金属と樹脂を接合させる技術。同社の表面処理技術を使えば、防水性と気密性に優れた製品を作ることができると言います。
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スマートフォンなどに使われている金属と樹脂を接合させる技術。同社の表面処理技術を使えば、防水性と気密性に優れた製品を作ることができると言います。


同社は20年以上前からこの技術開発に取り組んできたと言います。十数年前にホンダの燃料電池車のキャパシタの封止部に最初に採用され、自動車用を始め、リチウムイオン電池などの電池部品に要求されるスペックを満たしている技術になるそうです。

「開発した当時はなかなか横展開できなかったのですが、やはり防水性が最も求められるようになってきたこともあり、最近になってスマートフォンや自動車部品などの分野で金属と樹脂の複合化というニーズがマッチし、多くのお客様のご要望に応えることができるようになりました。また、ハイブリッドカーや電気自動車などの案件も次第に増えてきています」

同社は金属と樹脂の接合のほかに、GT STORMという、塗装を行わずに表面処理だけで、アルミやマグネシウムなどのダイカストに特有に生じる湯流れ、湯ジワ模様を消し、黒色や白色の外観を作り出すことができる技術も出展していました。

「ダイカスト部品には陽極酸化皮膜を形成させるのが難しいのです。なぜなら、アルミのダイカストの場合、アルミ以外の成分がたくさん含まれているからです。アルミの純度が高ければ、アルマイト処理で陽極酸化の表面処理が可能になりますが、ダイカストの場合、それができないのです。

また、マグネシウムのダイカストの場合、そもそも陽極酸化の表面処理の技術がありませんでした」


<写真8>
同社は1工程でアルミやマグネシウムの表面処理を行うことのできる技術も出展していました。
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同社は1工程でアルミやマグネシウムの表面処理を行うことのできる技術も出展していました。


アルミやマグネシウムのダイカストの場合、これまで一般的には表面を削ったり、何層にも塗装して表面処理をするようなことをしてきたそうです。

「弊社のGT STORMでは、特殊な陽極酸化の技術を使うことで、ダイカスト特有の表面の巣穴や湯流れなどの欠陥部分を修復しながら、1工程で黒色や白色のきれいな耐食性に優れた被膜を生じさせることが可能になりました。

ダイカストの表面処理で工程も短縮できるこの技術は弊社独自のもので、今後事業化していくことになっています」


<写真9>
株式会社東亜電化 三浦修平専務取締役。他社にない独自の陽極酸化皮膜の技術をアピールしていました。
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株式会社東亜電化 三浦修平専務取締役。他社にない独自の陽極酸化皮膜の技術をアピールしていました。


今回の高機能素材Weekは昨年より来場者数はやや減った(5万9,094人、2018年実績)ものの、ものづくりに関係する要素技術が集まっていたため、会場内には技術者や研究開発者らの熱気があふれていました。初展示の技術も多い印象があり、興味深そうにそれらの説明を聞く来場者の姿が目立った展示会でした。


文/石田雅彦

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