『第10回 高機能素材Week』見どころレポート (2/3)

透明性と高屈折率を両立する全く新しい難燃性ポリマー

透明性と高屈折率を両立する全く新しい難燃性ポリマー

今回の展示会で初のお披露目となった素材も多く、JXTGエネルギー株式会社(東京都港区)の難燃性ポリマーもその1つです。

説明してくださった開発者の高嶋務(たかしま・つとむ)機能材カンパニー 機能材研究開発部機能材研究企画グループ 担当マネージャーによれば、同社はENEOSの関連会社で、石油由来の素材にこだわらず、お客様のご要望に応えるための新たなソリューションを提供していこうとしているそうです。

「高難燃性ポリマーはこれまで世界中の技術者が実現を目指してきた素材です。しかし、難燃性、透明性、高屈折率という3つの条件を満たすことは技術的なハードルがかなり高かったのです。

今回出展しているものの特徴は、難燃性(UL94でV-0)、透明性(88%)、高屈折率(1.6以上)の3つを同時に実現している点です。これまでこうした素材はありませんでした」(高嶋さん、以下同)

この3つの技術的なハードルをクリアするため、新たな視点から開発を進めたと言います。

「従来の技術では、難燃の添加剤を外から加えるなどで燃えにくいというハードルを越えようとしていました。しかし、透明性を高めるためにハロゲンを加えたりすると、加工後にそうした添加剤が過剰に析出し、ブリードアウトという不良が発生することがあります。
しかし、私たちは今回、燃えにくいポリマーを新たに分子設計するという新たな手法を考案しました」


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展示していた新規ポリマー。難燃性に加え、高い透明度と屈折率を両立させたそうです。
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展示していた新規ポリマー。難燃性に加え、高い透明度と屈折率を両立させたそうです。


これは、1つの素材で難燃性を達成しようという考え方だそうで、従来のポリマーとは違った概念で作られた素材になります。単一物質にすれば、そのもので溶融成形できますので、長期間の安定性も実現できると言います。

「この分野には私が何十年もずっと携わってきました。もちろん、たくさんの方々から協力や支援をいただき、先輩方から多くのお知恵を拝借してきましたが、他が真似のできない蓄積してきた知見や経験はありますので、今回の技術を実現するために特に苦労したところはあまりありませんでした。

実現までかなり苦労して試行錯誤を繰り返しましたが、これまで手がけてきたり知見を得てきた単一の要素技術をそれぞれ組み合わせたり掛け算したりすることによってできた技術と言えるでしょう」

透明で高屈折のポリマーは、光学レンズや有機EL、スマートフォンのディスプレイなどのカバー、照明製品などに使われています。難燃性のポリマーの開発が難しかったということは、逆にいうと従来のポリマーは透明性や屈折率を高めると燃えやすかったということになります。

「難燃性というのは、燃えない、不燃というわけではありません。電子・電機の部品に使われるプラスチック材料の燃焼性試験の国際規格に燃焼性UL94という燃えにくさの度合いを表す規格がありますが、今回の技術で実現したポリマーはその規格の最高ランクの難燃性“V-0”になっています」

この燃焼性試験では、ガスバーナーの炎を30秒間、接炎させ、炎を離した後の燃焼の継続時間などを調べるそうです。同社が開発したポリマーは、その炎を離すとすぐに火が消えると言います。


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JXTGエネルギー株式会社 高嶋務 機能材カンパニー 機能材研究開発部機能材研究企画グループ 担当マネージャー。
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JXTGエネルギー株式会社 高嶋務 機能材カンパニー 機能材研究開発部機能材研究企画グループ 担当マネージャー。


そもそもポリマーというのはどんな物質なのでしょうか。有機化学の分野での専門用語であり、有機物の石油由来の素材でモノマーと呼ばれる物質を、化学反応によって繰り返し合体(重合)させたものがポリマー(高分子)になります。プラスチックという呼び方は、主に固体状態の人工的に合成されたポリマー(高分子)材料に対して用いられます。

高嶋さんによれば、ラジカル共重合性モノマーという物質に対し、有機化学の知見を活かした分子設計を行うことで、最終的に合成されたポリマーが、難燃性に加え、高い透明度と屈折率の両立を実現できたのだと言います。
補足すると、ラジカル共重合とは、複数種類のモノマーをランダムに重合させる化学反応です。全く新しい新構造のモノマー探索・合成手法の確立を行うことなく、これまでの知識ストックから上記特性を実現するラジカル共重合性モノマーを早期で見出せたことが開発での重要なポイントだったのでしょう。

今回の展示会に出展した目的は、難燃性ポリマーがどのような用途に使われるのか、新しいヒントをいただけるのではないかと考えたからだそうです。

「潜在的な要望としては、難燃性のポリマーで透明性と屈折率が高い素材があればいいということはあったと思います。しかし、どこにもなかったのでこれを想定した製品がまだないのです。ですから、お客様も具体的な用途を考えてこなかったブルーオーシャンということになるでしょうか。

今回、お客様の潜在的なご要望をうかがって、一緒に製品開発をしていければいいと思っています。ありがたいことに、自動車業界、家電業界、住宅業界などのお客様が私たちのブースに立ち寄ってくださり、今後私たちが取り組んでいくべき方向のヒントをうかがうことができました」

難燃性で透明度と屈折率が高い同社のポリマー。どんな用途が新たに生まれてくるのでしょうか。


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同社のブースでは、熱を加えると縮む独自のポリマーも出展していました。人工筋肉などの用途に可能性があると言います。
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同社のブースでは、熱を加えると縮む独自のポリマーも出展していました。人工筋肉などの用途に可能性があると言います。


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