名古屋モーターショー同時開催『あいちITSワールド』で見たITS最新技術動向 (1/2)

1979年に第1回目を開催して以来、隔年で開催し、21回目を迎えた名古屋モーターショー。地元自治体や各メーカーとの連携を図る展示会として、最新市販車をはじめ安全運転支援システム、自動運転などの各種試乗会も開催し、体験コンテンツを中心に企画内容をより充実させ、業界関係者はもとより、若者からファミリーまで広い層の来場者を集めていました。そんな名古屋モーターショーと併設で開催された「あいちITSワールド」は、ITS(Intelligent Transport Systems、高度道路交通システム)に関する出展をしており、名古屋モーターショー特有の展示となっています。今回は、東京モーターショーではお目にかかれなかった、ITS関連技術を紹介していきます。

自動運転の技術が熟成しつつありますが、実証実験はまだ主にレベル2の段階と言われています。今回の「あいちITSワールド」では、レベル2の自動運転を支援しつつ、安全で安心な交通輸送システムのための技術が出展されていました。


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路車間と車車間の通信システムとは

トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、ITSに関連した技術としてコネクティッドのシステムを出展していました。説明してくださった久枝耕治(ひさえだ・こうじ)コネクティッドカンパニー ITS・コネクティッド統括部 統括・企画室 主幹によると、ITSというのは、IT(Information Technology)を利活用し、交通の輸送効率や快適性、安全性のための技術群の総称だそうです。

例えば、ITSは、カーナビのためのVICS(Vehicle Information and Communication System、ビックス)情報、ETC(Electronic Toll Collection System、電子料金収受システム)、ASV(Advanced Safety Vehicle、先進安全自動車)、UTMS(Universal Traffic Management System、新交通管理システム)、MaaS(Mobility as a Service、マース)、安全運転の支援、交通(道路)管理の最適化、公共交通や緊急車両の支援、歩行者の支援などを含み、具体的には、バスのロケーションシステム、カーシェアリングなども含まれる広い概念になっています。

ITSは、国際的に標準化の動きが加速し、各国が技術開発にしのぎを削っている分野で、日本もアジア太平洋地域を代表する団体としてITS Japanを設立しています。日本が主導して電気自動車用急速充電規格の国際標準になったCHAdeMO(チャデモ)のように、ITSの各分野で国際標準になれば日本の自動車産業や移動体産業にとって大きなアドバンテージになるでしょう。


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名古屋モーターショーに併催された「あいちITSワールド」に出展していたトヨタの「ITS Connected」ブース。
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名古屋モーターショーに併催された「あいちITSワールド」に出展していたトヨタの「ITS Connected」ブース。


「コネクティッド(Connected)というのは、インターネットに常時接続していることです。この機能を搭載したクルマをコネクティッドカーといい、ITSの普及拡大、標準化にとって不可欠の技術になっています」(久枝さん、以下同)

クルマは所有からシェアへの大きな動きがありますが、コネクティッドカーの技術はライドシェアサービスやカーシェアリングにとっても重要です。こうした「つながる機能」は、商用車はもちろん、クルマを所有するオーナーにとって必須の装備になっていくと考えられているのです。

2000年にトヨタ・コネクティッドカンパニーを設立した同社は、2002年から一種のコネクティッドカー用のテレマティクス(Telematics)サービス「G-BOOK」のサービスを開始しています。テレマティクス・サービスというのは、クルマなどに移動体通信システムを搭載し、位置情報の送受信、エアバッグ連動の自動で緊急通報の送信、交通情報や天気情報の受信、電子メールの発信、燃費情報などを管理運用できる遠隔サービスのことです。

トヨタは今後、日米で販売する新車のすべてに車載通信機を標準で装備していくという方針を発表しており、コネクティッドカーによってビッグデータを収集し、各種サービスの拡充につなげようとしています。これに関しては、例えば2017年に損保企業と共同でIoT保険割引を開発し、こうしたインセンティブを設けてコネクティッドカーの普及に役立てていこうというわけです。

「もともと、最先端の情報通信技術を使っていろんな社会課題を解決していこうということで始まったITS Japanという団体があり、この活動に弊社も賛同して参加しています。コネクティッドカーに関する団体としては、2014年10月に設立されたITS Connect推進協議会というものがあります」

これまで自動車業界は、自動車関連技術とITS通信技術を組み合わせた運転支援システムの研究開発と公道実証実験などを展開してきましたが、この団体はこうした取り組みを一層加速し、実用化と普及を促進するための推進母体になっています。団体の目的は、ITS専用周波数を活用したITS Connect(運転支援システム)の基盤となる技術の検討と運用支援を行い、安心・安全な交通社会を実現することです。

「弊社はITSを、環境、自動運転、交通の社会的な課題などというように広い概念としてとらえています。事故削減が大きな目的ですが、安全システムには自律的に成立させようとするものがある一方、見えない部分をどうするのかというのが課題の解決にとって重要だと考えています。見えない死角を自律的に知ろうとしても技術的に難しいのですが、700メガヘルツ帯の電波帯により弊社のITS Connectedが見えない状況を教えてくれ、運転を補佐してくれます」

これは路車間通信システム(Driving Safety Support Systems、DSSS)と言い、インフラとクルマとの間でやり取りし、見えない部分の状況をクルマの側に知らせるという技術です。

交差点で右折待ち停車している際、対抗する直進車が接近していたり、右折する先に歩行者がいたり自転車が接近していたりするのに、運転者がブレーキペダルから足を離して発進しようとするなどした場合、路側に設置されたセンサーが対向車や歩行者の情報を表示と警告音でリアルタイムに運転者に教えてくれ、安全な右折と事故の予防につなげるそうです。


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出展していたITS Connectedを示した模型。交差点に設置されたセンサーが運転者の死角の情報を伝えてくれ、ヒヤリハットや事故の防止につながるといいます。
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出展していたITS Connectedを示した模型。交差点に設置されたセンサーが運転者の死角の情報を伝えてくれ、ヒヤリハットや事故の防止につながるといいます。


同じように、赤信号の注意喚起もし、赤信号の交差点に接近しても運転者がアクセルペダルを踏み続けている場合など、赤信号を見落としている危険性があると表示と警告音で注意喚起するといいます。

また、ITS Connectedは車車間通信も可能で、通信機器を搭載しているクルマ同士が接近するとインジケーターに表示が出るそうです。

「例えば、車車間通信によって緊急車両の接近を伝えることもできます。サイレンを鳴らしている緊急車両の接近をいち早く知り、自車両に対するおおよその方向や距離、緊急車両の進行方向を表示することで救急車に道を譲るなどの行動を円滑に行うことができるのです。

この技術は消防研究センターによる実験で、検証によりはっきりした効果が実証され、すでに愛知県内で徐々に行われている技術です。実際、名古屋市と豊田市、一宮市の救急車には全車両に発信器がつけられています」

車車間通信は、高速道路などでの追従走行の支援につなげることも可能だそうです。高速道路の渋滞は、坂道・勾配の登坂地点やトンネルの入り口などで前方の車両の速度が遅くなったりブレーキランプが点灯したりし、後続車がつまって起きるケースが多いのですが、レーダークルーズコントロールと車車間通信を組み合わせることでより円滑な追従走行ができ、それによって渋滞の緩和につなげることが可能になるといいます。

「通常のレーダークルーズコントロールですと、どうしても前方の車両のアクセルとブレーキの操作に追随するためにはタイムラグが生じます。そのため、後続車の速度がどんどん遅くなってしまうのですが、車車間通信によって前方の車両の操作を後続車にリアルタイムで伝えることでタイムラグを生じないスムーズな追随ができるというわけです。

現在は制御がついていて運転者による操作が必須ですが、将来的に自動運転技術が熟成してくれば、前方の車両のリアルタイム情報が正確に伝えられることで、トラックが数珠つなぎで隊列走行するようなことも可能になると考えています」

交差点のポスト上に通信機器を設置するインフラは、国や自治体、警察行政などと一緒にやっているそうです。路側センサーなどのインフラの構築も関係しているため、トヨタだけで可能な技術ではないといいます。

「産業界、省庁、学術など産学官が一緒にやっていく中で、ITS Connectedという技術を弊社が採用し、この技術を世の中へ広く提唱していこうということで2015年10月から始めました。

インフラが整備されてから参入する方法もあるかと思いますし、クルマ同士のやり取りもありますが、弊社としてはまだまだ時間がかかると思っており、現在、少しずつ搭載台数を増やしていこうとしているところです。すでに、弊社のクルマに標準装備とオプションでこの機能が搭載・用意されておりまして、2019年9月の時点で17万台ほど販売させていただいております」

この技術によってヒヤリハットが減ることはさまざまな効果検証を行うことでわかってきたそうです。実証実験の段階は終え、すでに日本各地の道路上で実用化されている技術というわけです。


<写真3>
霞が関1丁目に設置された路側装置による車両へのサービスの例。こうした交差点は愛知県内を中心に全国に増えつつあります。
※トヨタのITS Connectedのホームページ「路車間通信システムに対応している交差点(2019年8月時点)」より
(運用やメンテナスのため、予告なくサービスを一時休止、または変更する場合があり、常に周囲の状況を把握し、安全運転に心掛けてください)。
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霞が関1丁目に設置された路側装置による車両へのサービスの例。こうした交差点は愛知県内を中心に全国に増えつつあります。
※トヨタのITS Connectedのホームページ「路車間通信システムに対応している交差点(2019年8月時点)」より
(運用やメンテナスのため、予告なくサービスを一時休止、または変更する場合があり、常に周囲の状況を把握し、安全運転に心掛けてください)。



「現状では普及拡大の途中にあり、まだメリットとコストの間でオプション選択に悩まれている段階なのではないでしょうか。もちろん、ほとんどのクルマにITS Connectedによる通信システムが装備されるような状態になれば、お客さまにも大きなメリットを感じていただけると思います」

トヨタが音頭を取って、国内の自動車メーカーに実質的な参加を呼びかけているようです。同社のディーラーで他社製のクルマにも後付けで装備できますが、装備できる車種が限定されていると言います。


<写真4>
トヨタ自動車株式会社 久枝耕治コネクティッドカンパニー ITS・コネクティッド統括部 統括・企画室 主幹。オーナーがこのITS Connectedという技術の主旨を理解し、賛同してオプションでつける場合、トヨタ車で2万5,000円ほどになるそうです。
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トヨタ自動車株式会社 久枝耕治コネクティッドカンパニー ITS・コネクティッド統括部 統括・企画室 主幹。オーナーがこのITS Connectedという技術の主旨を理解し、賛同してオプションでつける場合、トヨタ車で2万5,000円ほどになるそうです。


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