『第21回 西日本国際福祉機器展』レポート(後編)

2019年11月14~16日に開催された「第21回 西日本国際福祉機器展」。後編では、洗髪や入浴とならび、介護現場で重要度の高いとされる排泄処理に関する株式会社リバティソリューションの展示に着目し、センサーによって自動で排泄処理を行うことができる装置の開発秘話や、介護者だけでなく要介護者の抱える課題にまで深くお伺いしました。

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おむつ介護と排泄の精神的ストレスを軽減

介護で大変なのは洗髪や入浴もありますが、排泄も重要な課題です。株式会社リバティソリューション(島根県松江市)は、その介護における排泄の課題に取り組んでいる会社です。説明してくださった滝野哲哉(たきの・てつや)取締役製品管理部部長によれば、同社は介護の現場での課題解決が社会的な使命と考えているそうです。

「寝たきり介護の場合、排泄問題が大きな課題といわれているくらい重要なものとされてきました。寝たきりでおむつ介護される側と実際に施設や在宅で介護する側、両方が大変な思いをされているのが現状です。

80歳、90歳になったとしても、おむつ介護のときに平気で排泄物を処理してもらえる人はほとんどいません。いくら年齢を重ねても恥ずかしいという気持ちはずっと持っています。

おむつ介護は、される側も羞恥心や自尊心があって本当ならされたくない作業でもあり、する側にとっても臭いや汚物処理などで大変な作業なのです」(滝野さん、以下同)

昨今、介護する側と介護される側間でのトラブルが問題となっており、滝野さんは、最初から要介護者へ危害を加えるつもりで仕事を始めた人はいないはずだと言います。

そのようなトラブルの要因として要介護者がおむつ介護などによって屈辱的な苦痛を感じ、そのストレスのはけ口として介護者側に対し感情的になってしまうことがあり、介護する側もストレスを受けてしまうといったケースが1つとして考えられます。介護する側もそのストレスに耐えきれなくなってトラブルに発展するのではないかと言います。

「例えば、要介護者がおむつ交換をされたくないと考えたときにどうするかというと、食べ物を減らしたり飲み物を減らしたりして、排泄の回数を少なくしようとするのです。

そのせいで食べたい物を我慢したり、脱水症状になることもあります。お腹が空いてイライラしたり、精神的なストレスがたまってきて、些細なことで怒ったりするのです」

同社が出展していたのは、シャワーパンツ「リバティひまわり」という自動排泄処理装置で、排泄物の代わりに味噌を使ってデモをしていました。股間に装着するカップの底に容量センサーがついていて、排便や排尿で物理的にカップの底に何かが存在するようになると反応して吸引を開始。尿の水滴が1、2滴では反応しないそうですが、ある程度の尿や便が出た瞬間に検知すると言います。

排泄物を検知すると吸引を始め、同時に洗浄水が出て、間欠的に2分半、温水洗浄便座と同じような洗浄を繰り返すそうです。その間は、どのタイミングで便が出ても吸引し続け、その後に乾燥まで行います。洗浄水は普通の飲料水で自動的に37℃に温められ、タンクには4リットル入るそうです。


<写真1>
味噌を使ってデモをしていた同製品。要介護者と介護者の負担を軽減するため開発されたものです。
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味噌を使ってデモをしていた同製品。要介護者と介護者の負担を軽減するため開発されたものです。


「吸引した尿や便は、本体の汚物タンクの中へ入ります。タンクの吸引ユニットを開けて蓋を閉め、吸引ホースを抜いてキャップを閉めてトイレに流すことができます。洗浄水のタンクを一杯にして、汚物タンクを空の状態にしていただければ、大便2回、小便4回程度の処理が可能です。

夜寝る前に準備しておけば、ほとんどの場合、翌朝まで介護する側は排泄の世話をする必要なく他の仕事に従事することができますし、要介護者も恥ずかしさを感じず、排泄の負担をかける精神的なストレスもなく睡眠をとることができるのです」

この製品を使うことで介護負担の軽減になるとともに、排泄介護をされる側もする側も精神的なストレスの軽減に繋がると言います。

<写真2>
排泄物が溜まった汚物タンクの処理も作業者の手を汚さず、簡単にできるようにしたそうです。
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排泄物が溜まった汚物タンクの処理も作業者の手を汚さず、簡単にできるようにしたそうです。


「高齢夫婦でどちらかが要介護になった場合、おむつ介護が必要になる時に体格のいい夫が倒れたとすると、妻がおむつ介護するのは体力的にも大変です。こうした製品があるかないかで、在宅での介護が可能になるか、施設に入らなければならないのか選択しやすくなるということになります。

この技術は人間の尊厳を守るためのものであるのと同時に介護する側の拘束時間を少なくし、負担の軽減にもつながるのだと思っています」

この製品を開発するにあたり、最も難しかったのは尿漏れ、液漏れをなくすことだったと言います。肌に密着させればいいのですが、寝たきりの高齢者の場合、肌が弱ってきてしまうという問題があったそうです。

「10年以上前から同様の機器は開発していましたが、カップの部分に納得がいかずに長く製品化をためらっていました。やはり尿漏れ液漏れがあったのです。

寝たきりの状態になると、肉付きがどんどんなくなって痩せ細ってしまいます。そうした状態の皮膚は健常者の皮膚とはまったく異なっていて、爪で引っ掻いただけで皮膚が容易に剥がれてしまうのです。直接、肌に触れる部分に粘着力の強いものを接着させると、剥がすときに皮膚ごと一緒に剥がれてしまうことがあります。

弊社の自動排泄処理装置の場合、人工乳房に使われる特殊シリコンを使っています。そのため長時間、装着していてもほとんど肌に害がなく、十分な粘着力があると同時に、皮膚へのダメージを極力与えずに剥がすことができるのです。また、カップと身体の間を密着させているので、尿漏れ、液漏れを防いでおり、これが他社の類似製品と弊社の自動排泄処理装置との大きな違いになっています」

この特殊シリコンは世界特許を取っていると言います。作っているのは、同社近くで義手義足、人工乳房などを作っている企業だそうで、もしかするとこの製品のカップに使えるかもしれないと打診し、一緒に開発を始めたとのことです。

「しかし、健常者と要介護者の身体は全然違いますから、いざ要介護者で試してみるとまったく使えない状態が続きました。寝たきりになった直後の肉付きの良い方も、痩せてお腹が凹んでしまった方も、体格や身体の状態にかかわらず、1サイズでもカップが柔軟に変形して身体にフィットさせて密着させられなければなりません。

特殊シリコンの形状も試行錯誤を繰り返し、弊社はヨーロッパにも代理店がありますが、フランス人で体格がかなり大きな方で試してみても大丈夫なようになりました」

装着したときは、最初は違和感がありますがすぐに慣れるそうです。ただ、いきなり連続して長時間の装着は避けてほしいと言います。

「初回は1時間、2時間程度で、問題がなくても初日は短時間で止め、翌日に褥瘡(じょくそう)や擦り傷の有無などを確認し、翌日から徐々に装着時間を長くしていただくように推奨しています。

厚生労働省からは1日8時間程度にという概略の指針が出ています。夜間に当製品を使用していただき、日中はおむつで外出したり施設なら談話室で過ごすなど、自立支援につなげましょうというのが日本のシステムですから、そのために役立つ装置だと思います。

また、寝たきりの高齢者だけではく、障がいを持った方、事故やALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病で身体が不自由になってしまった患者さんのためにも役立つでしょう」


<写真3>
株式会社リバティソリューション 滝野哲哉取締役製品管理部部長。同社は入浴装置や介護用品なども手がけているそうです。
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株式会社リバティソリューション 滝野哲哉取締役製品管理部部長。同社は入浴装置や介護用品なども手がけているそうです。


現在はおむつ介護が主流になってしまっているそうですが、滝野さんは、おむつ介護に潜む危険性についてもお話ししてくれました。

「例えば、寝る前に便が出た場合、夜間におむつ交換しなければなりません。ヘルパーさんは夜間いなかったりする場合も多いのですが、ヘルパーさんがいない夜間に便が出ておむつ交換できないと、便の中の雑菌が体温に温められてどんどん増殖していきます。そうすると特に女性の場合、尿道の長さが男性よりも短いこともあって尿路感染を引き起こしやすくなるのです」

尿路感染が原因で細菌が血流に入って広がった場合、敗血症、敗血症ショックによる血圧低下、急性腎不全、多臓器不全、肺炎などを引き起こすリスクが高くなるとのこと。高齢者の死因で肺炎は多く、尿路感染から引き起こされる合併症のケースも少なくないそうです。

「おむつ介護をしている施設で、尿路感染をまったくなくすことはほとんど不可能だと思います。しかし、自動排泄処理装置を使うことで、尿路感染をゼロにすることはできないにせよ、おむつ介護と比べると大幅に尿路感染のリスクを下げることが可能になります。

なぜなら、おむつ介護の場合、排泄物が30分から1時間、おむつの中に存在することは避けられませんが、自動排泄処理装置では排泄物が出ると同時に吸引を開始し、排泄物が身体に付着して残ったままの状態になることがないからです」


<写真4>
上部に空気穴が開いているのは、カップの密着性があまりにも高いので吸引したときに皮膚を引っ張ってしまうからだそうです。便や尿が出るとすぐに吸引が始まり、空気の流れが穴とは逆のほうへ向かうため、この穴から尿や便が漏れてくることはないそうです。 
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上部に空気穴が開いているのは、カップの密着性があまりにも高いので吸引したときに皮膚を引っ張ってしまうからだそうです。便や尿が出るとすぐに吸引が始まり、空気の流れが穴とは逆のほうへ向かうため、この穴から尿や便が漏れてくることはないそうです。 


この製品は日本国内の施設と在宅で約300台ほど導入されているほか、中国、ベトナム、ロシアなどの海外でも使われているそうです。

私たちがふだん生活していてもなかなか気付かない課題を新しい技術で果敢に解決しようとする各社の姿勢が見られ、また、同時にまだまだ解決しなければならない問題が数多くあるという現実にも直面させられた展示会でした。九州地方を中心に年に1回、開催される福祉機器の総合展示会、西日本国際福祉機器展。来年も秋頃に開催予定になっています。

文/石田雅彦

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