『第21回 西日本国際福祉機器展』レポート(前編) (1/2)

「第21回 西日本国際福祉機器展」は、九州地方、中国西部地域を中心にして、高齢者福祉に関わる介護専門職や施設管理者、福祉用具販売店、一般家庭向けの個人ユーザーを対象に、福祉用具、福祉車両、住宅設備、福祉関連の機器、装置、システムが集まる総合展です。福祉現場に必要な最新技術やシステムに触れられる展示会であり、施設向けだけでなく、介護や支援が必要な在宅向けの設備や機器も紹介されていました。その中から介護の入浴補助に役立つ新製品の開発秘話や利用形態を紹介しましょう。

【New!】新サービスのご紹介

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寝たまま、どこでも洗髪が可能なルームシャンプー

ユニークなデモンストレーションが注目を集めていたのが、ガードナー株式会社(福岡県福岡市)です。説明してくださった福山剣介(ふくやま・けんすけ)部長によれば、親会社は釣り具を製造販売している会社で、社長さんが釣り具に限らず、包装資材など50以上の特許を発明した人物ということです。出展していたのは、服を着たままでも寝たままでもどこでも短時間で頭髪を洗うことができるルームシャンプーという機器です。

「弊社社長の父親ががんで亡くなる前、長い入院生活を強いられている間で最も困っていたのは、髪の毛が洗えないことだったと言います。

社長は、看護師の友人などに簡単に頭が洗えるような機器はないのか聞いて回ったようですが、防水シートを敷いてやるしかないなど難しいことを知り、それなら自分で作るしかないということで開発した製品になります」(福山さん、以下同)


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展示会場でのデモの様子。先端のブラシを頭皮に押しつけるようにして洗髪します。
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展示会場でのデモの様子。先端のブラシを頭皮に押しつけるようにして洗髪します。


このルームシャンプーという製品は、本体の給水タンクに水やぬるま湯を入れ、一般的な充電式ではない家庭用の掃除機をジョイント部分につなぎ、あらかじめ霧吹きで頭髪を湿らせて専用シャンプーで泡立てます。

その後、ルームシャンプーですすいでいくそうですが、掃除機のスイッチを入れてヘッドブラシを頭に押しつけながら給水スイッチを押してお湯を吹き付けると、お湯が垂れずにシャンプーの泡を吸い込んでいきます。このため、服を着たままで自分一人でも、またベッドに寝たまま介護者によってシャンプー洗髪することが可能になっていると言います。

「最初は乾湿両用の掃除機などを応用すればできるのではと思ったそうですが、やはり難しくて3年前に最初の設計から作ることになりました。開発に1年くらいかけ、約2年前に市場に出しました。

いろいろな人の共感を得たことで改めて手応えを感じ、頭を洗うというのは世界中の悩みの1つだということに気づき、ルームシャンプーを製造販売する弊社を立ち上げたということになります」


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開発で最も苦労したブラシ部分。シャワーを吹き付けつつ、頭皮に貼り付かず、そのお湯がこぼれないサイズ感が難しかったそうです。
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開発で最も苦労したブラシ部分。シャワーを吹き付けつつ、頭皮に貼り付かず、そのお湯がこぼれないサイズ感が難しかったそうです。


開発を始めてからの1年は失敗の連続で、排水タンクが爆発したり、シャワーヘッドから水があふれ出したりと、事務所の中が水浸しになるような毎日だったとのこと。社員で試した洗髪は最高1日35回。風邪をひかせたり、頭皮が不健康な状態になることもあったそうです。

「本体自体は、基本的にお湯を入れるタンクと吸い込んだシャンプー混じりの排水の貯蔵タンクになっています。吸い込んだお湯を循環させず、洗髪後のシャンプーを含んだ水と空気を振り分けるための仕切りが内部についています。

社長によれば、フィルターを使わずに空気だけを分けるシンプルな機構は、原発の冷却装置の技術をヒントにしたそうです。技術的に難しかったのは、この水と空気を分離してタンクに吸い込む部分だと思われがちですが、実はブラシ部分の形状が難しかったと言います。

髪の毛を吸い込みすぎず、しっかりすすぐという部分で、お湯を吹き出して頭皮にぶつけながら外にこぼれる前に吸い込むのですが、ブラシが短すぎると頭皮に貼り付いてしまいますし、長すぎるとお湯がこぼれてしまいます。

既存の技術に頼らず、社長が考えた国内特許2件と国際特許1件、取得しています」(福山さん)


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本体内部は2分割されています。間にある仕切りは、原発の冷却装置の技術をヒントにしたと言います。左のホース先端の黒い部分を一般の家庭用掃除機に装着します。
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本体内部は2分割されています。間にある仕切りは、原発の冷却装置の技術をヒントにしたと言います。左のホース先端の黒い部分を一般の家庭用掃除機に装着します。


この製品のメリットは、どんな服装でも姿勢でも洗髪できる点ですが、短時間で少量の水でシャンプーができる点にもあります。粘性の高い市販のシャンプーはすすぎに時間がかかって少量の水で洗髪できないため、泡切れのいい専用シャンプーを推奨しているそうです。

「短髪の男性なら500ミリリットル、普通の長さの髪の毛なら1リットルの給水で5分間、使用できるので節水にもなります。

本体内部で洗髪後の水と空気を分離しますが、界面活性剤が入っている市販のシャンプーはその部分で泡立ち過ぎ、吸い込む空気と一緒に掃除機に泡が吸い込まれてしまって故障の原因にもなります」(福山さん)

夏などは冷水だけで頭を洗っても気持ちがいいという福山さん。施設に入っている方は、平均して週に2回しかお風呂に入れてもらえていないと言います。お風呂の時間以外でも、この製品があれば上半身が元気なら車椅子の方でも自分一人で洗髪ができるそうです。


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ルームシャワーの本体とブラシ、専用シャンプー。意外に単純でシンプルな機構になっています。
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ルームシャワーの本体とブラシ、専用シャンプー。意外に単純でシンプルな機構になっています。


「重さは約4kg、女性でも運べます。メンテナンスは特に複雑な機器ではないので簡単な水洗いで大丈夫です。

今後は介護以外に訪問散髪の理美容業界に向けてアピールしていこうと考えています。これ1台でシャンプー、パーマ、カラーのメニューが増やせますから、高額なシャンプー台や大量の水が必要なくなります。

腰の曲がった高齢者はあおむけに寝て行うバックシャンプーができませんから洗う側からも洗われる側からも喜ばれています」

量産は中国の上海で行っており、これまでの2年間で販売実績も伸びているとのこと。将来的には、在宅家庭、一家に一台を目指しているそうです。



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