コンクリート劣化評価や水中物体探知で活躍する光技術〜『光とレーザーの科学技術フェア2019』(前編) (1/2)

光とレーザーの科学技術フェアは、赤外線フェア(第9回)を母体として、分光フェア(第6回)、光学薄膜フェア(第6回)、紫外線フェア(第6回)、レーザー科学技術フェア(第4回)、オプティクスフェア(第4回)、可視光・次世代レーザー応用ゾーン(特設)といった各種フェアが集まって毎年秋に開催される研究開発者・技術者の技術交流や商談会を兼ねた光学系の展示会です。

会場も科学技術館ということで、全体に専門性の高い業種業態の人が多く、熱気あふれる展示会になっていました。出展の中からいくつか興味深い技術を紹介しましょう。


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分光技術でコンクリート構造物の劣化を評価

分光フェアのエリアに出展していた株式会社日進機械(香川県高松市)は、科学機器や計測機器などの商社ですが、自社設計開発による各種計測機器の製作や施工なども取り扱っている会社だそうです。同社が出展していたのは、コンクリート構造物の塩害劣化を評価する分光カメラです。

説明してくださった金崎浩司(かなさき・ひろし)営業部新規事業開発係長、濱田一志(はまだ・かずし)営業開発部主任によれば、コンクリート構造物のインフラの老朽化の多くが塩害によるものだそうです。

「コンクリートの監理保全や保守管理で、塩害はメンテナンス上、非常に重要な課題になります。現状ではランダムにコア抜きして検査しますが、それでは全体のどこに塩害が起きているか、正確に知ることができません。

ランダムなコア抜きは建築業界では既存の技術で、ずっと使われてきた技術になっています。そのため、なかなか新しい技術が出ても使っていただけないという難点がありました」(濱田さん)

非破壊・非接触でスクリーニングして塩分が高い部分をあらかじめ知ることで、その部分をコア抜きして評価していただけるのがインフラの点検において省人化や効率化で利点があり、実際的な点検でも効果の面でも手助けになるといいます。

「もちろん、これまでもハイパースペクトルカメラという点検システムはありましたが、高価で大型で重く取扱いの点でも難しいものでした。そこでまず香川大学の石丸伊知郎先生の研究室の特許技術を使って弊社がソフト側を作り出したものを製品化しました。

従来のハイパースペクトルカメラは一次元的な点での評価しかできなかったものを平面の二次元の情報を得て塩害の分布がわかるようにしたのです。さらに現在、より小型にして可搬性を高めた中赤外分光カメラを弊社で開発中であり、今回の展示会で出展したというわけです」(金崎さん)

今回出展した中赤外分光カメラは、グレー部分が他社製の中赤外カメラ部で、黒い部分の干渉計を同社が開発したそうです。
今回出展した中赤外分光カメラは、グレー部分が他社製の中赤外カメラ部で、黒い部分の干渉計を同社が開発したそうです。


中赤外分光カメラは、フーリエ変換赤外分光光度計(Fourier transform infrared spectrometer :以下FTIR)の検出器に中赤外カメラ用いることで、画像取得できるようにしたものです。
FTIRは、赤外光源・干渉計・検出器で構成されており、干渉器の内部には光を2つの光路に分けるためのビームスプリッタ―と、2つのミラー(移動鏡・固定鏡)が存在します。2つのミラーにより生み出される光路の長さの違い (光路差)によって、再び光を合わせたときに光干渉と呼ばれるユニークな物理現象が観察されます。この干渉光を詳しく調べると、測定対象物の分光特性(スペクトル)を知ることができるのです。

「ミラーの固定と稼働の差が光の波長と同じ割合で離れているときに、その波長だけが干渉し合って強くなり、半波長ズレていると打ち消し合ってゼロになるといった情報を得ることができ、これを赤外の光源で行って干渉して合成された波長スペクトルのことをインターフェログラムと言います」(濱田さん)

このインターフェログラムのデータを1画素1画素で測定し、すれ違う瞬間の、干渉して強くなった波長にフーリエ変換を行って各波長の強さを出し、そこから赤外が吸収されていたり反射したりしていることを知ると言います。

「例えば、コンクリート構造物の内部に塩害があれば、コンクリート中で固定化された塩化物イオンであるフリーデル氏塩の含有量として赤外の波長2,266nmに吸収ピークが出てくることでわかります。塩自体は見えませんから、コンクリートの成分と塩の成分が反応した吸収ピークになります。

さらに、従来の中赤外分光カメラは、波長2,000nm以上を検知できますが、実際に使ってみると水分だけ検知できれば塩害の有無を知ることができるとわかってきました。水分だけなら1,400nmのピークをターゲットにできますから、弊社が開発したより小型のカメラでは1,700nmまで検知できるようにしてあります」(濱田さん)

同社のカメラの場合、干渉させる部分を小さく安価な部品にしてあり、受光部分を換えればより多様な波長帯域にも対応可能になっているそうです。

「干渉を起こす際、隣の画素の光ときれいにかぶってしまうと干渉のピークがなかなか立たなくなります。そのため、1画素ずつ格子でマスクするのですが、これはマイクロデバイスの世界になるので香川大学の石丸先生らと一緒に作りました」(金崎さん)

また、ミラーの可動部も他の部分と接触せず、動かせなければならないので加工精度を高めることも難しかったそうです。コンクリート表面から劣化の度合いを解析し、さらに寿命予測までするシステムを出展していた同社。インフラ構造物の劣化評価に大きく役立つ技術といえそうです。


株式会社日進機械 濱田一志営業開発部主任(左)と金崎浩司営業部新規事業開発係長。従来のランダムなコア抜きではコンクリート構造物の正確な劣化評価が難しいのではと言います。
株式会社日進機械 濱田一志営業開発部主任(左)と金崎浩司営業部新規事業開発係長。従来のランダムなコア抜きではコンクリート構造物の正確な劣化評価が難しいのではと言います。



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