ラージフォーマット『中判』に活路を見出す!『デジカメ離れ』への挑戦(前編)

INTERVIEW

富士フイルム株式会社
R&D統括本部光学・電子映像商品開発センター
重歳 基雄
光学・電子映像事業部営業グループマネージャー
大石 誠

2019年6月28日に有効画素1億200万画素という超高画素のセンサーを搭載したラージフォーマットのミラーレスデジタルカメラを発売した富士フイルム。その後もデジタルカメラ業界は35mmフルサイズミラーレスの発売ラッシュが継続したそうです。一方で、フルサイズではない独自路線を進む富士フイルムの目指す「ものづくり」の視点はいったいどんなものなのでしょうか。

富士フイルムはアマチュア用からプロ用までのフィルムや印画紙を供給する総合写真感光材メーカーでしたが、コンパクトカメラから一眼レフカメラ、中判カメラ、および交換レンズまで生産する総合映像情報機材メーカーへと発展していきました。アナログからデジタルへの転換、スマートフォンの台頭によるコンパクトデジタルカメラの衰退への対策など、デジタルカメラの開発に関するエピソードを光学・電子映像事業部営業グループマネージャー 大石誠(おおいし・まこと)氏とR&D統括本部光学・電子映像商品開発センター 重歳基雄(しげとし・もとお)氏にお伺いしました。

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左がR&D統括本部光学・電子映像商品開発センター 重歳基雄氏、右が光学・電子映像事業部営業グループマネージャー 大石誠氏
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左がR&D統括本部光学・電子映像商品開発センター 重歳基雄氏、右が光学・電子映像事業部営業グループマネージャー 大石誠氏


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デジタルカメラはコンパクトデジタルカメラと一眼レフからスタートしました。コンパクトデジタルカメラはアマチュア用、一眼レフは写真館やプロカメラマンなどの業務用として製品化され進化してきました。近年は従来のフィルムを使った一眼レフカメラのレンズとの互換性から、一眼レフタイプのデジカメは35mmフルサイズとよばれる大型サイズのセンサーを採用するメーカーが増えています。一方でこれより大きなサイズを採用したのが富士フイルムのGFXシリーズです。特にGFX100は1億200万画素という超高画素が注目されています。

「なぜ富士フイルムがGFX100を製品化したのでしょうか。我々がラージフォーマットと名付けた中判サイズのセンサーを搭載したGFXシリーズとは別に、Xシリーズがあり、かれこれ9年ぐらい作っています。こちらは35mmフルサイズよりも小さなAPS-Cサイズのセンサーを採用しています」と大石誠氏は語ります。

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FUJIFILM「GFX100」中判サイズのセンサーを搭載しながらフルサイズに迫る機動性を実現。1億200万画素
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FUJIFILM「GFX100」中判サイズのセンサーを搭載しながらフルサイズに迫る機動性を実現。1億200万画素


ここでデジタルカメラのセンサーについて基本的な説明をしておきましょう。レンズ交換が可能なミラーレス、または一眼レフに搭載されるセンサーは、小さいサイズから順にマイクロフォーサーズ(3/4)、APS-Cサイズ、35mmフルサイズ、中判サイズとなっています。これはフィルム時代の規格を引き継いだもので、一眼レフの交換レンズとの互換性を持つ35mmフルサイズ、その後に登場して次世代フィルムAPSシステムと同じサイズであるのがAPS-Cサイズです。


<図1>
35mmフルサイズイメージセンサーの約1.7倍となる中判用大型イメージセンサー(43.8mm×32.9mm)のサイズ比較
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35mmフルサイズイメージセンサーの約1.7倍となる中判用大型イメージセンサー(43.8mm×32.9mm)のサイズ比較




ニコンはフルサイズのレンズを付けると撮影倍率が1.5倍に、キヤノンでは1.6倍になるセンサーを採用しています。フォーサーズはパナソニックとオリンパスがデジタル時代のフォーマットとして提唱した新たなサイズで撮影倍率は2倍です。アスペクト比は4:3で、レンズマウントは現在、マイクロフォーサーズが使われています。

大石氏は説明を続けました。
「9年前頃からコンパクトデジタルカメラの需要が急激に減少しました。弊社でも主流の製品で、デジタルカメラ部門の売り上げの多くを占めていたのですが、スマートフォンの普及と共に加速度的に減少しました。その過渡期に、我々はX100という製品を発売しました。レトロなデザインで光学ファインダーとEVFを切り替えて使える世界初のハイブリッドビューファインダーを積んだモデルです。

コンパクトデジタルカメラが減少する中で、比較的単価の高いXシリーズが、弊社のデジカメ市場を支えてくれました。しかし、この1シリーズだけではすべてのユーザーニーズに応えることはできないと考えていました。周囲からはいつ富士フイルムはフルサイズを出すのかと毎年、質問されていましたが、各社がフルサイズを発売した後でもあり、どんな商品が富士フイルムとして市場で差別化できるかをテーマに何度も社内で討論をしました」


50年前から作り続けた中判カメラのノウハウを活かす!

フルサイズミラーレスはソニーがいち早く製品化して、瞳AFなどオートフォーカスを高速化しています。これに対抗するため一眼レフカメラの老舗であるニコンとキヤノンがフルサイズミラーレス市場に参戦、パナソニックもライカレンズが使えるフルサイズミラーレスを発売しました。さらにSIGMAもコンパクトなミラーレスを製品化して話題になっています。フルサイズを出していないカメラメーカーはオリンパスと富士フイルムだけなのです。

「我々の得意なものは何かといえば、50年以上作り続けてきた中判カメラです。もちろん中判カメラ用レンズ、中判用のフィルムも作っていました。富士フイルムといえば中判というイメージもあり、営業写真館からアマチュアの風景写真まで、幅広く使われてきました。そこで我々がフィルムに込めた色作りのノウハウなどを活かした中判デジタルカメラができないかと考えたのです。現在はソニーが6,000万画素のミラーレスを出していますが、弊社は2017年に5,140万画素の中判センサーを搭載したGFX 50Sを発売しました。続けて、GFX 50Rというレンジファインダースタイルのモデルも製品化しています」



<写真3>
FUJIFILM「GFX50S」着脱式の有機EL電子ビューファインダーを採用して拡張性を確保。5,140万画素
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FUJIFILM「GFX50S」着脱式の有機EL電子ビューファインダーを採用して拡張性を確保。5,140万画素


<写真4>
FUJIFILM「GFX50R」フラットな軍艦部と775gの小型軽量ボディを実現。5,140万画素
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FUJIFILM「GFX50R」フラットな軍艦部と775gの小型軽量ボディを実現。5,140万画素


中判の灯は消えず、復活を待っていた人々

それではフィルム時代の中判カメラユーザーは中判デジカメ不在のときをどう過ごしていたのでしょうか。

「わりと多いのがフィルムの中判カメラを使い続けている方ですね。中判デジタルカメラは海外製のものが存在しましたがボディだけで500万円とか、一般ユーザーからすれば異次元の価格だったため、簡単に手を出すことはできませんでした。それで中判の代わりにフルサイズを使うという選択肢を選ぶ方も多かったようです」

一般的にはフルサイズの解像度は、35mmフィルムの解像度をすでに凌駕して、これ以上はもう必要ないと思われるのですが、それでも中判にこだわった理由は何なのでしょう。

「確かにフルサイズの解像度は年々、上がってきています。単純に画素数から計算する解像度だけでいえばフィルムを超えているかもしれません。しかし、中判フィルムで撮ったような空気感や立体感のある画像は、センサーサイズ自体が大きくなければ撮れません。フルサイズとラージフォーマットでは同じ焦点距離のレンズを使っても、写る範囲が違います。広い範囲が撮れ、さらに圧縮感も加わり、情報量が多くなります。GFXは中判フィルムまたは大判フィルム相当の写真画質を実現するカメラだと自負しています」

中判というフォーマットに活路を見いだした富士フイルム。35mmフルサイズで解像度は十分と思えたのですが、実際にラージフォーマットの画像を見てしまうと、その違いは歴然です。より良い画質で撮りたいというのが人間の性です。フィルムメーカーであったためにデジタルへの転換のタイミングは難しくなかったのでしょうか。また、フィルムの発色とデジタルの色をどう合わせるのでしょうか。ラージフォーマットのレンズ開発の困難などを後編で語ってもらいます。



《後編へ続く》


文/川野 剛


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