『第14回メッセナゴヤ2019』現地レビュー

メッセナゴヤは、愛知万博の理念(環境、科学技術、国際交流)を継承する事業として2006年から始まり、今年で第14回を数えます。主なテーマは異業種交流で、業種や業態の枠を超え、幅広い分野・地域からの出展を募り、出展者と来場者相互の取引拡大、情報発信、異業種交流を図る展示会となっています。

異業種交流の展示会ということで、新たな顧客の獲得、パートナー企業との出会い、新分野の事業へのヒントなどといった目的で出展、来場する場となっているようです。また、ざっと会場を見渡すと、各地の自治体や地域が主催して小確保した小間に、出展する企業が目立ちました。


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真円度の高い精密な円筒研削

株式会社山田製作所(愛知県あま市)は、農機具、建築機械の油圧部品、自動車用や電動工具の精密部品、風力発電用の軸受けの製作や研削をしている会社です。「丸をまん丸にする会社」というキャッチフレーズで円筒研削を得意にしているそうです。

山田英登(やまだ・ひでと)代表取締役によれば、メッセナゴヤへの出展は初めてだそうです。展示会自体も2回目で、今回は同社も加盟している中部部品加工協会の小間で出展していました。

「研磨は磨く工程、切削は磨いたものに寸法を出す工程になります。この二つをまとめて研削になります。研磨は手作業の場合も多いですが、弊社の場合は機械を使って砥石を使って磨きつつ寸法も出しています。1/1,000〜2/1,000の精度で真円度を出していますが、弊社は100%研削のある部品で切削だけというのは受けていません」


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複雑な形状や油圧部品に使われるような同軸度2μ以内、外径部円筒度3μ以内といった高精度な円筒研削技術を誇る同社の製品。
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複雑な形状や油圧部品に使われるような同軸度2μ以内、外径部円筒度3μ以内といった高精度な円筒研削技術を誇る同社の製品。


研削では、部材を固定しておき、砥石を近づけて研磨すると言います。使われる砥石は同社オリジナルで、山田さんは砥石をダイヤモンドで成型する技術がコア・コンピタンスになっていると胸を張ります。

「まず、研磨や研削をする企業自体が日本では少なくなっています。円筒研磨や内径研磨はロット数が1,000〜2,000個程度のものが多く、段取り替えが頻繁になってしまい、量産効果があまり期待できないため、他社は手を出しにくい領域になります。試作など1個2個のごく小ロットのニーズはありますが、弊社が手がけているような中ロットを受注する企業が少ないのです」

油圧部品は高い精度を求められ、同軸度が3/1,000以下でなければならない世界だそうです。工程が増えれば、それだけ同軸度の精度が低くなるので、旋盤も自動盤で1回で仕上げ、研磨でも1回ですませると言います。

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5年前に会社を継承した山田さん。3年前には第3工場を建て、今後はさらに業務を拡大していこうと考えているそうです。
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5年前に会社を継承した山田さん。3年前には第3工場を建て、今後はさらに業務を拡大していこうと考えているそうです。


ロボット化とともに、ジグの交換、段取り替え、プログラムの入力など、女性でもできるように標準化を進めているそうです。同社の特徴の一つは女性社員が多いことで、従業員29名中、女性が16名です。この理由について山田さんは技術を継承するためと言います。

「例えば『痛くない注射針』で注目された岡野工業さんも後継者がいなくて廃業したように、下町ロケットに代表されるような技術力がなかなか継承されていません。いくら優れた技術でも継承されなければなくなってしまいます。企業としては継続性も重要なので、高い技術力は当然のことながら、それを誰でも再現できるようにすることが弊社の目標です。

技術の質は保ちつつ、熟練者でも未習熟な人でも、性別や国籍などを問わずに同じような製品を作ることができることを目指しているのです。女性の雇用創出や社会進出に対しても賛同していますので、技術に詳しくない人でも作業できるようにした結果、現在のような体制になりました。最終的にはロボット化も視野に入れています」

研削以外に今後はサービスにも力を入れたいと言う山田さん。例えば、IoTを絡めたり、アプリケーションを作ったり、アフターサービスなど、研削の精度を高めるだけでなく付加価値を付けていきたいそうです。


平らで出っ張りの少ないネジ

ネジ頭部の出っ張りが少なく、ドローンなどで求められる1mmでも小さく1gでも軽くというニーズに対応するネジを出展していたのは株式会社サイマコーポレーション(神奈川県藤沢市)です。斎間孝(さいま・たかし)代表取締役社長によれば、同社もメッセナゴヤへの出展は初めてで藤沢商工会議所の小間で出展したそうです。

「ネジというのは、頭で押さえつける圧と摩擦、ネジ山にかかる圧の二つで複数の部材を締結しています。ネジ本体と頭の部分は同じ素材でワイヤーを金型で変形させて作ります。ネジは頭の部分が重要で、複数の部材を締結する場合、頭で軸力という力を50%くらい受け、ネジが緩まないように締結しているわけです」

以前は切削でネジを作ることも行われていたそうですが、いまはそうした加工はほとんどやられていないと言います。ワイヤーを工作機械へ入れるとネジ山が切られていないT字型のネジの元の状態ができ、その後、ダイスという工具で螺旋状のネジ山を転造(転がしてネジ山を刻む)するそうです。斎間さんは、金属加工の特性として変形するとその部分が硬くなって強度が増すので、転造の過程でネジの強度が少し上がると言います。


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斎間さんは、縫製業として起業した祖父から続く三代目で、家業を継ぐ際にネジ加工会社を立ち上げたと言います。
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斎間さんは、縫製業として起業した祖父から続く三代目で、家業を継ぐ際にネジ加工会社を立ち上げたと言います。


同社のネジは自社開発ですが、製造機械を持たないファブレスのメーカーだそうです。ネジは図面から同社で起こし、金型や加工機械は外部の会社に作ってもらっていると言います。

「最初にファーストドラフトの図面を起こし、それで金型を作ってもらい、試作品を出してみます。試作品の性能試験をしますが、最初はネジとしての機能がとても低い、製品にはならないものしかできません。しかし、そこから出てくるデータから弱点がわかるので、次はどこを工夫しようということで金型屋さんと一緒に詰めながら詳細図面を書いて試作を繰り返し、最終的に性能試験がクリアでき、量産できて製品化ができそうなネジが初めてできてくるというわけです」


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頭部の低い「スリムヘッド・スクリュー」の六角リセスバージョン。薄くてもトルク伝達が良く強度も担保されているそうです。
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頭部の低い「スリムヘッド・スクリュー」の六角リセスバージョン。薄くてもトルク伝達が良く強度も担保されているそうです。


同社が展示していたのはスリムヘッド・スクリューという頭部が平たくなっているネジです。頭の首下の部分のアールが小さく、締結部分に接している座面積という面積が大きくなり、薄板でも安定した締結が可能になっているそうです。

「頭をどんどん薄くしていけば、ある薄さでしっかり締結できなくなります。強く回しても頭が取れないだけの強度も保たなければなりません。こうしたネジでは、表面の出っ張りをできるだけ少なくしたいドローンやロボットなどに使われるニッチな市場です。ドローンが多く使われ始め、少しは需要が増えていますが市場が小さいのでどこも参入してこない領域です。需要が少ないわりにお客様からの要求も厳しく技術的に難しい領域になります。弊社はそこで勝負しているのです」

スリムヘッド・スクリューの素材はアルミ、ステンレス、鉄とニッケルの合金の3種類。M5サイズの長さ10mmのネジを100本まとめた際の重量は、従来のステンレス製十字なべ子ネジを100%とすると、スリムヘッド・スクリューでは鉄とニッケルの合金で66.8%、ステンレスで65.5%、アルミで22.4%と大きく軽量化されていると言います。また、締め付け強度でも、従来のネジより強いトルクで締め付けても頭が飛んだり壊れたりすることが少なくなっているそうです。

「標準的なM5サイズの十字なべ子ネジの場合、頭の出っ張りが3.3mmありますが、弊社のスリムヘッド・スクリューの場合は1mmになります。M2サイズではこれが0.5mmの厚さになっています。

六角穴のヘキサロビュラというJIS規格のネジでもスリムヘッド・スクリューを実現していますが、これは十字よりトルクの締め付け管理が格段にしやすく、頭部体積が少なくてもネジがきちんと回るようになっています。

十字と六角のどちらもスリムヘッド・スクリューでは、リセスという穴を浅くしており、浅くても工具がしっかり引っかかってトルクが伝達されるようになっています」

同社は、転造と熱処理で頭が飛びにくい加工を施しているそうです。スリムヘッド・スクリューの場合、素材は、ステンレスでは通常のものを、鉄系のネジでは専用の特殊な素材を使っていると言いますが、使う加工機械も工程も通常のネジと同じで、素材と金型に弊社独自の工夫が施されているそうです。

「ドローンなどを製造販売しているお客様からのご要望にも対応しますが、ネジの場合、数量的に3〜5万本が経済ロットなので、それ以下だと高くついてしまいます。

ですから、弊社の在庫の中から選んでもらうことも多いのです。スリムヘッド・スクリューで300〜400アイテムの在庫をご用意しています。サイズ、ネジの長さでそれだけの数になります。ただ、300mm以上の長さになると転造は難しくなります」

同社のスリムヘッド・スクリューの場合、ニーズが小さなサイズに偏っているそうです。仮に頭のサイズをどんどん大きくして直径300mmにしても、小さいサイズのスリムヘッド・スクリューと同じ原理で強度を担保できると言います。ただ、実際にそれくらいの大きさのネジで性能試験をやっておらず確かなことは言えないそうです。

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同社は、いたずら防止ねじも出展していました。リセス(ネジ穴)の種類がたくさんあるそうで、リセスに合った専用工具でなければ取り外しづらくなっています。
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同社は、いたずら防止ねじも出展していました。リセス(ネジ穴)の種類がたくさんあるそうで、リセスに合った専用工具でなければ取り外しづらくなっています。

難削材から小規模水力発電のユニットまで

1918年に創業した有限会社角野製作所(岐阜県恵那市)は、チタンやインコネルなどの難削材の複雑・特殊形状加工、量産加工などの技術を持つ会社です。メッセナゴヤには、再生可能エネルギー技術として小規模水力発電のユニットを展示していました。同社新事業グループの角野裕哉(すみの・ゆうや)さんによると、小型版と大型版の水力発電ユニットがあるそうです。

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小型版の水力発電のユニット。設置が容易ですが発電量は少なく、鳥獣害対策用の電気柵によく使われていると角野さん(右)は言います。
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小型版の水力発電のユニット。設置が容易ですが発電量は少なく、鳥獣害対策用の電気柵によく使われていると角野さん(右)は言います。


「小型のものは1kW以下で、発電機は2.4W、発電電圧は6Vです。田畑の水路などに設置でき、せき止めた水があふれて本体に入り、螺旋状の羽を回転させて発電する仕組みになっています。

この螺旋状の羽は学童が集めたペットボトルキャップを再利用したものでできていますが、流体力学の専門の先生に設計していただき、効率良く回転するように作りました。12Vバッテリーとセットで、発電量はさほど多くありませんが、鳥獣害対策として設置されている電気柵の電源供給などで活用されるようになっています」

大型のものは平均的な1世帯分の消費電力をまかなうだけの発電が可能だそうですが、設置に工事が必要で設置費用などを含めると500万円ほどになると言います。一方、小型のほうは重さも17.5kgほどで水路などに簡単に設置できるそうです。


<写真7>
大型版の水力発電のユニット用の羽部分。高効率の回転ができるように設計されているそうです。
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大型版の水力発電のユニット用の羽部分。高効率の回転ができるように設計されているそうです。


「弊社の切削事業では、モータースポーツのF1や人工衛星用打ち上げロケットH2用の部品も作っています。今後、再生可能エネルギー分野、医療分野の市場に向けて製品開発を続けています。水力発電ユニットのほかには、チタンに着色することで視認性を向上させた医療品、曲がる注射器などがあります」

このほか、航空宇宙部品や防衛省関係、某企業の研究開発用機密部品等の難度高い加工に挑戦しているという同社。小規模水力発電のユニットもユニークな技術で展示会でも目立つ内容になっていました。

異業種交流展示会として多くの出展者を集めたメッセナゴヤ2019。自治体や団体が取りまとめた小間で出展する企業も多く、多種多様でユニークな技術も目立つ展示会でした。


文/石田雅彦


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