旧来の「ものづくり」の発想を脱し、「マッチメイカー」の視点をデジタル化による「流れ」の進化に取り残されないために (1/3)

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

大量のデータを集め、テクノロジーを駆使して活用するプラットフォーマーが台頭している。彼らは従来不可能だったモノやコトを、これまでにない規模とスピードで便利にマッチングする新たな市場を創造し、大きく成長した。さらに中国では、プライバシーデータを活用した「信用の市場」が生まれつつある。こうした大きな「流れ」を、株式会社情報工場が厳選した3冊の書籍から考えてみたい。


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【総論】「ターボ化」したマッチメイカーが価値創造を増幅する

『最新プラットフォーム戦略 マッチメイカー』


 デヴィッド・S・エヴァンス/リチャード・シュマレンジー 著
 平野敦士カール 訳
 朝日新聞出版
 2018/05 336p 2,300円(税別)

「つなぐ」役割を果たすマッチメイカーが巨大プラットフォーマーの本質

 知らなかったことを調べ、欲しかった商品を購入し、レストランの予約をとる――。これらは、いずれも「探す」行動を伴う。この行動は、インターネットの普及で格段にスムーズになった。

 このスムーズさ、便利さは、現在世界の時価総額ランキングの上位を占めるグーグルやアマゾンといったプラットフォーマーが実現する。彼らが「探す私たち」を「提供する誰か」につないでくれるおかげで、目的の情報や知識、モノやサービスなどに到達できる。

 このように「つなぐ」役割を果たすプラットフォーマーは「マッチメイカー」とも呼ばれる。本書『最新プラットフォーム戦略 マッチメイカー』では、著者である二人の米国経済学者が、GAFAと呼ばれる巨大プラットフォーマーや、急成長したエアビーアンドビーやウーバーなどのスタートアップがマッチメイカーであると指摘。それらを成功に導いた戦略を解き明かす。

 もちろんマッチメイカーは、最近になって突然現れたのではない。数千年前に存在した物物交換市場も、「欲しい人」と「持っている人」を結びつけるマッチメイカーである。

 ただし、マッチメイカーは時代とともに進化していった。物物交換市場から流通業や貿易業が生まれ、取引のための決済や金融といった新たなマッチメイカーが次々と登場していく。

 原始的な物物交換市場から進化したマッチメイカーは、複数のプレーヤーが参加できる「マルチサイドプラットフォーム」であるのが特徴だ。

ICTによる大規模でスピーディーな「思いがけない」マッチメイキングが出現

 著者らは、ここにきて情報通信技術(ICT)によってマッチメイカーが「ターボ化」しており、それがプラットフォーマーの成功につながっていると指摘。ICTが、それまで距離や時間の制約から不可能だったマッチングを、とてつもない規模やスピードで実現可能にし、それが価値創造の幅を拡大したのだ。

 たとえばウーバー。スマートフォンとクラウドを使って、ライドシェアを提供したいドライバーと、移動のニーズがある個人をスピーディーかつ正確にマッチングさせた。そしてそれにより新たなビジネスと市場を開拓したのである。

 日本では昨年トヨタ自動車がソフトバンクと共同出資して設立したMONET Technologies株式会社がe-Paletteという小型バスのような形の移動店舗を自動運転するプラットフォームを準備中だ。

 このプラットフォームで、e-Paletteのテナントが販売する商品やサービスを、必要な人にマッチングする。ユニークなのは、移動店舗が勝手にユーザーの近くまで移動してくることだ。場所のマッチング機能まで提供されるのだ。

 このように現代の先端的なマッチメイカーは、以前は出会えなかったグループ同士を結びつけたり、新たな出会いの場を作ることで、これまでにない価値を創造する。ゆえにその成功は、これまでの「何を作って売るか」から「誰と誰を、どのようにマッチングすると人々は喜ぶか」への発想の転換にかかっていると言っていい。

 これからもICTは発展し続けるだろう。まだまだ、従来とは異なる発想のマッチメイキングを行うプラットフォームが生み出される可能性は高い。


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