『粉体工業展・大阪2019』でみた最新粉体技術の苦労と工夫を凝らせた数々のアイディア (1/4)

工業用の粉体には、小麦粉、砂糖といった食料、プラスチック、繊維、医薬、化学製品、鶏糞などの環境負荷物といった有機系、あるいは金属、セラミックなどの無機系と種類が多く、材料を粉体にすることで乾燥、混合、成形、運搬などの工程の改善や効率化がはかられるため、粉体に関する技術はものづくりにとっても重要です。今回の展示会レポートでは、粉体の品質管理にとって欠かせないコンタミネーション(コンタミ、混入)除去、大阪での開催ということで粉ものに関する技術、粉体の扱いで重要な粉じん爆発の予防と防護などを中心にご紹介します。

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マグネットで異物除去

まず、コンタミの除去ですが、これは二次電池の中でもノーベル化学賞を授賞するなど改めて脚光を浴びているリチウムイオン電池の材料に使われる粉体の品質管理にとって欠かせないものになっています。

正極に使われるリチウム化合物は、計量、混合、造粒、粉砕といった生産工程によって作られますが、この過程で最も注意しなければならないのが金属物質の混入(コンタミネーション、コンタミ)です。正極に異物混入があると、電池内部で短絡が起き、異常高温、膨張、爆発といった事故につながりかねません。

今回の粉体工業展にもコンタミ対策の技術が数多く出展していました。なかでもダイカテック株式会社(徳島県徳島市)は異物除去のためにマグネットを使う装置を出展していました。独自技術としてマグネットのバーを斜めに配置し、除去率を高めており、説明してくださった林宏(はやし・ひろし)精算技術部係長によれば特許を取得している技術だそうです。

「マグネットを使った異物除去はポピュラーな技術ですが、一般的には横から入れるか、詰まりやすい場合はタテにするかという機構になっているのに比べ、弊社の製品はマグネットを斜めに配置しているのが特徴です。金属異物が入っていてはいけないリチウムイオン電池の正極材やセパレータなどの材料粉体の20μmサイズや50μmサイズまで除去する装置です」


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ダイカテックのマグネットを斜めに配置した異物除去装置。コンタミ対策で活用されているそう。
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ダイカテックのマグネットを斜めに配置した異物除去装置。コンタミ対策で活用されているそう。

斜めにマグネットを配置するという技術でも、粉体によってそれぞれ特性が異なり、詰まりやすい粉もあれば流動性の良いものもあり、除去する対象の異物にしても磁性の低いものもあって調整が必要だそうです。そのため、マグネットの磁力、ピッチ、配置などトータルで設計していると言います。

「やはり、お客様が必要な粉体の特性を知っていることも重要ですし、設備の中で上流から下流へどう流すかという粉体の供給の方法も考えなければいけません。ある程度の量をどさっと流すのか、ぱらぱらと流すのかという違いで除去率も変わってきます。また、上から下へ落ちてくる過程1回で除去できるようには作っていますが、何回かに分けたほうが効率よく除去できる粉体もあります」

異物除去にマグネットを使う場合、異物がマグネットに付着し、それを清掃したり捕集するためのメンテナンスが必要になりますが、マグネット自体が重いため、作業者の大きな負担になります。このソリューションはコンタミ除去装置を出展していた各社共通の課題のようでしたが、同社では電動によるメンテナンスの完全自動化を実現したと言います。

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ダイカテックの出展ブース。
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ダイカテックの出展ブース。

「マグネットが重いということもありますが、強力な磁石なのでくっついたら手を挟んで骨折したり怪我をすることがあるのです。労働事故の防止や人手確保のためにも、お客様からの要望として、なるべくマグネット自体に人が触らないようにしたいというものが多いのです。そこで今回、すべて電動という装置を開発しました。以前は空気圧でマグネットを動かしていましたが、空気圧ですと配線が複雑になりますし、装置自体のメンテナンスがしにくく本末転倒になっていました。新開発の装置はリニアモーターの原理でコイルを使った機構になっています。マグネットは扱いにくいので省人化技術は必須ですね」

また、ダイカテック株式会社では粉体の取扱いにつきものの問題に対し、徳島大学との共同研究で特許取得した技術も出展。これは粉体が装置の内面などに付着しにくくする技術です。

「いわゆる水を弾く蓮の葉効果というものがありますが、鋼板の表面に微細なミクロン単位の凹凸を作ってその効果を再現した技術です。鋼板の表面の形状をいわば剣山状にし、平面ではなく点で受けて接触抵抗を減らし、粉体が接触する面積を小さくし、粉体の脱落性を良くしています。ホッパー(混合容器)の内部にこの処理を施すことで粉体が付着しにくくしたり、ブリッジ現象(粉体同士がアーチ状の構造を作り詰まりやすくなる現象)を起こしにくくしたりするというわけです」

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粉体が付着しにくい表面処理を施した技術はバイオミメティクス(生態模倣)の一種。
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粉体が付着しにくい表面処理を施した技術はバイオミメティクス(生態模倣)の一種。

最後に扱いにくい粉体について林さんにうかがいました。
「静電気を帯びやすい粉は扱いが難しいですね。人間が感じるようなレベルの静電気ならイオナイザーなどで抑制できますが、粉体が静電気を帯びて天井に付着する程度ではイオナイザーはほとんど効果がありません。帯電しない粉を一緒に流したり、もし湿度を帯びさせてもいいのなら湿度管理して静電気を除去するしかないのです」

リチウムイオン電池では今後、全固体電池になっても材料のコンタミ管理は必要です。こうした異物除去の技術は、将来的にもなくならないでしょう。

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ダイカテック株式会社 林 宏精算技術部係長。
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ダイカテック株式会社 林 宏精算技術部係長。

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