『粉体工業展・大阪2019』現地取材レポート

工業用の粉体には、小麦粉、砂糖といった食料、プラスチック、繊維、医薬、化学製品、鶏糞などの環境負荷物といった有機系、あるいは金属、セラミックなどの無機系と種類が多く、材料を粉体にすることで乾燥、混合、成形、運搬などの工程の改善や効率化がはかられるため、粉体に関する技術はものづくりにとっても重要です。今回の展示会レポートでは、粉体の品質管理にとって欠かせないコンタミネーション(コンタミ、混入)除去、大阪での開催ということで粉ものに関する技術、粉体の扱いで重要な粉じん爆発の予防と防護などを中心にご紹介します。

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マグネットで異物除去

まず、コンタミの除去ですが、これは二次電池の中でもノーベル化学賞を授賞するなど改めて脚光を浴びているリチウムイオン電池の材料に使われる粉体の品質管理にとって欠かせないものになっています。

正極に使われるリチウム化合物は、計量、混合、造粒、粉砕といった生産工程によって作られますが、この過程で最も注意しなければならないのが金属物質の混入(コンタミネーション、コンタミ)です。正極に異物混入があると、電池内部で短絡が起き、異常高温、膨張、爆発といった事故につながりかねません。

今回の粉体工業展にもコンタミ対策の技術が数多く出展していました。なかでもダイカテック株式会社(徳島県徳島市)は異物除去のためにマグネットを使う装置を出展していました。独自技術としてマグネットのバーを斜めに配置し、除去率を高めており、説明してくださった林宏(はやし・ひろし)精算技術部係長によれば特許を取得している技術だそうです。

「マグネットを使った異物除去はポピュラーな技術ですが、一般的には横から入れるか、詰まりやすい場合はタテにするかという機構になっているのに比べ、弊社の製品はマグネットを斜めに配置しているのが特徴です。金属異物が入っていてはいけないリチウムイオン電池の正極材やセパレータなどの材料粉体の20μmサイズや50μmサイズまで除去する装置です」


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ダイカテックのマグネットを斜めに配置した異物除去装置。コンタミ対策で活用されているそう。
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ダイカテックのマグネットを斜めに配置した異物除去装置。コンタミ対策で活用されているそう。

斜めにマグネットを配置するという技術でも、粉体によってそれぞれ特性が異なり、詰まりやすい粉もあれば流動性の良いものもあり、除去する対象の異物にしても磁性の低いものもあって調整が必要だそうです。そのため、マグネットの磁力、ピッチ、配置などトータルで設計していると言います。

「やはり、お客様が必要な粉体の特性を知っていることも重要ですし、設備の中で上流から下流へどう流すかという粉体の供給の方法も考えなければいけません。ある程度の量をどさっと流すのか、ぱらぱらと流すのかという違いで除去率も変わってきます。また、上から下へ落ちてくる過程1回で除去できるようには作っていますが、何回かに分けたほうが効率よく除去できる粉体もあります」

異物除去にマグネットを使う場合、異物がマグネットに付着し、それを清掃したり捕集するためのメンテナンスが必要になりますが、マグネット自体が重いため、作業者の大きな負担になります。このソリューションはコンタミ除去装置を出展していた各社共通の課題のようでしたが、同社では電動によるメンテナンスの完全自動化を実現したと言います。

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ダイカテックの出展ブース。
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ダイカテックの出展ブース。

「マグネットが重いということもありますが、強力な磁石なのでくっついたら手を挟んで骨折したり怪我をすることがあるのです。労働事故の防止や人手確保のためにも、お客様からの要望として、なるべくマグネット自体に人が触らないようにしたいというものが多いのです。そこで今回、すべて電動という装置を開発しました。以前は空気圧でマグネットを動かしていましたが、空気圧ですと配線が複雑になりますし、装置自体のメンテナンスがしにくく本末転倒になっていました。新開発の装置はリニアモーターの原理でコイルを使った機構になっています。マグネットは扱いにくいので省人化技術は必須ですね」

また、ダイカテック株式会社では粉体の取扱いにつきものの問題に対し、徳島大学との共同研究で特許取得した技術も出展。これは粉体が装置の内面などに付着しにくくする技術です。

「いわゆる水を弾く蓮の葉効果というものがありますが、鋼板の表面に微細なミクロン単位の凹凸を作ってその効果を再現した技術です。鋼板の表面の形状をいわば剣山状にし、平面ではなく点で受けて接触抵抗を減らし、粉体が接触する面積を小さくし、粉体の脱落性を良くしています。ホッパー(混合容器)の内部にこの処理を施すことで粉体が付着しにくくしたり、ブリッジ現象(粉体同士がアーチ状の構造を作り詰まりやすくなる現象)を起こしにくくしたりするというわけです」

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粉体が付着しにくい表面処理を施した技術はバイオミメティクス(生態模倣)の一種。
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粉体が付着しにくい表面処理を施した技術はバイオミメティクス(生態模倣)の一種。

最後に扱いにくい粉体について林さんにうかがいました。
「静電気を帯びやすい粉は扱いが難しいですね。人間が感じるようなレベルの静電気ならイオナイザーなどで抑制できますが、粉体が静電気を帯びて天井に付着する程度ではイオナイザーはほとんど効果がありません。帯電しない粉を一緒に流したり、もし湿度を帯びさせてもいいのなら湿度管理して静電気を除去するしかないのです」

リチウムイオン電池では今後、全固体電池になっても材料のコンタミ管理は必要です。こうした異物除去の技術は、将来的にもなくならないでしょう。

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ダイカテック株式会社 林 宏精算技術部係長。
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ダイカテック株式会社 林 宏精算技術部係長。

「粉もの」の本場ならではの技術

大阪といえば、お好み焼きやたこ焼きなどの「粉もの」が有名です。株式会社ダルトン(大阪府東大阪市)は、粉ものを中心に化学、製薬などの業界向け粉体製造装置メーカーです。説明してくださった稲垣健児(いながき・けんじ)パウダー・システム機器事業部事業推進統括部事業管理課、課長によると、もともと小麦粉の工場が東大阪にあり、そのまま粉体の技術拠点になっているそうです。

「粉体に関する技術ジャンルでは、粒子を作る、粉砕する、混合する、分球(大きさを振り分ける)、造粒、乾燥させる、試験するなどがありますが、弊社は卓上機器から工場プラントまでこれら粉体に関わる製品を手がけています。粉物は水分などの環境によってかなり影響を受ける素材です。例えば、小麦粉でも粒径が異なれば、粉砕する方法が変わってきます」

異なった種類の粉体がどう混ざっているかを評価することは難しいと言いますが、同社でも視覚的に見るなどの基礎的な評価をし、その後にお客様のほうで官能試験などを行っているそうです。また、粉体の場合、粒子が小さくなればなるほど作るのが難しいと言います。


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ダルトンの出展ブース。有機系粉体を中心に多種多様な製品やプラント技術を展示。
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ダルトンの出展ブース。有機系粉体を中心に多種多様な製品やプラント技術を展示。

「小麦粉などの有機系の粉体の場合、ギュッと握って固まる程度に水分なり結合材なりを入れて湿らせ、それを0.3mmの粉体なら0.3mmの穴から圧をかけて押し出します。この場合、圧をかけて穴から出てこないとつまってしまい、きちんと評価できません。穴から出てくる程度の粘性が必要ですが、その調整が難しい部分になります。押し出す際に重要なのは、素材ごとの圧力のかけ方、粒の大きさ、水分が最も重要です。水分が少ないと粒にならずに粉のまま出てきたりしますし、水分が多いと練られてしまって粘性が高くなって出てこないこともあります」

ちょうどスパゲティの製麺のような工程になるわけですが、これでは麺状の細長い円柱のままです。次の工程では仕様に応じて短い円柱や球状にしていくそうです。

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細かい穴から粘性を持たせた混合粉体を押し出し、麺のような円柱状の製品が元になり、後工程で球体にするなどしていきます。
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細かい穴から粘性を持たせた混合粉体を押し出し、麺のような円柱状の製品が元になり、後工程で球体にするなどしていきます。

「これを丸める装置があり、ツブツブの丸い粒子にしていきます。ある程度、短い円柱なら球にしなくてもいい製品もありますので、工程の数はそれぞれ異なります。しかし、このままだと水分を含んでいますから、乾燥させてそれぞれの粒子がくっつかないようにします。
粉体を混ぜ合わせて粘度を出し、一定の大きさの円柱や球にするというわけですが、乾燥後の評価も重要だと言います。

「押し出し顆粒の場合、流動性が良くなるので食品では鰹だしなどの調味料、粉末のスープなどに使われています。粉末スープはお湯を加えてすぐに溶けなければなりませんが、逆に湿気を吸って固まってしまわないようにしなければなりません。これは洗剤なども同じで、造粒機もいろいろあり、溶けやすい、崩れやすい、硬くできるもの、いろいろな種類の粒体を作ることができます」

材料の組成が少し変わっても粘度などが変わってくるため、それぞれ組み合わせに応じて試行錯誤でやっていくしかないという稲垣さん。大阪ならではの粉ものの世界があるようです。

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株式会社ダルトン パウダー・システム機器事業部 事業推進統括部 事業管理課稲垣健児課長。小麦粉を扱う工場が東大阪にあり、そこから粉体に関する技術開発が始まったそう。
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株式会社ダルトン パウダー・システム機器事業部 事業推進統括部 事業管理課稲垣健児課長。小麦粉を扱う工場が東大阪にあり、そこから粉体に関する技術開発が始まったそう。

粉体をサイズで分ける

このように粉体といっても製造工程だけでも粉砕や混合、造粒といったものがありますが、その中に分球という粒子の大きさをそろえたり、大きさごとに分けたりする技術があります。

株式会社布引製作所(兵庫県神戸市)は主に打ち抜きスクリーンの製造販売をしている企業ですが、今回の粉体工業展には粒体の乾燥やふるい分けに使われるスリット出窓スクリーンを出展していました。説明してくださった営業部本社西日本担当グループ井上明彦(いのうえ・あきひこ)さんによれば、従来のふるい分けでは、丸い穴の空いたスクリーンを使っているそうです。

「これはスクリーンの目で粒子の大きさを分けるという技術です。丸い穴が空いたスクリーンではどうしても目詰まりが出てしまうので、弊社独自の出窓型のスクリーンを開発したというわけです。出窓スクリーンというのは、ちょうど金属製の下ろし金のように前後動する一方が立ち上がり、前後動の反復が戻る際に穴よりも小さい粒子を選別できるようになっています。目の高さで物の大きさを制御していますが、例えば1.8mm以下は落ちてそれ以上に大きい物を選別しています」


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布引製作所の分球装置。スリット出窓スクリーンの搬送プレートが前後動し、球体のサイズに応じて下のボックスに分けられます。
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布引製作所の分球装置。スリット出窓スクリーンの搬送プレートが前後動し、球体のサイズに応じて下のボックスに分けられます。


井上さんによれば、こうしたスリット出窓のスクリーンを作っている企業は少なく、日本国内ではおそらく同社だけだということでした。また、スクリーンを作る技術で難しい部分は金型の製作だそうです。

「金型は自社設計で、ノウハウで真似しようと思ってもなかなかできないので弊社だけということになります。この穴を同じ金型で一つひとつ成型していきますが、肉を盛り上げて出っ張りを作りつつ、穴を開けていくことを1工程でやっています。細かいものでは0.5mmのもありますが、穴の距離を詰めていくと金型同士が干渉して金型が割れてしまうことがあります。打ち抜いているわけではなく肉を盛り上げているので、桟の部分で引きちぎれてしまったりすることもあります。こうした部分を工夫しながら金型を作っていくので難しいのです」

スリット出窓スクリーンの例。一つひとつの穴ごとに金型で成形すると言います。
スリット出窓スクリーンの例。一つひとつの穴ごとに金型で成形すると言います。


お客様は、主にプラントメーカー、篩機器メーカーということですが、乾燥機メーカーにも納品しているそうです。送風機の排気口に使われ、方向性を持ちながら空気を送り出す部分で、粒子の大きさで分ける技術が空気の流れを調整する技術として応用されているというわけです。

粉じん爆発にどう対処するか

最後に紹介するのは、粉じん爆発の防護装置です。粉体の挙動には多種多様な現象が起きますが、日本では労働安全衛生法の粉じん障害防止規則に定められているように粉体の取り扱いでは粉じん爆発の防護は必ず必要になる技術です。

粉じん爆発について出展社から基本的な留意点などをうかがいました。ATEX爆発防護株式会社(東京都江東区)の鉾田泰威(ほこた・やすたけ)営業技術取締役は、粉じん爆発は空気中に巻き上げられたときが危険と指摘します。

「可燃性ではない粉体が自然酸化し、表面に酸化皮膜が形成されるだけでは爆発しません。爆発するのは、そうした粉体が空気中に巻き上げられたときです。そうした状態になると、遮蔽されていた面が急激に増え、表面積が何千倍にもなって、空気に触れる面積が増えます。
粉体が巻き上げられた状態を浮遊粉じんといい、浮遊粉じん濃度がある一定の値になった場合、そこにある程度の着火エネルギーがあれば、爆発が起きてしまいます。表面酸化エネルギーが集積し、すべてが同時にエネルギーを発生させる現象が粉じん爆発というわけです」

装置内の粉体は定常的に爆発が起きないレベルに管理維持されていますが、粉体が何かのきっかけで装置外へ出てしまい、そこに静電気の火花やタバコの火など着火するきっかけがあれば粉じん爆発が起きるそうです。

「通常の操業設備では、粉じん爆発が起きるような環境にはないはずです。それが非定常、定常状態が乱れたとき、あるいは自由空間に飛散したときに爆発が起きます。内部に自由空間のある装置は粉じん爆発を起こす危険性があるので、空気に対する一定の表面積、トリガーになるエネルギーが粉じん爆発が起きるための要素です」

粉体や粉じんが巻き上げられるのは単なる物理的な現象です。例えば、単に容器が蹴飛ばされて衝撃を受けても起きるそうです。

「粉体というのは、搬送する場合に貯蔵から空気搬送されることが多いのです。集塵して吸い込まれた粉体が空気と一緒に移動させられ、空気搬送されますから必然的に巻き上げられなければ運べないことになります」

また、粉じん爆発は一度、爆発が起きると瞬間的に爆発が連鎖反応で広がっていきます。こうした現象が起きるとそれを途中で食い止めることは困難だそうです。

「浮遊している粉体金属に着火すると、その爆発によって新たに粉体が巻き上げられ、どんどん伝播して連鎖的に爆発が広がっていきます。ろうそくも同じ現象ですが、有機物の場合はプラスチックや木粉が熱せられ、粒子からガスが揮発します。浮遊している間に粒子のガス同士が着火して燃えていくわけです。

粉体がアルミニウムであれば、一度、粉じん爆発が起きると抑制することはできません。瞬間的に爆発が連鎖してアルミニウム自体も燃焼しますから、燃やし尽くすか安全な方向へ逃がすかしかないのです。アルミニウムの場合、表面酸化熱で直接の熱量が大きく発熱量があまりにも高いのです。こうした粉じん爆発の場合、厄介なのは水をかけるとさらに水素爆発を起こして燃え広がってしまうことです」

そのため、粉じん爆発の防爆、防護では、破壊圧力を放散させる本体防護という考え方が主流だそうです。本体を保護することと高速で伝播する爆発を遮断して食い止める2つのファクターが重要な技術になります。

「粉じん爆発を予防するためには、まず装置内部はもちろんその周辺、工場内の清掃が大切です。そもそも粉が爆発の原因になるので、機械や装置の周辺にゴミや埃などの余分な粉がないこと、ダクトなどに粉体が溜まらないようにすることが重要です。

工場で爆発が起きる場合、小爆発が引き金になって、床や蛍光灯の裏や梁に積もった埃などを払い落とし、それが連鎖していくことも多いのです。粉体が舞い上がらなければ爆発が起きません。二番目に着火源としての静電気の管理です。もちろんタバコを吸うなどはもってのほかです」

アイシン産業株式会社(埼玉県川口市)も粉じん爆発の防爆・防護装置を出展していました。説明してくださった佐藤智雅(さとう・ともまさ)営業技術本部東京営業部営業二課課長は、国内では粉じん爆発対策は遅れてきたと言います。

「粉じん爆発対策は欧米では義務化され、粉じん爆発の対策に関する専門メーカーは国内に外資系が4社くらいあります。輸入品が主なために値段が高かったので、各社オリジナルの装置を作り、自社の責任の範囲で対策を行ってきましたが、実際に日本でも粉じん爆発事故で死亡した方がいます。業界内では労働安全の観点からこれから粉体を扱ううえで安全性を高めていこうという気運が高まっています」


<写真10>
アイシン産業の防爆装置。左の黒い装置は粉じん爆発を遮断するもので、右上の金属プレートが爆発力を外へ逃がし、本体装置を守る部品です。右下は金属プレートから爆発による火炎が外へ出ないようにするためのものになります。
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アイシン産業の防爆装置。左の黒い装置は粉じん爆発を遮断するもので、右上の金属プレートが爆発力を外へ逃がし、本体装置を守る部品です。右下は金属プレートから爆発による火炎が外へ出ないようにするためのものになります。

同社では、粉じん爆発対策として爆発放散パネルなど、爆発が起きた際に被害を軽減させるための装置を出展していました。粉じん爆発では炭鉱内の事故が思い起こされますが、粉じんを扱う機器に集塵機のダクトから爆発や火炎が広がらないように遮断弁などの防爆装置を使えば、人命や装置本体を救ったりすることができます。

未知の部分も多い粉体ですが、粒度が小さくなると密度も小さくなる理由であったり、混合容器(ホッパー)内部で粉体が固着(ブリッジ)する理由などについてもまだ詳しくわかっていない部分もあるようです。

今回の『粉体工業展・大阪2019』は3日間で1万847名(前回2017年は9976名)が来場。次回は東京ビッグサイトで2020年11月に開催されます。


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