『関西ものづくりワールド2019:機械要素技術展』取材レポート(前編)

製造業の開発や生産性・品質の向上、コストダウンなどを目的に、東京、名古屋、大阪の3か所で毎年1回ずつ開催されているのが「ものづくりワールド」です。そのなかで「関西ものづくりワールド2019」はインテックス大阪で行われ、近畿圏を中心にした製造業向けの展示会となっています。
この展示会は、設計・製造ソリューション展、機械要素技術展、工場設備・備品展、ものづくりAI/IoT展、次世代3Dプリンタ展、計測・検査・センサ展の6つの展示会で構成されていますが、その中心は機械要素技術展です。

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ものづくりBtoB企業の展示会

会場全体の印象は、関西圏で有数のものづくり系展示会ということで出展社も来場者も多い感じを受けました。2019年までの来場者数は3年間連続で徐々に増えている展示会ですが、大阪という土地柄か、作業服を着た若い社員さんの姿も見受けられ、各ブースを見回っている来場者の表情も他展示会よりも熱心な様子が垣間見られます。

また、出展社は多いのですが、一般の方が誰でも知っているような大企業や商社は少なく、やはり実際にものづくりに携わっているBtoBの製造業、開発業が中心の展示会になっているようです。

関西ものづくりワールドの子安文太(こやす・ふみた)事務局次長によれば、多くの関西圏、中国四国地方などの企業が出展しているそうです。西日本を中心とした製品導入の決定権を持つ役職者が来場するということで「西日本ユーザーに売り込みたい」という企業にとって重要な展示会になっているとのことでした。

加えて、数多くの「世界初」「日本初」を謳う新製品・新技術が出展企業から紹介されているのも特徴で、展示会の開催に合わせて製品発表をする企業もあります。子安事務局次長によれば、最近の傾向として目立つのは「人手不足解消につながる製品・技術」とのことで、加えて遠隔監視・制御システムや協働ロボットの活用・導入事例などを見る機会が多くなった印象を受けたそうです。

会場に足を運び、出展社の中からおもしろそうな技術をもつ3社を選んで、ご紹介しましょう。


冷間圧造による圧入固着ナット

ボーセイキャブティブ株式会社(東京都渋谷区)は、国内に製造工場を持つ、世界で初めて冷間圧造の圧入によるセルフクリンチングファスナー(ナット)を製造した企業です。セルフクリンチングファスナーというのは、ネジが切れない薄物板などの母材に、プレスによる圧入でナットを固着するという技術です。


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ボーセイキャブティブ株式会社のブース。「世界初」というキャッチフレーズが目立ちました。
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ボーセイキャブティブ株式会社のブース。「世界初」というキャッチフレーズが目立ちました。


古瀬大樹(ふるせ・ひろき)営業部主任は次のように話します。
「例えば、アルミの板金に下穴を開けて鉄製のM6(6mm)の六角ナットをセットし、プレス機で圧力をかけます。すると母材が塑性変形し、ナットのローレット部分がテーパーをきってある溝の部分に入っていくことで固着します。母材のサイズや素材によって変わってきますが600kgくらいのプレス機で圧入します。溶接で同じことをするとスパッタが飛んだりして外観が汚くなり、後工程が必要になりますが、圧入ならワンプレスできれいに固着でき、トータル・コストの削減になります」


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M6のナットを圧入して固着した様子。デモで作業を実演していました。
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M6のナットを圧入して固着した様子。デモで作業を実演していました。


気になる強度は「溶接に比べると弱いですが、そもそも溶接技術のレベルによっても変わってくるため、溶接は強度の数値評価が難しいと思います。弊社の圧入の場合は、下穴の強度を管理していただければ、ある程度の数値化は可能になり、安定した強度の評価が担保できます」とのこと。異材同士の固着や加工サイズは「圧入するため母材が柔らかければ異材同士の母材でも固着できて幅が広がります。サイズはM2〜3からM12までです」と言います。

同社は、大阪の展示会への出展は4回目とのことで、地域性なのか町工場や商社さんが多い印象だとのこと。
「東京の機械要素技術展にも出していますが、やはり東京はまんべんなくいろんな分野のお客さまが多いですね。今年は名古屋の展示会にも出しましたが来年はわかりません。展示会はプロモーションの一つですし、やはり自社の技術を知ってもらうことが大きな目的です」(古瀬氏)

地域によって使っている技術が違うという古瀬さんは「今後、製品に特化した展示会、地域によって特徴のある地方都市での展示会への出展も考えています。展示会は、お客さまの反応や悩みをうかがうことで技術的な提案をすることができたりするので重要です」と言います。


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お話をうかがった古瀬大樹さん。大阪の来場者は町工場の方が多いとのこと。
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お話をうかがった古瀬大樹さん。大阪の来場者は町工場の方が多いとのこと。

ブラシレスモーターと溶射技術

ツカサ電工株式会社(東京都中野区)は、モーター事業、ポンプ事業、タイマー事業の製品や技術を出展。多品種、小ロット、短納期で多様化に対応するとPRしている企業です。展示ブースには、新製品のブラシレスモーター、オールインワンブラシレスモーターなどがあり、チューブポンプ実機でデモも行っていました。

中西浩一(なかにし・こういち)営業第三部次長によれば「ブラシレスモーターは、パルスをみて位置決め制御できることが従来のモーターとの違いです。ブラシレスモーターを小型化しているのが弊社の特徴ですが、現在、需要がどれだけあるか、医療機器関係などの市場の反応をみている状況です」とのことでした。

展示しているモーターを見ると、モーターとギアボックスが組み合わされ、それでサイズが大きくなっているようです。
「小型化をしても、ギアボックスは強度の問題でまだまだ小さくするのには限界があります。本来はギアをつけなければトルクを出せませんが、モーター単体でトルクを出すこと自体はそれほど難しくありません。今回の展示会では、モーター単品でトルクを出せる製品を出展しています」(中西氏)

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ツカサ電工株式会社のブラシレスモーターの展示。右の黒いボックス型のモーターがギアボックスのないタイプのもの。イスラエルの企業が開発した製品をライセンス契約で販売しているそうです。
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ツカサ電工株式会社のブラシレスモーターの展示。右の黒いボックス型のモーターがギアボックスのないタイプのもの。イスラエルの企業が開発した製品をライセンス契約で販売しているそうです。


同社は、以前はモーター専門の展示会に出展していましたが、今では機械要素技術展に集中し、東京と大阪の同展示会に何度も出展しているそうです。他の個別の展示会にはその時々で検討して出し、同社がお客さまにお声がけして独自の展示会を開くこともあるとのこと。

「北陸や四国など地方の展示会については、それぞれの土地の需要はあると思います。例えば、酒造メーカーが多い土地ですと、ポンプを必要とされているお客さまもいるのかもしれません。しかし、やはり優先順位としては東京や大阪、名古屋になってしまいますね」(中西氏)

同展示会で東京と大阪に出展している同社ですが、本質的に東京と大阪でそれほど違いはないとしつつ、やはり大阪のお客さまのほうがダイレクトでストレートな印象を受けるそう。中西さんによると「最近は海外の出展社やお客さまも増えてきました。自社の技術や製品を売り込むといった場にもなっているんでしょう。例えば、弊社にはダイカストメーカーさんなどの売り込みも多くいらっしゃいます」とのことでした。


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ツカサ電工株式会社のブース。ポンプ事業のプラントなどの案内もありました。
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ツカサ電工株式会社のブース。ポンプ事業のプラントなどの案内もありました。


欠点を克服、求められる溶射技術

村田ボーリング技研株式会社(静岡県静岡市)は、静岡市が自治体として出展した小間で展示していた企業で、溶射加工による皮膜形成、溶射技術の中堅企業です。溶射(Thermal Spraying)は、加熱して溶融させた物質の粒子を母材表面に吹き付け、被膜を形成させる表面処理工法です。

松平浩志(まつだいら・ひろし)営業技術1課課長は「溶射技術は以前は剥離などの欠点がありましたが、次第にそれを克服するようになってきて広まっている技術です。溶射は、溶射材料に金属、セラミックスなどを使え、溶射する対象物も金属、セラミックス、プラスチック、木材など、範囲の広い表面処理が可能です。また、対象物への影響も少なく、広い面積に厚い膜を形成することができる」と話します。


<写真6>
説明してくれた松平さん。溶射は100年くらいの歴史のある技術ですが、熱源にプラズマを使えるようになったり、マッハを超える高速の溶射が可能になってから用途が広がったと言います。
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説明してくれた松平さん。溶射は100年くらいの歴史のある技術ですが、熱源にプラズマを使えるようになったり、マッハを超える高速の溶射が可能になってから用途が広がったと言います。


「溶射では目的によって熱源と溶射材料を変えます。耐久性を持たせたい場合にはタングステンカーバイト、セラミックといった溶射材料を使い、耐食性を高めるという目的のためにはニッケルクロム合金を溶射します。また、絶縁させたいというご要望があれば、導電性の母材に絶縁体の溶射材料を使ってセラミックを溶射したり、逆に導電性を持たせるために銅を溶射したりすることがあります。お客さまのご要望に応じて、ほとんどの溶射材料と溶射装置をそろえることができるのが他社さんにない弊社の強みです」(松平氏)

剥離するという欠点があった溶射技術では、やはり溶射対象物には前処理が必要だそうです。
「溶射する前には必ず母材にブラスト処理を施します。ブラストで表面を荒らすことで、溶けて飛んでいった溶射材料がアンカー効果(投錨効果、ファスナー効果)で接着しやすくなります。ブラストができる母材であれば、母材と溶射材料のマッチングがしにくいということはありません。ただ、下地の表面硬度を上げたい場合、熱処理をするなどして硬度が上がり過ぎるとブラスト処理ができないこともあります」(松平氏)

溶射技術には、大きくガス式溶射と電気式溶射があります。そして、ガス式溶射は、大きくフレーム溶射と高速フレーム溶射に分けられ、電気式溶射はアーク溶射とプラズマ溶射に分けられるそうです。溶射材料と熱源の組み合わせも重要です。

「溶射材料にタングステンカーバイトを使う場合、高速フレーム溶射装置によりマッハ3から4の高速で母材にぶつけることで接着させます。一方、酸化物系セラミックはプラズマ溶射装置でなければ吹き付けることができません。溶射材料を選ぶと必然的に溶射方法が決まってきます。被膜形成の目的から方法を採用すると逆に使える溶射材料が限定されてくることになります」(松平氏)。



<写真7>
村田ボーリング技研株式会社の溶射による被膜形成の展示。剥離しにくい密着性の高い被膜形成が可能になるとのこと。
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村田ボーリング技研株式会社の溶射による被膜形成の展示。剥離しにくい密着性の高い被膜形成が可能になるとのこと。


同社は静岡市に本社があり、東京と大阪の間くらいに位置する関係で、需要は関東と関西、どちらも同じくらいだそうです。「名古屋には弊社の営業所があるので地域的なお客さまはすでにお取引があります。そのため、今回の大阪の機械要素技術展へ出展してみようということになりました」(松平氏)

他の展示会では、新価値創造展や高機能フィルム展などには出展しているとのことですが、関西ものづくりワールドの機械要素技術展には15年くらい前に出展して以降、長く出展していなかったそうです。

「2年前から機械要素技術展の静岡市の小間に出し始めました。そのとき、新規のお客さまとつながりができるなど、かなり有意義ということがわかりましたが、もう1年、自治体にお願いしようということで今回の出展になりました。来年の東京で開催される機械要素技術展は、工場設備の展示会場に弊社独自の小間で出展する予定です。

興味深いのは、弊社が持っている設備や装置に対して同業者さんからお仕事を融通していただけるということがあるんです。また、溶射材料は材料メーカーさんから調達していますが、おつきあいのない材料メーカーさんから溶射材料として開発したものがあるけれど本当に溶射で使えるかどうか評価してもらえないかというお話がくることもあります」(松平氏)



「関西ものづくりワールド2019」について機械要素技術展から紹介しましたが、今年の関西は「第1回 関西 次世代3Dプリンタ展」を新規に開催しました。これは、2019年2月に東京で「次世代3Dプリンタ展」の開催発表をしたところ、東京への出張が難しい方や多くの社員を見学させたいという西日本のユーザーから要望が来たことで大阪でも開催することになったそうです。

また、来年2020年の「関西ものづくりワールド」では「第1回 関西 計測・検査・センサ展(Measure Tech)」が追加の展示会になるとのこと。設計製造、機械要素技術、工場設備、AI/IoT、3Dプリンターに加え、計測系展示会が増えることでいささか幅が広すぎて来場者が混乱して回りきれなくなるという危惧も感じますが、関西エリアで他業種異業種の技術に触れられる機会にもなりそうです。


文/石田雅彦

 


最終製品の付加価値を高める加工技術やものづくり現場で活躍する製品・技術に注目〜『関西ものづくりワールド2019:機械要素技術展』(後編)

2019年10月にインテックス大阪で行われた「関西ものづくりワールド2019」。前編では、機械要素技術展の注目技術をご紹介しましたが、今回も引き続き、最終製品の付加価値を高める「深絞り加工」、ものづくり現場で活躍する「シャフトモーター」、「放電可視カメラ」、「静電チャック」といった特徴ある技術・製品を展示し…
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