『第7回 関西スマートエネルギーWeek』取材レポート (2/2)

バーチャル・パワー・プラントに注目が

バーチャル・パワー・プラントに注目が

スマートグリッドEXPOの会場は太陽光発電展と混在したブース配置になっていて、やや紛らわしい展示状況になっていました。もっとも今回のスマートエネルギーWeek全体に言えますが、スマートグリッドも太陽光発電も重なり合う技術分野なのでこうした状況になるもの当然かもしれません。実際、二次電池展への出展社の中には、どのジャンルに出展するか迷ったという感想もありました。

スマートグリッドEXPOに出展していた株式会社GSユアサ(京都市南区)は、BtoBの産業用のリチウムイオン電池やバーチャル・パワー・プラント(VPP)、電力インフラシステムなどの提案型の展示が目立ちました。

同社のリチウムイオン電池は、国際宇宙ステーションにも搭載されるなど高い信頼性が評価されていますが、大容量リチウムイオン電池で具体的な受注計画も紹介しています。これは北海道北部風力送電株式会社の実証実験で使われる大容量蓄電池システムで、風力発電による不安定な発電量をコントロールするための東京ドーム2個分にもなる大規模な設備になるそうです。

会場で説明してくださった産業電池電源事業部システムエンジニアリング本部の石川憲(いしかわ・ただし)氏は、当初42円だった再生可能エネルギーの売電価格が1/2以下に下がり、同時に発電コストも下がっていてFIT後を見すえた蓄電技術に期待が集まっていると言います。

市場では、多数の小規模発電や電力需給システムを、あたかも一つの発電所のように制御する仮想的なバーチャル・パワー・プラントに対する要請が高まっているそう。バーチャル・パワー・プラントには電力インフラや需給バランスの最適化や低コスト、防災・減災のための分散化といったメリットが多く、電力会社に依存しないエネルギー・マネジメント・システムの技術開発が進んでいると言います。

<写真5>
小グリッドを集めて仮想的な発電所とするバーチャル・パワー・プラントについて説明してくださった石川憲氏。今回のスマートグリッドEXPOは具体的な提案が多くなった印象があると言います。
<写真5>
小グリッドを集めて仮想的な発電所とするバーチャル・パワー・プラントについて説明してくださった石川憲氏。今回のスマートグリッドEXPOは具体的な提案が多くなった印象があると言います。

<写真6>
提案型の展示で賑わいを見せるGSユアサの展示ブース
<写真6>
提案型の展示で賑わいを見せるGSユアサの展示ブース


コンデンサーや電源モジュール、蓄電システムなどで業績を上げるニチコン株式会社(京都市中京区)もスマートグリッドEXPOに出展していた企業です。目立ったのは日産のリーフを使ったEV用急速充電器と家庭用大容量蓄電システムです。台風や地震などの災害で電力が供給されなくなる事態が増えていますが、将来的にEVが分散型の蓄電システムになると全体で原発何百基分もの電力インフラになると予想されます。

会場で説明してくださったニチコンの広報・IR室の石川宏光(いしかわ・ひろみつ)主任によれば、2018年9月の台風21号で停電になった京都市内に京都市が購入していたトヨタの燃料電池自動車(FCV)MIRAIが、地域へ給電するために出動し、同社のEVパワー・ステーションが非常用給電設備になっていたそうです。

また、2019年9月に千葉県南部を襲った台風15号による大停電の際、日産と一緒にV2H(Vehicle to Home)システムとしてリーフを使った「LEAF to Home(リーフ・トゥ・ホーム)」により被災地で給電支援を行ったと言います。



<写真7>
ニチコンの石川宏光氏は「EVパワー・ステーションには行政から1/3の補助金が出ます。これからEVを使った電力インフラはバーチャル・パワー・プラント(VPP)を支える要素技術になっていくでしょう」と言います。
<写真7>
ニチコンの石川宏光氏は「EVパワー・ステーションには行政から1/3の補助金が出ます。これからEVを使った電力インフラはバーチャル・パワー・プラント(VPP)を支える要素技術になっていくでしょう」と言います。

もともと同社は小型コンデンサーの技術を持っていましたが、この技術を活かして充放電の容量と速度のバランスを取ることで汎用大容量蓄電池としての二次電池の特性を引き出し、製品化につなげました。具体的には、アルミ電解コンデンサーの工程に東芝のSCiB(マイナス極にチタン酸リチウムを使用)技術を加え、大容量と急速充電を実現したそうです。

<写真8>
ニチコンのEVパワー・ステーション。トヨタの燃料電池自動車(FCV)MIRAIの非常用給電設備になっています。ソケット形状がCHAdeMOなのでリーフでも使用可能。同じ機構で家庭用もあります。
<写真8>
ニチコンのEVパワー・ステーション。トヨタの燃料電池自動車(FCV)MIRAIの非常用給電設備になっています。ソケット形状がCHAdeMOなのでリーフでも使用可能。同じ機構で家庭用もあります。

専用バスで来場した出展社も

興味深い多くの技術やシステムなどが出展していた第7回の関西スマートエネルギーWeekでしたが、展示会全体について前薗雄飛(まえぞの・ゆうひ)スマートエネルギーWeek事務局長にコメントをいただきました。


───昨年2018年と本年2019年の開催内容やテーマなどに違いがありましたか。

前薗:
2019年は『卒FIT』 元年となりますが、業界の移り変わりと共に出展製品にも変化が生じています。これまでは太陽光パネルや太陽光発電所の施工に関する出展がメインでしたが、現在はそれに加えて、発電した電力をいかに効率よく自家消費するかといった需要家向けの製品やサービスが数多くみられるようになりました。


───関西圏、北陸など近畿圏周辺、中国四国九州など以西からの出展状況はいかがでしたか。

前薗:
『関西 スマートエネルギーWeek』は、出展企業様の『西日本のお客様(来場者)にもご提案したい』というニーズから生まれた展示会です。よって出展企業に地域性はございません。一方で、来場者の大半は西日本の方々です。『大阪でこれほどの大規模な展示会はないので、業界の最新情報を得る場として重宝している』とご評価をいただいており、実際今回は前回から2,300名増の16,795名の方々にご来場いただきました。


───スマートグリッド、太陽光発電、二次電池など、新技術の出展状況はいかがでしたか。

前薗:
再エネ普及の要として蓄電池の研究開発が加速しており、今年は特に二次電池の製造開発技術を有する企業の出展が増えました。西日本には電池メーカーの工場が多いので、専用バスを利用して団体で来場する企業様もいらっしゃいました。またスマートグリッドEXPOでは、VPP(バーチャル・パワー・プラント、仮想発電所)事業を紹介するブースに人だかりができていました。再エネなどの電力を貯めた蓄電池をネットワークで繋いでコントロールするVPPですが、今後もこの新しい電力システムに注目が集まりそうです。


リチウムイオン電池や再生可能エネルギーなど、注目を集める次世代の技術が集結するスマートエネルギーWeek。東京と関西の2拠点で年2回開催されるイベントとして今後ますます目の離せない展示会になっていきそうです。




文/石田雅彦



【New!】新サービスのご紹介

▽おすすめ関連記事

こちらの記事もおすすめ(PR)