選び方で決まる!成分や用途でかしこく使い分けたい接着剤

この記事では、接着剤の種類と、選定ポイントについて解説します。
私たちの身の回りの様々なものに接着剤は使われています。例えば、車、家、道路の点字ブロックなど。しかし、それらをくっつける接着剤にはどのようなものがあるのか、ご存知ではない方も多いのではないでしょうか。さらに使用する際に、どの接着剤が接着しようとしているものに対して最適なのか理解せず、汎用性の高い接着剤を使っていませんか。接着剤は、接着対象や環境など様々な条件に適した接着剤を選ぶことで狙った効果を発揮します。この記事を通して、接着剤の種類や最適な接着剤か理解でき、使用する接着剤を見直す機会になればと思います。

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接着剤はどのように分類されるのか

前述したように、様々な接着剤が世の中には出回っていますが、それらはどのように分類することができるのでしょうか。
以下の<表1>でまとめてみました。

<表1>接着剤の分類



水ガラス 珪酸ソーダ
セメント ポルランドセメント、しっくい、せっこう、
マグネシウムセメント、
リサージセメント歯科用セメント
セラミック セラミック




天然系 でんぷん系、天然ゴム系、アスファルト
蛋白系 にかわ、ガセイン、大豆たんぱく


熱可塑性
樹脂系
酢酸ビニル樹脂系,ポリビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、
塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポロアミド樹脂、セルロース系、
ポリビニルピロリドン系、ポリスチレン系、
シアノアクリレート系、ポリビニルアセタール系
熱硬化性
樹脂系
エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、ポリアロマティック系、
構造用アクリル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、
フェノール樹脂系、レゾルシノール樹
エラストマー系 クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレンブタジエンゴム系、
熱可塑性エラストマー系、プチルゴム系、シリコーン系、変性シリコーン系、
ウレタンゴム系、ポリサルファイド系、アクリルゴム系

※引用元:独立行政法人 製品評価技術基盤機構

接着剤の分類

接着剤を分類する方法はいくつかありますが、特に接着剤の特性に影響を与える主成分で整理しました。接着剤に含まれる主成分は①無機系、②有機系の2つに分類することができます。


① 無機系接着剤
無機系とは、炭素を含んでいない(例外 炭素単体(ダイヤモンド)、炭素酸化物などあり)鉱物から生成される接着剤です。高温に耐えられることが特徴であり、1,000℃以上に耐えるものがありますが、現在は少数派です。現状として多くの無機系接着剤が、有機系接着剤に取って代わられてきています。セメントなどは今でもよく使われています。


② 有機系接着剤
有機系とは、炭素を中心とした物質のことです。
そして、有機系の中でも天然系と合成系で分類できます。合成系が最も使われている種類ですが、さらに「熱可塑性樹脂系」と「熱硬化性樹脂系」、「エラストマー系」に分類することができます。詳しくは下の<表2>にまとめました。

<表2>合成系接着剤

主成分種類 特徴 接着剤の例
熱可塑性樹脂系 温度の変更等で形状変更ができる アクリル樹脂系接着剤
シアノアクリレート系
熱硬化性樹脂系 温度の変更等で形状変更ができない エポキシ樹脂系接着剤
ユリア樹脂系接着剤
エラストマー系 弾性を持つ高分子 シリコーン樹脂系接着剤
変成シリコーン樹脂系接着剤

ここまで、主成分で分類した接着剤の種類をご紹介しました。
続いては、接着剤を選ぶ際にどのような点を考慮すべきなのか、その視点をご紹介します。

接着剤をどのように選ぶか

ここでは、接着剤を選ぶ際に重要な3つの視点について、具体例を交えながらご説明します。

(1)接着対象で選ぶ

<表3>接着対象に適した接着剤

接着対象 最適な接着剤
木 材 ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、
レゾルシノール樹脂系、クロロプレンゴム
金 属 エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系、クロロプレンゴム系、
シリコーン樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、シアノアクリレート系、変成シリコーン
ガラス エポキシ樹脂系、シアノアクリレート系
タイル エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系、変成シリコーン
プラスチック エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系、クロロプレンゴム系、
ビニル樹脂系、スチレン樹脂系、シアノアクリレート系、変成シリコーン
ゴム ゴム系、シアノアクリレート系

 

<表3>のように、接着対象に応じて適切な接着剤の種類が決まります。例えば木材であればユリア樹脂系接着剤やメラミン樹脂系接着剤、金属であれば、エポキシ樹脂系接剤やアクリル樹脂系接着剤を使うと、くっつきやすくはがれにくくなります。

接着対象の中には難接着物という接着剤でくっつきにくいものがあります。例えば同じプラスチックでも、ポリプロピレンやナイロン、フッ素樹脂、ゴムなどは接着しにくい素材です。これらの難接着物の接着には、①難接着物向けの難接着剤を使用する、②表面処理を行う、③専用のプライマーを使うといった方法がとられます。②の表面処理とは接着面をくっつきやすくすることです。表面処理の方法には表面についた異物や接着阻害要因を除去する方法と表面を改善し、接着剤がなじみやすくする方法があります。

素材が異なるもの同士の接着(異素材間の接着)にも注意が必要です。
まず、両方の素材に対応した接着剤を選ぶ必要があります。例えば、金属とプラスチックを接着したい場合、両方に接着できるエポキシ樹脂系接着剤を使用すれば接着することが出来ます。一方で、異素材間の強固な接着が難しい一番の理由は、素材によって熱膨張係数が異なる点にあります。接着後置かれる環境によっては温度変化などが生じた際に、接着対象によって膨張率が異なり、歪みが限界を超えた場合接着界面ではがれるか、部材が壊れてしまいます。このような影響を少なくするためには弾性接着剤を使用します。弾性接着剤は接着面に生じる応力を分散する性質を持っているので、異素材間でもはがれにくい接着ができます。

(2)使用環境で選ぶ

接着剤を使用する環境を考慮することも大切です。

具体的に使用環境によって求められる接着剤の特性として、①耐熱性、②耐水性、③耐久性、④耐薬品性が挙げられます。

 

①耐熱性

耐熱性が重要となるシーンの一例として、車等のブレーキ摩擦材接着や家電の接着、高温にさらされる環境下などでの使用が考えられます。ブレーキ摩擦材接着で使用される接着剤はフェノール樹脂系接着剤で、およそ200℃の高温に耐えることができます。その他、変成シリコーン樹脂系接着剤やエポキシ樹脂系接着剤も100℃以上の耐熱性を持っています。耐熱温度は接着剤の成分によって異なるので注意が必要です。

 

②耐水性

耐水性が重要となるシーンの一例として、雨にさらされるような屋外での使用や、浴室、洗面台といった水回りでの使用が考えられます。耐水性はエポキシ樹脂系接着剤やシリコーン樹脂系接着剤等が持ち合わせている特性です。

 

③耐久性(耐衝撃性)

建築物の補修や補強といった際に耐久性はとても重要な要素となり得ます。

ビルの外壁へのタイルの設置には従来モルタルが多く使われていましたが、クラックが生じ、拡がることで広範囲のタイルが脱落するなどの危険性がありました。最近では耐久性が求められるシーンで変成シリコーン樹脂系接着剤が用いられています。

 

④耐薬品性

身の回りには意外と薬品に触れる機会が多くあります。アルカリ・酸(無機・有機)・有機溶剤・機械油等に代表されるように、身近なものが接着を妨げる原因となり得ます。耐薬品性とはそれらに対して膨張したり、溶けたり、反応しないことをいいます。例えば、自動車のバッテリー周りや住宅の水回りなどに用いられる接着には注意が必要です。アルカリ・無機酸・機械油に対して耐薬品性が高いのは変成シリコーン樹脂系です。エポキシ樹脂系接着剤も商品によってはアルカリや有機酸、機械油に強いものもあります。

 

(3)施工性で選ぶ

接着の用途によってどのような手順で接着をするかは千差万別です。効率的で正確な接着はコストや製品の品質に大きく関わってきます。

施工性として考えられるポイントには①塗布時の粘度、②硬化方法、③硬化時間、④仕上がりで説明していきます。

①塗布時の粘度

粘度は塗布場所や塗布方法に関係してきます。例えば、サラサラと伸ばして均一に塗りたいときは粘度の低い接着剤が最適ですし、天井に塗る場合など垂れないものを使用したい場合は粘度の高い接着剤が最適です。粘度が低い流動タイプとしては、シアノアクリレート系接着剤やフェノール樹脂系接着剤が挙げられます。逆に粘度が高く垂れ止めタイプとして用いられるのは変成シリコーン樹脂系接着剤が挙げられます。

 

②硬化方法

硬化方法には、加熱して硬化する方法、熱溶融冷却方法、化学反応による硬化方法(湿気・混合)、水・溶剤揮散による硬化方法、紫外線による硬化方法があります。熱溶融冷却方法による硬化方法にはグルーガンのようなホットメルト接着剤などが挙げられます。2液混合型の接着剤は混合による化学反応を利用して硬化します。混合するという工程が増える分、手間がかかり、2種の配合量が適切でないと硬化不良がおこるというデメリットがありますが、耐熱性や接着強度が全般的に上がるといったメリットもあります。紫外線による硬化方法は、透明なガラスやレンズの接着に使われることが多く、環境に優しいのが特徴です。

 

③硬化時間

例えば、瞬間接着剤と呼ばれるシアノアクリレート系接着剤やホットメルト接着剤は、超速硬化といわれ60秒以内に硬化します。そのため、すぐに次の作業を開始することが出来るので流れ作業が可能になります。一方で、変成シリコーン樹脂系接着剤の中には遅硬化といわれ硬化に6時間以上かかるものもあります。硬化時間が長いため、再配置が可能なのが特徴です。硬化時間は早ければ早いほど良いというわけではなく、作業工程に合った接着剤の使い分けが重要です。

 

④仕上がりの色

例えば、透明なガラス面同士を接着するようなケースでは、接着剤に色がついていると目立ってしまって仕上りが美しくありません。透明なタイプの接着剤として、シアノアクリレート系接着剤や酢酸ビニル樹脂系接着剤が挙げられます。一方、はみだしが目立たないように接着対象物と同じ色に着色したり、塗布していることが分かりやすくするために接着対象物と違う色に着色を施したりすることもあります。

 

補足になりますが、安全性も接着剤選定に影響を与える要因です。急性毒性があるホルムアルデヒドやトリオールを含む接着剤は注意が必要です。近年では、安全性を配慮して、樹脂を変更する動きも出てきているそうです。

 

 

まとめ

今回は接着剤の種類と3つの接着剤選びの視点をご紹介しました。一言で「接着する」と言っても、様々な側面があることがお分かりいただけたかと思います。今お使いの接着剤も本当に「最適」なものなのか、改めて見直してみるのも良いかもしれません。場合によっては、より長持ちさせたり、作業効率を向上させたりすることが出来るかもしれません。また常に新しい機能を持った接着剤も開発されています。一度プロに相談してみてはいかがでしょうか。


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