ロストワックス精密鋳造法の作業工程〜鋳造入門講座(5)

ワックスでできた型をセラミックで覆い焼き固めて鋳型を作るロストワックス精密鋳造法。寸法精度が鋳造部品では最も良く、鋳肌が優れており、機械的特性が圧延材とは異なり等方的であるため設計自由度が高いといったさまざまな利点があります。今回は、この鋳造法の金型製作から焼成までの作業工程について詳しくみていきましょう。

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ロストワックス鋳造法の作業方法

ロストワックス鋳造法は、ワックスでできた型をセラミックで覆い焼き固めて鋳型を作る鋳造方法です。ロストワックス鋳造の作業工程の概要は<図1>の通りです。基本的な工程は、金型設計・製作→中子製作→パターン成形・組み立て→コーティング造型→脱ろう→溶解・鋳造→後工程となっています。以下、作業工程順に作業方法をご紹介します。

<図1>ロストワックス精密鋳造法の製造工程
<図1>ロストワックス精密鋳造法の製造工程

(1)金型設計・製作

最初にワックスパターンを製作するための射出成型用の金型を設計・製作します。
このとき、製品になるまでの収縮量を予測し金型寸法を決定します。中空製品を作るためには、別途水溶性ワックス中子またはセラミック中子を製作するための金型が必要となります。現在は製品図面・金型図面・検査ジグ図面などをCADで設計し、金型キャビテイーの加工もNCフライスを用いてCAD情報を直接加工設備に入力して自動で加工を行います。<図2>にワックスパターンの形状とゲート位置の例と<図3>にその金型組み立ての概要図例を示します。

<図2>ワックスパターンの形状とゲート位置の例
<図3>金型組み立ての概要図例

(2)中子製作

水溶性中子は、高分子グリセリンと炭酸カルシウムを主成分とした水に溶けるワックスを用いて射出成型し、これを通常のワックスパターン成形用金型にセットしてパターンワックスで鋳包み、その後中子のみ水で溶出し中空ワックスパターンを作成し、後工程に進みます。

セラミック中子は、バインダーとセラミック粉末の混合物を射出成型し、その後バインダー除去とセラミックスの焼成作業を行って中子を得ます。セラミック中子もワックスパターン成形時に金型にセットし、パターンワックスで鋳包み、この場合はそのまま次工程に進みます。<写真1>に各種セラミック中子とこれを鋳包んだワックスパターンおよび鋳物を示します。

<写真1>セラミック中子とこれから得られたブレード鋳物およびその内部形状
(①セラミック中子 ②鋳造品外観 ③鋳造品の中空部状態)
<写真1>セラミック中子とこれから得られたブレード鋳物およびその内部形状
(①セラミック中子 ②鋳造品外観 ③鋳造品の中空部状態)

(3)ワックスパターン製作

ワックスパターン製作には、特別に配合されたパターンワックスを用いて射出成型を行います。パターン製作用ワックスは用途に応じて融点、成形時の粘度、成形品の剛性、脱ろう時の挙動などから選択されます。また射出成型機もワックスの性状に合わせて適切な設備を選択します。<図4>に成型機の形式を示しました。

<図4-1>①溶融ワックス式射出成形機
<図4-1>①溶融ワックス式射出成形機
<図4-2>②ペレット式射出成形機
<図4-2>②ペレット式射出成形機
<図4-3>③ビレット式射出成形機
<図4-3>③ビレット式射出成形機


(4)ワックスパターン組み立て

設計された鋳造法案にもとづき注湯口・湯道およびパターンを組み立てますが、これらはすべて射出成型されたワックスを用い、加熱こてや接着用ワックスを利用して1つの鋳型(ツリー)に組み立てます。このツリー形状は、鋳込まれる合金の種類(鉄系か非鉄系か)および鋳造方式(真空鋳造・大気鋳造・吸引鋳造・加圧鋳造および遠心鋳造)により異なりますが、基本的には<図5>に示す「落とし込み法案」「押し上げ法案」および「遠心鋳造法案」に大別されます。

<図5-1> ①落とし込み方案の例
<図5-2> ②押上げ方案の例
<図5-3> ③遠心鋳造方案の例

(5)シェル・コーティング

コーティングは、ワックスツリーにセラミック層を形成してこれを6~10回繰り返し、所定のシェルの厚さを形成する造型方法です。組立てられたツリーは離型剤などの汚れを除去し、表面を活性化させるため洗浄液に浸漬されたあとに乾燥させます。

その後耐火物粉末(300メッシュ程度)とバインダー(主にコロイダルシリカ)を混錬したスラリーに浸漬し(ディッピング)、液切りし、乾燥しないうちに耐火物粒子(100メッシュ程度)を振りかけて(スタッコイング)、シェルの第1層を完成させます。この第1層が溶湯と接触するので、鋳物の表面粗さを決定するため に重要な工程です。

<写真2-1> ①ディッピング
<写真2-2> ②スタッコイング
<写真2-3> ③乾燥

第2層以降は鋳込まれる金属の材質、鋳物の大きさ、肉厚、およびツリー全体の大きさなどにより、さまざまなスラリーとスタッコを用いて設定どおりの鋳型厚さを得るため、乾燥・浸漬・ふりかけ作業を繰り返します。

このとき鋳物の寸法精度の維持と鋳型性能を高めるために、造型作業室および鋳型乾燥室は一定の条件(温度・湿度および乾燥用風の速度など)を厳密に保つ必要があります。

鉄系鋳物用シェルでは、第1層は「ジルコン(ZrO₂+SiO₂)」を耐火物粉末として採用し、第2層以降では「アルミノシリケート(Al₂O₃+SiO₂)」を採用しています。アルミニウム合金用シェルおよびチタン合金用シェルは、特別な耐火物を利用しています。最終コーティング完了後、24〜48時間乾燥室で自然乾燥したあと、次の脱ろう工程に進みます。

(6)脱ろう作業

次にシェル鋳型内のワックスパターンを加熱・溶出します。ワックスは加熱すると膨張するため、そのままではシェル鋳型を破壊してしまいます。これを防ぐ方法としては、圧力釜(オートクレーブ)を用いて8〜10気圧の蒸気圧で外側から加圧しながら150度程度に加熱する方式や、1,000℃の高温炉に直接投入して急速加熱(ショックヒート)してワックスを急速溶出する方式、電子レンジと同じ原理を用いた誘電加熱方式などがあります。一般的にはオートクレーブ方式で脱ろうが行われ、溶出したワックスは回収後に再生されて再利用します。


<写真3>オートクレーブ方式の脱ろう設備
<図6>脱ろう方式の原理図

(7)鋳型焼成

脱ろう工程で除去できなかった残留ワックスを完全に燃焼・除去するためと、シェル鋳型を焼結して鋳型強度を上げる目的で1,000~1,100℃の高温の大気炉で鋳型を焼成します。鉄系合金などは焼成炉から取り出した高温の鋳型に注湯しますが、アルミニウム合金などは焼成後、適切な鋳型温度まで下げてから注湯する場合もあります。

<写真4-1> バッチ式鋳型焼成炉
<写真4-2> 連続式鋳型焼成炉

(8)溶解と鋳造

金属材料を適切な方法で溶解し、シェル鋳型に注湯します。鉄系合金は主に高周波誘導溶解炉を用いますが、非鉄金属には外熱式るつぼ炉などが用いられます。

使用される溶解炉は溶融される金属・合金の活性度により異なり、超耐熱合金(スーパーアロイ)やチタン合金は真空溶解炉が用いられ、銅合金やアルミニウム合金などは大気溶解炉が用いられます。

また注湯方式も合金の種類および鋳物の用途などにより重力鋳造・遠心鋳造および吸引鋳造が用いられます。一般的なのは重力鋳造ですが、薄い肉厚の製品などで湯回りが要求されるものには遠心鋳造法が採用されています。吸引鋳造は、遠心鋳造と同じく薄い肉厚の製品ができることに加えて、重量歩留りが高いという利点があります。タービンブレードについては結晶粒をコントロールする方法が各種採用されていますが、これは後の回でご紹介します。

<図7>高周波溶解炉の構造
<図8>重力鋳造
<図9>遠心鋳造
<図10>吸引鋳造

(9)型ばらしと砂落とし

鋳型が冷却した後に鋳型を除去して鋳物を取り出します。この作業はハンマーリングによる打撃、ショットブラストあるいは高圧ジェット水流などを用います。

(10)湯口切断と仕上げ

湯口・堰(せき)などを高速切断砥石またはバンドソーなどで切断してツリーから製品部を切り離します。その後完全に取り切れなかった堰(せき)部などはグラインダーなどで削り仕上げをします。

<写真5>高速切断砥石による湯口切断
<写真5>高速切断砥石による湯口切断

(11)中子部分の除去

中子部分はセラミック鋳型材料が密に充填されており通常の型ばらしでは除去できないため、高温の苛性ソーダの溶融槽(ソルトバス)あるいは高濃度の苛性ソーダ水溶液に浸漬して鋳型材料中のシリカ成分(SiO₂)を化学的に溶解し、その後水冷することで充填された中子部分を除去します。

タービンブレードなどの微細な複雑形状の中子の除去には、特別仕様のオートクレーブ内で苛性ソーダ水溶液中に中子を鋳包んだ製品を浸漬し、加圧・減圧を繰り返して中子の溶出を促進する作業も行われます。

(12)熱処理と矯正

それぞれの材質の特性を引き出すため適切な熱処理を行います。また作業工程で発生した歪みを除去するために適切な「歪み取り焼鈍」の後に、必要に応じて矯正作業を行う場合もあります。


(13)検査と品質保証

製品を規定している図面・仕様を満たしていることを確認、顧客に保証する作業を最後に行います。検査項目としては、寸法検査・機械的特性検査(引張試験・疲労試験・高温クリープ試験など)および鋳物の健全性を確認するために内部の放射線透過検査、表面近傍の健全性確認のために蛍光浸透探傷検査または磁粉探傷検査などが行われ、製品製造ロットごとに品質保証を行ってから出荷されます。


※記事中の図・写真はすべて『ロストワックス精密鋳造法』(社)日本鋳造協会より


著者: 那須征雄(なす まさお)
那須技術コンサルタント事務所所長 1944年愛知県生まれ。名古屋大学工学部鉄鋼工学科卒業後、日特金属工業株式会社入所。以後、技術者として第一線での活動を重ね、1998年住重精密鋳造株式会社代表取締役社長に就任。2003年退任後はキングパーツ株式会社で技術顧問。2012年に独立し、自身のコンサルティング会社を設立。


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