3種類のレーザー光源に注目、材料加工に欠かせないレーザー溶接の基礎知識とその応用方法

レーザーが発明(初めてレーザー発振が確認)されたのが1960年とされています。意外に歴史の浅い技術ですが、除去(切断・穴あけ)・接合・塑性・表面改質など、現在のほとんどの加工にとってレーザーはなくてはならない技術となっています。また、IoTを実現するための技術、3Dプリンタなど高付加価値ものづくり技術としても、さらに社会全体から省エネ省資源が要望されている中、エネルギー効率の向上や環境負荷の低減を実現するためにも、レーザー加工技術に注目が集まっています。ここでは特にレーザー溶接を取り上げ、中でも高出力なCO2(炭酸ガス)レーザー、YAG(ネオジウム・ヤグ)レーザー、ファイバーレーザーの3つの加工用レーザーを中心に紹介していきます。


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レーザーの歴史と溶接への応用

レーザーは、大きく気体レーザー、液体レーザー、固体レーザーに分類され、発振媒体や発振媒質などによって名前が付けられています。CO2レーザーは炭酸ガスを発振媒体にする気体レーザー、YAGレーザーとファイバーレーザーは固体レーザーです。セオドア・H・メイマンが波長694nmのルビーレーザーを発振させたのは1960年5月16日のことですが、その数年後にはCO2レーザー、YAGレーザーの発振が確認されています。

溶接技術におけるレーザーの分類は、溶融溶接の中の高出力ビーム溶接(レーザービーム溶接)です。レーザー溶接では通常、レーザービームを1mm以下のスポットとして集光させ、部材表面に対する熱源にします。温度が上昇した部材表面は溶融を開始し、熱伝導と熱輸送によって溶融池が広がって部材が溶接されます。このタイプのレーザー溶接を熱伝導型の溶接といいます。

レーザービームの照射によって部材の沸点を超えるとキーホールという穴が形成され、その際にプルームとよばれる金属蒸気が噴出してスパッタ(飛散する金属粒による火花)やヒューム(溶けた金属が気化して空気中で固まった細かな粒子)が部材に付着し、加工者に害を与える危険性があります。さらにビームを照射し続けるとキーホールが部材を貫通し、この方法による溶接はキーホール溶接といいます。


<図1>レーザー溶接の原理
<図1>レーザー溶接の原理


レーザー出力を上げていくと、溶接速度が上がりますが、同時にスパッタやヒュームが放出され、部材への影響と後加工が増えていくことになります。レーザーの種類に限らず、出力・溶接速度と部材への影響はトレードオフの関係になっているというわけです。

また、レーザーを照射した場合、部材の反射率や透過率により吸収、透過、屈折、散乱といった現象が起きます。金属は透過率がほぼゼロであり、価電子が結晶中を自由に動き回ることができるので電気伝導度が高く、レーザーはあまり吸収されません。しかし、集光照射によって光強度を上げるとキーホールが形成され、その中で起こる多重反射やプラズマ・プルームによって効率よく吸収されます。ただ、アルミ、銅といった反射率の高い部材に対しては波長の短いレーザーを当てる必要があります。

レーザーの品質については、一般的にBPP(Beam Parameter Products、ビームパラメータ積)という評価単位が使われます。これはレーザービームの広がりの半角(mrad)とビームウエスト半径(mm)の積で与えられ、出射ビーム径(ウエスト径)が同一の場合は、レーザーが1m進む間に広がる範囲を示し、値が大きいほど品質が悪いことを表します。

レーザー溶接は、その深い溶け込み、狭範囲の溶融による高速性と熱影響の少なさから、早くから実用化が期待されてきましたが、しばらくは出力の弱さや取り回しの難しさから半導体や電子機器などの小さな部材の溶接分野に限定されてきました。高出力化による最初の実用化が実現したのはCO2レーザーでした(1980年代にkWクラス)。その後、YAGレーザーによる短波長化(1990年代後半にkWクラス)、21世紀に入ってからファイバーレーザーの高輝度化が図られ、次第に小型部材以外にも用途が広がってきたのです。

CO2レーザーの特徴とデメリット

炭酸ガスを発振媒体にした波長10.6μmの気体レーザーがCO2レーザーです。波長は共振器ミラーによる波長選択によって、9.6μmまで短くできます。出力形態は連続発振とパルス発振が可能で、BPPは3~15mm・mradでビームの品質が優れ、高パワーでも約0.6mmのスポット径に集光できるという特徴があります。

CO2レーザーに使われるガスは、高効率な発振を実現するためにCO2のほかにアシストガスとしてN2(窒素)、He(ヘリウム)、Ar(アルゴン)、CO(一酸化炭素)を混合したものが使われます。レーザー発振の媒体はCO2ですが、これらのアシストガスを混合することで共振器(放電管)内の出力が増大します。混合比率は、共振器の種類、ビームの品質や加工効率、各ガスの価格などによって変わってきます。

数kW~数十kWの高パワー連続発振レーザーが、自動車分野、薄鋼板、鉄鋼や造船分野などで溶接に使われています。また、レーザー切断や穴開け、表面処理などにも応用されています。

ただ、高パワー溶接でArガスをアシストガスとして使った場合、Arプラズマが発生し、溶け込みが浅くなるのでHeガスを使うことが多いのですが、Heガスは高価という難点があります。ミラーや集光レンズには、10μm光の透過性に優れた、半導体であるZnSe(セレン化亜鉛)を使うのもCO2レーザーの特徴です。

レーザーが照射されるとミラーや集光レンズの内部に不均一な温度分布が生じるという熱レンズ効果とよばれる現象が起きますが、ZnSeは最も吸収率が低く、熱レンズ効果を小さくする母材とされています。ZnSeを使ってもやはり熱レンズ効果により、焦点位置がレーザー発振器側へ次第にずれてしまうため連続加工では注意が必要です。

また、CO2レーザーは波長が10μm帯のため、レーザー発振器から取り出してファイバー伝送ができません。取り回しの良いファイバー材料の石英がこの波長帯のレーザーを吸収してしまうからです。ファイバー伝送ができないということは、発振器から、加工位置まで、ミラーを用いた空間伝送を行う必要があり、発振器からの距離も制限され、自動化がしにくく産業用ロボットに使うことも難しいのです。


<図2>一般的な高速軸流形CO2レーザー構成
<図2>一般的な高速軸流形CO2レーザー構成


YAGレーザーの特徴とデメリット

YAG(Yttrium Aluminum Garnet、イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーは、イットリウムとアルミニウムの人工ガーネット構造(立方晶系の鉱物結晶構造)に希土類元素をドープ(添加)し、発振媒体にした固体レーザーです。レーザー溶接で使われるものはYAGに数%のNd(ネオジム)をドープしたNd:YAGレーザーで波長は1.064μm、医療用でEr(エルビウム)をドープしたEr:YAGレーザーも使われています。

波長の短さをいかし、伝送損失の低いファイバー伝送が可能なのがYAGレーザーの特徴です。レーザーを熱源として初めて自動化やロボット化を実現した技術とされ、ノーマルパルス、Qスイッチ(短時間照射、医療用)、連続発振が可能でその広い応用範囲が期待されてきました。

2〜4kWクラスの連続発振YAGレーザーは複数の鋼板を溶接したプレス用部材であるテーラードブランク(Tailored Blanks)の突合せ継手や亜鉛メッキ鋼板の重ね継手溶接で使われ、6〜10kWクラスの連続発振レーザーはステンレス鋼板などの溶接に使われてきました。

ただ、第一世代のYAGレーザーは、Ndを活性元素としたランプ励起であり、発振効率は約1〜3%と低く(CO2レーザーは10%程度)、発熱も大きかったため、BPPは25~100 mm・mradであり、集光性は良くありませんでした。

また、励起用のフラッシュランプや冷却水などの消耗品を定期的に交換する必要があり、メンテナンスにコストと時間がかかるというデメリットもあり、固体レーザーの先鞭をつけた技術ですが最近ではあまり使われなくなっています。

一方、第二世代のYAGレーザーは、ファイバーレーザーと同じ、Ybを活性元素とした半導体レーザー励起であり、発振効率は約20~30%と高くなっています。媒質形状は冷却性能に優れた薄いディスク型で、熱歪みの発生を補償する構造であるため、BPPは4~24mm・mradとファイバーレーザーに迫る集光性があり、ファイバーレーザーに競合する形で、産業適用されています。

<図3>半導体レーザー(LD)励起によるYAGレーザー構成
<図3>半導体レーザー(LD)励起によるYAGレーザー構成

ファイバーレーザーの特徴とデメリット

扱いが難しく自動化やロボット化に不適なCO2レーザーや効率の悪いYAGレーザーに代わる新たな技術として注目されているのが、高輝度・高出力の固体レーザー、ファイバーレーザーです。

これはレーザー発振器から単に光ファイバーを使って伝送するバルク型レーザーとは異なり、高純度の石英ガラスで作られた光ファイバーに希土類元素のYb3+(イオン化したイッテルビウム)をドープし、外部から半導体レーザーを照射すること(励起)で高効率のレーザー発振を行い、高出力のレーザーを作り出すという技術です。

レーザー媒質、伝送光学系ともファイバーが用いられ、空間光学系のないモノリシックな構造で、励起用の半導体レーザーもファイバー結合型が用いられているため、メンテナンスが不要でロバストな構造となっています。波長はYAGレーザーに近い1.07μmで、レーザー発振用光ファイバーは直径約10〜20μm、伝送用光ファイバーは直径約50〜300μmで長さ20〜50m程度の伝送が可能です。

レーザー発振器は光ファイバー内に組み込まれた反射・共振作用を有する一対のファイバー素子によって構成されるため、取り回しが良くミラー調整やメンテナンスが不要なのもファイバーレーザーの特徴です。このため、自動化や無人化、ロボット化が容易であり、人手不足が深刻化する産業界にとっても重要な技術といえるでしょう。

また、ビーム品質はBPPが2〜12 mm・mradとCO2レーザー以上であり、高集束なビーム照射が可能です。発振効率は30~40%でほかのレーザーを圧倒しています。

シングルモード発振器では小型軽量なのもファイバーレーザーの特徴で、超短パルスや、銅の吸収が高い波長535nmのグリーンレーザー発振といった、高ピーク・短パルス・短波長の加工用熱源としても有用です。ただ、ワークで反射したレーザー光の一部が発振器側へ戻り、光学部品や発振装置などにダメージを及ぼす危険性もあります。

日本は光ファイバーの研究開発や製造で出遅れている感もありますが、ファイバーレーザーは自動車分野、鉄道車両、鉄鋼、造船など多くの産業分野で使われ、マルチモジュールによる高パワー化、高輝度・高効率化、取り回しの良いファイバー伝送、メンテナンス不要という多くの利点を持ち、加工用レーザーの主力となっています。


<図4>メンテナンスフリー・ロバスト性を有するファイバーレーザー構成
<図4>メンテナンスフリー・ロバスト性を有するファイバーレーザー構成


文/石田雅彦  協力/三菱電機株式会社


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