3種類のレーザー光源に注目、材料加工に欠かせないレーザー溶接の基礎知識とその応用方法 (1/4)

レーザーが発明(初めてレーザー発振が確認)されたのが1960年とされています。意外に歴史の浅い技術ですが、除去(切断・穴あけ)・接合・塑性・表面改質など、現在のほとんどの加工にとってレーザーはなくてはならない技術となっています。また、IoTを実現するための技術、3Dプリンタなど高付加価値ものづくり技術としても、さらに社会全体から省エネ省資源が要望されている中、エネルギー効率の向上や環境負荷の低減を実現するためにも、レーザー加工技術に注目が集まっています。ここでは特にレーザー溶接を取り上げ、中でも高出力なCO 2(炭酸ガス)レーザー、YAG(ネオジウム・ヤグ)レーザー、ファイバーレーザーの3つの加工用レーザーを中心に紹介していきます。


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レーザーの歴史と溶接への応用

レーザーは、大きく気体レーザー、液体レーザー、固体レーザーに分類され、発振媒体や発振媒質などによって名前が付けられています。CO 2レーザーは炭酸ガスを発振媒体にする気体レーザー、YAGレーザーとファイバーレーザーは固体レーザーです。セオドア・H・メイマンが波長694nmのルビーレーザーを発振させたのは1960年5月16日のことですが、その数年後にはCO 2レーザー、YAGレーザーの発振が確認されています。

溶接技術におけるレーザーの分類は、溶融溶接の中の高出力ビーム溶接(レーザービーム溶接)です。レーザー溶接では通常、レーザービームを1mm以下のスポットとして集光させ、部材表面に対する熱源にします。温度が上昇した部材表面は溶融を開始し、熱伝導と熱輸送によって溶融池が広がって部材が溶接されます。このタイプのレーザー溶接を熱伝導型の溶接といいます。

レーザービームの照射によって部材の沸点を超えるとキーホールという穴が形成され、その際にプルームとよばれる金属蒸気が噴出してスパッタ(飛散する金属粒による火花)やヒューム(溶けた金属が気化して空気中で固まった細かな粒子)が部材に付着し、加工者に害を与える危険性があります。さらにビームを照射し続けるとキーホールが部材を貫通し、この方法による溶接はキーホール溶接といいます。


<図1>レーザー溶接の原理
<図1>レーザー溶接の原理


レーザー出力を上げていくと、溶接速度が上がりますが、同時にスパッタやヒュームが放出され、部材への影響と後加工が増えていくことになります。レーザーの種類に限らず、出力・溶接速度と部材への影響はトレードオフの関係になっているというわけです。

また、レーザーを照射した場合、部材の反射率や透過率により吸収、透過、屈折、散乱といった現象が起きます。金属は透過率がほぼゼロであり、価電子が結晶中を自由に動き回ることができるので電気伝導度が高く、レーザーはあまり吸収されません。しかし、集光照射によって光強度を上げるとキーホールが形成され、その中で起こる多重反射やプラズマ・プルームによって効率よく吸収されます。ただ、アルミ、銅といった反射率の高い部材に対しては波長の短いレーザーを当てる必要があります。

レーザーの品質については、一般的にBPP(Beam Parameter Products、ビームパラメータ積)という評価単位が使われます。これはレーザービームの広がりの半角(mrad)とビームウエスト半径(mm)の積で与えられ、出射ビーム径(ウエスト径)が同一の場合は、レーザーが1m進む間に広がる範囲を示し、値が大きいほど品質が悪いことを表します。

レーザー溶接は、その深い溶け込み、狭範囲の溶融による高速性と熱影響の少なさから、早くから実用化が期待されてきましたが、しばらくは出力の弱さや取り回しの難しさから半導体や電子機器などの小さな部材の溶接分野に限定されてきました。高出力化による最初の実用化が実現したのはCO 2レーザーでした(1980年代にkWクラス)。その後、YAGレーザーによる短波長化(1990年代後半にkWクラス)、21世紀に入ってからファイバーレーザーの高輝度化が図られ、次第に小型部材以外にも用途が広がってきたのです。

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