人間の幸せを実現する、デジタル革命におけるテクノロジーとの関係性を考える (2/3)

【事例】あらゆる企業の「働き方」をも変える 不動産業界のデータ活用  

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

あらゆる企業の「働き方」をも変える 不動産業界のデータ活用

『不動産テック 巨大産業の破壊者たち』
 

 北崎 朋希/本間 純 著
 谷山 智彦 監修
 日経不動産マーケット情報 編
 日経BP
 2019/01 248p 2,400円(税別)

テクノロジーよりもデジタル時代のビジネスモデルを応用

 リアルデータを起点とする価値創造の取り組みが本格化しつつある現代。これまでICTやデジタル技術とは直接関係しないと思われていた分野にも、利便性や生産性を向上させるチャンスが見えてきた。

 『不動産テック 巨大産業の破壊者たち』は、フィンテックに続く動きとして海外で先行し、日本でも関心が高まりつつある「不動産テック」の最新動向をリポート。賃貸・売買、資産管理、市場調査や鑑定といった不動産業務にICTやAIを活用する不動産テックは、他業種や社会全体にどのような影響を与えるのだろうか。

 一口に不動産テックと言っても、その形態はさまざまだ。ビッグデータやAIを駆使して不動産価格を正確に推定する米国企業もあれば、テクノロジーの活用というよりも、デジタル化時代に登場したビジネスモデルを取り入れる企業も、不動産テックに含めることができる。

 後者の一例として興味深いのが「ウィーワーク(WeWork)」だ。コワーキング(協働)オフィスを世界124都市に提供する企業で、2018年には日本にも進出した。

 ウィーワークは、不動産事業者からビルやフロアを借り上げ、個別のオフィススペースに設えて1カ月単位で貸し出す。それに加えて、ITサービス、研修・教育、福利厚生、社会保険などオフィス運営上必要となる各種サービスも提供する。

 顧客は中小企業だけではない。米国では、IBMやアマゾンなどがウィーワークのオフィスビルを一棟丸ごと借りたりもしている。また、大企業向けに「ウィーワーク仕様」のオフィスを開発するコンサルティングも手がけ、立地選定から内装設計、各種設備を管理するソフトウェアまで提供しているそうだ。


不動産業界を支配する「プラットフォーム」となりうるウィーワーク

 ウィーワークが興味深いのは、このように、単にオフィススペースを貸すだけでなく、それを活用する、多様で行き届いたサービスを提供している点だ。言わば、「働く環境」を整えるための「プラットフォーム」として機能すると思う。

 テナントのデータを活用し、業界や企業のタイプ、ニーズに合わせたサービス開発も行えるのではないか。例えば「御社の業界で同規模の他社は、こんなサービスを使っています」といった提案もできそうだ。データ活用のアイデア次第で、グーグルやアマゾンのような、不動産業界を支配し、顧客を囲い込むプラットフォーマーになれる可能性も十分にある。

 ウィーワークがめざせるかもしれないプラットフォームビジネスは、データ・ドリブン・エコノミーの“エース”とも言える。製造業など他業種のデータ活用にも、大きなヒントになるのではないだろうか。


【発想】あえて「便利さ」をなくすことで人間の能力向上を促す「不便益」の発想 次ページ

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