ロストワックス精密鋳造法の歴史と特徴〜鋳造入門講座(4) (1/2)

精密鋳造法の中でも最も広い用途に用いられているロストワックス精密鋳造法は、1930年代以降に工業用技術として確立されてから、航空機用ジェットエンジン用のタービンブレードなど多くの機械構造部品製造に利用されてきました。今回はその歴史と特徴に着目します。

▽鋳造入門講座

ロストワックス精密鋳造法の歴史

精密鋳造法の中でも最も広い用途に用いられているのがロストワックス精密鋳造法(インベストメント鋳造法)です。この講座の初期に鋳造の歴史が紀元前5500年ごろ古代メソポタミアから始まったことを確認しましたが、精密鋳造法の始まりは青銅器時代に蜜蝋を消失模型として用いる古代ロストワックス鋳造が発明されたことから始まります。

この技術は鋳造技術の辿った経路と同じく、中国・朝鮮などを経由して日本にも伝来し、天平・白鳳時代に青銅製の仏像彫刻などに開花しました。現存する代表例は奈良・法隆寺の「薬師三尊像」などがあります。日本では「まねがた法」と呼ばれ、美術鋳物の製法として伝承され、江戸時代初期にはキリスト教弾圧の「踏み絵」作成などにも採用されました。

ロストワックス精密鋳造法が近代的な「工業用技術」として確立したのは1930年代以降といわれています。米国のオーステナル社で、それまで義歯製作に用いられていたインベストメント鋳造の一部である「ソリッド・モールド法」を改良して、コバルト合金「バイタリウム」を用いることによって「過給機動翼」を鋳造したのが工業用精密鋳造の最初といわれています。

第2次世界大戦末期、米国で大型爆撃機に搭載された「星形レシプロエンジン」が1万メートルの高空の薄い空気の環境でも所定の馬力を出せるよう、エンジンからの排気を回転力に変えて空気を圧縮してエンジン内に注入するための「過給機(航空機,自動車,船舶などの内燃機関の吸入空気圧を高めるため,圧縮空気を送る装置)」の開発が行われていました。しかしながら、3次元形状の機械加工技術が未発達のため量産化ができていませんでした。

その課題を解決し、B29に代表される大型長距離爆撃機を実用化したのがロストワックス精密鋳造によるブレード生産でした。その後米国のGEなどで開発が始まった航空機用ジェットエンジン用のタービンブレード(タービン〔羽根車〕に組み込まれている1枚1枚の羽根。タービンブレードは気体のエネルギーを受けることによってエネルギーを回転運動に変える働きをする)の生産技術として発展しました。

ロストワックス精密鋳造では当初、<図1>に示すようなソリッド・モールド法といわれる、パターンをフラスコ(容器)にセットしてスラリー(どろどろした粥状のもの。液体と固体粒子との懸濁液)を流し込んで固めた鋳型を作成し、その後加熱してワックスを溶かし出して鋳型焼成後、注湯する方式が採用されていました。

しかしこの方法では、耐火スラリーが大量に必要で材料費のコストが高くなり、また鋳型が厚いために鋳造した鋳物の機械的性質が劣り、機械部品としては採用できないなどの欠点があったため、1960年代以降は同じく<図1>に示されるセラミック・シェル・モールド法に順次置き換えられました。このセラミック・シェル・モールド法を用いれば、薄肉のセラミック・シェルのため鋳物の冷却速度が管理でき、機械的性質を安定させることができます。さらに全体のコスト削減に成功したことで、ジェットエンジンのタービンブレードの大量生産技術として確立されました。


<図1>ロストワックス精密鋳造法の作業手順(上段はソリッド・モールド法を示し、下段にセラミック・シェル・モールド法を示す)
<図1>ロストワックス精密鋳造法の作業手順(上段はソリッド・モールド法を示し、下段にセラミック・シェル・モールド法を示す)

タービンブレードの生産技術としてのロストワックス精密鋳造法の技術開発は、<表1>に示すように10年毎に新しい技術が開発され、1980年代にはほぼ完成した技術となりました。




<表1>タービンブレードの生産技術としての開発経過

※一方向凝固ブレードおよび単結晶ブレードについては後述。
※一方向凝固ブレードおよび単結晶ブレードについては後述。

セラミック・シェル・モールド法が精密鋳造業界に普及したことにより、精密鋳造品が機械構造部品として実用的であると認められ、その用途が航空機機体部品、産業用ガスタービン部品、蒸気タービン部品、自動車用部品および各種産業機械に用途を拡大していきます。

これには、鋳造できる材質をコバルト基合金からニッケル基合金、炭素・合金鋼、ステンレス鋼、銅合金、アルミニウム合金および最近ではチタン合金などに拡大してきたことが要因の一つであり、溶解鋳造方法でも大気溶解鋳造、真空溶解鋳造、吸引鋳造、加圧鋳造、遠心鋳造などさまざまな鋳造技術と組み合わせられることが大きく影響しています。<表2>にロストワックス鋳造品の用途例を示します。



<表2>ロストワックス精密鋳造品の用途例(『ロストワックス精密鋳造法』(社)日本鋳造協会より)

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