寸法精度がよく表面鋳肌が良好な精密鋳造法の分類と用途〜鋳造入門講座(3)

「精密鋳造法」は鋳造法の中でも寸法精度がよく、表面鋳肌が良好な鋳造法です。今回は精密鋳造法の分類と用途の紹介を行うなかで、恒久模型・消失鋳型に分類されるセラミック・モールド法、レプリキャスト法に加え、一般にロストワックス法とよばれる消失模型・消失鋳型に分類されるインベストメント鋳造法の3種類の精密鋳造法について比較を行います。


▽鋳造入門講座

精密鋳造法の分類と用途

鋳物の寸法精度は製造法によって変わります。鋳物の寸法公差はJIS B 0403/1995に規定されており、鋳物の寸法に比例して寸法精度範囲は拡大します。これを<表1>に示しました。

<表1>鋳造品の寸法公差(JIS B 0403/1995より)
<表1>鋳造品の寸法公差(JIS B 0403/1995より)

製品の品質保証条件は、この表に示される鋳造公差等級CTの番号を、各種鋳造法の寸法精度として図面に指示することで行われています。これらの寸法精度は鋳造法の種類・適用される鋳型造型法および鋳造される材質によって変わりますが、一般的に標準として比較すると、砂型鋳造はCT9、金型鋳造はCT6、ダイキャスト法はCT5、そして精密鋳造法はCT4に代表されます。これらの精度を基準寸法に対する許容差(公差)で表すと、<図1>のようになります。中でも、寸法精度の観点では、ダイキャスト法のCT5および精密鋳造法のCT4がより優れた鋳造法であるといえます。

ダイキャスト法は金型に直接溶湯を注入するため、比較的低温で溶融するアルミニウム合金、マグネシウム合金および亜鉛合金に限定されるのに対して、一般的に精密鋳造法では高温に耐える耐火物を用いて造型することにより、これらの比較的低融点の材料をはじめ、鋳鋼、ステンレス鋳鋼、超耐熱鋼およびチタン合金などほとんどすべての材質の鋳造が可能なことが最大のメリットです。ダイキャスト法については次回以降の回に詳細を紹介することとし、ここでは精密鋳造法についてご紹介しましょう。


<図1>各種鋳造品の寸法公差の比較例(JIS B 0403/1995をもとに編集部作成)
<図1>各種鋳造品の寸法公差の比較例(JIS B 0403/1995をもとに編集部作成)

ここからは精密鋳造法に含まれる鋳造法として、恒久模型・消失鋳型に分類されるセラミック・モールド法、レプリキャスト法、消失模型・消失鋳型に分類されるインベストメント鋳造法(一般にロストワックス法とよばれる)の3種類の精密鋳造法について比較検討します。


セラミック・モールド法

恒久模型(木型・プラスティック型・金属製型など)を型枠内に装入し、ここに耐火物粉末と迅速硬化バインダー(主として加水分解されたエチルシリケートなど)を混合して「スラリー(泥漿(でいしょう))」を作成し、型枠内に注入してスラリーを硬化させます。ある程度硬化させた鋳型を模型から離型し、その後常温乾燥したあとに引き続き900℃程度の高温で焼成して鋳型を完成させます。

これらの造型法は1950年ごろから英国のノエル・ショウおよびクリフォード・ショウの兄弟によって開発されたため「ショウ・プロセス」とよばれ、その後種々改良系が考案されて、ユニカスト・プロセス、CMプロセス、HFCプロセスなどが採用されるようになりました。

この方法は比較的大物の鋳造にも採用できるため自動車用ボディ金型やブラウン管式TVセット用のガラス成型金型などに用いられましたが、現在は用途が限定されています。<図2>にセラミック・モールド法(ショウ・プロセス)の製造工程を示します。


1. 適切な粒度分布の耐火物粉末を混合する 5. ゲル化した後鋳型を離型する
2. エチルシリケート系のバインダーを準備 6. 鋳型に着火し、可燃剤を燃焼させ微細割れを発生
3. 少量の凝固剤を配合して混錬する 7. 鋳型強度向上のため全体を焼成する
4. 枠付きの模型にスラリーを注入する 8. 上下の型合わせ後、注湯する

<図2>セラミック・モールド法(ショウ・プロセス)の製造工程

 

 

レプリキャスト法(Replicast Process)について

レプリキャスト法は、次回ご紹介するインベストメント鋳造法(ロストワックス法)と同じように金型を使いますが、使用する模型パターンは、発泡ポリスチレン(EPS:Expanded Polystyrene)を用い、またセラミックのコーティングをインベストメント鋳造の半分(4〜5層)にして造型時間を短縮する方法です。

予備発泡したEPSを金型に注入し、その後蒸気を注入することでさらに発泡を進めて金型を充満させ、表面が滑らかで、かつ内部は発泡が進んだ模型パターンを採取します。レプリキャスト法で用いられるEPSの原料の密度は640Kg/m³であり、最終的に発泡した状態では16Kg/m³となり40倍に膨張します。また当初粒子径が0.2〜0.3mmであったものが、発泡完了時には0.6〜1.0mmとなります。

発泡ポリスチレンは熱膨張係数がワックスなどと比較して小さいため、造型工程でインベストメント鋳造ほど 厳しい室温管理を行う必要がないこと、および 比重が小さいため作業行程中の変形が少ないことなどから、インベストメント鋳造と比較して 「大物鋳物」に適用可能です。4〜5層のシェルモールド造型を行った鋳型は模型パターンを除去するため900℃程度の焼成炉に投入され、急速加熱されてEPSの模型パターンを溶融・燃焼させます。

焼成が完了した鋳型は鋳造チャンバー内に装入され、鋳型の周りに振動を掛けながら「乾燥砂」を充填して溶湯の圧力を支持するように鋳型をサポートします。鋳型の周りから空気を吸引しながら上部の注湯口から溶湯を注入し、その後冷却して凝固させます。取り出された鋳物は冷却後、型ばらしされますが、鋳型層数が少ないぶん型ばらしが容易です。
レプリキャスト法の作業工程を<図3>に示します。


<図3>レプリキャスト法の作業工程
<図3>レプリキャスト法の作業工程

レプリキャスト法は、発泡ポリスチレン(EPS)の模型パターンを砂型鋳造に適用するロスト・フォームプロセス(日本ではフルモールド法と称します)から派生した精密鋳造法です。

ロスト・フォームプロセスは、大きなEPS模型パターンの表面に「耐火性塗型剤」を塗布した後、パターン全体を型枠に装入。パターンの周りに鋳物砂を充填し固めてから溶湯を直接注湯して、湯口・ランナーを含むキャビテイー部を形成しているEPS模型パターンを溶湯で溶融・蒸発させながらこの模型パターンを置換する形で鋳物を製造する方法です。注湯の途中では、EPSから発生した燃焼ガスは鋳型を通して外部に放出されます。

この方式では鋳鉄・球状黒鉛鋳鉄・銅合金およびアルミニウム合金などは適用できますが、EPSが溶融・蒸発するときにその主成分である「炭素」が溶湯に吸収される可能性が大きく、これに悪影響を受ける低炭素鋳鋼・低炭素ステンレス鋼および真空溶解鋳造が必要なチタン合金やニッケル基超耐熱合金などの材質は不可能でした。

レプリキャスト法は鋳型を一度900℃程度で「焼成」することでEPS成分の悪影響を除外できるため、インベストメント鋳造法と同様に「すべての材質」に適用可能です。

インベストメント鋳造法との違いは、EPS模型パターンを採用することにより比較的大物鋳物を製造できること、ワックス射出成型と比較して「低圧で模型パターン成形が可能」であるため大物でも高価な射出成型機を必要としないことです。

また模型パターンの比重がワックスの1%程度であることから、造型機などの設備費用も抑えられます。そのほかにも、鋳型厚さがインベストメント鋳造法の半分程度であるため型ばらしの工数が削減できるなどの利点があります。

レプリキャスト法の設備の例を<図4>に示します。装置の下部に鋳込み槽に装入したレプリキャスト鋳型をセット、その周りに乾燥砂を注入し真空引きをして、しっかりしたバックアップ層を形成しながら上部の溶解設備より直接注入します。注湯後は真空を解除するとともに乾燥砂を鋳込み槽から排除し、鋳物を取り出します。

レプリキャスト法による鋳物の用途は、産業機械分野では大型ポンプのケーシングやインペラー、小型ガスタービン部品などに用いられていますが、最近の報告では大物チタン合金鋳物およびニッケル基超耐熱合金を用いてジェットエンジンのケーシングなども製造されています。


<図4>レプリキャスト法の設備概念図
<図4>レプリキャスト法の設備概念図

<表2>にインベストメント鋳造法、セラミック・モールド法およびレプリキャスト法の比較表を示します。


<表2>各種精密鋳造法の比較
<表2>各種精密鋳造法の比較

次回はインベストメント鋳造法(ロストワックス法)をご紹介します。


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