積載量を最大に!飛行継続時間を最長に!プロドローンが追求し続けた産業用に最適なドローンづくりの極意(後編)

INTERVIEW

株式会社プロドローン
開発1部
山口 明彦 伊藤 聖人
製造・フライヤー・サービス部
林 信秀

前回は、プロドローンが製作するドローンの設計から開発、テストフライトを経て製品を具現化していく過程や、顧客のニーズをいかに体現するかの追求、独自開発のフライトコントローラーなどについてご紹介しました。今回は航空機の開発において最も重要な要素の一つ、ドローンがどれだけものを積んで運べるかという指標である「ペイロード」と本体の軽量化、飛行継続時間に関するお話をご紹介します。お話をお伺いしたのは開発1部の伊藤聖人氏と山口明彦氏、製造・フライヤー・サービス部の林信秀氏です。

 


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左から株式会社プロドローン開発1部山口明彦氏、伊藤聖人氏、製造・フライヤー・サービス部林信秀氏
左から株式会社プロドローン開発1部山口明彦氏、伊藤聖人氏、製造・フライヤー・サービス部林信秀氏

世界のドローンメーカーでも珍しいシングルロータードローンの開発

プロドローン社の製品ラインナップをみるとマルチコプタータイプのドローンだけでなく、いわゆるヘリコプタータイプのシングルローター機の機体もあります。マルチコプター全盛の現在においても開発を継続されているということなのでしょうか。

「マルチコプターを開発していると飛行時間の限界を感じることがあります。燃料を搭載して稼働するシングルローター機の場合、燃料を消費すればするほど、消費した燃料分機体が軽くなるので、ペイロードに余裕が生まれてそのぶん航続距離が長くなります。しかし、マルチコプターのようにバッテリーを搭載した機体の場合には、バッテリーの残量に応じて重量が軽くなることはありません。」(開発1部伊藤氏)

ドローンの機種といえばマルチローター型の機種がメジャーですが、そもそもマルチコプターとは複数のローターをもち、ローターと同じ数だけの回転翼を回して揚力を得るタイプのものを指します。小型のカメラを搭載し、空撮や点検をおこなうドローンはローターが4つのクワッドコプターが主流です。

その釣り上げるカメラが1眼レフのように重たいカメラの場合には、その重量に応じてローターが6つのヘキサコプターが採用されることもあります。つまりペイロードに応じてローターの数が変わるともいえます。例えば、より重量の大きい物流用のドローンや、薬剤を積載し空中から農薬を散布する農業用ドローンはローターが8つのオクトコプターが採用されるケースが少なくありません。

従来の回転翼をもつ航空機といえば、ヘリコプター型の、ローターが1つ付いたシングルローター機が一般的です。その場合ローターを回す動力源はエンジンとなります。エンジンでプロペラを回すことによって揚力を発生させますが、エンジンの回転数を秒単位で制御することは困難なため、プロペラの角度を変えられる可変ピッチプロペラが採用されています。メインローターのピッチ(迎え角)を操縦によって変化させ、発生させる揚力をコントロールするのです。

さらにプロペラが機体の進行方向側を通過するとき、一時的にその迎え角を減少させ、また進行方向とは反対側を通過するときは、迎え角を増大させます。つまり、メインローターの回転面を揚力のバランスによって傾斜させ機体を前進させるのです。これがシングルローター機の基本原理となります。

それに対してマルチコプターは、構造が複雑な可変ピッチプロペラは採用せず、迎え角が一定の固定ピッチプロペラを採用しています。迎え角が一定なので揚力をコントロールするためにはローターの回転数を増減させます。動力源にはモーターを用い、ESC(エレクトリック・スピード・コントローラー)によって、モーターの回転数を高速に制御しています。

マルチコプター機は複数の回転翼をもちますが、機体の進行方向側のローターの回転数を減らし、反対側のローターの回転数を増大させることで機体の水平軸を前進方向側に傾斜させ移動させます。マルチコプターの動力源はモーターなので必然的にエネルギー源は電力(バッテリー)となります。

このようにシングルローター機とマルチコプターでは、単なるメインローターの数の違いだけではなく、その揚力を発生させるプロペラの構造や機体水平面を傾斜させる機構が、機械工学的におこなわれるか、もしくは電気工学的におこなわれるかの違いもあるのです。

もともと回転翼航空機としては、内燃機関をもつシングルローター機しかなかったわけですが、その操縦は人間がおこなっていました。しかし、コンピューターの進化により小型で演算能力が高いCPUや傾きセンサーであるジャイロ、加速度センサーなどが登場したことによって、複数のモーターの回転数を高速制御できるマルチコプターが運用可能となりました。そのほか小型で高出力なモーターの登場もマルチコプターの進化に寄与していると思われます。

長距離荷物配送が可能なヘリコプター型ドローン「PDH-01」
長距離荷物配送が可能なヘリコプター型ドローン「PDH-01」


「お客様からエンジンで発電して電力を得る、ハイブリッド型ドローンの開発は可能か、と質問を受けることがあります。しかしエンジンを使うのであればマルチコプターではなく、シングルローター機の方が効率的です。1つのエンジンで1つの大きなプロペラをエンジンの動力で直接回した方が圧倒的に効率がいいわけです。社内にはラジコンヘリの専門家もいるのでそういう判断もできます」(開発1部山口氏)

航空機のジェット燃料にはケロシンいう燃料が使われます。ケロシンは灯油を蒸留したものですが、これはガソリンよりも単位重量当たりのエネルギー量が大きいことから航空機の燃料として採用されています。灯油よりもエネルギー量が大きい燃料はほかにもありますが、たとえエネルギー量が大きくても燃料自体の重量が重ければ、空を飛ぶ燃料としては適しません。

現在のマルチコプターはエネルギー源としてLiPo(リチウムポリマー)バッテリーがよく用いられていますが、これは現時点で最も単位重量当たりのエネルギー発散量が大きい電池だからです。しかし、エネルギーの消費とともにその重量も少なくなる液体燃料とは異なり、LiPoバッテリーは固形でエネルギーの消費とともに重量の減少は発生しません。

今後電動のマルチコプターがさらなる航続距離を得るためには、より大きい単位重量当たりのエネルギー発散量のバッテリーの登場が不可欠となります。つまり航続距離を伸ばすためにはLiPoバッテリーをたくさん積まなくてはならず、バッテリーをたくさん積むと機体総重量が増大するためペイロードが足りなくなります。ペイロードを稼ぐために高出力のモーターが必要となり、さらに大容量のバッテリーが必要になる、この悪循環を断つブレイクスルーがマルチコプターには必要になりそうです。


さらなるペイロードを実現させるための軽量化とは

ペイロードを稼ぐためには機体の軽量化も必須条件です。プロドローンでは、ドローンの開発や試作に3Dプリンターを使うことはあるのでしょうか。

「3Dプリンターは使用しています。今後も積極的に活用していきたいと思っています。詳細はお話できませんが、活用の仕方について現在研究中です。現在使用している3Dプリンターは樹脂のものです。金属造形が可能な3Dプリンターは材料がステンレスタイプのものがありますが、航空機の素材としては重量が重すぎます。材料にアルミを使用できる3Dプリンターの登場が待ち遠しいですね」(開発1部山口氏)

「さらなるペイロードを実現させるために、機体のフレーム同士の接合にはネジは使わずに接着を多用しています。外装はFRP製ですがボディに直接接着剤で固定しています。当社では独自の接着工法により、ネジなどを極力使用せず従来よりも頑強で軽量な機体を製造することができます」(開発1部山口氏)


20世紀の航空機の安全の歴史において、フレームと外板の接合にはリベット接合が用いられました。これは溶接や接着による工法を用いてしまうと、作業者によって圧着の度合いが異なり、設計強度が十分に担保できないことを防ぐためです。リベット接合のメリットは、誰が作業をしても均一に圧着できる点です。しかし、機体表面に鋲状の突起がうまれるため空気抵抗が増大してしまうというデメリットもあります。第二次世界大戦の零戦では空気抵抗を減らすため、機体の表面をなめらかにする沈頭鋲(皿リベット)を使う技法が日本人によって開発されました。現在でも全世界のほとんどの航空機で使用されています。

航空機の世界ではリベット接合が長らくメジャーでしたが、2011年に就航したボーイング787の胴体は、シート状のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を接着剤で貼り合わせて構成されています。これらの技術がドローンに転用されていくのは時間の問題でしょう。プロドローンは、いくつもの顧客の要求に応えるため、常に素材的にも技術的にも最新のものを取り入れて開発するといいます。中国勢に押され気味なドローン市場において、たくましい存在である国産ドローンメーカーにこれからもおおいに期待したいと思います。

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