試作品製作に多く用いられる「砂型鋳造法」の特徴や主な材料~鋳造入門講座(2)

自動車部品に使われる、ギアケースやダクト。このような自由曲線の多く現れる複雑な形状の部品の製作には鋳造、なかでも「砂型鋳造」という加工方法が用いられています。特に量産前の試作品として、または小ロットの生産に向いている方法です。今回は砂型鋳造法に注目し、その分類や特徴、用いられる鋳造材料についてご紹介します。

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砂型鋳造法の分類と用途

砂型鋳造法は、数ある鋳造法の中で最も広く用いられています。具体的にどのような方法があるのでしょうか?

砂型鋳造法は、鋳物を製作するたびに鋳型を消失する「消失鋳型」の中でも、模型が恒久的に使用される「恒久模型式消失鋳型法」に分類されます。これらの方法には、消失鋳型としてバインダー(粘結剤)に耐火物粉末を混合して鋳型を作成する「スラリー鋳型法」、バインダー類をまったく用いずに真空を用いて耐火物粒子を固めて鋳型を作成する「真空鋳型法(Vプロセス)」が含まれますが、使用される用途が限定されるため、詳細な説明は省略します。

砂型鋳造法では、まず、一定の大きさの型枠の中に製品形状に合わせた半割の模型をセットし、この上からいろいろな種類のバインダーを配合した鋳物砂(主として珪砂が用いられる)を投入した後、一定の圧力で圧縮して鋳型(キャビティ〔空洞部〕が製品となる)を作成します。この作業で「上型」と「下型」を別々に作成し、この2つを合わせて鋳型を完成させます。この時「中空製品」を製造する場合には、別途作成した「中子」を上型と下型の間にセットし、鋳型を完成させます。<図1>に砂型鋳型の構造を示します。

<図1>砂型の構造
<図1>砂型の構造

完成した鋳型に溶解した「金属溶湯」を注入し、これが凝固した後、鋳型から鋳物を取り出してショットブラストなどの適切な方法で砂を落とします。その後製品部と押湯(おしゆ)・湯口(ゆぐち)を切断除去して鋳物を完成させます。

砂型鋳造に用いられるバインダーの種類により、主な砂型鋳造法は<表1>のように分類されます。

<表1>主な砂型鋳造用鋳型の種類
<表1>主な砂型鋳造用鋳型の種類

これらの鋳型製作法のうち、主な方法の簡単な違いを見てみましょう。

生砂型法

生砂型法は最も古くから用いられている造型法です。天然珪砂に一定量の粘土(ベントナイト)を10%程度配合し、炭素粉末や澱粉および3%程度の水分を混合して結合性をもたせた鋳型材料に圧力を掛けて固めることにより鋳型を製作します。

利点としては設備費が安いことと、作業中に悪臭を発生しないことがあげられます。欠点としては鋳型強度が低いため大物用には不向きなことと、注湯後の鋳型からの水分発生が多いため、これを排除する工夫が必要であることです。

自硬性鋳型

常温で放置しておけば配合材料の化学反応により鋳型強度が上がり鋳型が完成する造型方式です。代表例は有機系のフラン樹脂をバインダーとして用い、硬化剤の有機酸によりフラン樹脂が「脱水縮合」して砂を固める方法が挙げられます。

利点としては樹脂添加量が0.7%程度と少なく、鋳型強度が高いので大物鋳物に適用できることがあげられます。また注湯時のガス発生量がほかの鋳型より少ないので、ガスに起因する鋳物欠陥の発生が少ないということもあげられます。欠点としては、砂の中の不純物や気温・湿度などの環境条件により硬化速度や強度にバラツキが出やすいこと、注湯後の悪臭が発生するなどがあります。

ガス硬化性鋳型

ガス硬化性鋳型の代表は、天然珪砂に5%程度の水ガラスを混錬して造型した後、鋳型に炭酸ガスを注入して鋳型を硬化する方法です。硬化機構としては水ガラスの成分であるNa₂OとCO₂が反応してNa₂Co₃が発生するときに水分を同時に排出して水ガラス中の珪酸(SiO₂)がゲル化して砂を固めるのが主な機構とされています。

利点としては設備費が安いこと、造型が迅速なこと、および鋳型の乾燥が不要であることなどがあり、欠点としては注湯後の鋳型崩壊性が劣り、製品部の取り出しに時間が掛かることがあります。

熱硬化性鋳型

熱硬化性鋳型の代表例は一般に「シェルモールド法」とよばれ、天然珪砂などの耐火物粉末表面に3%程度のフェノール樹脂をコーテイングしたレジンコーテッドサンド(RCS)を用いて、250℃程度に加熱した金属金型内に吹き込み加熱成形します。一定の厚さの硬化層が形成された後に未硬化のRCSを金型から排除し、5〜10㎜の肉厚を持った中空の鋳型を作成します。これらの成型体を組みあわせて鋳型を完成、単体で「シェル中子」として砂型鋳物および金型鋳造の「中子」として採用されます。

利点としては水分を含まない「乾態」であるため長期保存ができ、また鋳型強度が高いので運搬に耐えるため、中子を別の工場で予備成型することができることです。欠点としては加熱温度に耐える金型を必要とするため初期費用がかかることと、造型時および注湯後に悪臭を発生させ作業環境を悪くすることなどがあります。

<表2>に上記各種造型法の特徴の比較を示します。

<表2>主な砂型造型法の特徴の比較
<表2>主な砂型造型法の特徴の比較

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鋳造される材料とその用途

砂型鋳造法で鋳込まれるのは、溶解可能な金属およびその合金ならばすべて製造可能です。純鉄の融点は1,538℃ですが、これに炭素を合金すると炭素が多くなるにつれて融点が低くなり、炭素含有量4.3%で1,148℃まで下がります。鋳鉄は融点が最も低いこの成分近傍で鋳造され機械部品に採用されてきました。

<図2>に鉄に炭素を添加した鉄―炭素合金系の相状態図を示します。縦軸に温度をとり、横軸に添加する炭素(重量パーセント)をとったときにそれぞれの成分範囲でどの温度でどのような相が存在するかを示しています。図中で実線は鉄―セメンタイト(Fe₃C)の2相状態を示し、破線は鉄―グラファイト(C)の2相状態を示します。

一般的に砂型鋳物では溶湯の凝固速度(液相から固相になる速度)が非常に遅いため、グラファイト(C)が析出します。鋼材の区分では炭素含有量2%以下は熱処理が可能な「鋼(Steel)」とよび、2%以上は「鉄又は鋳鉄(Iron)」とよばれます。歴史的には溶融点の低い鋳鉄が先に開発され、さまざまな機械・設備に採用された後、より高温で溶解する必要のある「鋳鋼」が遅れて開発されてきました。

<図2>鉄―炭素2元系状態図(実線は鉄―セメンタイト系、破線は鉄―グラファイト系)
<図2>鉄―炭素2元系状態図(実線は鉄―セメンタイト系、破線は鉄―グラファイト系)

鋳鉄には一般的に珪素(Si)を合金して組織を安定化させます。一般部品にはグラファイトが片状に析出した「片状黒鉛鋳鉄」を鋳造品に採用します。片状黒鉛鋳鉄はその組織と機械的特性により、JISG5501にFC100〜FC350まで、6段階の強度レベルが100MPa〜350MPaまでの材料強度を持つ材質が規定されています。片状黒鉛鋳鉄は振動を吸収する能力(減衰特性)が優れていることと、黒鉛が潤滑剤の役目を果たすことにより「摺動特性」に優れているため、工作機械のベッドやディーゼル・エンジンのシリンダーライナーなどに多く採用されています。

また炭素とともに珪素(Si)を配合した鋳鉄材料を鋳型に注湯する前に、マグネシウム(Mg)、セリウム(Ce)などを少量添加(接種)することによってグラファイトを球状に析出させた「球状黒鉛鋳鉄」が開発され、JISG5502にFCD350〜FCD800まで、引っ張り強さが350MPa〜800MPaまでの高強度鋳鉄材料が規定されています。この球状黒鉛鋳鉄は強度の必要な各種自動車部品や水道用鋳鉄管などの多方面で採用が拡大しています。<図3>に炭素および珪素の合金成分バランスと、この合金で得られる組織を示します。

<図3>片状黒鉛鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄の組織図
<図3>片状黒鉛鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄の組織図

鋳鋼

炭素含有量が0.02〜2.14%の鉄合金鋳物を鋳鋼と称します。主に炭素含有量のみに注目した鋳鋼を炭素鋼鋳鋼といい、熱処理を含めた強度水準により分類されており、自動車部品、鉄道車両及び各種構造物に採用されています。また鋼材の低合金鋼と同様な用途に用いられる鋳鋼として低合金鋳鋼があり、建設機械部品などに多く採用されています。
また耐食性・耐熱性・耐摩耗性などの目的でニッケル・クロム・モリブデンなどを20%以上合金した高合金鋳鋼がそれぞれの用途に応じてJISにて規定されています。

銅合金鋳物

銅合金鋳物は、電気伝導度や熱伝導度が良いことから、電気機器関連部品など多くの用途に使用されています。銅と亜鉛の合金は「真鍮」ともよばれ、強度の高い銅合金として建築用部品などに多用されています。銅に錫を合金した青銅鋳物は最も長い歴史を持つ鋳物用合金であり、現在でも軸受・バルブおよびポンプ部品などに使用されているほか、従来からの美術鋳物などにも使用されています。

アルミニウム合金鋳物

アルミニウム合金は鉄系合金の約35%の比重しかないので、「軽量化」が必要な部品に広く採用されています。鉄系合金と比べて「融点」が低いので「金型重力鋳造」「低圧鋳造」および「ダイキャスト法」などの方法により製造される例が多いのですが、自動車部品や航空機部品などの用途には砂型鋳物が多数採用されています。
砂型鋳造用合金にはAl-Si-Mg系合金(AC4Cなど)が溶湯の流動性が良いことおよび熱処理により優れた機械的性質が得られることなどから、航空機ジェットエンジン部品、自動車構造部品および鉄道・船舶用部品などに採用されています。

マグネシウム合金鋳物

マグネシウムは比重が1.74と実用金属中で最も小さいため、この利点を生かして各種マグネシウム合金を鋳造で製造しています。その軽量特性(強度/比重=比強度)、振動吸収性および電磁シールド性などを生かすことができるノートパソコンの筐体、カメラボディなどに用いられています。マグネシウム合金はほとんどの製品が「ダイキャスト法」で生産されています。

チタン合金鋳物

チタン合金は実用合金では最も遅く発見された金属ですが、その軽量特性(強度/比重=比強度)および耐食性の良さなどから、耐食性ポンプ部品、船舶部品および航空機ジェットエンジン部品などに採用されています。チタン合金の多くの使用用途は人工骨などの人体インプラント部品やゴルフクラブのヘッドなど精密鋳造法によって製造されており、この製造方法などについては後の回で詳細をご紹介いたします。

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著者: 那須征雄(なす まさお)
那須技術コンサルタント事務所所長 1944年愛知県生まれ。名古屋大学工学部鉄鋼工学科卒業後、日特金属工業株式会社入所。以後、技術者として第一線での活動を重ね、1998年住重精密鋳造株式会社代表取締役社長に就任。2003年退任後はキングパーツ株式会社で技術顧問。2012年に独立し、自身のコンサルティング会社を設立。

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