タンク製作の技術力と高い管理能力で顧客の手間を徹底削減。タンク、マフラーなど大型ハコモノを手がける汎建製作所の工夫

機械用のタンクには大きく燃料タンクと作動油タンクがあります。燃料タンクはエンジンを稼働させるための軽油を蓄えておくタンクで中は空洞の構造になっています。一方で、作動油タンクはオイルを出したり戻したりするため、複雑な構造を設計し、かつ漏れのないように溶接するためには高い技術力が必要だと言います。今回は、奈良県磯城郡に本社を構える、建設機械向けのマフラーやタンクなどを主に手掛ける株式会社汎建製作所にタンク、マフラーなど大型ハコモノを手がける工夫についてお話を伺いました。

株式会社汎建製作所は、奈良県磯城郡に本社を構える、建設機械向けのマフラーやタンクなどを主に手掛ける企業です。大正12年に創業し、現在で日本国内3拠点にわたり180名以上の社員を抱える同社。自社で溶接した部品だけを納品するのではなく、必要な関連部品も取り寄せ組み立てまで行った状態での提供形態で顧客に喜ばれています。なぜ多くの企業が取り扱えない大型のタンクやマフラーといったハコモノの製造や、組立まで一貫した納品を実現できているのでしょうか?同社の取り組みについて代表取締役社長松田伸生氏、総務部長中井正人氏、工場長北村健太氏にお話を伺いました。

タンクやマフラー製作において常に最新の技術を取り入れながら提案し、事業を拡大

汎建製作所は、建設機械や農業機械のタンクが主力商品です。燃料タンクや作動油タンク、それ以外にもマフラーや外装のカバーといった建設機械で使用される薄物の板金製品などを製造しています。材料の成形から溶接、組立、塗装と、「そのまま利用できる状態」まで一貫して作業を担い、コンポーネントとして顧客に供給しています。
実は、マフラーやタンクを手がけるようになったのは、2代目社長になってからだそうです。
「2代目の川村宏社長が非常に技術に明るい人で、工場内のプロセスの自動化や、溶接ロボットの導入を主導しました。コマツ製作所様の取引先の中で、溶接ロボットを取り入れたのは当社が初めてでした。また、取引先のクボタ様向けに独自の消音技術を搭載したマフラーを設計してきました。マフラーとは、ガスを排出するときに規格以下の音量に下げる必要があるために用いられる部品なのですが、消音のために壁に当てながら排出させるようにしたり、グラスウールを組み込んだりと、工夫が必要なので、その部分を提案しています。最新のツールをうまく活用できる技術力を核とした提案で名を上げて、今まで事業を続けています」(中井氏)

インタビューにお答えいただいた代表取締役社長 松田伸生氏(提供:汎建製作所)
インタビューにお答えいただいた代表取締役社長 松田伸生氏(提供:汎建製作所)


製作するタンクの容量は1,900ℓ以上のことも。作動油タンクに求められる技術とは

機械用のタンクには大きく燃料タンクと作動油タンクがあります。

燃料タンク

エンジンを稼働させるための軽油を蓄えておくタンク。入っている軽油を送り出すだけであるため、中は空洞の構造になっています。

作動油タンク

機械の中でも油圧で駆動する油圧シリンダー・終減速機・バルブなどにオイルを送るために使われるタンク。オイルを出したり戻したりするため、複雑な構造になります。オイルを機械内のいろいろな箇所へ送り出し、またオイルを戻すときには不純物を取り除いた状態でタンクに貯める必要があります。そのため、内部に複数の仕切り板やオイルフィルターを溶接する必要があります。

特に作動油タンクに求められるような複雑な構造を設計し、かつ漏れのないように溶接するためには高い技術力が必要になります。

「タンクの製作には①気密度②清浄度の、大きく2つの管理観点があります。
水密度とは、簡単に言えば漏れないこと。タンクの性質上、絶対に中身が漏れてはいけないので、当社では水没検査を行なっています。
普通の溶接では、基本的にどこかに穴が空いてしまいます。そこで当社は水没検査を行い、完全に穴が開いていないことを1つ1つ確認しています。タンクを密封し、水の中に入れた状態で、タンクの中に空気を送るんです。水中に泡が起これば穴が開いていますし、泡が起きなければ燃料も漏れないということですね。
また、清浄度というのはオイルをきれいに保てるかということ。オイルに不純物が混ざった状態で機械を動かすと、機械の故障につながります。そのため、タンク内を出たり入ったりするオイルが常にきれいな状態を保てるかということも非常に大事です。当社ではタンクのフィルターの検査を行なっていることはもちろん、納品前にタンク内を一定品質になるまで清掃しています。
こうした基準をクリアすることは、サイズが大きくなればなるほど、溶接の厚みも増し、難しいです。当社では、容量1,900ℓほどのタンクを製造することもあり、そのサイズは3m四方に及びます。このサイズを取り扱える企業はなかなかいないようです」(北村氏)


タンクやマフラーの製作でシステムを用いた綿密な部品・工程管理。生産計画の変更に日次でも対応が可能

部品をピックアップする様子(提供:汎建製作所)
部品をピックアップする様子(提供:汎建製作所)


タンク・マフラーのメーカーであると同時に、斡旋メーカーの側面も持つ同社。200を超える協力企業から部品を調達し、顧客のニーズに合わせた製品を組み立てて提供しています。例えばタンクの場合、溶接したタンク内に、チューブ、センサー、バルブなどを取り付けます。

顧客は作業の工数が削減でき大変喜ばれますが、こうした対応を実現するためには管理能力が問われます。同社では、システム導入と適切な業務プロセス設計により、高い水準の管理が実現されています。


マフラーを手溶接する様子(提供:汎建製作所)
マフラーを手溶接する様子(提供:汎建製作所)


「当社では生産管理システムを導入し、お客様の生産計画と連動させています。お客様から生産計画に基づいた注文書を受け取ると、それを自動で取り込み、各部品の所要量計算を実施。そして協力企業への部品の注文と社内への生産指示を行います。ただし、お客様の生産計画は随時変動するものですので、日次で所要量計算を行い常に最適な発注在庫になるように対応しています。当社もかつては週次で計算をしていたのですが、最適な部品管理を行うためには日次で都度計算が一番でした。ここまで綿密に管理をしている企業はかなり少ないのではないでしょうか。

現品管理については、まず協力会社から部品が届いたら所定のロケーションに収納しておく。組立時に、必要な部品を、決まった場所から1つ1つピックアップし、台車やトローリーに乗せて運ぶ、といったルールを徹底しています。なお、もっと多種多様な部品を管理することが可能なので、当社の提案力を高めるためにも協力先企業は開拓していきたいと思っています」(中井氏)

また、こうした仕組みがしっかりしているからこそ、急な納品や増産にも対応できると言います。
「以前、『ある部品について増産を行いたいが、いつも頼んでいるところでは対応できなかった。助けてくれないか』という相談を受けたことがありました。そのいつもの工場は小規模かつ作業が属人的になっており、増産に対応できなかっただけでなく、図面もなかったのですが、当社で図面を起こし部品表作成し、短納期を実現できたことがあります。」(中井氏)


タンク製造の様子(提供:汎建製作所)
タンク製造の様子(提供:汎建製作所)


仕組みがあるからこそ、幅広い領域にも取り組んでいきたい

現在は鉄のハコモノが主力製品である同社ですが、ステンレスやアルミなど、異種素材にも対応可能であるそう。そのためにも、部品や素材を調達する協力企業も増やしていきたいと言います。培った技術と、管理能力を活かして、幅広い分野に事業を拡張させていくそうです。

「当社は、教育についても仕組みが整っていて、溶接のインストラクターを抱えています。どんな人材やニーズに対しても、最初にインストラクターによる指導があり、一定水準までスキルアップしてから業務に取り組んでいるんです。管理の仕組みや教育の仕組みが整っているからこそ、新しい領域に対しても高い品質での製品提供ができると考えています。自社独自の製品開発にも取り組んでいきたいです」(松田氏)


株式会社汎建製作所
奈良県磯城郡に本社を構え、大正12年に創業し、現在では日本国内3拠点にわたり180名以上の社員を抱える。建設機械や農業機械向けの燃料タンクや作動油タンクを主力商品とし、それ以外にもマフラーや外装のカバーといった建設機械で使用される薄物の板金製品などを製造する。 材料の成形から溶接、組立、塗装と、「そのまま利用できる状態」まで一貫して作業を担い、コンポーネントとしての提供が可能。
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