ロストワックス製法による部品製造の試作を金型レスで実現。粉末焼結積層造形で試作をお手伝いする株式会社ナカサ

INTERVIEW

株式会社ナカサ

副社長 細田 成年
営業グループ長 近藤 貴弘

「ロストワックス製法」とは、鋳造方法の一種です。ロストワックス製法で部品を製造する際に、最初に金型にワックス(ロウ)を流し込んで原型を作りますが、その原型を粉末床溶融結合法で製作することで、金型レスで原型を作ることができるため、試作に最適だそうです。今回は、島根県安来市にある金属加工の会社でロストワックス製品の機械加工及び組立を中心に、MIM製品の機械加工、射出成形機部品製造、粉末焼結積層造形品の製作などを行っている株式会社ナカサに金型レスの試作についてお話を伺いました。

ワックス(ロウ)で作った原型を元に鋳型を作り、複雑な形状の部品を鋳造することができる「ロストワックス製法」。島根県安来市にある株式会社ナカサは、この製法で製造された部品の加工を得意とする会社です。同社は近年、3Dプリンタの一種である「粉末床溶融結合法(Powder bed fusion)」により、ロストワックス製法で使用するワックスを金型レスで製造することで、低価格・短納期での試作を実現しています。同社の副社長である細田成年氏と営業グループ長の近藤貴弘氏に、金型レスの試作について話を伺いました。


ロストワックス製法とは

「ロストワックス製法」とは、鋳造方法の一種です。金型にワックス(ロウ)を流し込んで原型(製品の形状)を作り、その原型を石膏などの耐火材でコーティング。それを温めることで中のワックスを溶かして耐火物から抜くと原型通りの空洞ができるので、そこに溶かした金属を流し込んで鋳造する製法です。原型を複数個組み立てることで量産も可能。切削加工では難しかったり、パーツごとに製作して溶接、組み立てを行っていたりした製品も、一体物として鋳造することができます。幅広い材料で鋳造できるのが特徴で、幅広い業界で数多く採用されている製造方法です。


ロストワックス製品の加工はじめ、形状あるものの加工が得意な株式会社ナカサ

株式会社ナカサは、このロストワックス製品の機械加工及び組立を中心に、MIM製品の機械加工、射出成形機部品製造、粉末床溶融結合法による試作などを行っている会社です。取引先は、日立金属株式会社や株式会社日立メタルプレシジョン、出雲造機株式会社、タキゲン製造株式会社、ウメトク株式会社など多数。顧客からのさまざまな要望にも高い技術力で応えています。

同社の強みは、ロストワックス製品のように、すでに形が出来上がっているものをその形状を崩すことなく加工できることです。特にロストワックス製品には複雑な形状のものが多いため、切削では特に治具などでクランプ(固定)して歪みなく加工するにはノウハウが必要です。
「ロストワックス製法は鋳造できる材料の幅が広いため、『特殊鋼』や『難削材』と呼ばれる非常に硬く削りにくい金属も多い。弊社はそういった特殊鋼の加工も数多く経験しているので得意です」と、副社長の細田氏は語ります。

ロストワックス製品(提供:ナカサ)
ロストワックス製品(提供:ナカサ)


また、多種多様な機械設備を有しているため、依頼に合わせてさまざまな加工に対応できるのも同社の強みです。熱処理加工やメッキ処理など、自社で対応できないことについては、近隣にある協力会社に依頼。同社が窓口になることで、複数企業に加工依頼を出すという顧客の手間を省き、完成品を納品できるように対応しています。


IATF認証取得し、厳しい品質管理のもと製造に携わる

同社はISO9001と、自動車産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格である IATF16949を取得しています。自動車関連部品の加工に携わっているとはいえ、自動車メーカーではない企業がIATF認証を取得しているのは珍しいこと。
「主要取引先の一つからご要望があって取得しました。このことで、社内の品質管理が厳しくなったため、以前より社員の品質への意識が確実にアップしているのを実感します」と語るのは営業グループ長の近藤氏。リスクをたくさん洗い出し、不良品が限りなく0に近づくようにFMEA(故障モード影響解析)なども実施しています。また、社内にはISO事務局を設置。主にグループ長以上の社員はIATFの研修や講習に行き、日々知識を磨いています。
「努力の甲斐あって、監査などの際にもIATF認証を取得していることを伝えると『信頼できる品質の製品を作っている会社』と認識してもらえるようになりました」

作業の様子(提供:ナカサ)
作業の様子(提供:ナカサ)


ロストワックス製品の加工に加え、粉末床溶融結合法を活用した金型レスでの試作を実現

ロストワックス製品の加工を長年行ってきた同社が、現在力を入れているのは粉末床溶融結合法による金型レスの試作です。粉末床溶融結合法は、3Dプリンタの一種。テーブルに敷き詰めた粉末をレーザーで焼き固め、粉を焼いたらテーブルを下げ、そこにまた粉末を敷いて必要な部分を焼く……を繰り返すことで、立体の形状を作り上げます。

粉末床融解結合法での製作風景(提供:ナカサ)
粉末床融解結合法での製作風景(提供:ナカサ)


ロストワックス製法で部品を製造する際に、最初に金型にワックス(ロウ)を流し込んで原型を作りますが、同社はその原型を粉末床溶融結合法で製作。そうすることで、金型レスで原型を作ることができるため、試作に最適なのです。

粉末焼結積層造形のメリットは他にもあります。その一つは、金型では抜き取れないような複雑な形状のワックス模型を製造できること。
「例えば、渦を巻いた形状で中が空洞だったり、穴からさらに横穴がつながっていたりといった形は金型で作るのが難しいものです。金型で製造する場合には、2つに分けて原型をとり、それを溶接しなければなりません。しかし、粉末床溶融結合法ならそういった手間が不要なので便利です」

もう一つは、金型を製造して試作するよりも、圧倒的に納期もコストもかからないこと。
「金型の製造には、非常に時間とお金がかかります。ですから、形やサイズが確定していない試作の時点で金型を作るのはかなりリスクが高い。その点、粉末床溶融結合法なら金型レスでワックス模型を作れますから、非常に試作に向いています」

一方で、非常に細かいですが積層ピッチが残るデメリットもあります。同社の場合は、メリケン粉のような粉末を使用し、出来上がった模型にプラスチックを含浸させることで固めています。積層ピッチが気になる場合は、含浸させた後にペーパーで表面を擦ったり、加工で肌を整えたりして、表面をきれいにしてから納品することで顧客の要望に応えています。


アイデアレベルからの相談や材質変更に伴うテストにも対応

「試作のご相談は、図面があるケースだけでなく、アイデアレベルからのご相談にも対応しています。その他、『材質をテストしたい』といったご要望もあります。例えば、より強度のある材質に変更することで、形状を薄くしてもいい場合もあります。そういった材質変更に伴う形状変更の際にも、粉末床溶融結合法を活用して試作することがあります」と近藤氏。また、「従来の製造方法からロストワックス製法に切り替えることで、今は2つのパーツを溶接しているものを一体物にできないか」といった相談を持ち込まれることもあると言います。

アンダーカット形状を有する物の成形にも対応(提供:ナカサ)
アンダーカット形状を有する物の成形にも対応(提供:ナカサ)


「最終的に鋳造するのはロストワックスメーカーなので、より安定して作ることができるように、ロストワックスメーカーの方にも相談してより良い形をご提案することが多いです。お客様のご要望に応じて、2〜3社で協働することでより確実性の高い製品を作れるようにしています」


お客様の想いをカタチにするお手伝い

昭和27年以来、島根県安来市で金属加工に携わってきた株式会社ナカサ。「敬天愛人」をモットーに掲げ、人を敬い、全てのことを人のためにとの思いで日々の業務に向き合っています。
「弊社は、金属加工を通して地域に貢献できる会社を目指しています。ですから、『お客様第一』で、無理難題であってもできるだけ要望に応えられるようにしています」と、近藤氏は語ります。

粉末焼結積層造形による金型レスの試作も、そんな同社の思いを形にした一つ。「金型レスで試作してロストワックス製法で製造することで、今までコストや時間面で試作が厳しいと思っていたものも製造できる可能性があります。試作を検討している方は、ぜひ気軽にご相談ください」



株式会社ナカサ
島根県安来市にある金属加工の会社。ロストワックス製品の機械加工及び組立を中心に、MIM製品の機械加工、射出成形機部品製造、粉末焼結積層造形品の製作などを行っている。多種多様な機械を備えており、難削材の加工も得意。近年は、粉末焼結積層造形による金型レスの試作にも力を入れている。
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