真空技術を駆使した試験機器を設計・製造。大学教授や研究者から選ばれ続ける北野精機

INTERVIEW

北野精機株式会社
代表取締役社長
北野 雅裕

難易度の高いコア技術の真空技術と低温技術。研究開発で使われる製品になると、指紋が一つでも内部に残っていたら、分子レベルのガスが発生する原因になって研究結果に差が出てしまうため、そこまで理解して仕上げる必要があるそうです。今回は、東京都大田区にある、精密機器の設計・製造・販売会社で大学・官公庁の研究所をはじめ、民間企業の基礎研究所に向けた実験機器の開発・製造において優れた品質と信頼性に高い評価を得る、北野精機株式会社に同社の強みと、ものづくりへのこだわりについてお話を伺いました。

新しいことに挑戦するために、これまでにない試験機器を求める研究者を、半世紀以上にわたり支えてきた会社があります。国内屈指の工業集積地域である東京・大田区に本社を構える北野精機株式会社です。大学教授や研究者たちから持ち込まれる「こんな試験機器がほしい」というニーズに応え、それまでにない未知なる機器や特注品を形にしてきました。創業当初から培ってきた真空技術と低温技術が北野精機の礎。代表取締役社長の北野雅裕氏に同社の強みと、ものづくりへのこだわりをお聞きしました。


研究機関での試験機器向けに高度な真空技術「超高真空」にいち早く着手、豊富な技術・ノウハウを蓄積

北野精機外観(提供:北野精機)
北野精機外観(提供:北野精機)


精密機器の設計・製造を行う北野精機株式会社。同社の特徴はなんと言っても、取引先の7割以上を大学や官公庁の研究機関が占めることです。物理学や物性、工学系を中心に、大学の先生や研究者からの要望に応えて、試験機器や試作品を製造しています。

□コア技術の「真空技術」と「低温技術」

研究者からの要望に応えるために、難易度の高い極高真空や極低温技術にいち早く取り組み、新素材やナノテクノロジー、高温超電導、宇宙開発など、非常に多くの産業の発展に寄与してきました。

□細やかな気遣いでのトータルなケア・サポート

例えば、指紋が一つでも内部に残っていたら、分子レベルのガスが発生する原因になって研究結果に差が出てしまう。研究開発で使われる製品になると、そこまで理解して丁寧に仕上げます。

大学の研究所で使用される有機材料開発装置(提供:北野精機)
大学の研究所で使用される有機材料開発装置(提供:北野精機)


□大学教授や研究者と一緒に、高性能な試験機器を開発・提供してきたノウハウと実績

旧帝国大学と言われる東京大学や東北大学、京都大学などをはじめとする全国の大学教授や研究者から、「よそで断られても、北野に頼めばなんとかしてくれる」と高い信頼を得ています。
北野氏は、「困っている研究者のために、何とかしてあげたい。相手の立場に立った、ニーズに合った機械を手づくりする。それは創業当初から変わらぬ当社のモットーです」と語ります。

同社が大学や研究室と取引をするようになったのは、雅裕氏の父で創業者である盛丈氏が、陸軍の技術研究所に勤労動員された際に、技術将校として研究所で働いていた多くの大学教授と知り合ったことがきっかけです。戦後、その大学教授らから「実験で使う特別仕様の実験用機器をつくれないか」と依頼されて、機械工場を創業。教授らの要望に応えて、試験機器や特注の装置をつくり続けてきました。以来、大学や官公庁の研究室と北野精機との関係性が、現在まで引き継がれています。


未知なる試験機器や特注品を研究者とともにつくり上げるプロセス

これまでに製造した機器(提供:北野精機)
これまでに製造した機器(提供:北野精機)


北野精機は、研究者から「こんなものがつくりたい」というオーダーがあると、イメージを聞き出したりラフ画を元にディスカッションしたりしながら、図面を起こし、製造していきます。時には、既存の分析器や試験機器を改造・改良したりしながら、どこにも存在しない試験機器を形にしていくのです。

もちろん未知なる試験機器の製作は、簡単ではありません。手本とするものがなければ、材料や構造を自ら考えて、研究者の要望に沿った機器をつくり上げていきます。その過程について、北野氏は次のように話します。
「どこにもない製品の依頼があったときは、まず研究者の用途や目的、仕様や予算、実験環境などを考慮し、自分の中の引き出しを全部開けてみて、これまでのどの経験が近いかと探ります。たくさん経験を積ませていただいたおかげで、そこをベースに考えられるというのが強みの一つです。自分の中になかったら社員の経験を探る。社員にもなかったら、お付き合いのある先生方に相談することもあります。そうしたネットワークも活用させていただき、組み合わせ、盛り付け、形にしていきます」

試験機器の製作風景。旋盤加工作業(左)、精密機器組立作業(右)(提供:北野精機)
試験機器の製作風景。旋盤加工作業(左)、精密機器組立作業(右)(提供:北野精機)


試験機器の開発・製造で産業の未来に貢献

北野精機が携わっているのは最先端の研究・開発に使われる試験機器のため、同社に相談が来て、機器や試作品をつくっているうちは「この試験機器を使って何ができ上がるかはよくわからない」と言います。実際にその試験機器を使って研究された成果が世に出るのは10年も20年も先の話であることも多いそうです。

同社がつくる試験機器は、実に幅広い分野の技術や産業の発展に貢献しています。例えば1977年には、当時の国鉄が宮崎にリニア・モーターカー(磁気浮上式鉄道)の実験用線路を設けた際、得意とする低温技術と真空技術を生かし、超電導コイル冷却用クライオスタットの製作に関わりました。同じころ、当時は世界初めてとなるレーザー光を利用した高温プラズマ生成装置や、タンデム型複合ミラー方式の「ガンマ6」の開発にも協力し、その技術開発に貢献しました。
最近では、有機EL材料の開発装置の設計・開発にも携わり、国内外の大学や企業へ装置を納めています。また、世界中の著名な音楽ホールで使用されているスピーカーの振動板も真空技術を転用して設計しており、それを生産するための装置も北野精機が関わっています。

検査作業風景(提供:北野精機)
検査作業風景(提供:北野精機)


地域のネットワークを生かし、「ものづくりのプラットフォーム」としても活躍

外注企業との打ち合わせ風景(提供:北野精機)
外注企業との打ち合わせ風景(提供:北野精機)


北野精機が本社を構える東京・大田区には、昔から中小規模の各種加工技術と素形材技術が高度に集積しています。その地域との関わりがあることも北野精機の強みです。地域には自分の製品や技術にこだわりを持っている技術者が大勢いるため、同社にできないことは地域の技術力を活用しています。しかし、そうした専門性の高い技術者は、「図面がなければ対応できない」という人も多い。そこで顧客に代わって北野精機が設計し、図面にして、彼らに発注しています。

「大田区の技術者たちとやり取りしてつくってもらった部品などを使って、私たちがお客様の要望を形にしていく。彼らに普通に頼んだら断られてしまうようなことを、私たちが間に立ってコーディネートしていくことで、地域にある知識や経験や技術力を活用させていただく。それはやはり、お客様である研究者の要望を実現したいから。私たちは『ものづくりのプラットフォーム』であろうとしているんです」

研究者にとっては、北野精機に頼めば部品製作から加工まですべて仕上がったものが納品される。このトータルコーディネートが、「北野精機に頼めば、なんとかしてくれる」と言われる理由の一つなのです。

研究者が求める試験機器を設計し、提供してきた北野精機。今後も真空技術や低温技術を生かし、研究者のパートナーとして「ジャンルや国を問わず、研究者の求めるものをつくっていきます」と北野氏は語ります。医療分野や農業分野など、同社がこれまで携わったことのない分野であっても、その経験とノウハウで必ず力になってくれることでしょう。


北野精機株式会社
東京都大田区の精密機器の設計・製造・販売会社。超高真空技術、極低温技術を生かした実績多数。大学・官公庁の研究所をはじめ、民間企業の基礎研究所に向けた実験機器の開発・製造において優れた品質と信頼性に高い評価を得る。
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