建築業界・土木業界の課題に向き合う郷葉に聞く。イノベーションを生む製品開発は「社会課題の解決」が起点

建築金物の種類は、大きいものでは外壁の金属パネルや手すり、小さいものでは傘入れに至るまで、多岐にわたります。特にオーダーメイドの製作金物は、個人の知識と技術を結集して作り上げるもので、設計者や製作の力量が製品の良し悪しに直結するため、常日頃から技術や知識のアップデートが欠かせないといいます。今回は、北海道や東北地方を中心に、建築金物や通信鉄塔事業の設計、製作、施工を手掛ける北海道札幌市にある株式会社郷葉に時代の変化を踏まえて、建築業界や土木業界では今どのような課題があり、どのような解決策を生み出してきたのかお話を伺いました。

社会の課題を解決したいという考えに基づき、独自の建築金物を開発してきた郷葉(きょうよう)。時代の変化を踏まえて、建築業界や土木業界では今どのような課題があり、どのような解決策を生み出してきたのか、代表取締役 森笠哲也氏、東北支店長 三好隆人氏、営業部長 横橋尚嗣氏に伺いました。

スピードと安全性を強みとする北海道の建築金物メーカー「郷葉」

株式会社郷葉(きょうよう)は、建築金物や通信鉄塔事業の設計、製作、施工を手掛ける会社です。北海道札幌市に本社を、宮城県仙台市に支店を構え、いわゆるスーパーゼネコンとの取り引きをメインに、道内はもちろん東北や北関東まで事業エリアを広げています。

代表取締役 森笠哲也氏(左)、東北支店長 三好隆人氏(中央)、営業部長 横橋尚嗣氏(右)(提供:郷葉)
代表取締役 森笠哲也氏(左)、東北支店長 三好隆人氏(中央)、営業部長 横橋尚嗣氏(右)(提供:郷葉)


□大手通信会社からも評価される意思決定スピードの早さ

同社は一級建築士事務所を開設しているため、施工図の作成や製品製作が迅速、意思決定のプロセスも早く、結果として工期も早い。これが同社の強みです。

「大手通信会社の通信鉄塔事業が仕事につながった経緯も、他社よりスピーディーな対応ができる点を評価されたからです」(代表取締役 森笠哲也氏)


□独自の基準を設けて安全性を何より重視

迅速な対応が強みの一方で、同社の安全性へのこだわりは並々ならぬものがあります。デザインや意匠性よりも安全性を重視する。これが同社の考え方です。

「建築金物には、安全性に関する明確な基準がないケースも多いのが現状です。そのため当社では、製品の安全性を担保する意味で独自の基準を作っています。例えば手すりの溶接基準や金属パネルの製作基準など。自社内で安全性に関する検証や技術解析などを踏まえた上で、製品づくりを行います」(森笠氏)


□社員一人ひとりの力量が要

大きいものでは外壁の金属パネルや手すり、小さいものでは傘入れに至るまで、建築金物の種類は多岐にわたります。同社が手掛けるのは、大量生産ではなく少量多品種のものでオーダーメイドが基本。設計者や製作する社員一人ひとりの力量が製品の良し悪しに直結するため、常日頃から技術や知識のアップデートが欠かせません。

「オーダーメイドの製作金物は、個人の知識と技術を結集して作り上げるもの。作図を手掛ける社員は十数名いますが、ベテラン社員が個人のレベルに合わせて指導しています。製作の現場では札幌、石狩、仙台にある工場で働く社員が行き来して、交流しながら技術を磨いています」(森笠氏)


「社会課題の解決」を起点に開発された郷葉のオリジナル製品

これまでさまざまなオリジナル製品を開発してきた郷葉ですが、そのベースには「社会の問題や課題を解決したい」という会社としての考え方があります。

□専門業者不足の解決・納期短縮・コストダウンを叶える「KBP工法」

例えば約20年前に同社が手掛け、実用新案を取得している「KBP工法」。もともとは通信鉄塔のために大手通信会社と一緒に開発した技術ですが、その背景には鉄筋や型枠業者など専門業者の確保が難しい現場の状況がありました。

従来工法とKBP工法(提供:郷葉)
従来工法とKBP工法(提供:郷葉)


従来の鉄柱工法の基礎工法では、鉄筋組立や型枠脱型の作業が必要です。ところが、KBP工法はこうした作業が不要。埋めた基礎鋼管に支柱を固定し、コンクリート打設により構造を一体化する新しい工法です。工程を大幅に簡略化できるため、納期は従来の約15日から3日に短縮。材料や運搬物も少なくて済むため、施工費や人件費等のコストダウンにもつながります。

「風速などに対する構造計算も踏まえて、安全性と高品質、低コストが叶う鉄塔を開発してきました。その結果、札幌市より建築確認証が交付され、通信設備鉄塔は約20年間で北海道全域の約800基地局で導入されています。また、鉄塔の発展型である太陽光架台(SEPイ型)では、2万本以上の施工の実績があります」(東北支店 三好隆人氏)

KBP工法を応用したイ型架台を用いた太陽光架台(提供:郷葉)
KBP工法を応用したイ型架台を用いた太陽光架台(提供:郷葉)


□基礎工事にイノベーションを起こす「フラットベース」

2018年に特許(参考情報1)を取得した「フラットベース」も、 現場で課題となっていた人件費の高騰、大工など専門業者の減少や高齢化、工期日程の遅延などを解決するべく開発されました。

従来の基礎工事では、鉄柱工法と同じく現場での鉄筋組立や型枠脱型の作業が必要です。そのため養生期間も含めると、一週間ほどの時間が掛かります。一方、フラットベースは工場で型枠を作り、それを現場に持ち込んで設置するだけ。工事の基礎が「造る」から「置く」に変わることですぐに基礎が完成するので、従来の工法と比べて飛躍的な工期短縮と人件費削減につながります。

「金物専門業だからこそ、鋼製型枠と配筋の完全ユニット化を実現することができました。
今は土木工事も建築工事も、型枠職人さんや鉄筋加工の職人さんが常に不足しています。ときには現場の工程を変更せざるをえないことも。そうした時代背景を踏まえて開発した製品ですので、フラットベースの認知度が上がるにつれ、じわじわと引き合いも増えている状況です」(営業担当 横橋尚嗣氏)

「小型建築の基礎であれば何にでも活用できるので、ガソリンスタンドで給油機を置く場所の基礎にスポット的に採用されることも。将来は水素ステーションや、EV自動車の充電ステーションといったエネルギー供給基地の基礎工事にもお役に立てるはずです」(横橋氏)

フラットベースで施工された基礎部分(提供:郷葉)
フラットベースで施工された基礎部分(提供:郷葉)


□災害や事故から暮らしを守る、風圧・振動に強い「ストロングキャッチパネル」

近年は台風の増加による影響で、建造パネルの落下事故が増えています。そうした社会課題を解決するべく同社が開発した最新製品が、「ストロングキャッチパネル(通称:Sパネル)」です。

「風圧のダメージが大きい高層階では、最悪の場合パネルが飛んでしまうこともあります。Sパネルはパネル自体を補強することで、一般的なパネルと比べて風圧や振動に強いのが特徴です。そのため建築物の高層階などはもちろんですが、常に微振動が起こる歩道橋や駅といった公共施設でもお役に立てると考えています(森笠氏)


・金属パネル自体の強度をアップ
「建築パネルに施される従来のアルミニウムの曲げ加工は、振動や風圧による経年劣化で強度に影響が出る場合があります。そこでSパネルでは曲げ加工は行わず、独自のZ型のアルミ型材を組み合わせることで、曲げ加工で弱くなる部分とビス固定部分の強度アップを実現しました。横断歩道橋側面パネル、施工中の球場高層部で採用された実績があります」(横橋氏)


従来の曲げ加工の断面(左)、Sパネルでの曲げ加工の断面(右)(提供:郷葉)
従来の曲げ加工の断面(左)、Sパネルでの曲げ加工の断面(右)(提供:郷葉)


・ビスとビスを打つパネル裏側の強度をアップ
「パネルはビスで固定するため、ビスを打つ裏側の下地を補強しています。また、使用するビスもかなり強度の出るものを指定。これにより経年劣化に対して大きな強みが発揮できます」(横橋氏)

「また、建物を造るとき、『風圧の設定条件があるので、それに耐え得るようにしてください』といった前提条件があります。一般的なパネルは強度の数値化がほとんどなされていませんが、当社ではできています。ですから、風圧に耐え得るには補強を何ピッチで入れる、固定するビスを何ピッチで入れる、といった明確な提案が可能です」(横橋氏)



・安全性のために独自基準を設定
「製作金物にはもともと構造的な基準がありません。そのため当社では安全性のために独自の基準を設けていて、強度が必要とされる地上30m以上の一般部、隔角部と30m以下で微振動のある部位でSパネルの使用をおすすめしています」(横橋氏)


Sパネル。仕上げ材とアルミフレームの組み合わせ(左)、アルミフレーム(中央)、仕上げ材(右)(提供:郷葉)
Sパネル。仕上げ材とアルミフレームの組み合わせ(左)、アルミフレーム(中央)、仕上げ材(右)(提供:郷葉)


基準のない建築金物の安全性に不安がある。建築現場や土木現場で、納期の遅延や人材の確保、コストの増加等で悩んでいる。建築金物や基礎工事でお困りごとや解決したい課題がある方は、ぜひ郷葉に一度ご相談ください。


参考情報
・参考情報1:「特許第6837243号」の特許権者は「株式会社郷葉」、発明の名称は「設置型基礎用の型枠構造体およびこれを用いた設置型基礎ならびにその設置方法」です。


株式会社郷葉
1980年創業。北海道や東北地方を中心に、建築金物や通信鉄塔事業の設計、製作、施工を手掛ける。工法の標準化による納期短縮、およびコストの低減化に定評があり、独自の製品開発を通して社会の問題・課題の解決に取り組む。
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