デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは、そして「As a Service」としてのDX導入事例~DX有識者が語るDXによるビジネス変革とは(前編)

INTERVIEW

キュレーションズ株式会社
代表取締役
根本 隆之

デジタル・トランスフォーメーション(以下DX)という言葉をよく耳にしますが、頭文字をとって「DT」と書くのではなく「DX」と書くのは、「trans(変える)」という言葉と同義である「cross」を省略して「X」と書くことから由来します。多くの企業がDX推進を行っていますが、実際できている企業は少ないのが現実。それでは、DX実現による新事業創出とはどのようなものでしょうか。今回は、60社以上と事業創出の取り組みしていたきキュレーションズの代表取締役社長 根本隆之氏にDXとは何かを解説して頂き、自社製品を「As a Service」として提供するDX導入事例をご紹介して頂きました。

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デジタル・トランスフォーメーション(DX)のデジタルはあくまで手段。成長していくためには、ビジネスをトランスフォーションすることが重要です。トヨタ、ソニーなど60社以上と事業創出の取り組みしていたきキュレーションズの代表取締役社長、根本隆之(ねもと・たかゆき)氏に発想の転換のノウハウを伺いました。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは

キュレーションズ株式会社代表取締役社長 根本隆之氏。1997年、ウォータースタジオに入社し企業へのライフスタイルマーケティングを専門領域としてプロジェクトを多数経験した後、2002年にソニーに入社。ネットワークサービスを立ち上げ、要素技術のモバイル活用の企画を担当した後に、2007年、ブランドデータバンク事業に参画。2010年、マクロミルに事業譲渡後、リアルフリートでamadanaのマーケティングを主管。2013年、⼿企業の出島戦略の伴⾛を⾏い、新事業創出を60件以上経験し、現在に⾄っています。一般社団法人サイバースマートシティ創造協議会 専務理事。(提供:キュレーションズ)
キュレーションズ株式会社代表取締役社長 根本隆之氏。1997年、ウォータースタジオに入社し企業へのライフスタイルマーケティングを専門領域としてプロジェクトを多数経験した後、2002年にソニーに入社。ネットワークサービスを立ち上げ、要素技術のモバイル活用の企画を担当した後に、2007年、ブランドデータバンク事業に参画。2010年、マクロミルに事業譲渡後、リアルフリートでamadanaのマーケティングを主管。2013年、⼿企業の出島戦略の伴⾛を⾏い、新事業創出を60件以上経験し、現在に⾄っています。一般社団法人サイバースマートシティ創造協議会 専務理事。(提供:キュレーションズ)


──── デジタル・トランスフォーメーション(以下DX)について、経済産業省は報告書で、DXが実現できない場合、2025年以降、年最大12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があるとして、「2025年の崖」と名付けています。
デジタル・トランスフォーメーションを英語で書けば、Digital Transformation。頭文字をとれば、「DT」になりそうですが「X」となるのは「Trans」が「X」とラテン語に由来するとされています。
「trans」は、「変える」「超える」という意味もあるそうです。キュレーションズではビジネス・トランスフォーメーションという言葉を使っています。ビジネスを変えるということになりますか?


根本隆之氏(以下同):
2018年12月に経済産業省が出した「デジタル・トランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」は、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

デジタルはあくまで手段です。デジタルによるプロセスの変革、つまりIT化から「デジタイゼーション(Digitization)」を行い、次にデジタルによってビジネスと企業、人を結びつけて統合する「デジタライゼーション(Digitalization)」、そして人とモノのビジネスの結びつきがデジタルによって相互作用をもたらす、「デジタル・トランスフォーメーション」と進化するわけです。『攻めのDX』がビジネスモデルのあり方を変え、「ビジネス・トランスフォーメーション」を実現できるわけです。しかし、DXをしているといいながら実際にできている企業が少ないのが現実です。


デジタル・トランスフォーメーション(DX)の定義(提供:キュレーションズ)
デジタル・トランスフォーメーション(DX)の定義(提供:キュレーションズ)


賃貸住宅にIoT機器を導入し本業以外の売り上げを~DX導入事例①

──── 具体例を教えていただけますか?

当社はNECパーソナルコンピュータ株式会社と一緒に、一つのAPI(Application Programming Interface)でさまざまな機能やデータを簡単に相互利用できるようになる「plusbenlly(R)」(プラスベンリー)を共同開発しました。これを使って、大和ハウスグループの大和リビングマネジメント株式会社は東京電力などと組んでDXに取り組んでいます。

大和リビングマネジメントは、賃貸住宅が60万軒ぐらいあるのですが、その住宅のリビングルームにIoT機器を順次、無料で設置しています。なぜそんなことができるのかというと、大和リビングマネジメントは、毎月の家賃の中に電気代を含んで請求しているからです。大和ハウスのグループ会社が東京電力などの電力会社からバルクで電力を割安で買って電気代の価格を下げており、生み出した利益を活用して、IT機器を無料にできるわけです。ユーザーは、家賃と電気料金を別々に払わずにすみます。

また、APIを活用して、IoT機器で使用量を「見える化」しています。分電盤センサーにつながっており、住民それぞれが何時ぐらいに冷蔵庫を開けたかや、何時ごろに電子レンジをよく使っているのかということもわかります。その情報も蓄積します。

次のステップに起こり得る可能性として、室温が変化したとき、AIが、住民にエアコンを入れませんかと提案したり、電力の使い方に合った家電を買ってもらったりというふうに可能性が広がります。住民の「よりよい生活、健康」のための「質の高い睡眠」を提供するため、寝室にセンサーをつけて最適な室温の提示や寝具の提案、将来的には、保険など、賃貸管理業の本業と全然違う事業の売り上げを作ることもありえます。それがデジタルを活用した、ビジネス・トランスフォーメーションになります。


オープン型プラットフォームである「plusbenlly(R)」(プラスベンリー)(提供:キュレーションズ)
オープン型プラットフォームである「plusbenlly(R)」(プラスベンリー)(提供:キュレーションズ)


大和リビングマネジメント株式会社のDX、ビジネス・トランフォーメーションのグッドプラクティスの一つになっている(提供:キュレーションズ)
大和リビングマネジメント株式会社のDX、ビジネス・トランフォーメーションのグッドプラクティスの一つになっている(提供:キュレーションズ)


──── まさにサービスが一体化しているわけですね。

そのとおりです。究極になりますが、今までは物件を貸して家賃をもらっていましたが、新しいサービスの創出で家賃を無料にしてしまうこともできてしまうわけです。

自社製品を「As a Service」として提供~DX導入事例②

──── タイヤ大手のミシュランはDXを実践しているグッドプラクティスとしてよくとりあげられます。日本ミシュランは、2018年にソフトバンクと協業しました。

ミシュランは、いわずと知れた、タイヤを買ってもらう会社ですが、今は無料でタイヤを交換し、その代わり走った距離に応じてタイヤの使用料を払ってもらっています。「ペイ・バイ・ザ・マイル(pay by the mile)」ですね。そうなると、ミシュランはジレンマに陥ります。無料で換えてもらうのであったら、どのタイヤでもよいということになります。しかし、そこでミシュランは、トラックやバスのタイヤにインテリジェンス・センサーを埋め込みました。

このセンサーで、ドライバーの走り方、タイヤの利用状況を収集・分析して、燃費の改善やタイヤ交換のタイミングなど、最適な運転の仕方をアドバイスできるわけです。環境に優しい運転、安全運転を提供できるため、将来的には軽減できた保険料もミシュランは請求できる可能性がでてきます。

タイヤという「モノ」にソフトウェアを組み合わせ、「タイヤを売る」だけではなく派生するさまざまなサービスを提供、「Tire as a Service、TaaS」「Driving as a Service、DaaS」で新たなビジネス機会の創出ができるわけです。

家電大手のフィリップスもよい例です。米国のワシントンDCは、照明機器ではなく、「光をサービスとして提供する」としたフィリップスの提案を受け入れ、2014年3月から10年契約で、駐車場にある1万3,000以上の照明器具をLEDに交換し、省エネ効果として削減された電力料金から一定の金額をフィリップスに支払うという契約を締結しました。「Lightning as a Service、LaaS」です

ワシントンDCは、初期投資がなく、10年間の電力消費削減もでき、イメージもよくなります。フィリプッスは、10年間のサービス提供で、継続的に利益を得ることができます。顧客にすれば、新品でなくても明るさが担保できればよいわけです。フロアや部屋の電気の使用状況によって、得ることができたデータを、働き方改革を目指す企業に売ることもできるようになります。


──── DXの重要性と必要性は、各企業とも理解しているところだと思いますが、どうやって自社の製品を「As a Service」するのかは難しい。「キュレーションズ」はクライアント企業にその答えを出してあげるのでしょうか。
 
一番大事にしているのは、クライアントの顧客になにを提供するのか、ということです。お客さんが欲しいと思っていることは、何なのかをまず考え、それを提供するところから始めるということになります。

米国の大手動画配信サービス「ネットフリックス(Netflix)」は、もともとはDVDのレンタルを郵送で行っていました。客は、レンタルビデオ店に行かなくてもよいわけです。しかし、郵送では見たいと思ってからDVD が手元に届くまでの間にタイムラグができてしまいます。客は、いつでもどこでも見たいものがすぐに見たいわけです。顧客のこのニーズに応えるために、ネットフリックスが行ったのが「配信」でした。客がなにを求めているのかということを追求して、自分たちのあり方すら変えて、客のニーズに応えて、大きく成長しました。
 

──── 2019年7月、経済産業省は「DX 推進指標とそのガイダンス」をまとめました。その中で、多くの日本企業が陥っている課題として指摘しているのが、「経営者がDXの必要性を認識し、デジタル部門を設置するなどの取組が見られるものの、実際のビジネス変革にはつながっていない」でした。そのうえで、具体的な課題の一つとしてあげていたのが、 「顧客視点で、どのような価値を創出するか、ビジョンが明確ではない」ということでした。
後編では、顧客のニーズとはなにかについて、「キュレーションズ」が定める手法を、具体的事例もまじえて紹介します。



《後編に続く》

文/杉浦美香


参考情報
・plusbenllyは、NECパーソナルコンピュータ株式会社の登録商標です。


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