耐熱鋼の切削加工もお任せ。「金属棒材加工の駆け込み寺」寺西工業の技術と宇宙にかける思い

INTERVIEW

有限会社寺西工業
代表取締役
寺西 康吏

耐熱鋼は、通常の鋼製品だと変形してしまうほど高温な場所で使われる特殊な金属です。耐熱鋼の加工は、他の素材とは比べものにならないほど大きな摩擦が発生します。そのため、高度な技術やノウハウがなければ加工は難しく、刃物の摩耗も激しい為、選定にも慎重な判断が必要となるそうです。今回は、愛知県名古屋市にある、加工が難しいチタンや耐熱鋼まで幅広い金属棒材の切削加工を手掛ける、有限会社寺西工業に同社が培ってきた技術力とともに、同社が目指すビジョンについてお話を伺いました。

一般的な鉄やステンレスはもちろん、加工が難しく他社が嫌がる難削ステンレス、チタン(TB340)や耐熱鋼まで、幅広い素材の切削加工を手掛ける寺西工業。同社には日々、他社で切削加工を断られ、依頼先に困り果てた会社が、「どうにかして」と訪れます。それはなぜなのか。同社が培ってきた技術力とともに、同社が目指すビジョンについて代表取締役 寺西康吏(てらにし・やすし)氏に話を伺いました。

少量多品種から量産品まで。他社お手上げの案件も柔軟に対応

「寺西さん、これどうにかできませんか?」

金属棒材の切削加工で他社に断られ、依頼先に困り果てたさまざまな会社が、こうして頼りにする町工場があります。名古屋市港区に工場を持つ、「金属棒材加工の駆け込み寺」とでもいうべき有限会社寺西工業です。

社長は、3代目の寺西康吏(てらにし・やすし)氏。初代である祖父が昭和35年に個人で事業を始め、昭和56年に同社を設立しました。

創業当時から金属棒材の加工に特化し、他社が断るような難しい加工にも果敢に挑戦するのが信条。小さな規模の会社ながら、職人の高い技術と最新の設備により、数十個~数百個レベルの小ロット品から量産品まで柔軟に対応できるのが魅力です。

「当社の設備は、どちらかといえば量産向けのものです。一般的には一度セットアップしてしまうと、1週間から1カ月ほどは同じものをつくることが多いタイプの設備になります。けれども当社では、もっと短い期間(1日~7日)の少数品が多く、高頻度で異なる品種のセットアップ作業をおこないます。
数個単位を得意とされる加工メーカーさんにとってはやや多く、量産を得意とされる加工メーカーさんにとってはやや少なめな『かゆいところ』と言うと伝わりやすいかと思います。そこで培われたノウハウをもとに、各機械担当者が加工内容に対して切削条件を柔軟に微調整して対応できるのが、うちの強さです」(以降、「」内は寺西氏の発言)

難しい加工の少量多品種をも手掛けることができる。そのため自動車やステンレスの食品機器、機械部品、油圧関係の企業から、寺西工業にしかお願いできない特殊なオーダーが入ります。


寺西工業社屋(提供:寺西工業)
寺西工業社屋(提供:寺西工業)


チタンや耐熱鋼の切削まで。他社が嫌がる素材も幅広く加工

他社が断わる切削加工とは、具体的には材質に限らず加工精度や加工面の仕上がりの要求が高い場合や、加工形状柄他社の加工機では難しい場合、そして、切削加工の難しいチタンや耐熱鋼の加工の場合を指します。

例えば耐熱鋼は、通常の鋼製品だと変形してしまうほど高温な場所で使われる特殊な金属です。ロケットや航空機のエンジン周りや、熱処理などを行う炉などで使われことが多く、文字通り熱に強い鋼材と言われていますが、「鋼」と名の付く材質ではあるものの、市中によくある鋼材とはまったくの別ものです。


耐熱鋼の加工製品(提供:寺西工業)
耐熱鋼の加工製品(提供:寺西工業)


耐熱鋼の加工は、他の素材とは比べものにならないほど大きな摩擦が発生します。
高度な技術やノウハウがなければ加工は難しく、刃物の摩耗も激しい為、選定にも慎重な判断が必要なのが特徴です。そのため他社は、耐熱鋼の加工を嫌うのです。

「12、13年くらい前、最初にSUH660という耐熱鋼の一種の加工を手掛けたときのショックは、今でも覚えています。『削りにくいよ』と、お客さまから前情報があったので、うちの工場長は当時当社にあった最先端の刃物類を用意して加工を始めました。ところがしばらくすると加工機からものすごい音がして、工場長が苦笑いしながら私のもとに走ってきました。
手には黒焦げになって、先端部分が見たこともないような状態になったドリルを持ち、
『これ見てくれ、ドリルの先が溶けた』と。当初はみんな本当に驚きました。それを境に、耐熱鋼とはいっても鋼とは思わず、違う領域の素材と考えて今後はやっていこうと認識を改めました」

耐熱鋼の加工の難しさを目の当たりにして、職人魂に火がついた寺西工業のみなさん。あの手この手を使いながら、いろいろと微調整を繰り返す中で、耐熱鋼加工のスキルやノウハウを積み重ねていきました。そして最終的には、耐熱鋼の加工を量産できるまでになったのです。


寺西工業内観と作業風景(提供:寺西工業)
寺西工業内観と作業風景(提供:寺西工業)


宇宙で未知の素材が発見されたら、寺西工業がぜひ切削したい!

「寺西工業なら、硬い素材でもきっとなんとかしてくれる」
そうしたお客さまからの期待に応えるべく、トライアンドエラーを繰り返しながら、耐熱鋼をはじめ、他社がお手上げの特殊なオーダーを数多く手がけてきた寺西工業。地道な積み重ねの先に、実は壮大なビジョンを持っています。

それは、「将来的に宇宙産業に携わりたい。そして宇宙で未知の素材が発見されたとき、ぜひ寺西工業で切削したい」というものです。そもそも、どうして宇宙産業への進出を考えているのでしょう。

「会社の恒久的な発展を見据えてビジョンを考えたとき、せっかくなら自分たちがワクワクすることを突き詰めていきたいなと、宇宙産業への進出に行き着きました。会社のビジョンを決めるとき、世間ではよく『〇〇で日本一になる』とか『△△で世界一になる』といった話を聞きます。でも私は、そうした表現が野心的であまり好きになれません。もう少し平和でワクワクする表現はないかなと思っていたとき、ちょうど息子がハマっている『ドラゴンボール』のワンシーンに出会いました。地球外生命体が乗る宇宙船の性能が、地球上で最も優れていた宇宙船の性能をはるかに上回っていることがわかるシーンです」

「宇宙には、まだ科学で解き明かすことができていない未知の領域がたくさんあります。そう考えると、地球以外にも文明を持つ惑星がひょっとしたらあるかもしれない。国と国との交流は今でこそあたり前ですが、そのうち惑星と惑星の交流ができるようになり、未知なる素材が地球に持ち込まれるかもしれない。そうしたら、当社の切削加工技術でものづくりに携わることができれば面白いとピンときました。宇宙で未知の素材が発見されたとき、ぜひ当社で切削したい。そうしたビジョンを持ったとき、まずは航空宇宙産業のものづくりに携わりたいと考えるようになりました。そのために、地球上で加工の難しいとされる耐熱鋼の切削加工にも磨きをかけているのです」


宇宙産業に挑戦していきたい※イメージ(提供:寺西工業)
宇宙産業に挑戦していきたい※イメージ(提供:寺西工業)


耐熱鋼の切削はじめ「チャレンジなくして成長なし」

寺西氏が描く壮大なビジョンに対して、社員のみなさんはどういう反応なのでしょうか。

「まだピンときていないようです。ただ、何につけても楽しむことがまず大事だと考えています。ですからまずは、社長である私がものづくりにワクワクしている姿を見せていきたい。私自身、創業の祖父や先代の父の背を見て、ものづくりが好きでこの仕事をやっています。これからもイチ職人として、率先して失敗もたくさんしながら、ものづくりを楽しむ姿を見せていくことも、私の仕事だと思っていますから。その先に、未知の分野でのものづくりにワクワクする企業風土も育まれていくはずです」

歴史はあるものの、寺西工業のみなさんは最年長が48歳、最年少が22歳と若い企業です。新しい分野への進出に際しては、高い技術力のみならず、柔軟性のある思考力もきっと大きな武器になるのではないでしょうか。


「仕事を通して改めて思うことは、チャレンジなくして成長なし。これに尽きます。チャレンジすることで突破口が見えてくることはたくさんあるし、限界を知ることもできます。ですから何事も、チャレンジしてなんぼ。航空宇宙産業への進出もそうです。トライアンドエラーを繰り返しながら、『宇宙産業に誇る加工屋の寺西工業』といつか標榜できるよう社員一丸となってやっていくつもりです」


小ロット品から量産品まで、金属棒材の加工でお困りごとがあれば、ぜひ寺西工業へご相談ください。宇宙航空分野のお話も大歓迎です。


有限会社寺西工業
愛知県名古屋市に工場をもち、加工が難しいチタンや耐熱鋼まで幅広い金属棒材の切削加工を手掛ける。自動車やステンレスの食品機器、機械部品、油圧関係の企業をクライアントに持ち、少量多品種から量産品まで、他社お手上げの特殊なオーダーにも柔軟に対応する。
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