折損や変形、へたりが起きにくいばねを提案・製造する鶴岡発條に聞く、ばねのトラブル解決のポイント

INTERVIEW

鶴岡発條株式会社
代表取締役
氏家 彦一郎

ばねは、身の回りにある自転車やボールペンなどに使用されるほか、自動車や船舶、印刷機械など様々な産業で使われています。どの製品にも部品のトラブルはつきものですが、ばねも使っているうちに寸法が徐々に変化し、ばねの力が弱くなっていく「へたり」や折損などが生じます。しかし、このようなばねのトラブルも工夫次第で折れにくい、変形しにくいばねに変われるといいます。今回は、山形県でばねの設計・製造会社を行っている鶴岡発條株式会社に、ばねのトラブルを解決するポイントと、同社の誠実な試作品製作ノウハウを伺いました。

ばねが折損、変形してしまった。ばねにへたりが起きて、力が弱くなってしまった。そうした「ばねのトラブル」でお困り方は少なくないはずです。ところが、鶴岡発條株式会社の代表取締役 氏家彦一郎氏は、「折れたり変形したりするばねも、工夫次第で折れにくい・変形しにくいばねに変わります」とおっしゃいます。いったいどういうことでしょうか。氏家氏に詳しく伺いました。

※以下、敬称略。

へたりや折損などのトラブルを解決するばねを、自社で設計し試作製作

鶴岡発條社屋(提供:鶴岡発條)
鶴岡発條社屋(提供:鶴岡発條)


──── 鶴岡発條はどのような会社ですか?

氏家:
1944年に山形県で創業しました。主に丸線を用いたコイルばねや、ワイヤーフォーミング品を製作しています。お客様も多岐に渡り、自動車や船舶、重電・弱電、工作機械、印刷機械、食品機械、農業機械、アクセサリーや玩具など、様々な業界に実績があります。


圧縮ばね(左)、引張ばね(中)、ねじりばね(右)(提供:鶴岡発條)
圧縮ばね(左)、引張ばね(中)、ねじりばね(右)(提供:鶴岡発條)


──── 御社の強みを教えてください。

氏家:
私たちの強みは、ばねのトラブルを解決する「設計力」と、それを短いリードタイムで形にする「試作力」です。

代表的なばねのトラブルは、折損、変形、へたり、です。「へたり」は耳慣れない言葉ですが、使っているうちにばねの寸法が徐々に変化して、それによりばねの力が弱くなっていく現象を指します。へたりは変形の一種です。

私たちの強みである「設計力」や「試作力」が生きるのは、お客様からばねのトラブルのご相談を受けた時です。ご連絡をいただいたら、必要とあればすぐに現場に赴き、トラブルの内容をうかがいます。そして、折損や変形が起きにくいばねを再設計して試作品を製作し、お客様のトラブルを解決します。

たとえば、あるお客様の機械は、ばねが頻繁に折れていたそうですが、私たちが再設計したばねを使ってからは、全く折れなくなったと言います。そのため、アフターサービスのコストがゼロになった、と喜んでおられます。ばねの折損対策は、お客様のコストダウンにつながるのです。設計と試作製作を通じて、お客様のトラブルを解決し、コストダウンというメリットもご提供できる。これが私たちの強みだと考えています。


ばねの折損や変形、へたりを解決する3つのステップ

──── ばねのトラブル、折損や変形、へたりをどのように解決するのですか?

氏家:
ばねのトラブル解決のステップ(①~③)を、「折損」を例にご説明します。

①ばねの折損状況をヒアリング
まずは折損の原因を探ります。折損時のばねの使用状況に関して、いくつか質問いたしますので、わかる範囲でお答え頂ければ大丈夫です。その際、原因特定のヒントになるので、折れた現物があると助かりますね。もし現物があれば、図面や仕様書がなくても問題ありません。

ばねにキズなどが見受けられなければ、折損の原因は「材料の強度不足」である場合が多いです。ばねの材料には、材質や線の太さによって固有の強度があります。一方で、ばねを使用すると、材料に応力(負荷)がかかります。この使用時応力(負荷)が材料の強度を超えると、ばねは変形したり折れたりするのです。


②ばねの再設計
ばねの線径や巻数などの仕様を変更して、使用時応力が材料の強度を超えないよう、ばねを再設計します。その際「ばねの力加減を変えずに」再設計することが重要になってきます。ばねの力加減のことを、「ばね定数」や「荷重」といいます。


③試作品による評価
再設計した折損対策ばねを試作し、実際に組み付けて、お客様に評価して頂きます。試作品合格後に量産が控えている場合は、量産と同じ工程で試作品を製作します。


──── ばねのトラブル対応の際、心がけていることはありますか?

氏家:
当社にトラブルのご相談を寄せられるのは、ほとんどが新規のお客様です。馴染みのない業界のお客様もいらっしゃいますから、少しの見逃しもないように、注意深くお話に耳を傾けるようにしています。

加えて、とにかく現場・現物にこだわります。ばねの使用時応力は計算で求めることが出来ますし、材料の強度はJIS規格に求めることが出来るのですが、現場には、図面や仕様書からは読み取れない、トラブルの原因がひそんでいることがあります。
実際の事例では、ばねを機械に取り付ける際、想定以上にばねをつぶしていたり、引張ばねのフックの向きが組付け部分と合っていなかったり、と、現場に足を運ばないと見えてこない要因も多々あるのです。


──── 具体的なトラブル対応の事例を教えて頂けますか?

氏家:
実は、折損や変形のご相談が一番多いのが、「引張ばね」です。
引張ばねの折損や変形は、両端のフック部分を起点にするケースがほとんどです。使用時応力がフック部分に集中しやすいことがその原因で、フックの形状や曲げRが耐久性に大きく影響します。これまでの折損のご相談でも、フックの形状を変えただけで全く折れなくなった、という事例があります。


逆丸フックを丸フックに変更(左)、絞り丸フックでの再設計(右)(提供:鶴岡発條)
逆丸フックを丸フックに変更(左)、絞り丸フックでの再設計(右)(提供:鶴岡発條)


──── お客様の要望に応えるのが難しいケースはあるのでしょうか?

氏家:
ばねの耐久性は、体積に比例します。ばねの収まるスペースに制限があり、必要な体積を確保できない条件下では、残念ながら、ご希望の耐久性を満足できない場合もあります。
そうした場合でも、外径をあと1mm大きくできるなら耐久性が10万回に向上します、など、具体的な数値をご提示しながら、お客様と一緒に最善の着地点を探す努力をします。

スペースの問題を解決する際、圧縮ばねの場合は「角ばね」を用いるという手があります。
角ばねは、丸線ではなく断面が四角形の材料を使用したばねで、丸線よりも体積をかせぐことが出来ます。角ばねは、丸線のばねに比べてコストが割高になるのがデメリットですが、外径と内径が制限された状況下では、有効な解決策になり得ます。


四角形の材料を用いた角ばね(提供:鶴岡発條)
四角形の材料を用いた角ばね(提供:鶴岡発條)


誠実な対応と試作品製作のスピードがこだわり

──── 工場と製造力についても教えてください。

工場内部の様子(提供:鶴岡発條)
工場内部の様子(提供:鶴岡発條)


氏家:
私たちが、ばね製造会社として大切にしていることは、たとえお客様から見えない部分であっても「誠実な仕事ぶり」を貫くことです。「正しい材料を使い、正しい工程で加工し熱処理されているか」は、ばねの外観からは見えない部分ですが、実はこれらが、ばねの耐久性の肝となる部分でもあるのです。

もう1つ、大切にしているのは「スピード」で、私たちの「試作力」の柱になるものです。
当社の職人たちは「試作品の短納期対応はお客様に喜ばれる」ことをよく理解してくれており、そのため「そんなにすぐに試作ができるんですか?」とお客様に驚かれることもしばしばです。


──── 最後にメッセージをお願いします。

氏家:
折損や変形に限らず、ばねのトラブルでお困りの方は、お気軽にご相談ください。明るく丁寧な応対をモットーにしておりますので、安心してお電話いただけたらと思います。Web会議にも対応しておりますし、必要とあればいつでも現場にお邪魔してお話をうかがいます。ご相談お待ちしております。