製造業において、欠かすことのできない重要な要素である品質、コスト、納期(QCD)。これらを継続して守り続けられる企業は多くありません。QCDを達成し、多品種・小ロットの生産や、短納期の発注にも柔軟に対応するために、簡易な加工は中古機械で、高精度の加工は最新の機械で実施するなど、難度やロット数に応じて機械設備を使い分けるなどの工夫がされているそうです。今回は、兵庫県姫路市にある植田金属工業株式会社に材料から完成品まで一貫した金属加工事業を展開し、多種多様な機械設備を揃え短納期・高品質な生産体制を実現する技術や強みについてお話を伺いました。
兵庫県姫路市の植田金属工業株式会社は材料から完成品まで一貫した金属加工事業を展開しています。社員数25名と小規模の企業ながら、最新の機械設備を積極的に導入することで短納期とコストダウンを実現し、長年にわたって大手企業に部品を納入してきた実績を誇ります。今回は代表取締役社長の植田照二 氏に、植田金属工業の技術や強みについて話を伺いました。
大手企業グループからの信頼も厚い、知る人ぞ知る金属加工会社の植田金属工業
植田金属工業は、国鉄関係を主体に一般機械加工メーカーとして1952年に創業。建設機械部品やエスカレーター部品、鉄道の転てつ減摩器のほか、製缶・溶接加工なども手掛けています。主要な取引先には大手企業又はその関連会社が名を連ねます。
<主要な取引先>
・日立建機(株)
・東芝エレベータプロダクツ(株)(東芝グループ)
・(株)てつでん(JR西日本グループ)
・川重商事(株)(川崎重工グループ)
代表取締役社長の植田照二 氏は、その秘訣を語ります。
「品質、コスト、納期(QCD)を守ることです。当たり前のようで、これらを継続して守り続けられる企業は少ないのです。『いるときにいるものを作る』のが私達のモットーです」
築き上げた信頼から、得意先からの紹介をきっかけに取引先が増えたり、製造の幅が広がったりすることもあるそうです。例えば(株)てつでんに納入している転てつ減摩器(鉄道の分岐を切り替える際に用いる機器)は、川崎重工の調達担当者の紹介で受注したといいます。長年の部品加工の経験をもとに設計前から加工方法のアドバイスを行い、約8000台の量産を実現しました。東芝エレベータプロダクツ(株)はエスカレーター製造用の治工具から取引が始まり、現在は本体の部品製造まで受注しています。不良率の低さや部品の全数検査実施など、ケアのきめ細やかさも評判だといいます。
「お客様の相談に乗り、実現可能性や安く収める方法を考えながら作り込みをしています。ISO認証を取得していないので一見すると評価が分かりにくいかもしれませんが、お付き合いのある企業様には信頼いただいている実感があります」(植田氏)

協力工場に頼らず、30台以上の機械設備で幅広い要望に応える
QCDを達成できる背景には、協力工場をあまり必要としない一貫した生産体制があります。植田金属工業は切断、曲げ、溶接、機械加工、仕上、塗装、組立までの各工程を姫路の本社工場で手掛けています。そのため、多品種・小ロットの生産や、短納期の発注にも柔軟に対応できるのが強みです。
それを実現しているのが、30台以上の豊富な機械設備です。植田金属工業では多工程を1台で完結できる複合NC旋盤や溶接ロボットなど、最新鋭の設備をいち早く導入し、1つの生産ラインでも製品の変更や多品種の製造に柔軟に対応できる製造システムを実現しています。簡易な加工は中古機械で、高精度の加工は最新の機械で実施するなど、難度やロット数に応じて機械設備を使い分けることで質とコストの両立を実現しています。
<植田金属工業が保有する主な機械設備>
工程 | 工程符号 | 機械名 | メーカー名 | 形式 | 仕様・能力 |
---|---|---|---|---|---|
加工 | B-1 | MC横中ぐり盤 | クラキ | KBT-13DXA | 4000×2000×1300 130Φ |
MC-6 | 立形マシニング | OKK | VM7Ⅲ | 740×1530×660 2パレット |
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MC-15 | 立形マシニング | OKK | VM53R | 530×1050×510 | |
NC-10 | NC旋盤 | オオクマ | LB45ⅡC1000 | 660Φ×550Φ×1000 OSP-200L |
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NC-13 | NC旋盤 | オオクマ | LB4000EXⅡ | 430Φ×750 | |
研磨 | G-4 | 横軸円テーブル 平面研削盤 |
市川 | RCB-202 | 500Φ |
溶接 | WR-5 | 溶接ロボット | 安川 | モートマンGP35L 溶接システム |
アーク溶接・ エアープラズマ切断 |
プレス曲げ | HP-5 | 油圧ブレーキプレス | ヤマシナ | SH-250DX 250T | 250T |

社長の植田氏自らが「機械設備の研究に余念がない」と言うほど機械好きで、工作機械の展示会や産業用ロボットの展示会を見学し、中古機械も遠方に出かけていき、動作状況、機械音などを聞いてから買い付けを行っています。新品・中古を問わず、年に1〜2台のペースで新たな機械設備を購入し、生産体制の効率化を続けています。
社員数25名、少数精鋭の植田金属工業。幅広い工程を担う人材育成が要
柔軟な生産体制を支えるのが、25名という少数精鋭の組織です。社員数を超える機械設備を操作し、一点物の加工品は一人で全工程を担当することもあるそうです。少人数で多くの工程を担当できることで互いの業務をカバーでき、納期や繁閑の調整にも対応しやすいのがメリットです。
溶接・製缶を15年間担当した社員をマシンオペレーターに配置転換するなど、大胆な人事にも取り組んでいます。結果として現在は機械加工の班長を担うまでに成長したといいます。
「行き詰まりを感じていそうな方にチャンスを与え、活躍してもらいたい」(植田氏)
新人はマンツーマンで教育・指導を行い、希望によって溶接技能講習やものづくり大学校での実習などの外部での学習機会も提供しています。

適応力とものづくりへの想いで、引き継ぎや新分野に意欲
植田金属工業は半世紀を超える歴史の中で、加工分野を溶接、機械加工、組立へと広げて現在の姿に至りました。「製作したことのない製品も、現物と図面があれば加工できるかどうか判断できる」(植田氏)という同社のもとには、廃業した他の工場で作っていた部品を引き継いで製造してほしいという問い合わせも届くといいます。
こうした歩みの背後には、ものづくりを楽しむ想いがあります。自社で使う治工具や作業台なども、植田氏のフリースケッチから製造。自社工場内の階段の手すりも、パイプベンダ-で曲げ加工して、波状の形にして設置するなど、新たな技術や分野に新鮮な気持ちで取り組んでいるといいます。植田氏は「ものづくりは面白いです。複雑な構造の製品なども、今まで面白がりながら取り組んできました。今後も難しい製品づくりにもチャレンジしたいです」と目を輝かせます。
今後はエンドユーザー向けの製品を作るため、アルミの溶接、機械加工など鉄以外の金属加工にも取り組みを広げようとしているとのことです。
「一品物から量産品まで、ご相談に乗りながら守備範囲を広げていきたいです。私はデザインを考えるのも好きなので、そうした領域でもお力添えができたら嬉しいです」(植田氏)
「小さくともぴりりと光る技術集団」として長年の信頼を築いてきた植田金属工業。高品質とコストを両立できる金属加工会社をお探しの方は、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。