アルミダイカストの特徴およびカーボンニュートラルを見据えた新技術をご紹介

アルミダイカストは、溶解したアルミ合金を金型に圧入して成形する加工技術であり、自動車部品製造に採用され、自動車の軽量化および工程合理化を支えています。その他の加工技術である冷間プレス、熱間・冷間鍛造に比べると、複雑な形状で一体成型性に秀でていますが、寸法精度がやや劣り、ひけ巣などの内部欠陥が発生しやすいというデメリットもあります。本記事では、アルミダイカストの特徴紹介に加え、カーボンニュートラルを見据えた新技術としてアルミホットスタンプに注目します。本技術を開発している株式会社日立ハイテクに、アルミダイカストとの違いやカーボンニュートラルを目指した製造工程について伺いました。

昨今の環境問題への意識の高まりから、特に自動車業界では二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められています。自動車それ自体から排出されるCO2の削減をめざすEV化、軽量化に加え、製造ラインを含むサプライチェーン全体でエネルギー効率を向上させ、カーボンニュートラルなものづくりを目指す動きも高まっています。
本記事では、自動車の高性能・多機能化のニーズに応えている「アルミダイカスト」の特徴を紹介しつつ、形状凍結性およびリユース性に優れる新技術「アルミホットスタンプ」について、株式会社日立ハイテクアルミホットスタンプ事業 アドバイザー 稲葉 隆 氏、株式会社日立ハイテク 産業ソリューション事業統括本部 社会インフラ営業本部 モビリティシステム部 部長代理 八代 孝久 氏、株式会社秋山 統括課長 江袋 英貴 氏に伺いました。


アルミダイカストとは

アルミダイカストとは、溶解したアルミ合金を金型に圧入して成形する技術です。
本技術は特に自動車部品の製造において採用され、アルミによる自動車の軽量化および工程合理化を技術面で支えています。

 

<表1>アルミダイカストのメリットとデメリット

メリット デメリット
  • 複雑な形状の一体成形が得意である
  • 金型鋳造に比べ寸法精度が高く、きれいな表面に仕上がる
  • リサイクル性に優れる
  • 量産性に優れ、コストメリットが得られる
  • 寸法精度を出すために切削が必要
  • 金型寿命で大量・少量生産には向かない
  • 内部欠陥(鋳巣)が発生し強度低下。また、耐食性に劣る

 

アルミダイカストとその他の加工技術(冷間プレス、熱間・冷間鍛造)との比較

アルミダイカストはその他のアルミ加工技術である冷間プレス、熱間・冷間鍛造に比べ、複雑な形状で一体成型性に秀でていると言えます。

<表2>アルミダイカスト、冷間プレス、熱間・冷間鍛造の比較

比較項目 アルミダイカスト 冷間プレス 熱間・冷間鍛造
寸法精度 やや精度に劣る 精度がかなり高い 精度が高い
複雑性(難形状) 複雑な形状で一体成形が得意 複雑な成形が不得手 複雑な形状が得意
コスト 量産性に優れバランスの良いコストメリット 大量生産で
コストメリットを発揮する。
プレス速度5spm以上
加工後の熱処理で
高コスト
加工時間 短い 非常に短い 比較的長い
強度 中強度、内部欠陥で強度低下の恐れがある 中強度 析出硬化を施すことにより高強度
材料 Al-Si-Cu系合金中心 Al-Mg系、Al-Mg-Si系合金中心 Al-Mg-Si系合金、
Al-Zn-Mg系中心

*spm:1分間に加工できる回数

 

 

アルミダイカスト代替に向け進化がすすむ「アルミホットスタンプ」の魅力

ここからは、アルミダイカストのデメリットを克服し、実用化に向けて進化がすすむ「アルミホットスタンプ」の魅力に迫っていきます。


お話を伺った株式会社秋山 江袋 英貴氏(左)、株式会社日立ハイテク 稲葉 隆氏(中央)、株式会社日立ハイテク 八代 孝久氏(右)
お話を伺った株式会社秋山 江袋 英貴氏(左)、株式会社日立ハイテク 稲葉 隆氏(中央)、株式会社日立ハイテク 八代 孝久氏(右)


──── アルミホットスタンプについて簡単に教えてください。
稲葉:
アルミホットスタンプは、高温に熱したアルミ板を金型に入れ、成形と同時に急速冷却する加工方法です。熱間で成形することで高い成形性を実現しながら、同時に焼入れして強度と寸法精度を高めることができます。
自動車の軽量化のニーズが高まりアルミに注目が集まりますが、アルミは鉄に比べ強度が低く成形性に劣ります。そこで、アルミでもホットスタンプを導入することで、強度を高めながら精度の高い成形が可能になり、その成形性はSPCEという成形性の高い鋼板以上です。


──── アルミダイカストと比較するとどうでしょうか。
稲葉:
アルミダイカストは寸法精度がやや劣り、鋳造後に切削加工が必要になります。また、加工工程での工夫で回避することはできますが、成分によっては耐食性が劣り、ひけ巣などの内部欠陥が発生します。一方、アルミホットスタンプはアルミ板(低Cu)を使用することで耐食性に優れ、熱間成形で厳しい寸法精度にも応えることができます。
また、ホットスタンプの課題としてしばしば生産性の低さが挙げあれることがあります。鋼板では800度まで加熱しないと加工できませんが、アルミの場合500度程度の加熱でよく、さらに熱伝導率の高いアルミ材では急速冷却が可能です。鋼板が2から4spm(1分間に加工できる回数)のところ、アルミでは5から10spm、さらに10spm以上も期待することができ、生産性も十分と言えます。



アルミホットスタンプ専用の設備を導入。量産も見据え実用化へ向けて前進

アルミホットスタンプの設備。電気ヒーター方式の加熱炉(左)とサーボプレス機(右)
アルミホットスタンプの設備。電気ヒーター方式の加熱炉(左)とサーボプレス機(右)


──── これまでのアルミホットスタンプの取り組みを教えてください。新しく専用の設備を導入されたとも伺いました。
江袋:
これまでは、まずは形にする、というところで大体の基礎情報を取得、今回新しく設備を導入しテクニカル的にも実用化に向け進めています。
やはり「アルミは強度が弱いんじゃないの」という声もありますが、ホットスタンプの焼入れを行うことで鉄同等まで強度を出せるということを理解いただくことで、興味を持っていただいています。
また、今回の設備では量産を想定した手法で加工を行うことができますので、お客様にもより実際の製品に近いものをお見せでき、実際の採用に向けての検討に役立てていただけると思います。


──── 導入された設備について詳しく教えてください。
稲葉:
今回導入した設備は電気ヒーター方式の加熱炉とサーボプレス機です。加熱炉は400mm角までの大きさのアルミ板を両面均一に、約20秒で500度まで加熱することができます(2mm厚板の場合)。用途を限定した際は、必要量だけ加熱することで、無駄なエネルギーをかけずにすみます。
いまは手動で作業を行っていますが、いずれはロボットを導入して自動で早く加工ができるようになると見込んでいます。



サーボプレスの作業様子
サーボプレスの作業様子


八代:
今回導入した加熱炉は加熱面が9分割されており、それぞれ温度の調整が可能です。また、荷重をかけながら加熱することでより早く効率的に加熱することができます。設備も非常にコンパクトで、用途に応じ必要な大きさにカスタマイズ可能です。



電気ヒーター方式加熱炉
電気ヒーター方式加熱炉


細かい形状も成形可能。鉄からアルミへ、切削からアルミホットスタンプへ

──── アルミホットスタンプはどのような部品に活用されると考えられるでしょうか。
稲葉:
自動車の軽量化に向け、やはり鉄からの代替にニーズがあるのではないでしょうか。大型で複雑一体形状のアルミダイカストでは多くのニーズはないでしょうが、鉄で作られた細かな部品が何十個と使用されているもの、例えばブラケットなどはアルミホットスタンプによってアルミ化が実現できると思います。

江袋:
自動車の設計の方は、「わずかでも軽量化したい」という思いがあります。たとえ小物でも、アルミ化することで重さは鉄の約3分の1になりますから、それがたくさんあるとしたら大きく軽量化に貢献できます。
また、アルミでも成形性が高くなるため、例えば角のある形も厳密に成形でき、形状の有効性の向上にも貢献できます。


冷間プレス(左)とアルミホットスタンプ(右)で成形。アルミホットスタンプで成形したものには割れが発生していない(提供:日立ハイテク)
冷間プレス(左)とアルミホットスタンプ(右)で成形。アルミホットスタンプで成形したものには割れが発生していない(提供:日立ハイテク)


──── 最近の事例やお客様の声をお聞かせください。
江袋:
最近の事例では、それまで生産台数の限られていた機器の量産化に向けて、使用する部品のコストを下げたいというニーズをお持ちのお客様からのご相談があり、試作品を納入しました。それまでは切削で8割ほどは削ってしまっており、かなりのコストと工数をかけて製作しておられました。アルミホットスタンプでは一度のプレス工程で製作可能なのでコストを抑えることができ、型投資も比較的安価です。
また、冷間プレスとは違いスプリングバックが発生しませんので、設計通りの形状がすぐに実現でき、開発コストと期間、工程の削減が可能になります。
この納入実績を評価され「もっといろいろな形状を提案してほしい」とご要望をいただいています。



カーボンニュートラルを目指しCO2排出を抑制した製造工程とは

──── 世界的に求められるカーボンニュートラルに向けても、アルミホットスタンプを活用することで前進すると伺いました。
稲葉:
一気にカーボンニュートラルを実現することは難しいですが、CO2を削減する技術を取り入れていくことは必要です。
アルミは非常に少ないエネルギーでリサイクル可能なことが知られています。一方でめっき処理や合金処理が行われる鉄の場合は、リサイクルが難しいため新規の製作となり多くのエネルギーが使用されます。つまりCO2を多く排出します。今後は、こういったリサイクル性、リユース性も重視され、アルミへの転換が求められるのではないでしょうか。

八代:
アルミダイカストはアルミを溶解しさらに金型加熱も必要ですので、1kgの製品を製作するのに約1kgのCO2を消費します(日本ダイカスト協会調べ)。一方、アルミホットスタンプで加熱が必要なのはアルミ板の加熱の部分だけで、ダイカストに比べ約10分の1程度のCO2排出量ですみますので、製造工程でのCO2削減にかなり貢献できると考えられます。


──── 自動車の軽量化だけでなく、鉄からの代替や製造過程での省力化でCO2削減につながるのですね。



アルミホットスタンプのソリューションを開発中。気になる方はぜひ体験を

──── アルミホットスタンプの実用化に向けた現状を教えてください。
江袋:
今は温度や成形荷重など製造条件の数値を計測可能な段階まで来ています。完成品のスペック、品質の数値を保証するデータを提供することで、設計担当の方の安心感にもつながります。これからあらゆる数値を取得できるようになる見込みです。

八代:
日立ハイテクでは、より多くのプレスメーカー様にアルミホットスタンプの魅力と可能性をご理解いただき、導入を検討いただきたいと考えております。現在、秋山様と協力し実用化に向けた設備やシステムの開発を進めています。プレスメーカー様と自動車などのメーカー様をおつなぎするソリューションの構想も進めています。

稲葉:
興味を持っていただいたら、ぜひ一緒に試作をしてみるのはいかがでしょうか。材料の用意も可能ですので、金型がある方はお持ち込みいただき、アルミホットスタンプを体験してみてください。



株式会社 日立ハイテク
株式会社日立ハイテク 産業ソリューション事業統括本部は、FA、PA(Process Automation)、IoT、FVC(Full Value Chain)などのOT(Operational Technology)活用による顧客課題解決を起点にした高付加価値事業を創出するとともに、デジタルソリューション事業、分析評価サービス事業の強化や、事業投資を含めたパートナーとの事業提携による、新たなFocused Solutionsの開発にも取り組む。なかでもモビリティシステム部では、新たなソリューション事業として、株式会社秋山の協力のもとアルミホットスタンプ事業の開発に注力している。
株式会社日立ハイテク
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取材協力

株式会社秋山
試作板金メーカーとして半世紀にわたり、ショーモデルや試作開発車両・外板部品・レース部品などの高度な技術を要する部品の加工を行う。長年の経験値とプレス成形CAEを活用した難成形部品に取り組む。確かな技術・柔軟な対応・今すぐ動ける行動力が強み。