プラスチック射出成型金型を25年以上手掛けるベテラン、豊洋エンジニアリングがスピーディに製作できる理由とは

INTERVIEW

豊洋エンジニアリング株式会社
代表取締役
藤川 勇

複雑な機構を持ち、サイズや精密さにこだわりがある成形品に用いられるプラスチック射出成型金型。金型製作においては、精密加工を精度高く実現できる技術力が重要であることはもちろん、その前の設計段階でどのように構想するか、工夫することも大切だそうです。今回は、福岡県遠賀郡に本社を構える、プラスチック射出成型金型の作成を手掛け、量産の立ち上がりの速さが強みでもある豊洋エンジニアリング株式会社にその秘訣とプラスチック射出成形金型のポイントについてお話を伺いました。

豊洋エンジニアリング株式会社は、福岡県遠賀郡に本社を構える、プラスチック射出成形金型の作成を手掛ける企業です。医療機器、理化学メーカー向け部品等に用いられる精密金型を得意とし、豊富な経験に裏打ちされた構想力で高い精度を実現しています。
量産の立ち上がりの速さが強みでもある同社。その秘訣は、長年培ってきた経験と、チャレンジ精神が旺盛な社員がいる事です。プラスチック射出成形金型のポイントについて、代表取締役の藤川勇様へお話を伺いました。
プラスチック部品の成形や金型でお困りの方は、ぜひご覧ください。

医療機器部品向けのプラスチック射出成型の金型製作で、リーマンショックを乗り越える

豊洋エンジニアリングは創業当初からプラスチック射出成形金型を主力事業としてきました。現在ではプラスチックの二色成形金型などの特殊な金型も手掛けており、主要な取引先は医療機器メーカー、理化学メーカー、文具メーカー等多様です。特徴としましては、複雑な機構を持ち、サイズや精密さにこだわりがある成形品、例えば細胞や試験液を保存する容器などに用いられることが多いそうです。生活に身近なものだと、スプレーのノズル部分や、液容器のヒンジ付きネジコア抜きフタ部分の金型なども手掛けています。

2色成形品(提供:豊洋エンジニアリング)
2色成形品(提供:豊洋エンジニアリング)


同社が精密加工において付加価値が高いと気づいたのは、実は偶然だったそうです。
「1993年の創業時はカメラや電子部品をメインで手掛けていたのですが、段々コスト面で勝てなくなってきていました。特にリーマンショック以降はグローバル化の波にのまれ、東南アジア企業への技術流出と低コスト化が止まらず、太刀打ちできない状態でした。そんな時、たまたま他社から『国内医療機器メーカーからの発注に、自分達では応えられなかったので、助けてくれないか』と声がかかり、金型を製作しました。するとメーカーの方が成形品の品質の高さに驚いて下さったんです。どうやらこの成形品は競合が少ないらしいと分かり、それ以降、医療機器メーカーや理化学メーカーとのお仕事に力を注いできました」と藤川氏は語ります。


製造現場の様子(提供:豊洋エンジニアリング)
製造現場の様子(提供:豊洋エンジニアリング)


プラスチック射出成型の金型製作で、ほぼ1回で成形品試作を完成させたことも。立ち上がりが早いワケは先見の明

同社は、精密加工を精度高く実現できるだけでなく、立ち上がりが早いことも強みです。
「例えばごく最近の話ですが、医療機器の部品について、新製品を出したいというお客様がいらっしゃいました。形状が複雑でしたので、樹脂が変形するだろう、修正に時間を要するだろうと思い、その変形を見越して金型を製作したところ、1回目のトライで要求通りの成形品を作ることができました。お客様も大変喜ばれました」

修正回数を少なくできる理由は2つあります。1つは長年培ったノウハウです。「私は創業前にはプレスの金型や自動機の製作に長らく携わっており、この経験も樹脂の射出成形に応用しています。打ち合わせの段階で、製作時のポイントが見えていますし、こういう問題が起こるだろう、そのためこうしておいた方が確実だろう、という見立てが正確なのだと思います。型割についても、調整、改造のしやすさ等、先の事を見越して設計を行っています」

もう1つは、社内に豊かな構想力とチャレンジ精神があることです。金型製作においては、精密加工の技術力が重要であることはもちろん、その前の設計段階でどのように構想するか、工夫することも大切です。「今回はこのような設計にしてはどうか?こんなやり方はどうだろうか?と、社員はアイディアを気軽に口に出しくれます、それを皆で現実化する社風があります」


精密金型成形品(提供:豊洋エンジニアリング)
精密金型成形品(提供:豊洋エンジニアリング)


社員の遊び心が産んだ作品で、切削加工コンテスト銅賞を受賞

このキリギリスの加工は、技術力と社風が良く分かるかもしれません。全長1cm以下、触角の部分は0.25mmとすごく小さいのに、加工面も非常に滑らかです、触角の先端の球まできれいに表現しています。加工形状のプログラミングを担当する社員と、加工技術者の2名で試作したそうです。
「私はサプライズ的に出来上がったものを見せてもらったのですが、非常に感心しました。権利処理をクリアするために、キリギリスの形も3D-CADでオリジナルデザインしたとのこと。社員の会心の作をとある機械メーカーさんへお見せしたところ、ぜひコンペに出しましょうと薦められ、DMG森精機株式会社の第14回切削加工ドリームコンテスト2019におきまして試作・テスト加工部品部門で銅賞を受賞いたしました。実物を見ると、総じて皆さん驚かれますね」


微細精密加工で作成されたキリギリス(提供:豊洋エンジニアリング)
微細精密加工で作成されたキリギリス(提供:豊洋エンジニアリング)


難しいプラスチック射出成型の金型製作でお客様が困っている時が、腕の見せどころ

そんな同社は、「他社ではできなかったんだけど」「こんなことに困っているんだけど、解決できませんか?」といった難題は大歓迎です。
「例えば、電気製品のモーターに使われる、ステーターという部品について、こんな事例がありました。その部品は、厚み0.5mmの鋼板を50枚くらい重ねたものをインサートして成形する仕様なのですが、金属板は重ねていくうちに、0.2mm程度ですが厚みにわずかに差が出てしまうんです。ご相談下さったお客様は、金型に樹脂を流す際に、金属の厚みに差があると成型品が上手く作れないため、厚みに合わせて人の手で金型を調整しながら成形品を作っていました。金属版の厚みにばらつきがあってもステーターが製作できる金型を作ってもらえないか、と言う相談を受け、当社で厚みの誤差を気にしなくても良い金型をしっかり実現しました。
この部品のためのこういう金型が欲しい、というはっきりとした要件がなくとも、人手をかけて調整している業務がありましたら、もしかしたら我々が解決できるかもしれません」

モノづくりの、特に試作段階においては精度よりもスピードやコストカットを優先されることもあるのではないでしょうか。同社は、西日本エリアを中心に20数社ほどの協力会社と提携しており、単純に受注キャパシティを広げられるだけでなく、「精度はそこそこでも、まずは試作として安価にスピーディにモノを確認したい」といった場合にはまず協力会社へ依頼し、その結果を以て当社で練度を挙げたモノづくりを、といった提案も行っています。受注から納品までは、一般的な射出成形金型ですと、1ヶ月から2ヶ月程度ということです。


地元にもお客様にも貢献しながらモノづくりを支えたい

また、福岡に根を張る一企業として、地域の皆さんと共に成長していきたいとも考えており、現在、産学連携プロジェクトとして、工業高等専門学校と共同でとある開発を行ったり、近隣の工業高校の生徒についてインターンシップの受け入れを行ったりしているそうです。
「モノづくりについては、自分たちが満足しているだけでは意味がない、お客様にとって価値のあるものを作りたいと常々考えています。チャレンジ精神だけは旺盛ですから。お客様のお困りごとについては、何ができるかまずは考え、これからも構想力を活かしたモノづくりにチャレンジしていきたいです」


豊洋エンジニアリング株式会社
福岡県遠賀郡に本社を構える、プラスチック射出成型金型の作成を手掛ける企業。医療機器部品や理化学メーカー向け部品等に用いられるような精密部品を得意とし、豊富な経験に裏打ちされた構想力で高い精度を実現。
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