金型製造で培った技術を精密部品の加工に活用!世界シェアを獲得した高い技術と提案力を誇る藤井精工

INTERVIEW

藤井精工株式会社
金型事業部 技術営業部部長
兼 医療事業部 事業部長
蔵前 法文

体内の管状の部分を内側から広げるために使われるステントのように、体内留置型の医療部品には超精密な加工が施されます。超精密な加工には工場の温度管理が重要で、例えば鉄は1℃気温が変わると0.002~0.003mmほど膨張するため、削っている先から鉄が膨張してしまうと正確な加工ができません。そのため、工場内は常に徹底的な温度管理が必要とされるそうです。
今回は、超精密な金型を作り続けてきた技術を生かし、海外の医療メーカーからの依頼で医療機器の製造も行う、福岡県鞍手郡にある藤井精工株式会社に高度な技術とものづくりへの姿勢についてお話を伺いました。


超精密な金型を作り続けてきた技術を生かし、世界に躍り出た企業があります。福岡県鞍手郡にある藤井精工株式会社です。社長である藤井福𠮷氏が2019年5月に春の叙勲「旭日単光章」を受け、同年6月には2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」に選ばれるなど、その技術力は国からも高く評価されています。「この技術を生かしてさまざまな分野のものづくりに協力したい」と語るのは、金型事業部 技術営業部 部長兼医療事業部事業部長の蔵前法文氏。蔵前氏から同社の高度な技術とものづくりへの姿勢についてお話を伺いました。

「微細で複雑な形状の部品もお任せ」の金型メーカー

福岡県鞍手郡の山間にある藤井精工株式会社は、金型製造とその技術を生かした精密部品の加工を行う会社です。1976年に創業し、2021年6月に45周年を迎えます。以前は半導体の金型製造がメインでしたが、次第にシェアが中国や韓国へ移行。現在は電気電子パーツやモーターコアなどの精密プレス金型製作、金型部品の加工が中心となっています。

なかでも、現在増えているのがスマートフォンやタブレットなどに使用される部品の金型製造です。蔵前氏は、「カメラモジュールや狭ピッチコネクタ、スイッチなどの高機能部品の金型を製造しています。どのメーカーでも同じ部品を使っていることが多いので、海外の有名なスマートフォンにも弊社の部品が使用されています。名前が出ることはありませんが、いわゆる『縁の下の力持ち』的な存在ですね」と語ります。

金型製造において中国や韓国が台頭してきた今も、同社の金型で作る部品が世界の多くのスマートフォンに採用されているのは、複雑で微細な部品の金型を作ることができる企業が他にはあまりないから。このことからも、同社の技術力の高さがうかがえます。


精密加工金型(提供:藤井精工)
精密加工金型(提供:藤井精工)


金型製造で培った技術を転用し、医療部品製造に参入

超精密部品の金型製造によって培われてきた微細な加工技術を生かし、近年は医療部品の製造開発も開始。その一つが、アメリカの眼科機器メーカーの依頼で製造した緑内障治療用の手術機器であるインプラント挿入器具です。挿入器具は、φ0.3mmの極小のチューブに0.030mmのスリット加工を施すなど、まさに超精密加工。現在、この製品は世界の約30カ国に輸出されています。この眼科用治療器で世界シェアをとったことで、2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」にも選出されました。

超精密加工で実現したインプラント挿入器具(提供:藤井精工)
超精密加工で実現したインプラント挿入器具(提供:藤井精工)


アメリカで製造される医療部品は、公的機関「FDA(Food and Drug Administration、アメリカ食品医薬品局)」の監査を受け、国内でいうクラスがⅠからⅣに分けられます。同社が製造しているステントは、体内留置型。生命や健康に重大な影響を与えるおそれがある高度管理医療機器であるため、クラスⅢ・Ⅳに該当します。リスクが高いため、クラスⅢ・Ⅳの医療機器製造に手を出さない企業も多い中、同社は果敢に参入しました。

同社が医療部品を製造するようになって3年。約50万個の医療部品を世の中に提供していますが、1個も不良品を出していません。その実績を讃えられ、医療メーカーの品質保証部から「世界一の品質No.1プレイヤー」と称賛されています。
「弊社の医療機器部品の検査は、45倍まで拡大できる顕微鏡を使って3回全数検査を行っています。もちろん、自動検査機やAIを使用した検査など、検査機器には投資していきますが、最終的に頼りになるのは人の目。検査担当のスタッフたちに支えられています」と蔵前氏。技術力だけでなく充実した検査体制もあって初めて、精密な医療機器の製造が実現しているのです。


世界に3台しかないレーザー加工機を2台保有

このような超精密な加工ができるのは、金型の加工には実にさまざまな技術が必要なためです。
「長年、精密な金型の加工を行ってきたため、弊社には機器や検査機なども含め、ものを作るために必要なものは大体そろっています。小さいサイズの製品であれば、弊社で作れないものはほとんどないのではないでしょうか」

同社の技術を支える機械の一つが、同社が株式会社牧野フライス製作所と共同開発している医療用精密加工部品製作用の「Femtosecond-Laser加工機」です。世界に3台しかないもので、そのうちの2台を同社が保有しています。従来のレーザー加工機と違い、同機は光で加工。金属は熱で溶ける前に蒸発するため、バリのないきれいな穴を開けることができるのです。この機械によって、他社では難しい医療部品の加工も実現できています。


Femtosecond-Laser加工機(提供:藤井精工)
Femtosecond-Laser加工機(提供:藤井精工)


超精密な加工を施すには、工場の温度管理も重要です。鉄は1℃気温が変わると0.002~0.003mmほど膨張するため、工場内は常に22℃の±1℃の範囲で徹底的に管理されています。
「弊社で行う加工は0.001mm単位。削っている先から鉄が膨張してしまうと正確な加工できないので、温度管理は徹底的にしています」

また、金型製造に関しては、「設計だけ」「製造だけ」と段階ごとに特化した企業が多い中、設計開発から製造、組み立て、テストや検査まで一気通貫でできるのも同社の強みです。
「新しい商品を開発する場合、開発担当の方が作りたいもののイメージ図を持っています。それを拝見しながら『この形だと量産性がないから、こんなふうに形状に変えたほうがいいですよ』と意見を伝える。開発の段階から関われるのは弊社の強みだと思っています」
現在は、宇宙や航空関連の企業からも相談が来ており、活躍の場はさらに広がりを見せています。


世界中の開発者を驚かせた「消えるブロック」

同社の高い技術力を示し、海外の医療機器メーカーからの受注を得るきっかけになったのが、同社の「消えるブロック」です。これは、金属に0.001mm単位の加工を施して凹凸で文字が見えるようにしているもの。しかし、人間は0.003mm以下の隙間を認識できないため、重ねると文字が消えてしまったように見えるのです。

消えるブロック。「FUJII SHEIKO」のロゴが押し込まれ、途中文字が見えなくなる。(提供:藤井精工)
消えるブロック。「FUJII SHEIKO」のロゴが押し込まれ、途中文字が見えなくなる。(提供:藤井精工)


このブロックは、展示会で紹介したところ、医療業界の関係者、中でも海外の開発担当者の間で話題となり、前述の緑内障手術用機器も受注。このことが世界でも話題となり、シリコンバレーやヨーロッパの医療機器メーカーから、「他社では加工できないものも藤井精工なら作れるのではないか」と持ち込まれることが増えています。
「他にも、直径0.6mmの注射針に0.06mmの穴や0.04mmの溝を加工したり、世界最小である0.45mmの手術用メスを開発したりと、さまざまな開発品のお手伝いをしています」

同社が開発品製造に携わる際に、大事にしているのは「レスポンスの速さ」です。それは、蔵前氏が元々開発担当だったことに起因します。
「開発者は、自分で考えたものはすぐ形として見たいもの。それはどの国でも同じだと思ったので、依頼された場合には1〜2週間程度である程度の物を作って送るようにしています。そうすると、やはり非常に喜ばれてそこから話も膨らんでいきます」


開発段階で諦めていたことを叶えるお手伝いをしたい

同社がものづくりをする際に大事にしているのは「常識にとらわれない提案力」です。
「自由に発想することを大事にしています。A案を求められたとしたら、あわせてB案・C案も提案する。常に新しいものを考え続けています」

同社の工場を見学に来ることで、ブレイクスルーになる開発者も多いそうです。
「弊社にいらっしゃった際に『ここまでとは思わなかった』と驚かれる方が多いですね。弊社の構想設計や提案力を知ったことで可能性が広がって『新しい図面が描けるようになる』と言っていただいたこともあります。これまで培ってきた超精密金型の技術と、最先端のFemtosecond-Laser加工機などの技術を使って、今まで開発段階で諦めていたことや他社ではできずお困りだったことに挑戦するのは、私たちにとっても非常にやりがいがあることです。ぜひそのお手伝いをさせていただきたいですね」


藤井精工株式会社
福岡県鞍手郡にある金型製造と精密加工の会社。近年は、金型製造の技術を生かし、海外の医療メーカーからの依頼で医療機器の製造も行っている。世界に3台しかない、株式会社牧野フライス製作所と同社が共同開発している医療用精密加工部品製作用の「Femtosecond-Laser加工機」を2台保有しているのも特徴。
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