品質に妥協しない大松精機のファイバーレーザー溶接技術。半自動溶接からの切り替えでステンレス製品加工のコストを大幅カット

INTERVIEW

大松精機株式会社
副社長
松永 幸二氏(右)
総務部長
難波 雅徳氏(左)


レーザー光を集光し金属面に照射、金属を局部的に溶融・凝固させるレーザー溶接。CO2レーザーやYAGレーザーなど従来のレーザー溶接には、レーザー光線を加工対象物まで近づけにくい、消耗品の定期的交換が必要などのデメリットがあります。一方、これらのデメリットを解消できそうな「ファイバーレーザー」が近年台頭してきました。今回は、30年以上前にレーザー加工を導入し、「ファイバーレーザー溶接」を得意とする岡山県の大松精機株式会社に、同社がもつ「一貫生産システム」の強みや、品質に妥協しないレーザー溶接技術について伺いました。


「ファイバーレーザー溶接」は、従来のCO2レーザーとYAGレーザーに代わる新たなレーザー溶接技術として注目されています。
30年以上前にレーザー加工を導入した大松精機株式会社は、機械・装置の部品メーカーです。取引先は国内トップメーカーも含め300社以上で、自動車、電機機器、IT関連、医療・食品関連機器企業など、幅広い業界の鉄鋼・金属加工製品の製造を手がけます。
今回は、副社長・松永幸二氏と総務部長・難波雅徳氏から、同社のファイバーレーザー溶接技術についてお話をうかがいました。


大松精機グループ6社の総合力で「良品・安価・即納」を実現

大松精機株式会社(提供:大松精機)
大松精機株式会社(提供:大松精機)


鉄鋼・金属の超精密加工メーカーの大松精機株式会社は、1984年創業。岡山県倉敷市に本社を構え、同市内に6工場、栃木県宇都宮市内に1工場、インドネシアに1工場を保有しています。
グループ会社6社が連携し、仕入れ、設計・製造から検査・出荷までを一手に手がける「一貫生産システム」を運用。技術力や独自のノウハウ、最新設備を活用し、他社に真似できない製品を世に出しています。


一貫生産システムによる複雑な技術で多様な加工条件をクリア

30年以上前からさまざまな加工条件に対応してきた一貫生産システムによってグループ全体で複雑な技術を実現し、お客様からの高度な要望にも応えられます。
材料選定から切断、曲げ・ブレーキや溶接、塗装等の各工程で、生産方法や使用する機械等において最適な選択をとることで良質な製品を低コストでスピーディーに提供しています。
設備や治具に不具合や故障が発生した際に即時対応できるのも、一貫生産システムならではの強みです。


最先端の技術を駆使。ロボット化の導入で品質と効率アップ

自社で製造ラインを立ち上げ、最先端の技術を使いロボット化することで品質アップとコストダウンを図っています。また、コストダウンのために、最新技術の導入、オリジナルロボットの製作、治具の見直し等を常に行っています。


国内で希少なロボットシステムインテグレーターを育成

自動化のノウハウを提案する専門家である「ロボットシステムインテグレーター(ロボットSIer)」を育成しています。
大幅なコスト削減に寄与するロボットSIerですが、日本では人数が少なく、欧米の2割程度しかいないと言われています。
当社は、一貫生産システムを構築・運用する中で蓄積されたライン開発のノウハウを活かし、10年以上の溶接経験とライン開発の実績を持つ職人が自動化のシステム開発やサポートを行っています。


半自動溶接とレーザー溶接の違いとは?

半自動溶接とレーザー溶接の比較

溶接加工にはさまざまな種類があり、要件や材質等によって最適な溶接方法は異なります。
ここでは、「半自動溶接」と「レーザー溶接」の違いについて解説します。

半自動溶接は、トーチ(加熱器具)を使って溶融金属を溶かし、2つの鋼材を接合する方法です。代表的なものとして、炭酸ガスを使用する「CO2溶接」、不活性ガスを使用する「MIG溶接」、混合ガスを使用する「MAG溶接」があります。

レーザー溶接は、レーザー光を集光した状態で金属面に照射し、金属を局部的に溶融・凝固させることで接合する方法です。用いられる光源は、主に「CO2レーザー」と「YAGレーザー」です。この2種類よりも高精度かつ高密度な溶接として、近年台頭してきたのが「ファイバーレーザー」です。

<半自動溶接とレーザー溶接の比較>

項目 半自動溶接 レーザー溶接
溶接速度 (レーザー溶接より)遅い (半自動溶接より)2~10倍速い
スパッタの発生 (レーザー溶接より)多い (半自動溶接より)少ない
隙間がある溶接 可能 不得意

 

レーザー溶接は高品質な溶接が可能

レーザー溶接はCW(Continuous Wave、連続波)による連続照射、十数kW(機種によっては100kW以上)の高輝度ビームで高速溶接ができ、溶接ビード(溶接痕)が滑らかで仕上がりが美しいという特長があります。
半自動溶接とは異なり、スパッタがほぼ発生しないこと、溶接時の歪みがほとんど出ないことから、仕上げにかかるコストも削減できます。
また、大出力のレーザーであれば数十mmまでの貫通溶接が可能です。


最新の技術と機材で高品質を追求する大松精機の「ファイバーレーザー溶接」

ファイバーレーザー溶接(提供:大松精機)
ファイバーレーザー溶接(提供:大松精機)


溶接の可能性を広げたファイバーレーザー技術

従来のレーザー溶接では、レーザー光線をワーク(加工対象物)まで近づける技術が難しく大掛かりだったのですが、ファイバーレーザー技術が生まれ、ファイバーを通してレーザー光線をワークまで簡単に持っていけるようになりました。
また、ファイバーレーザー溶接は溶接時にスパッタ(溶融金属の飛散)や皮膜が発生しにくいという特長もあり、仕上げ作業に要する時間とコストを削減できます。

特に、半自動溶接で行われることが多いステンレス製品は、溶接焼けができるため、仕上げの際に「酸洗い」の作業も必要となりますが、ファイバーレーザー溶接では不要です。
そのため、ステンレス製品を扱うお客様を中心に、ファイバーレーザー溶接に切り替えたいというご要望が増えています。


大松精機のファイバーレーザー溶接技術の特長

当社はレーザー加工の幅を広げたファイバーレーザー技術に早くから注目し、加工実績を積み上げてきました。
ファイバーレーザー溶接は溶接による歪みがなく、溶接面も大変美しいため、写真(下)のようにファイバーレーザー溶接を用いて繊細なオブジェを制作したこともあります。


ファイバー溶接技術を用いたステンレス製の胡蝶蘭のオブジェ(提供:大松精機)
ファイバー溶接技術を用いたステンレス製の胡蝶蘭のオブジェ(提供:大松精機)


当社は一貫生産システムのため、ファイバーレーザー溶接を行うことを想定して全工程を設計できます。
より精密に仕上げるためには、鋼材のパーツ一つひとつの精度を高める必要があるため、0.1mm単位で制御されたレーザー切断により高精度なパーツを作っています。
治具の高い技術によって溶接部分の密着精度を高めることも重要なので、最新鋭の三次元測定器を使用して治具や製品を測定しています。

溶接の際は、センシング技術を用いてワークの湾曲や微細な凸凹を検知し、倣い制御を行っています。

溶接の品質は、「溶け込み深さ」で決まります。当社ではCCDカメラを用いた画像解析システムを用いて、表面からは見えない内部を確認し、十分な溶け込みであることを保証しています。


ファイバーレーザーを用いて表面処理を自動化する独自ロボットを開発

ファイバーレーザー溶接は、ナノレーザーを照射し、錆や皮膜を反応させて錆や皮膜を取り除くことにも利用できます。
パワーツールよりも金属表面を傷めずに表面処理(錆・皮膜・油・溶接焼け・塗料の除去など)ができるため、需要が増えてきています。

表面処理のロボット化を導入した事例として、ある企業様からファイバーレーザーを使って大量にあるステンレス製のワークの表面処理をしてほしいとご依頼があり、独自のレーザー溶接機を開発しました(写真下)。


ファイバーレーザーを用いて表面処理を自動化するオリジナルロボット(提供:大松精機)
ファイバーレーザーを用いて表面処理を自動化するオリジナルロボット(提供:大松精機)


既存のレーザー発振器とレーザーヘッド、ロボットを組み合わせた機械で、レーザー照射による表面処理とマテリアルハンドリングを一台で行えます。
この機械を導入していただいたことで、仕上げ・酸洗い工程をなくすことができました。



いつの時代も妥協なきモノづくりに挑む

創業時からの「お客様が満足する納期で、良いものを安くご提供したい」という思いを今も変わらず大切にしています。そのため、材料はメーカーが保証する一級品だけを直接仕入れています。
設備投資を続け、一貫生産システムに磨きをかけてきた結果、加工条件や鋼材等に合わせて、TIG溶接、MIG溶接、YAGレーザー溶接、ファイバーレーザー溶接、CO2半自動溶接、ロボット操作による溶接といった溶接技術を使い分けることが可能です。
今後も溶接技術の研究を重ね、機械加工の限界に挑戦していきます。


大松精機株式会社
岡山県倉敷市に本社を構える鉄鋼・金属の超精密加工メーカー。同市内に6工場、栃木県宇都宮市内に1工場、インドネシアに1工場を保有している。取引先は国内トップメーカーも含め300社以上で、自動車、電機機器、IT関連、医療・食品関連機器企業など、幅広い業界の鉄鋼・金属加工製品の製造を手がける。
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