爆発エネルギーを活用した金属接合技術「爆発圧着」の可能性〜高性能材料「BAクラッド(R)鋼板」の用途と新たな技術開発の展望〜

爆発によって発生するエネルギーを活用する「爆発圧着」は、過酷な条件下での使用に耐えうる接合強度を持ち、機械特性に優れていることから、注目を集めている金属接合の技法です。
旭化成は創業期から培ったダイナマイトをはじめとする火薬類製造及びその活用研究の知見を生かし、爆発エネルギーを活用した金属加工を50年以上にわたって研究・事業化してきました。同社が爆発圧着技術で製造する高性能材料「BAクラッド(R)鋼板」は、国内だけでなく、海外にも広く提供されています。今回は爆発圧着技術の強みと、新たな技術開発の展望をご紹介します。

「爆発圧着」技術とは?〜爆発による高エネルギーを利用した金属接合

爆発圧着は爆薬が爆発する時に放出するエネルギーを利用し、異なる種類の金属板を瞬時に圧着する技術です。他の接合方法と比べると、以下のようなメリットがあります。

<爆発圧着の特徴>
・肉盛やロールクラッドなど他の接合方法に比べて接合強度が高い
・熱を加えない冷間加工なので、溶接が難しい金属や、合金になると強度や機械特性が損なわれてしまう金属の組み合わせにも対応できる
・熱間圧延機に入らない厚みや多層の接合にも対応しており加工の幅が広い
・鉄、ステンレス、銅、ニッケル、アルミ、マグネシウムに加え、チタンやジルコニウムなど、実用金属のほとんどを扱える

爆発圧着は、下図のようなプロセスで行われます。

爆発圧着のプロセス
爆発圧着のプロセス


    1. セット:母材と合材を一定の間隔を持たせて重ね、合材の上に爆薬をセットします。
    2. 起爆:爆薬を起爆させると瞬間的な高エネルギーが生じます。このエネルギーにより、合材が母材に超高速で衝突することで、衝突面から「メタルジェット」が発生します。メタルジェットは、母材、合材の接合面にある酸化物・窒化物・吸着ガスなどの不純物を排出するため、接合面が清浄化されます。
    3. 圧着:清浄化された接合面同士は、超高圧で密着されます。これにより両金属同士が近接して金属結合が生じることで、強固な接合が瞬時に達成されます。なお、爆薬の爆発で生じる熱は、極めて短時間に発生し、空間に開放されるため、金属が加熱されることはありません。そのため、冷間加工に分類されます。

 

爆発圧着技術で製造された高性能材料「BAクラッド(R)鋼板」の用途

旭化成の爆発圧着技術を活用した製品が「BAクラッド(R)鋼板」です。化学工業・石油精製・石油化学・電力プラントなど、強度と信頼性が求められる環境の大型機器の部材として使われています。主な用途は以下の通りです。

用途 既存材料・手法 組み合わせ 利点
配管用異材継手
(CCJ(R))【製品化】
フランジ アルミ
+ステンレス
耐リーク性向上
メンテナンスフリー
精錬用容器
【製品化】
グラスライニング
耐熱金属、溶射
耐食金属+普通鋼
純金属+耐熱金属
メンテナンス軽減
高熱伝導
コンタミ防止
変形抑制
長寿命化(コストダウン)
導電装置【製品化】
伝熱装置【研究開発中】
銅+アルミ 軽量化
コストダウン
反応容器【製品化】 耐食金属 内側に耐食金属
+外側に鉄
コストダウン
混錬、破砕装置
【研究開発中】
耐摩耗鋼 耐摩耗鋼+鉄 長寿命化
(靭性向上)

 

現在の主要な用途として、配管用異材継手(CCJ(R))・精錬用容器・導電装置の3つの事例を紹介します。

配管用異種金属継手(CCJ(R))
配管用異種金属継手(CCJ(R))


CCJ(R)(CRYOCOUP JOINT(R))は、天然ガスの液化設備などの極低温環境で使われる継手です。アルミ製の熱交換器配管と耐久性に優れたステンレスの輸送配管をつなぐために用いられます。フランジなど、他の接続方法よりも高性能化・維持管理コストの低減(信頼性の向上、省メンテナンス、長寿命化)を図ることができます。このCCJ(R)は旭化成が世界で唯一製造しています。

貴金属やレアメタルの純度を高める「金属精錬」には、酸やアルカリの溶媒を使う「湿式」と、数百度の高温で金属を加熱する「乾式」とがあります。


タイプ 湿式 乾式
イメージ図  

爆発圧着の
メリット
耐食金属で内面被覆することで、グラスライニングで発生するような衝撃・静電気による破損がなく、メンテナンス軽減、良好な熱伝導が図れる。 外面を耐熱金属、内面を純金属で被覆することで、精錬する金属へのコンタミを防止、容器の変形抑制による長寿命化が図れる。
実績例 詳細はお問合せ下さい ニッケル+ニッケル合金

クラッド鋼板が使用される精錬用容器

 

 

金属精錬用容器は、著しい腐食環境や高温環境で使用されます。破損や変形は重大事故やコンタミネーションにつながるため、頻繁なメンテナンスや交換が必要となります。爆発圧着で製造されたクラッド鋼板を用いると、メンテナンスの軽減や長寿命化によるコストダウンを図ることができます。

導電・伝熱装置に利用する素材も、金属同士を組み合わせることで機能性を高める用法です。


用法 導電装置 伝熱装置(ヒートシンク)
イメージ図
爆発圧着の
メリット
接合面に空隙が発生しない
(スパークなどの不具合防止)
接合面の電気抵抗値小
(接合面に合金層がない)
銅材を一部アルミに
置き換えることによる
軽量化・コストダウン
実績例 銅+アルミ/アルミ+鉄 銅+アルミ

 

導電率・熱伝導率が高い銅は、放熱に用いるヒートシンクに利用されますが、銅だけで部材を製造すると重量とコストがかさむデメリットがあります。そこで、爆発圧着でアルミと銅を接合することで軽量化とコストダウンを図れます。


可能性が広がる、爆発エネルギーを活用した金属加工

爆発エネルギーの活用は、金属接合にとどまりません。爆発圧着の他に、旭化成が研究・事業化に取り組んでいる加工技術は以下の通りです。

<開発中の金属加工法>

特徴 想定用途
爆発圧搾 爆発エネルギーを利用し、
金属、合金、無機化合物の固化成形を行う。
・焼結ができない材料の結合が可能
・バインダーレスのため高密度化が可能
・冷間加工のため材料への熱影響が小さい
金属・合金・セラミックス粉末の
高密度・高性能化
爆発硬化 爆発エネルギーを利用し、金属表面の硬化を行う。
従来の表面硬化技術
(浸炭、窒化、ショットピーニングなど)に比べ、
高い表面硬さと深い硬化層(最大10mm程度)が得られる。
摩耗、変形が著しい
設備・部材の長寿命化
爆発成形 爆発エネルギーで金属板を金型に押し付け、成形を行う。
・片側一方の金型のみによる成形が可能
・スプリングバック(弾性変形)が小さい
・指紋のような微小な凹凸でも巧に転写加工が可能
高価な金属材料や大型金属製品の
精密成形
爆発合成 大型の超高圧設備を用いずに合成が可能。
人工ダイヤモンドで実用化されている
高機能金属材料・セラミックスなど

 

「爆発圧搾」は、爆発で生じるエネルギーによって金属や合金、無機化合物の粉末を固化成形する技術です。通常、これらの粉末を固化成形しようとすると、熱を加えて焼き固める「焼結」もしくは結合剤(バインダー)の添加が一般的です。しかし、熱を加えると分解して特性が失われてしまったり、結合剤によって前記粉末の密度が下がり、性能が低下したりするデメリットがあります。爆発圧搾は材料への熱影響が小さく、結合剤を用いずに固化成形を行えるので、固化成形品の高密度化・高性能化に適しています。

爆発圧搾で製造した磁石
爆発圧搾で製造した磁石


その他、摩耗に強い製品への応用が見込まれる「爆発硬化」や、型の転写精度が高く、スプリングバックも少ない「爆発成形」、爆発エネルギーを活用して超高圧・高温合成を行う「爆発合成」など、様々な加工技術の事業化に取り組んでいます。

爆発エネルギーによる金属加工技術を活用できる新たな用途とは

旭化成は50年以上にわたり、爆発圧着を中心とした爆発エネルギーによる金属加工に取り組んできました。これまではプラントなどの大型設備の部材などを中心に使われてきた技術ですが、接着強度などの特性を武器に、新たな用途やビジネス創出の可能性を探っているといいます。

旭化成の工場。山中のトンネル(画像左上)内で爆発を利用した金属加工を行う
旭化成の工場。山中のトンネル(画像左上)内で爆発を利用した金属加工を行う


爆発エネルギーを応用した金属加工技術は、輸送機器や製造設備をはじめとする多種多様な分野、強度と機能性の双方が求められる現場での活用が見込まれます。
「過酷な使用環境・運転条件による不具合に困っている」「現状の材料・部材を更に高性能化したい」などの課題があれば是非ご相談いただきたいとのことです。
この記事でご興味を持った方は、ぜひ一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。


まとめ

今回は、爆発エネルギーを活用した金属加工技術と、その一例である爆発圧着の強みや活用事例をご紹介しました。金属加工には様々な手法がありますが、ネジ・ボルトや接着剤を介さない加工技術を用いることで、製品の強度や機能性が高まることが期待できます。幅広い加工技術に理解を深めることで、自社のものづくりの幅が広がるかもしれません。



参考情報
・BAクラッドは、旭化成株式会社の登録商標です。
・CCJは、旭化成株式会社の登録商標です。


旭化成株式会社
1922年に創業した総合化学メーカー。繊維・ケミカル・エレクトロニクス事業からなる「マテリアル」、住宅・建材事業からなる「住宅」、医薬・医療・クリティカルケア事業からなる「ヘルスケア」という3つの領域で事業を展開している。1950年代から爆発エネルギーを利用した金属加工技術の研究開発に取り組んでおり、爆発圧着によって製造する「BAクラッド(R)鋼板」は国内外のプラントの部材、LNG(液化天然ガス)の液化装置、LNGタンカーの部品など、高い耐久性と信頼性が求められる分野で用いられている。
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