3Dレーザー直接描画で高解像度と3D形状を実現、〜富士フイルムメディアクレストの微細加工品受託製造サービス

電子機器のダウンサイジングと高精度化に伴って、部品に用いられる基板やレンズも高密度化・高機能化が求められています。こうしたニーズから「設計領域を拡大できる」と注目されているのが、材料の表面にミクロンサイズ以下の微細なパターンを付加してさまざまなメリットを得られる微細加工です。

富士フイルムメディアクレストは、情報記録メディアの製造・開発で長年にわたって培ってきた技術を応用し、微細加工品の受託製造サービスを提供しています。今回は、同社のサービスとその魅力をご紹介します。


富士フイルムグループのシナジーと30年にわたる情報記録メディアの技術力を活かした新サービス

富士フイルムメディアクレストは1989年の設立以来、30年以上にわたってCDやDVDなどの情報記録メディアの製造・加工・販売と関連ソリューションを展開してきました。同社が2019年1月に新たに立ち上げたのが、今回ご紹介する微細加工品の受託製造サービスです。強みとしているのは、富士フイルムグループが得意とする写真技術を応用したフォトリソグラフィによる複雑かつなめらかな形状実現と、情報記録メディアを長年扱ってきたノウハウを活かした加工・量産技術です。現在は光学部品(マイクロレンズ、回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)など)や医療機器(マイクロ流路、マイクロニードルアレイなど)を中心にサービスを提供しています。

試作、金型製作、量産までをワンストップに実現

富士フイルムメディアクレストが提供する微細加工品受託製造サービスの利用の流れは、以下の通りです。

微細加工品受託製造サービス利用の流れ
微細加工品受託製造サービス利用の流れ


サービスの提供は製法検討・金型製作・量産の3つの工程で行われます。他社のサービスでは「試作金型製作のみ」「量産のみ」など工程の一部を受託することが多くありますが、富士フイルムメディアクレストはこれらを一気通貫に実現できるのがメリットです。これによって、設計の段階から量産に向けた最適なアドバイスを提供できるなど、最終製品化を見据えて各工程の作り込みができるようになります。また、試作から量産までを一貫して受託することで、工程を部分的に発注する場合に比べてコスト削減や納期短縮も期待できます。納期については仕様にもよりますが、製法検討から金型製作まで平均2ヶ月程度で実現できるといいます。

3Dレーザー直接描画により、高解像度かつ3次元的な形状が実現できる

微細加工においては、いかに精度の高い形状実現ができるかがポイントです。富士フイルムメディアクレストは、3Dレーザー直接描画を日本で初めて民生用(ビジネス用)としての設備構成でサービス提供しました。レーザーのスポット径は300nm、描画面積は最大で200mm角と大面積化にも対応しています。大きな面積への精密加工が容易になるため、下図のような微小かつ立体的な形状実現や、生産効率の高まりが期待できます。精密加工は平面上だけでなく、曲面上への加工も可能です。


3Dレーザー直接描画の加工事例
3Dレーザー直接描画の加工事例


1024階調のグレースケールでなめらかに傾斜を描画できる点も魅力です。下図のような風景画像による描画サンプル例のような非連続なパターンも実現可能で、機能実現の幅が広がります。


3Dレーザー直接描画の加工事例
3Dレーザー直接描画の加工事例


フォトリソグラフィによって金型製作:3Dレーザー描画の強み

金型を製造・加工する方法はさまざまですが、富士フイルムメディアクレストの微細加工サービスはフォトリソグラフィを採用しています。フォトリソグラフィは写真を現像する化学反応を応用した技術で、感光剤を塗布した基板を露光させてパターンを生成します。切削加工が数十μm〜数mm以上の加工を得意とするのに対して、フォトリソグラフィは数百nm〜数百μmと、より精緻な加工も得意としています。


加工技術別の対応サイズ例
加工技術別の対応サイズ例


小さな構造物をレンズのような凹面や針のような急峻な形に加工しようとすると、切削した部分が折れてしまったり加工に時間がかかったりする課題があります。また、切削の場合は、刃が摩耗することで寸法の均一化が難しくなる懸念もあります。一方、露光によってパターンを生成するフォトリソグラフィは、精密なパターンを繰り返す加工を得意としています。そのため、小さな構造物に対して精密な3D加工を施す加工を検討しているのであれば、フォトリソグラフィは製作時間やリスクを低減でき、大面積化にも有利な工法だといえます。

ニッケル電鋳金型で、欠陥率の低さと製作期間の短さを実現

3Dレーザー加工で製作した原盤をもとに、量産に用いる複製型を製作します。富士フイルムメディアクレストで用いているのは厚みが300μmのニッケル電鋳金型です。ニッケル電鋳金型は原盤をニッケルでメッキし、これを剥離して金型をつくる方法です。

ニッケル電鋳装置
ニッケル電鋳装置


ニッケル電鋳金型の厚みは300μm程度と、一般的な電鋳駒(厚み数mm)と比べてたいへん薄いのが特徴です。化学反応で薄いニッケルに原盤のパターンを転写するという製法上、量産性と製作期間の短さに強みがあります。ニッケル電鋳金型は転写精度が高いため、金型を使用した製品の欠陥率を低減でき、量産に有利です。また、転写が短時間で行えるので金型の製作期間の短縮が期待できます。具体的には、電鋳駒は製作に半月〜1ヶ月ほどかかることがありますが、ニッケル電鋳金型の製作は数日以内で済むため、納期に大きな違いが生じます。

高品質の実現と大面積・大ロットの量産に対応

量産フェーズにおいては、富士フイルムメディアクレストはプラスチック製品の射出成形を受託しています。製造ロットは数十個の試作から十万個以上の大ロットまで柔軟に対応しています。

レーザー顕微鏡による寸法評価
レーザー顕微鏡による寸法評価


また、微細加工品の量産においては、いかに品質を担保するかについても考慮が必要です。富士フイルムメディアクレストでは、クリーンルームの清浄度が非常に高い製造環境を備えています。検査体制も充実しており、レーザー顕微鏡を用いた寸法評価と電子顕微鏡を用いた形状観察による、二段階の非破壊検査を行っています。検査可能なサイズについては、大面積の3Dレーザー描画に対応し、直径300mmの大きさまで対応できます。要望に応じて検査項目を追加することも可能です。

さらなる技術向上と利用シーンの広がりを見据える

富士フイルムメディアクレストの微細加工品受託製造サービスは、提供開始から1年を迎えました。難易度の高い立体形状を実現できることから「これまで実現できなかった加工ができるかもしれない」と、富士フイルムグループの事業や社外の大手メーカー、研究機関など、国内外から引き合いがあるそうです。
サービス担当者は「加工できるアスペクト比(縦横比)の向上とより高い(深い)立体形状の実現を図りたい」と語ります。微細加工の領域は電子部品の高密度化にとどまらず、素材に微細なパターンを付与することで反射防止や撥水効果も見込めます。医療・光学機器に限らず、幅広い事業分野への広がりが期待できます。


<主な利用シーン>

 対象  利用シーン
精密機器 電子部品、反射防止、偏光、他
医療機器 マイクロ流路、マイクロニードルアレイ(MNA)、他
光学機器 マイクロレンズアレイ(MLA)、回折光学格子(DOE)、他
自動車関連 反射防止、偏光制御、MLA、他
食品容器 親疎水、超撥水、他
液晶関連 配向制御、他
LED関連 深紫外LED向けピラー、MicroLED向けピラー・井桁面格子、他

 

まとめ

今回は、情報記録メディアを扱ってきたノウハウを活かした微細加工品の受託製造サービスをご紹介しました。小さな素材や基板にさまざまなメリットを付加できる微細加工は、製品設計の幅を広げるうえで有効なソリューションです。複雑形状の実現や高品質での量産化に関心をお持ちの方は、富士フイルムメディアクレストに相談してみてはいかがでしょうか。みなさんが目指すものづくりにマッチするソリューションが見つかるかもしれません。


富士フイルムメディアクレスト
富士フイルムグループに所属する情報記録メディア技術を核に進化を遂げるメーカー。1995年に光ディスクの製造・販売を開始し、ソフトウエア用ディスクや写真データの記録媒体「フジカラーCD」などのグループ会社製品から、教材データや精密機器の取扱説明書などの外販製品まで、幅広い企業用途の CD/ DVD-ROM の生産と製品包装を行っている。そのほかデーターセキュリティ、映像、教育、オンデマンド、データストレージ、ドキュメント制作など幅広いソリューションを提供している。2019年1月に新規事業として微細加工の受託製造サービスを開始した。
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