レアメタルの調達から製造支援、スクラップのリサイクルまで 矢野金属の一貫した供給サービスとは

INTERVIEW

矢野金属株式会社
代表取締役副社長
矢野 和義

スマートフォンやタブレットなどの機器や電子部品、自動車や航空機に至るまで、あらゆる工業製品に組み込まれているレアメタル。我が国製造業の優位性を支えている素材でもあります。しかし、その存在自体が稀少であったり、採掘や精錬が難しかったり、資源の産出地域が偏っていたりするなどさまざまな理由から、産業界での流通量は少なく、レアメタルを安定的に確保していくことは製造業界にとって極めて重要な課題となっています。

こうしたなか、矢野金属は非鉄金属専門商社として40年以上にわたってレアメタルを取り扱ってきました。その専門性と実績は高く評価されており、複数のグローバルメーカーが取引先に名を連ねています。今回は、同社の特徴や強み、今後の展開などについて、代表取締役副社長 矢野和義氏に聞きました。


トレーディング、リサイクル、コンサルティングの3つの柱で課題を解決

────まずはレアメタルを取り巻く現在の状況について教えてください。

レアメタルは、金属それぞれに特有の性質があり、他のものでは代替しにくい希少性が高い金属のことを言います。ただ、採掘や精錬のコストも高いことなどから生産量や流通量が少なく、それらの資源は、アフリカや南米、中国などに偏在していて、安定的に確保するためには地政学的なリスクも考慮する必要があります。

このような状況から、レアメタルの価格は乱高下しやすく、時には入手しづらい局面に陥ってしまうこともあります。近年、レアメタルが含まれる製品の製造工程で発生する端材や使用済み製品などをリサイクルし、環境保全の面からもレアメタルを循環的に活用する仕組みや技術が注目されています。



────矢野金属は非鉄金属専門商社としてこれまで長年にわたってレアメタルを取り扱ってこられました。貴社の事業とその特徴についてお聞かせいただけますか。

現在は「トレーディング」、「リサイクル」、「コンサルティング」という3つの事業を展開しています。当社は、金属スクラップを仕入れ、もう一度原材料として再生するリサイクルの事業からスタートしました。その後、時代の変遷とともに、国内外から金属原料や製品を調達し、お客様へ納入するトレーディング事業がもうひとつの柱となっていきました。

こうしたリサイクル事業とトレーディング事業で培った技術や知見を活かし、原材料の安定確保やコストダウン、廃棄物の削減や環境保全といったモノづくりの現場が直面する課題を解決するコンサルティング事業にも注力するようになりました。

レアメタル原材料の調達から製造支援、スクラップの有効活用まで一貫したサービスを顧客へ提供できるのが当社の特徴であると考えています。


幅広い業種へ多種多様な金属を供給できる体制を構築

────矢野金属が取り扱う商品について教えてください。

当社は、タングステンやモリブデン、タンタル、ニオブ、ニッケル、コバルトなどの金属を主として取り扱っています。そして、それら金属のスクラップや地金、酸化物や粉末、合金などさまざまな状態での原料の取り扱いを進めており、鉄鋼やスーパーアロイ、半導体分野や電子部品、機械工具関連、光学関連など幅広い業種のお客さまへ商品を納入させていただいております。また、今後は電気自動車の普及によって二次電池の部材原料となるコバルトやニッケルの需要が増えていくものと思われます。現在、原料調達のルートを確立し、電池スクラップのリサイクルに対応する設備を充実させているところです。


<表1>取り扱い金属の種類

 スクラップ
(金属、合金および粉末)
タングステン、超硬工具、モリブデン、チタン、ニッケル、コバルト、二次電池、タンタル、ニオブ、クロム、ジルコニウム、ゲルマニウム、錫、貴金属 などのスクラップ
 原料
(金属、合金、酸化物、
炭化物および粉末)
タングステン、モリブデン、チタン、コバルト、クロム、ニッケル、ゲルマニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ガリウム、インジウム、ジルコニウム、レニウム、錫、超硬工具原料全般(タングステンカーバイド、コバルトパウダー、チタンカーバイドなど)、レアアース原料(ネオジウム、イットリウム、セリウム、ランタンなど)、電池関連原料(硫酸ニッケル、硫酸コバルト、水酸化コバルト、炭酸リチウムなど)
 素材、製品 タングステン・モリブデン製品、超硬工具製品、半導体関連材、光学関連材、梱包材など副資材

 

<写真1> 左:原料・製品 右:スクラップ
<写真1> 左:原料・製品 右:スクラップ


────レアメタル原料やスクラップを安定的に調達するための対策や工夫は何かされていますか?

当社には、三つの海外拠点があります。中国からの原料調達を支える「上海新矢野貿易有限公司」、現地における営業活動の支援や金属スクラップの回収を目的として、タイに「ヤノメタルズ・タイランド」を、韓国には「JLコーポレーション」を展開しています。多くの日系企業が進出しているタイでは、現地で発生するスクラップを、韓国においてはスマートフォンやテレビなどのメーカーから、製造工程で発生するスクラップを回収しています。また、欧米やロシアなどのパートナー企業ともネットワークを確立しており、国内外から各種レアメタル原料やスクラップを調達できる体制を整えています。


技術と経験が積み重なった工場設備

────矢野金属の工場や設備の特徴について教えてください。

現在、全部で6つの工場を運営しています。航空機に使用される素材など、異素材との混合が許されない製品も扱っていますので、それぞれの工場ごと、そしてワークスペースごとに取り扱う金属を分けて、専属の担当者が原料やスクラップを管理していることが当社の特徴です。I.T.ファクトリーではタングステンを、Ⅱファクトリーでは、モリブデン、タンタル、ニオブ、チタン、クロムを取り扱っています。今年1月に新設したⅢファクトリーでは、ニッケル、コバルト、電池関連材料や銅などを扱っています。

お客様のさまざまなご要望にお応えするため、工場内には、分析機器や切断・破砕機、圧縮装置、洗浄・研磨用の設備や脱水・乾燥機など各種設備を整えています。たとえばターゲット材料などは、使用済みのものを仕入れて、切断・破砕を施し、表面を加工処理し再生された金属材料としてお客様に提供します。年々、材質だけでなくサイズや形状が多様化していますので、それらの変化に合わせて加工方法も適宜検討しています。何よりも、どうすればお客様にとって使いやすい状態で提供できるかということを重視していますね。継続的かつ柔軟に新技術へ対応していくよう心がけています。


<写真2> 左:I.T.ファクトリー 右:Ⅱファクトリー
<写真2> 左:I.T.ファクトリー 右:Ⅱファクトリー


<写真3> 左:バンドソーマシン 右:サイクロン式乾燥機
<写真3> 左:バンドソーマシン 右:サイクロン式乾燥機


────今年の1月にⅢファクトリーを新設されたとのことですが、どのような背景があったのでしょうか?

近年、当社が取り扱う金属の種類や数量が増えてきたというのが工場を新設した理由のひとつです。特に、発電所のタービンブレードや燃焼器、プラント設備の特殊な材料、航空機エンジンまわりの部品など様々な用途に使われるニッケル合金や、電気自動車のバッテリー素材など、今後拡大が期待される分野において使用される材料のスクラップを取り扱いたいという狙いがあります。

これまでの工場との大きな違いは、「ワークショップ」を設置したことです。スクラップの解体・切断作業は、それぞれの工場においてバラバラに行っていましたが、ワークショップにクレーンや各種切断機を配備し、大型の集塵機をダクトで繋げ排煙や粉塵を除去する対策を施したので、作業場所が1箇所に集約され、より効率的に解体・切断作業ができるようになりました。

また、事務所棟も設けていますので、打ち合わせの際に作業風景をご覧いただくこともできます。今後は、金属の表面研磨機や数種類の破砕機など、順次導入していく計画です。



<写真4> 左:Ⅲファクトリー 右:集塵機が併設されたワークショップ
<写真4> 左:Ⅲファクトリー 右:集塵機が併設されたワークショップ

────トレーディングやリサイクルの知見や技術を活かして、コンサルティング事業にも取り組まれているとのことでしたが、具体的な事例を教えていだだけますか?

あるお客さまから、「研磨加工時に発生するスラッジを再利用できないか」というご要望があった際、スクラップの有効活用だけでなく研削油の再利用までをご提案させていただき、コストダウンと環境保全につなげることができた例があります。

他にも、放置されていた切り屑を圧縮処理により減容化し、置場スペースが充分に確保できるようになった例や、お客さまの原材料を当社の酸洗浄装置や切断機などを使って加工し、熔解スケジュールに間に合わせた例など、色々なご相談をいただいております。


今後の展望

────最後に、今後の展望についてお聞かせください。

まもなく、当社は50周年を迎えることになります。いつの時代においても、社会に求められる企業であるよう、営業面においては、お客さまと一層向き合わないといけない、と考えています。当社の事業内容や組織のカタチをも変化させながら、ご要望に対処していきたいと思います。

また、生産面では、これまでに100種類以上の設備を導入しましたが、今後も自社で加工できる範囲を広げたいという想いが第一にあります。設備の自動化やロボットの導入などにも注力し、作業の効率化や見える化も実現したいと考えています。

最近では、営業スタッフがドイツやメキシコなどお客さまの海外関連会社へ同行し、現地で発生する金属スクラップの回収をお手伝いさせていただいております。語学が堪能なスタッフも揃っていますので、活躍できる場所を一層広げたいですね。


矢野金属株式会社
限られた資源であり、そして産業のビタミンと呼ばれるレアメタルを大切に取り扱うことで、産業が環境保全を意識し調和を図りながら発展する循環型社会の構築に貢献。「トレーディング」、「リサイクル」、「コンサルティング」という3つの事業を確立し、トレーディングとリサイクル業務で培ったネットワークや情報、加工技術を上手く組合せ、原材料の安定確保やコストダウン、廃棄物の削減や環境保全など様々な課題を顧客と共に解決している。
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