多用途で活躍するセメダインの『スーパーX』から見るものづくりにおける接着剤

優れた接着剤といえば、皆さんはどのような接着剤を思い浮かべますか?異なる二つのものを瞬間的にくっつけ、しっかり固まってびくともしない、そんな「強固」な接着剤をイメージされるのではないでしょうか。今回ご紹介するのは、「柔」の発想で接着剤の耐久性を向上させた、セメダイン株式会社の弾性接着剤『スーパーX』です。

接着剤に求められることは、今や「くっつける」ことだけではありません。様々な用途や使用シーンに対応するため、放熱性、導電性、オンデマンド硬化などといった、多種多様な機能を付加した接着剤がラインナップされています。接着剤が、ものづくりで抱える課題の解決の糸口になるかもしれません。

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理想の接着剤の3大概念「粘着接着」「弾性接着」「無溶剤」を備える『スーパーX』

はじめに、セメダイン株式会社 技術本部開発部長 橋向秀治氏に『スーパーX』の特長をお聞きしました。

「変成シリコンをベースにした弾性接着剤はセメダインのコア技術です。これまでの接着剤はより強く接着させることで、耐久性を出すことを目指していましたが、弾性接着剤は、弾性を持たせることで、時間が経っても耐久性が変化しない接着を実現しました」

「変成シリコンをベースにした弾性接着剤に高強度のアクリルを加えたものが『スーパーX』シリーズです。『粘着接着』『弾性接着』『無溶剤』という理想の接着剤の3大概念を備えた『スーパーX』シリーズは以下のような共通の特長があります」


1. 異素材接合を可能にする「広範な接着性」
2. 強靭かつ柔軟な「耐久性」
3. 設計の可能性を広げる「多用途」



様々な機能に分化した『スーパーX』シリーズの系統図

<図1>セメダイン弾性接着剤の系統図
<図1>セメダイン弾性接着剤の系統図

「長年の研究開発の結果、さらに特色ある機能を付加した『スーパーX』のラインナップが拡充されています。接着剤を使用する製品用途に応じて、耐熱・難燃・放熱・導電など、使用環境に応じた機能や、施工要件に応じて硬化方法を決められるような選択肢を拡充しています。また、新しい素材が次々に開発される中、さらに広範な被着剤への接着や世の中の要求に応じて安全性・環境基準にも常に対応しています」


① 使用環境への対応

<表1>接着剤の機能と説明

機 能 説 明 シリーズ名
耐熱性 高い温度環境下でも安定した接着性を維持できる150℃高耐熱タイプ。 SX7700
難燃性 難燃性を付与しており、電子部品の組立用途で広く採用される。
一般にシリコン系接着剤には、接点障害を起こし電子部品に悪影響を及ぼす環状シロキサンが含まれるが、本商品には含まれないのが特長。コンデンサー、コイルなどの回路基板の固定や、電源、トランスなどの絶縁シール電子部品の防水シールに使用される。
SX720
放熱性 長期使用後も安定した熱伝導性を示し、CPUなど半導体デバイスやDCモーター制御チップの熱対策に適している。 SX-TCA
RH96L
導電性 溶接の代替として、熱に弱い部材近傍での各種電子部品の実装・接合に採用される。アース効果もあるので、スマートフォンなどのデバイスでは誤作動を起こさないようにアースとして用いられる。

布のような柔らかい素材に塗布しても硬化後も割れることなく、導電性を示す。湿気硬化なので、熱をかけられないデリケートな素材にも使用可能。壁や床、衣服などへのセンサー設置などにも活用できる。

SX-ECA

 

② 施工要件への対応

 <写真1>スクリーン印刷機
<写真1>スクリーン印刷機


「当社の接着剤は空気中の水分と反応して硬化する湿気硬化を採用しているものが主流なのですが、生産ラインに組み込むと、接着剤を自動で塗布する機械のノズルが詰まってしまったり、塗布してから張り合わせまでのタイミングが合わず、強度が下がってしまうケースがあります」

「そこで、硬化を開始するタイミングをコントロールできるオンデマンド硬化(UVトリガー)タイプのスーパーXを開発しました。UVトリガーの接着剤は、UVを当てたタイミングで湿気硬化が始まるので、硬化を開始したいタイミングをコントロールできるようになります。高さや光源、コンベアのスピードを調整することで、最適な生産ラインを設計することができます」

「UVトリガーの接着剤はスクリーン印刷やインクジェット印刷などに適しており、シリンジなどのアプリケーションも対応しています。粘接着を経て硬化するSX-UV100Aと、粘接着を経ずに一定の張り合わせ可能時間を経て硬化するSX-UV220があります。UVを照射した後、すぐ硬化が完了するわけではないので、UVを通さない不透明材料同士を接着することが可能です」


③ 難接着・新規材料への対応

「自動車にも異種材料が用いられるようになり、鉄、アルミ、CFRP、樹脂等は実用化に向けて開発が進められています。近年、構造用途に弾性接着剤が採用される例も増えたので、これからは建築用途やドローンなどの軽量化を求められる製品での採用が増えるのではないかと考えています。」

④ 安全性・環境への対応

「安全性は、法規制などの改正に合わせて常に更新しています。環境対応に関しても高いグレードを目指しています」




「くっつける」+αの機能で用途に合った性質・施工性を実現

次に、具体的な事例から『スーパーX』の活用シーンについて、事業本部 工業材料部課長關口嘉巳氏にご紹介いただきました。

活用事例①:電機部品の接着

<図2>基板のがたつきや部品が取れるのを防止する
<図2>基板のがたつきや部品が取れるのを防止する

「電機部品で『スーパーX』が採用されるケースでは、基板のがた防止やチップ部品が取れるのを防止することが主な目的です。例えば、パソコンの電源ケーブルのACアダプタ中の部品は、はんだで固定されているケースが多いですが、持ち運び時や落下などの衝撃ではんだが取れてしまうケースがあるので、補強するために弾性接着剤が使われています。近年、自動車にも様々な基板が実装されており、耐衝撃性や耐振動性といった機能はより一層重要視されるようになります。また、絶縁の目的で『スーパーX』を採用するケースもあります」

「基板実装時に接着剤をつける際に求められる要件としてはまず、難燃性が挙げられます。次に、液の状態としては流れにくく、だれないことが望ましいですね。接着剤自体は絶縁性をもつので、通電しなければならない場所に誤って流れ込んでしまわないようにするためです。施工性の観点からも一液常温という硬化形式が最適です」

「シリコン系の接着剤は、環状シロキサンというガスを発生させるので、部品に付着すると接点障害を起こし、電気を流さなくすることがあります。難燃タイプのSX720はシロキサンフリーのため、そのようなことは起きない点も安心してご利用いただいている理由です」


活用事例②:リチウムイオンバッテリーの接着

<図3>リチウムイオンパックをケースに固定する
<図3>リチウムイオンパックをケースに固定する

「主にセルとケースを固定する目的で採用されています。金属と樹脂といった異なった素材同士は熱膨張率が違うため、歪を吸収できる弾性接着剤が適しているのです。同じリチウムイオン電池でも製品用途によって要件は変化します。例えば、携帯電話やパソコンの場合は自動車よりもさらに難燃性が求められます」

「車の部材は素材が頻繁に変更になるため、広範な素材につくことが重要になります。電池はそこまで熱が発生しないように設計されてはいますが、ある程度耐熱性は必要です。実際に想定している温度は80~90℃くらいですが、試験はもっと高い温度で行います。車の場合はバッテリー液や油等の影響が想定されるので、耐薬品性の試験も行います」


機能を持った接着剤で代替されるもの

接着剤に「くっつける」以外の機能が付加されることで、従来接着剤が用いられていなかったさまざまな手法が接着剤に代替されるようになりました。事例を元にご紹介いただきました。

① 両面テープの代替

「元は両面テープでおこなっていた部品の固定を接着剤に変更した事例があります。両面テープは接着剤のように硬化時間がかからないので、すぐ次の工程に進むことが出来るといった利点があります。一方で、機械を使ってテープを張るのが難しいケースが多く、手作業に頼る必要が出てきてしまいますので、決められた箇所に正確にテープを貼るにはどうしても時間がかかってしまいます。また、テープの厚みは調整しにくいので、形状をもっと薄くしたいといった設計上の要望にも応えにくいです。接着剤なら機械を用いて自動化でき、液状なので薄く塗布することも可能ということで採用されました」

② 溶接の代替

「軽量化を目的として、製品の材料を金属から樹脂に変更する動きもあります。自動車などをはじめとした製品では、金属材料同士の接合は溶接を用いています。しかし、今後樹脂材料が多く採用されるようになれば、樹脂同士や金属-樹脂間の接合には溶接が使用できません。そこで接着剤の出番が増えることも大いに考えられます」

③ グリースの代替

「放熱グリースは振動や熱で飛んでしまう、ポンプアウトという現象が問題になっています。昔、車の部品を7年間使用した後、グリースがほぼ消失していた例を見たことがあります。グリースの代わりに放熱接着剤を活用すれば振動や熱の発生する環境下でも耐えられる上に、部品同士を固定する接着の役割も兼ねることもできます。通常ボルト固定とグリースを併用していたものを接着剤だけで代替することで、より省スペースで耐久性の高い固定が実現できます」


これからの時代のものづくりに求められる新しい接着剤

IOTやリサイクルなど、これからのものづくりの潮流をとらえた新しい接着剤も登場しています。

① IOTを指向した低温硬化型導電性接着剤:SX-ECA

<図4>ウェアラブルデバイスなどのフレキシビリティが求められる基板
<図4>ウェアラブルデバイスなどのフレキシビリティが求められる基板

「近年、有機ELやPETフィルムなど熱に弱い部品・部材が増加していますが、環境保護のため主流になっている鉛フリーのはんだは実装時、高温にする必要があるため熱に弱い部品には用いることができません。そこで、低温で硬化し、かつ電気伝導性機能が付与された弾性接着剤へのニーズが高まっています」

「また、ウェアラブルデバイスなどはより軽量・コンパクト化が求められるため、フレキシブルプリント基板が多く採用されていますが、弾性接着剤である本接着剤は、柔らかく追従性があるため、それらのフレキシブルプリント基板にも安定して実装できることが特徴です」


② リペアラブルな液状粘着剤:BBX100

<写真2>剥がせる接着剤
<写真2>剥がせる接着剤

「リサイクル意識の高まりやスマートフォンやタブレット用途におけるリワーク性・仮固定性など、剥がせるニーズが増えてきています。そこで開発されたのが、すぐれた再はく離性を持つ液状粘着剤です」

「シリコーンゴムやポリプロピレンなど様々な材料に使用できるほか、粘着テープと比較しても液状なので他の粘着加工品のように打ち抜き加工による材料ロスや離型紙などの廃棄物が発生せず、製品の設計変更にも容易に対応することができます。『しっかりつく接着剤』と『いつまでも固化しない粘着剤』両方の性質を持ち、空気中の湿気(またはUV照射)と反応してフレキシブルな弾性皮膜を形成します」


まとめ

今回は、「柔」の発想で、しなやかに強さを継続させる弾性接着剤『スーパーX』と、様々な用途に対応する特色あるラインナップをご紹介しました。これからのものづくりにおいて、接着剤の存在感はさらに大きくなると考えられます。既存の接合手法に課題を抱えている方、新しい製品を試作している方はセメダイン株式会社に相談してみてはいかがでしょうか。読者のみなさんのものづくりのシーンにもフィットする製品やソリューションが見つかるかもしれません。

セメダイン株式会社
1923年の創業以来、日本発の合成接着剤メーカーとして「つける技術」をモノづくりのソリューション技術として提供し続けている。その技術は輸送機製造や交通システム、産業機器製造、電気製品・電子部品製造に広く採用されているほか、ビルや住宅、各種インフラやテーマパークなど多くの建設現場を支えている。
セメダインの工業用製品について セメダイン スーパーX No.8008

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