環境試験器・恒温機器(オーブン)を「カスタム」すると何が実現できるのか

INTERVIEW

株式会社カトー
代表取締役社長
岡崎 昌平
営業部課長
飯野 勝

槽内の温度・湿度を長時間一定に保ったり、設定どおりの温度・湿度に上昇・下降させたりする「環境試験器」や「恒温機器(乾燥器・オーブン)」。みんさく読者の中にも、工場や研究施設で日々活用している方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。環境試験器、恒温機器の使用条件や対象物(素材・大きさ・形状などなど)は多岐に渡りますが、適さない機器を使うことで、温度条件にムラが生じてしまったり、測定時に占有するスペース・時間を無駄に使ってしまったりしているケースがあるようです。その悩みを解決しているのが、低コストで用途に適した「カスタム品」を提案しているカトーです。環境試験器・恒温機器のカスタムを得意とする株式会社カトーの岡崎社長と営業部の飯野課長に、カスタムをすると何を実現できるのか、カスタム品をオーダーするにはどうしたらよいのかなど、根掘り葉掘り伺ってきました。

研究所から生産ラインまで広く使われる恒温器・環境試験器

────まずは、カトーの恒温器・環境試験器について簡単に教えてください。

岡崎:
私たちカトーでは箱型の恒温器・環境試験器を作っています。用途はバラエティに富んでいて、多種多様な業界・業種のお客様がいます。主なものだけに絞っても、これだけの用途があります。

<図1>恒温器(乾燥器・オーブン)・環境試験器の主な用途
<図1>恒温器(乾燥器・オーブン)・環境試験器の主な用途

岡崎:
箱型は、機能で大きく2つに分類できます。1つは、「恒温器(乾燥器・オーブン)」です。主に、熱をかけることで、対象物の処理を行います。低温のものだと、塗料などの乾燥や樹脂などの材料の軟化や硬化に用いられます。高温になると、電子部品の焼き付けや、タイルや金属部品、電子部品の焼成、板材のアニール処理などに用いられます。恒温器の多くは工場で使われており、生産ラインに組み込まれていることもよくあります。

もう1つは、製品の環境試験に使われる「環境試験器」で、これは温度・湿度を一定時間で上げたり下げたりするケースがほとんどです。環境試験器は、基板・自動車シート・建築物・配送ケースなどの耐久試験、木材の伸縮研究、医薬品の温度サイクル試験など、主に研究施設で、さまざまな製品の環境試験に使われています。基本的には1℃単位(場合によっては0.5℃単位)で温度をコントロールすることができます。実はいま、私たちの製品がJAXA宇宙環境試験室にも採用され、人工衛星はやぶさなどの環境試験に使われています。

<写真1>カトーが製造している標準品の恒温器(乾燥器・左)と環境試験器(右)

 

 

岡崎:
なお、製品保証は1年ですが、私たちの製品は比較的長持ちすることが多く、30年前に製造したものがいまだに活躍している工場や研究施設もあります。もちろんメンテナンス対応もしています。

<写真2>岡崎社長(右)と飯野課長(左)
<写真2>岡崎社長(右)と飯野課長(左)

標準品・セミカスタム品・フルカスタム品がある

────恒温器・環境試験器のセミカスタム品に強みがあると伺ったのですが?

飯野:
はい。弊社の恒温器・環境試験器には、大きく「標準品」「セミカスタム品」「フルカスタム品」の3種類があります。
標準品は、多くの用途に使いやすいように作られたもので、私たちは現在、15ほどの標準品シリーズを持っています。シリーズごとに性能の違う製品をいくつか用意しており、標準品だけでも多くの用途に対応できるようになっています。
特徴的なものでは、半導体基板サイクル試験に特化した「NEXIS」という標準品シリーズがあります。これは、研究室などのデスクの横で、半導体基板の通電試験のテストを気軽にできたら嬉しいというニーズから生まれた製品です。また最近、シースルードア型の「ORENO」を復活させました。主に電子機器などの環境試験に使用するもので、試料の加工作業や試験中の観察・調整を座ったまま行えるのが特徴です。

<写真3>「NEXIS」は半導体基板サイクル試験に特化した標準品

 

 

<写真4>「ORENO」はシースルードアで、手を入れて作業することができます
<写真4>「ORENO」はシースルードアで、手を入れて作業することができます

飯野:
対して、カスタム品は、用途に合わせて特注で開発するものです。私たちは、お客様の要望に合わせて一から開発する「フルカスタム品」も、標準品をベースに作り変える「セミカスタム品」も得意としています。実際、私たちの現在の生産量全体の20%が標準品、40%がセミカスタム品、残りの40%がフルカスタム品です。標準品よりもカスタム品のほうがずっと多いのです。

なぜなら第一に、私たちのカスタム品は、価格が比較的安く、納期が比較的早いケースが多いからです。私たちは標準品も一つひとつオーダーメイドで製作しているため、標準品とカスタム品にそこまで大きな価格・製作期間の違いが発生しないのです。また、カスタム品の制作実績が多いため、検討や設計にかかる時間も短く済むことが多いです。納期に関しては、フルカスタム品でも標準品+2カ月程度で製作が可能なことが多く、納期の早さだけで選んでいただけることもあります。金額面でも、お客様の想定の半額程度で製作できた例もあり、多くのお客様に喜んでいただいています。

第二に、私たちはカスタム品であっても、標準品とあまり変わらない品質を実現できるからです。実は、カスタム品は標準品よりも見た目が美しくなかったり、性能が低かったりするケースが多いのです。私たちは、標準品と変わらない工程・業者を使い、標準品にできるだけ近い性能を目指して製作しています。その点で褒めていただけることもよくあります。

第三に、私たちが、お客様のご要望にできる限り応えているからです。というのは、「そのカスタム品は製作できない」と断られるケースが多いそうなのです。私たちは、オーダー内容・価格・納期面で現実的に製作できるものであれば、極力お客様のご要望に添うように努力しています。

<図2>標準品とカスタム品の生産比
<図2>標準品とカスタム品の生産比


ワークの形状に合わせたり建物に搬入できるサイズにしたりできる

 

────具体的に、どのようなカスタム品があるのですか?

飯野:

比較的多いカスタムオーダーのパターンが3つほどあります。次の3パターンです。

①ワークの形状に合わせたカスタム(槽内寸法の変更など)
②建物搬入のためのカスタム(外形寸法の変更・製品分解など)
③必要な温度・湿度・機能を実現するカスタム(性能調整・ブロワー取り付け・槽内寸法変更など)

1つ目は「ワークの形状に合わせたカスタム」です。たとえば、針金・樹脂チューブなどの細長いワークを乾燥させたい、あるいは電灯などの細長い製品の環境試験をしたいというお客様がいらっしゃいます。そうした場合は、製品に合わせて細長い槽内寸法のカスタム品を製作することで、槽内空間のロスを削減し、省スペースを実現できます。もちろん、小型製品・大型製品などへの対応も可能な範囲で行っています。

2つ目は、実はこれが最も多いのですが、「建物搬入のためのカスタム」です。箱型の恒温器・環境試験器はそれなりの大きさがあるため、標準品のサイズでは、工場・研究施設などの置きたい場所に搬入できないことがよくあります。その場合、私たちはエレベーターに搬入できるサイズまで小さくしたり、製品を分解して搬入し建物内で組み立てたりといった対応を取っています。どの方法がベストかは、お客様とその都度ご相談しています。

 

 

実際のワークを入れたときに必要な温度・湿度・機能を実現できる

飯野: 
3つ目は「必要な温度・湿度・機能を実現するカスタム」です。一般的に、恒温器・環境試験器の標準品は、ワークを何も入れない無負荷時の庫内温度・湿度を保証します。しかし、実際にワークを入れて使ってみると、目指す温度・湿度に届かなかったり、想定外の排気が必要になったりということがよく起こるのです。また、環境試験器の場合は、求めるスピードで温度・湿度が変化してくれないということもよくあります。実は、こうした悩みを抱えるお客様が少なくないのです。

そこで私たちは、お客様が実際に使いたい方法で、お客様が求める温度・湿度・機能を実現するカスタム品の開発を行っています。必要に応じて、送風方法・冷却方法なども変えますし、ブロワーを取り付けて煙や匂いを外に逃がすことも可能です。また、槽内に試験機を入れ、それを作動させたいというお客様も珍しくないのですが、その場合、試験機が発生する熱も考慮に入れる必要があり、やはり温度・湿度の調整が必要になってきます。さらに、試験機を取り付ける穴の数・場所なども考えなくてはなりません。私たちは、こうしたことにもカスタムで細かく対応しています。

なお、この3パターンのうち、2つあるいは3つが重複するケースもあります。当然ながら、オーダーが増えるほど、セミカスタムからフルカスタムになっていき、価格が高くなり、納期が伸びる傾向にあります。

 <写真5>ブロワーを取り付ければ、煙や匂いを外に逃がすことが可能
<写真5>ブロワーを取り付ければ、煙や匂いを外に逃がすことが可能


カトーなら実際のワークを使ったテストが可能

飯野:  
先程ご説明したように、実際に槽内にワークを入れてみて初めて分かることがあります。
私たちの工場まで来ていただければ、私たちが用意している試験器を使って、その場で実際のワークを使ったテストを行っていただけます。ブロワーを取り付けて、煙・匂いの度合いを確認していただくようなことも可能です。テストをしていただけると、私たちもより詳細にセミカスタム品を提案しやすくなりますから、お悩みの方はぜひ、ワークを持って私たちのところに来ていただけたらと思います。

<図3>テスト結果サンプル(ガラス基板を投入後の120℃ベーク炉における温度変化測定)
<図3>テスト結果サンプル(ガラス基板を投入後の120℃ベーク炉における温度変化測定)

飯野:  
テストを行えば、<図3>のように槽内の複数のポイントで温度収束データを取得することもできます。

未知のお客様、未知の使い方と出会いたい

────読者の皆さんに何か伝えたいことはありますか?

飯野: 
実は、私たちのところには、「標準品に不満があるんだけど、具体的にどういうものが欲しいのかよくわからない」とおっしゃる方がよく相談にいらっしゃいます。また、「標準品には不満があるけど、仕方がない」と諦めている方も多いようです。そうした方々のやりたいことや要望を細かく伺い、テストしていただきながら、最終的に実現可能な製品を提案するのが、私たちの仕事です。ですから、もし恒温器・環境試験器に悩みをお持ちでしたら、お気軽にご連絡ください。

それから、この記事を読んで、「もしかしたら自分のものづくりや研究に、恒温器・環境試験器が役に立つかもしれない」と、ピンと来た方のお話もぜひ伺いたいと思っています。というのは、私たちは未知のお客様、未知の使い方に出会いたいと願っているからです。私たちはこれまで、まったく想定外の使い方と何度も出会ってきました。そうやって新たなニーズに出会うことで、私たちのビジネスは変化・成長してきたのです。私たちは、次の一歩を踏み出すために新たな出会いを必要としているのです。ですから、ぜひ遠慮なくお声がけください。

株式会社カトー
昭和44年の創業以来、環境試験器、恒温機器メーカーとして、工業製品の信頼性を担うものづくりを続けてきた会社。お客様とともに共有する、お客様の課題に向き合い実現していくという姿勢を貫いてきた。創業以来、企業理念に「環境試験器と恒温機器の未来を拓く」を掲げ、電子機器、食品、医療、自動車関連、新エネルギー、宇宙開発部門へと事業領域を拡大してきた当社は、これからも日本国内に問わず、世界規模、宇宙規模での開発を支える企業であるために、たえまない進化への挑戦を続け、時代に先駆けた製品を創造し提供し続ける。
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